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『KILLERS of reality』 ... ジャンル:ショート*2 リアル・現代
作者:おすた
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あらすじ・作品紹介
2007年4月16及び17日、日本と世界で銃声が鳴り響いた。現実か、非現実か、それすらも分からなくなる、ここにある確かな事実。
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機嫌良く扉を閉めたのは四月十七日の僕だった。
引きこもりになって早一年、僕は今を生きていた。手に持っていた大きな袋をパソコンデスクの横にそっと置いて、ドサリと体を脱力させてベッドに寝転んだ。顔には満面の笑みを浮かべ、それは最早綻びを超えて下品になっている。僕は抑えきれぬ幸福を特に構いもせず、解放していた。良いんだ、そうしたいならそれで。僕を止めるもの等何もないし、止める権利がまず存在しない。故に僕は自由の塊だ。そんな屁理屈を宙に浮かべ、僕は部屋を見回した。
壁の白を覆い隠す様々な形をした黒い模造凶器たち。鉄パイプの棚に於いてあるのは手作りのダンボールの的と革の手袋とサングラス。そしてペットボトルに詰め込まれた、数多のオレンジ色の小さな玉。ここはまるで異空間、居心地の良い僕だけの楽園だった。
無性に何かを貫きたくて、僕は起き上がり、パソコンデスクの横の袋を取った。そして僕は欲望のままに袋の中身を兇暴な獣のように荒々しく破りむしった。中から現れたのは僕のコレクションの最高傑作。これ一つで僕は何でも出来る、そんな気がするのだけれど、それはもうほとんど確信だった。壁を覆う黒たちが騒いだ。おい、それは駄目だ。僕たちの仲間に入れちゃならねえ。次元が違う。そんなことを云っているようで、僕は逆に興奮した。手に取った傑作を電灯の光にかざしてみる。その見事な本物の黒は光を反射して体全体を不気味に輝かせていた。
ふと、僕は時計の針が深夜を指していることに気付いた。もうこんな時間か、いつも見ているアニメが始まっているのではないか。僕は可能性を手に握ったまま、テレビの電源をつけた。
黒いマントを纏ったデビルが地面に倒れている一人のナイトの前にぽつりと立っていた。デビルは笑っている。ナイトはぐったりとして動かない。デビルは手に持った血だらけの剣を振り回し、狂ったように喜んだ。何故か泪を流している。そんなに喜ばしいことをデビルは果たしたというのか。何のどの場面なのか、僕にはさっぱり分からない。
すると、世界は飛ぶ。
今度はデビルの城の中だった。何匹ものピクシーが一人のデビルの前に立たされている。デビルは何か訳の分からない言葉を云っている。それを聞いてピクシーたちがどよめいている。その場から逃げ出したいような表情を浮かべたピクシーたちは皆震えていた。デビルはピクシーに近寄ってゆっくりとその前を歩き出した。デビルはそれぞれ何か怒鳴りつけながら、それぞれの瞳の中を覗いていく。そして一匹のピクシーの前に立った。身なりの良いハンサムなピクシーだった。デビルは手に持った剣の切っ先をそれに向けて、誰よりも激しく怒鳴っていた。何度も何度も馬鹿にするような訳の分からない言葉を吐いた。ピクシーは泪しながら震えていた。デビルの言動がより一層感情的になる。そして思わずピクシーが云い返そうとしたら、デビルはピクシーを刺してしまった。ピクシーはその場にぐたりとして倒れこんだ。それを見た周りのピクシーたちが愕いて、パニック状態になり、逃げ惑った。デビルはピクシーたちを追い詰めていった。デビルは尚も言葉を吐き捨てる。呪いの言葉さえ呟いたほどだ。ピクシーの何匹かは腰を抜かして立てなくなっていた。デビルは容赦なくピクシーを刺していった。地面には夥しい量の血が広がっていた。結局逃げ出せたのは四匹、それ以外の多くのピクシーは床に転がり、そこに立っているのはデビル、たった一匹だった。
満足気な表情のデビルは辺りを見回した。これがデビルにとっての理想なのだった。そしてデビルは一笑いすると、ピクシーを刺したその剣を自分へと向けた。血だらけになった鋼の刃にはそれでもデビルの顔が明確に映った。自分の顔を認めると、デビルは無表情になった。そこにある自分の顔を睨みつけ、何かがデビルの中をいぶっているようだった。そして刃は狂いもせずにデビルの体を突き刺した。
そして画面には罪なき人も殺人者も消え、そこには血が流れたという事実だけが残った。
僕は激しく嘔吐した。迫り出してくる汚物が僕の何もかもを吐き出そうとした。僕は最早抑えることなど出来ない。抵抗する気さえ起きないのだった。僕は床の上に突っ伏した。握った手は痙攣を起こし、鈍い音がして何かが落ちた。僕はおぼつかぬ視線を必死になってそれに向けた。そしたら僕は暗転した。僕は一体何を持っていたのか。知るよしもなく、見えなくなった。意識の幕が、落ちたのだ。
深い闇の中を鋭い銃声が貫いた。(了)
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2007/04/21(Sat)01:27:54 公開 / おすた
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■作者からのメッセージ
非常に難解で、訳が分からない、というのが本当でしょう。起承転結に於ける「結」はあえてしっかりと設置しませんでした。それは、この事実が読者それぞれの中に「結」があるからです。俺が定めてしまえば、単なる私小説に他なりませんので。
当初、五月いっぱいまで連載するつもりだったショートショートはこれで最後です。俺はこの作品を登竜門の遺作として、今日をもってこのサイトを去ります。理由は様々です。俺はここ数ヶ月で読者に対する、また執筆をする上での一つの答えを見つけたような気がします。今までご支援、ご感想を下さった皆様、ありがとうございました。「舌の上で転がして」「アフターヌーンアイスハーブティ」「てんしの泪」「早期發見」そしてこの作品、皆様の書いて下さった感想は全て印刷して保存してあります。勿論、貴重な資料であり、宝なので、これからも大切にしていきます。著者としての責任として、この作品がこの掲示板上から消えるまでは感想への返答はいたします。また、「てんしの泪」以前に投稿した作品を読みたい方がいたら申してください。貼りますので。二年という短い間でしたが、本当にありがとうございました。
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