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『星のはなし【1】』 ... ジャンル:ファンタジー 童話
作者:針鼠
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どんなに高く鳥が飛んでも届かない。
ここは、空より高い不思議な場所。
静寂。
闇を照らす無数の星たち。
誰かが『宇宙』と呼んだから
ここはそういう名前になった。
誰かが星と呼んだから、僕らは星になった。
「うわっ、寝すぎた!」
静寂を破って、ちかりと隣の星が叫んだ。
びっくりして声の方を見ると、僕より一回り大きな星がオロオロ光っている。
「なんで地球が真下にいるんだよ!」
僕は、真下にある地球に目をおとした。相変わらず青と緑の星。
彼の叫び声に驚いたのか、周りの星たちも、うとうと目を覚まし始めていた。
「あ、すいません。いきなり大きな声出して」
彼は、申し訳なさそうにしゅんと光量をおとした。
周りから、ため息やブツブツ文句を言う声が聞こえてくる。
へへ、と笑う彼に、僕は思わず声をかけた。
「……どうしたの?」
「寝すぎちゃってさ。俺んトコ地球の上じゃないんだ」
星は自分の意思で動ける。
地球でいう『家』のように、星たちは、火星の上とか、月の下、とか簡単な住みかを決めている。
火星や月が公転して動くたびに、それに合わせて星たちもゆっくりと動いていく。
気づかれないよう、ゆっくりと……。
「俺んトコ、ちょうど地球の反対だったから、えーと……」
彼はちかちかと点滅している。なにやら考え込んでいるようだ。
「地球時間でいう……183……半年だ。半年も寝たんだ」
「そんなに!」
僕は思わず声をあげた。
四日五日くらいだっていい寝坊なのに、半年とは。
「どうしよう。今から帰ろうかな」
「長い距離動いちゃ、ダメだよ!」
ゆっくり動く分には、人間にはバレないが、そんなに一人でびゅんびゅん動くなんて、絶対バレてしまう。
「どうせ地球のヤツなんて、空見ないし」
「だめだめ!星好きな人だっているんだから」
「地球自体も星なんだから、地球見ろっての」
彼は、ハァと大きなため息をついた。
「あと半年ここで待つのタルい……ここらの星たち、感じ悪いし」
な、なんだか周りの星たちに、睨まれている気がする……
慌てて、シー!と合図を送ったが、彼は何も感じないのか、ハァーアとまた大きなため息をついていた。
ため息つきたいのは、こっちだよ……
彼はつまらなそうに、ゆっくりと点滅していた。
宇宙って、意外と暇だ。動きたいのに動けないし、特に仕事もない。
ほかの星と話すか、寝るか、地球のような大きな星を観察するくらいしか、やる事がない。
「ねぇねぇ」
彼は、この居場所に諦めたらしく、僕に話しかけてきた。
「お前って、地球好きなの?」
「え……?好きだよ。もしかして嫌いなの?」
「俺は嫌い」
……即答だ。よっぽど嫌いなのか。
「なんで?良い星だよ」
「どこが?」
「どこがって……」
うーん、と僕は考えた。
生まれた時から地球の上にいて、そういえば特に考えた事もなかった。
ぱっと言えない僕に、彼は楽しげに言う。
「ほら、言えないだろ」
「言えるよ!綺麗な星だし、ビルもいっぱいでかっこいいし」
「へぇ」
彼はくつくつと笑っている。
加虐的な笑いだ……
「じゃあ、行きたいと思うか?地球に」
今度は僕が即答した。
「行きたいよ!人間に会ってみたいもん!」
彼の点滅が止まった。
言ってはいけない事を言ってしまったのか、彼の光は鋭い。
一瞬で張り詰めた空気に、なんだか怖くなった。
「じゃあ」
思わずびくりと体をひいた。
その先の言葉は、聞いちゃいけないような気がした。
彼は無表情で、歌うように言った。
「地球に、行ってこい」
「……え?」
彼はすごい勢いで、僕に突進してきた。
ガンとすごい音を立てて、僕ははじかれた。
クラクラして、上か下かも、何がなんだか分からない。
周りの星たちが悲鳴をあげる
さらに彼はもう一撃、僕に体当たりをした。
星は痛さを感じないが、体がくるくると回転して目が回る。
背中を押すように、また彼がぶつかる。
……どこからかシューシューという音が聞こえてきた。
自分の体から、ガスが出ているようだ。
どうにかしたいけど、どうにもできない。
遠くに、じゃーなーという彼の声
騒がしい星たちの声
空を切る音
シューシュー……
ガスの勢いもあってか、凄い速さで飛ばされていく。
僕は、流れ星になったのかな?
流れ星になって燃え尽きちゃうのかな?
けれど
僕は生きていた
<続>
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2007/07/22(Sun)00:50:41 公開 / 針鼠
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■作者からのメッセージ
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