『先生とわたしと科学室』 ... ジャンル:リアル・現代 恋愛小説
作者:くさなピ                

     あらすじ・作品紹介
今日も科学実験同好会の活動日。私は今日も軽い足取りで科学室へと向かっていった。友達に誘われた科学実験同好会。剣道部に所属している私は、入るか入らないか迷っていた。同好会の顧問、松川潤と私、松長佳奈子との間に言葉にできない気持ちが生まれだす?

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 今日も科学実験同好会の活動日。
 私は今日も軽い足取りで科学室へと向かっていった。
 


 剣道部に入っている私は毎日忙しいハードな練習と、先輩たちとの上下関係に日々悩まされていた。別に剣道が嫌いなわけでも、先輩たちが嫌いなわけでもない。ただ日に日に積もっていく疲労に嫌気がさしていただけだった。
 もちろん、剣道部をやめようと思ったことはある。
 ただ中学の最後の試合。私は先鋒で、チームの士気を下げさせないためにも絶対勝たなければいけない立場にあった。いつものように試合をする私。相手は県大会の個人戦でとっても良い成績を残している長身の子。どうみたって私には勝てないような相手だったのに。私は勝ってしまった。
 勝ったそのとき見た顧問の先生の笑顔をみて、私はなんだか言葉にできないような気持ちに駆られた。いままで、剣道やってて良かったな。そう思えるようになった。
 
 だから私は高校でも剣道を続けようと思った。
 どんなにつらいことが起きても、あの先生の笑顔を思い出すたびに私は転んでもまた起き上がることができた。

 あるときの話だ。私は友達にこう誘われた。

「ねぇ。科学実験同好会に入らない? 人足らなくて困ってるのよ。お願い。」

「…ごめん。私、剣道部に入ってるから。」

「名前だけでいいの! いまならさ、かっこいい先生がいるよ?」

「……興味ない。」

 科学実験同好会。確か人数は3人しかいなくて同好会すら潰れてしまいそうな集まりだ。
 顧問の先生は、『松川 潤』先生だった気がする。新任ほやほやの23歳独身教師だ。かっこいい二枚目な人だけれど、未だに彼女がいないらしく、童貞だのなんだの男子生徒にいつもいじられている。もちろん女子生徒が目に付けないわけなどなく、ファンクラブや親衛隊までできていたりする。(全くおかしな集団だ。)
 
「どうしてよ!? あんた中学のとき剣道部の顧問の先生が好みだったんでしょ?」

「は? ちょっとまて、そんなこと誰が言ったのよ。」

「いやー、あんたの態度見れば分かるって。」

「…あのね。どう考えたら、34歳の既婚&子供持ちの先生を好きになるのよ。」

「…えへ。なんとなく。」

 ふざけるのもいいかげんにして欲しい。確かに先生のことは尊敬していたし、人間としてはとても好きな部類には入るけれど、恋愛としては論外だ。34歳の既婚&子供持ちは無しとしてでもだ、それ以前に生徒と先生との間での恋愛なんてありえない。気持ち悪い。吐き気がする。
 そんなものに夢を見ている先生好きの乙女をみていると同情の気持ちでいっぱいになる。さぞや、この子を産んだ父と母は悲しむのだろうな、と思ってしまう。
 年の差を考えろ、立場を考えろ、現実をみろ。と、ちゃんと一から教えてやりたいほどだ。

「でもさ。実験面白いよ? 先生も優しいし、先輩も優しいし。」

「まぁ。考えてみるよ。兼部になると思うけど、それでいいなら。」

「ホントに!? 嬉しい! 佳奈子ありがとう!」

「まだ入るとは決まってないんだけどね。」

 目の前は満面の笑みを浮かべる友人が可愛くて、自然に自分も笑ってしまう。
 まぁ、部活のない月曜日と、真面目に練習していない朝練と、何もない暇な休日の日は参加できると思うし、友達のためだ。できるだけ、悲しませないようにしよう。

「じゃあ、次の月曜日の放課後に科学準備室に来てよね?」

「どんな感じだか見るだけだよ? 絶対入るってわけじゃないからね?」

「分かってるよ!」

 友人は可愛く笑う。たくっ、憎めないんだから。



 と、そんな訳で私は月曜日の放課後、科学準備室に来ていた。
 まだ誰もいないらしく、そっとため息をつく。以外と緊張しているみたいで、心臓がバクバクいっているのに気がついた。別に緊張するほどのことじゃないのに、不思議だ。

「やぁ、来ていたんだね。松長佳奈子さん。」

「あ、潤先生。こんにちは。」

 うん。こんにちは。と返してくる先生。…うわ…かっこいい。
 別に先生が好みって訳でもないのに、ドキドキして思わず見とれる。なんでだろう。この気持ちは。ただ、先生がかっこいいってだけだとは思うけれど。

「松長さんは剣道部だよね? 掛持ちで入るのかな?」

「まだ入るとは決まってませんが、入るとしたら掛持ちになるかと。」

「そうかそうか。入ってくれると嬉しいなぁ…。」

 うっ…笑顔は無いでしょ。それはそれで可愛い…って私何を思っているのっ!
 私のバカバカバカ!!どうしてこうもこんな気持ちに…!ただ顔がいいだけじゃない!

「えっと。とりあえず、剣道部の方を優先してもよろしいでしょうか?」

 そう、冷静だ。冷静になるんだ私。
 相手はただの顔が良い先生ではないか…!
 ……でもそれにしてもどうして今更こんなにあせるのだろう。今まで潤先生と話をしたりしたことは…まぁ一、二回ぐらいはあるはずだ。うーん…どうしたものか。

「もちろん。剣道部の方を優先してもかまわないよ。こっちはお願いしてる身だし。
それにこっちは同好会だしね。気軽に参加してもらえるだけでいいんだけど…。」

「はぁ…。」

 剣道部の方を優先していいなら入ってもいいかな。

「あ、佳奈子ぉ! どうどう? 入ってみる?」

 誘ってきた友達、優理子がいきなり先生の後ろから現れる。私は思わず「あ…」と声はあげてしまった。

「うん。入ってみようかな。」

「本当にかい!? いやー、嬉しいな。嬉しいな。」

 先に喜んだのは友達ではなく、先生の方だった。
 先生は大人げなくニコニコ笑っている。言っては悪いが、とても可愛らしい。

「そう…ですか?」

「うん。先生すごく嬉しいよ。ありがとね。」

 満面の笑顔をみているうち、私は思った。
 言葉にできないような気持ちに駆られた。入ろうと思って、良かったと思った。
 中学の最後の試合に勝った後の顧問の先生の笑顔を見たときと同じような気持ちになったが、それとは少し違う感覚がした。なんだかドキドキしている。

「これから宜しくお願い致します!」

「うん。宜しくね?」

 これからの同好会が楽しみだ。
 どんなことが起きるか分からないけど。
 この気持ちがいったいなんなのか分からないけど。
 今は、今を楽しんでいこう。
 未来のことなんか分からないし。自分でも分からない感情とかあるし。
 ただ、今のことだけを考えて生きていこう。

 

2007/11/01(Thu)22:55:15 公開 / くさなピ
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■作者からのメッセージ
初めまして。くさなピです。
とりあえず、小説書きました。
内容はぜんぜん甘くない、生徒と先生との話ですが、楽しんでくださると嬉しいです。
シリーズものにしようとおもいますのでよろしくお願いいたします。

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