『大虐殺の日に鍋をしよう』 ... ジャンル:リアル・現代 未分類
作者:トロサーモン                

     あらすじ・作品紹介
 とあるカップルと大虐殺の日と鍋の話。血と肉片と狂気と恐怖。そしてネギと鍋。 鍋ぐらい別の日にすればいいじゃないか!

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ドリル男とチェーンソー男が公園で戦っていたので、僕はわざわざ迂回しなければならなかった。今日は家で彼女と鍋をすることにしたので僕は具材を買いにスーパーへ行く途中の事だった。
 僕はそれを見て今日がマサカーの日であることを思い出した。ぴんぽんぱんぽんとアナウンスの合図がし続けてかん高い女の声がした。『今日はマサカーの日です。市民のみなさまは外へ出ず、家に鍵をかけカーテンをしめひっそりとしていてください。今日は後一時間でマサカーの日です。』
 後一時間でマサカーの日なら僕はこのままだと殺されるだろう。マサカーの日は大虐殺の日とも言われていてこの日外に出ていると無条件でチェーンソー男やドリル男に殺される、時々チェーンソー男やドリル男は家まで入ってきて殺すこともある。マサカーの日は油断も隙もないのだ。僕はこのまま帰る事を考えた。このまま帰らないと僕は細切れの肉片とおびただしい量の血液となるだろう。あんまり気分の良いものじゃないしまだ死ぬのも嫌なので今日は帰る事にしよう。でもうるさいやろなあ。僕の彼女は予定を変えられるとものすごく怒る。やばいなぁ。めんどくせえ。うーんと僕は頭をひねった。こんな時に携帯を使えばええやん。ビバ近代文明。ビバau。アドレス帳から彼女の電話へ。ぷるるると三回コールしてからがちゃと彼女が出た。
「もしもし。僕やけど」
「なに?鍋はもう買うたん?」
「まだ」
「まだ?じゃあ何で電話してきたん」ちょっとやけど苛立っている感じがした。「このまま帰ろう思て」
「何で。」彼女は冷たく言う。氷やな。「今日がマサカーの日やから」
「今日マサカーの日なん。早いこと買うて帰ってきてや」
「帰ったらあかんの」
「あかん。」
「何で」
「鍋がしたいから」「僕死んでもええん」
「あんた死んだら私も死ぬから安心しとき。ほな切るで」となんかご機嫌斜めになってたので僕は「なあ」と言った。彼女は「何?」と不機嫌そうに言った。「好きやで」と僕は言った。「死んでまえ」と彼女は半笑いで言いながら電話を切った。半笑いだったので僕は安心した。そして僕は一時間でマサカーの日が始まるまでに具材を買わなくてはいけなくなった。
 とりあえず、ここからスーパーまで15分。往復30分。選ぶのに10分。合計40分。いける。いけるぞ。僕は確かな手応えを感じた。とりあえず一時間以内に帰られたら、マサカーの日なんぞ怖くない。へっへっへっへ。僕はにやつきながらスーパーへと歩いていった。

 だが、僕はあくまで今日がマサカーの日であることを頭に入れておかなければならなかったのだ。まさか(←ダジャレじゃないよ…こうなるとは…。

 僕はスーパーの前でまるで葬式の参列者のように立ちつくす。スーパーはシャッターが下ろされていてそして張り紙が一枚。「今日はマサカーの日なのでいつもより速めに店を閉めさせて貰いました。めんごめんご!!」めんごじゃねえよ。ちょいまてや。何閉めとんねん。おいこら市民あってこそのスーパーじゃないんかい!僕は無性に腹が立ったのでそのシャッターをおもいっきり蹴った。がしゃーんとシャッターの揺れる音が当たりに響くがスーパーからは誰も出てくる気配がなかった。ちくしょう。絶対に次からはここ使ってやらねえからな!バーカ!ビッチ!サノバビッチ!ファックオフ!死んでしまえ!と心の中で半分、後半分は口に出して言った(どれを口に出していったかは想像してね)
 ああじゃあどうしたらええねん。このまんまやったらタイムオーバーで死んでしまう。死ぬくらいなら買わんと帰って怒られた方がマシ。いやいやマシすぎるやろう。早く気づいとけば!帰ろう。帰ってもええやろ。でも怒られるのがいやな僕は彼女に電話をかけた。
 ぷるるるるるる。と5回コールの後にはーいと間延びした声。テンパっている僕の状況と反比例したようなその声に若干の苛立ちを覚えるがそれを押さえて僕は話を始める。
 「もしもし、僕やけど」
 「何?買えたん?はやない?どうしたん?」
 「あんなあ…。スーパーが閉まってた」
 「はぁっ!?何で?」
 「知らんわ!」
 「何でしらんの?」
 「スーパーの従業員ちゃうからや」
 「そんなんわかっとるわ!」彼女の逆ギレ。
 「っじゃあ何が言いたいねんな!」僕はぶちまけるように言う
 「…買われへんの?具材」
 「うん」僕はそう答えると、電話の向こうからすすり泣くような声が聞こえた。
 「…泣いてるん?」僕は彼女に聞く。
 「ぅん」
 「…買うてくるやんか」
 「だってなあ。かわへんかったら、無駄になるねんで」
 「何が?」僕が愚かにもそう聞き返すと彼女は泣きながら「鍋!せっかく鍋を一緒に食べよう言うふぁやんが!ぞれをなんで無駄にするん!もう食べようや!なあもう…」「でも、具材ないねんで!」「そんなんしらんわ!あんたがそういう風にスーパー閉まってるって言うからぁあ!具材無しで喰うしかないやんか!」「どうやって食べるん」「しらんわ!ポン酢でもご飯にかけたらええやんか!!しらんわ!もうしらん!もうこんな男知らん!」彼女にさんざんまくし立てられている。この間にも時間は過ぎてマサカーの時間まで後もう少しだ。帰るのが頭の良い選択。でも…やるしかない。ポン酢のご飯は食いたくなかった。
 「じゃあ買ってくるわ。」僕はしずかに言った。電話口の向こうで少しすすり泣くのがやんだ。
 「ほんまに…?」
 「ほんまや」
 「どこで?」
 「コンビニかどっかで」
 「ほんまにええんか?」
 「ええよ」
 「だってマサカーまで後もう少しやねんやろ。そんなんしたら…」
 「こうてくるから、家で待っとき。ほな」そう言うて僕は電話を切った。我ながら間違いに満ちた選択だと思った。でもどうしても彼女がないてんのが耐えられず僕はそう言う決断をした。
 後々、やってもうた!と思うことになると思うがどうしてもそうしないといけないと思ったのだ。
 よかち。行ける。行けないと思わずに行けると思っていた方が何倍も心身的に楽だ。後40分。予定通りなら今は具材を探しているところだろう。しかし、今僕はコンビニ、それかとにかく具材の買える店を探している。けらけらけらと皮肉的に笑う。
 僕はこの辺に、コンビニがなかったかどうかを思い出そうとする。どう考えてもこの辺には無く駅前にあるとしか考えられない。ちょうどこのスーパーは駅前から15分ほど歩いたところにあって、僕の家からはスーパーの方が近いのでこっちを利用しているのだ。ああもっと駅前に家を構えるべきだった!やってしまったとまたけらけらと笑う。あぁなんて立地条件が悪いんだ。
 そうだ駅前に行こう。15分かかるけど、選ぶのもめちゃダッシュで選んで走れば何とかなる!なんとかなるってまじで。 
 とりあえず駅前までを思いっきり走った。たったらったら。久しぶりに全速力で走った。たったらとっとれ。体が燃えているのがわかる。だどゅだどゅ。足に乳酸が溜まるのもわかる。たったらたったら。その苦痛が逆に楽しくて、僕は笑いながら走った。けらけらけらけら。
 マサカーの日まで後もう少しと迫った街には人が少ししかいなくて、ゴーストタウンのようだった。まだ太陽が昇っているけど、気分は真夜中のようだった。
 駅前に着く頃には大汗を掻いていた。びっしょりになっていてやっぱり走るんは失敗やったなと思った。いつもはにぎわっている駅前も今日はいつもより静かだった。うぅー怖い怖い。早く買って帰ろう。えーと、コンビニはコンビニとー、おっローソンだローソン。まだ開いている!僕はこの時、嬉しくて失神しそうになった。
自動ドアが開く。ローソンはいつもと同じはずなのにどこか暗い雰囲気だった。なんやこわいなあ。早いこと豆腐でも買うて帰ろう。えーっと豆腐は豆腐。おっあったあった。こっちの豆腐は安いなあ。こっち買おか。それにしても店員がおらんなあ。しゃあないなあ。お金だけでも置いていくか。これで彼女もおこらんやろう。帰って彼女と鍋を食べて、それからだらだらとしよう。こんな血なまぐさい日はだらだらしてるんが一番や。いやあ思ったより間に合うもんやなあ。人間、自分をなめたらあかんなあ。よし帰ろか。
僕はくるりと回り出口へ向かおうとすると遠くから車のエンジン音が聞こえてきた。それは大型車の音だった。そして、そいつは近づいているようだった。
 突然バキンと何かが折れる大きな音がした。そのおとは段々近くなっている。ドアの向こうを見た。トラックが猛スピードでこのコンビニに向かっていた。距離にして70メートル。いや50メートル。この細い駅前の道を大きなトラックが進んでいる。放置自転車をなぎ倒し、看板にぶつかりながら。僕は動けなくなっていた。そのトラックにはまるで止まろうとする意思がないようにグングンスピードを上げていく。「嘘やろ!」僕はとにかくドアから離れて壁側にすべりながら行ったその次の瞬間、鼓膜が破れそうな程の衝突音とそれによる振動。目と鼻の先でトラックがコンビニに衝突した。棚をなぎ倒し、天井も突き破って。埃が舞って、視界が遮られている、息をするのも苦しい。破片がこちらに飛んできて頭に一つ当たった。血が少し出始めた。僕はまだパニクっていて何が何だかわからなかった。僕はとりあえず、そのローソンの入り口は完全に破壊されていてどこまでが扉でとこまでが壁か全くわからなくなっていた。
 天井からは切れたケーブルから火花が飛び散っている。それにきいつけながらトラックの方へ近づく。トラックはコンビニに正面から突っこんだ形になっていた。トラックのおしりの部分だけが道路に出ていて後は中に入ったままだ。何があったんだ?僕はそう呟いた。
 その時だった。
 まああああああああああああああああああああああああさああああああああああああああああああああああああかあああああああああああああああああああああああああああああああ!!
 とこの街の至る所に設置されているスピーカーから大絶叫が流れてきたのは。
 マサカーの日が始まったのだ。
 ぶううううんんんんんとチェーンソーのエンジン音が聞こえてくる。近い。どこだ。速く逃げないと。あっ豆腐!豆腐持って行かなきゃ。僕は今とてもパニクっている。
 バンと!扉の開く音がしてその音のしたところに顔を向けた。
 トラックの運転席の扉が開きそこから体は二つに割れている死体がぼとりと落ちてきて、たらららと血が流れてきた。運転席からチェーンソーの音がする。
 

2006/12/30(Sat)17:05:46 公開 / トロサーモン
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■作者からのメッセージ
久々です。一年振りではないでしょうか。へんちくりんですが楽しめて頂けたら幸いです。もし楽しくなければ何かここに感想を書いて頂ければこれまた幸いでございます。

12月30日個人的に納得いかなかったところを100%変える。展開が大幅に変わって自分でもどこへこの話しがいくかわからなくなった
 

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