『The impossible world』 ... ジャンル:異世界 ファンタジー
作者:邪神
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
―――西暦30XX年―――
程遠く、未知の未来。
人は生を求め、時には死を求めた。
そして人は、「生」を産み出し、死をも産み出した……
これは、そんな世界に住む、何十万人の「ハンター」と呼ばれる者達の、
世界の命をかけた物語……
「ハンター」とは、この世に、冥界から降り立った、
帝王「バザード・インポッシブル」の世界征服の野望を阻止するために、
作られた、特別な「能力」を持つものだけの集まりである。
「ハンター」達は、世界から任務や依頼をいただき、その任務などを
こなした場合、報酬として、何かがもらえる。
「何か」なので不明な物が多い。
たいがいは、「金」とかだ。
しかし、その中にもランク分けがされており、
E C CC CCC D DD DDD B BB BBB A AA AAA S SS SSS
という分け方だ。
Eが最低でSSSが最高だ。
ランクが低ければ低いほど、実力者はいないわけで、任務などの依頼は少ない。
逆にラングが高ければ高いほど、実力者がいるというわけだ。
そしてこれは、AAランクの5人を中心に進めていく、物語……
ここは、世界の中心となる街、「ブルーエヴェル」
「おい、ザーイン!」
薄っすら聞こえる、脳裏をかすめる言葉…
「おい!ザーイン!起きろ!」
と、俺の横腹に蹴りを入れられた。
痛くはないが、それで起きた。
俺は、ザーイン・フライ・キルーズ
仲間にはザーインと呼ばれている。
「ああ、フラック。 すまん」
俺を蹴り起こしたのは、フラック・ビーズ・マーター。
こいつは、口調が悪い。
「お前だけ寝てるんじゃねーよ!せっかく本部から依頼もらったのによ!」
俺はその言葉を無視して、
「で、他の3人は?」
フラックは、舌打ちをした。
「お前が目覚め次第、本部からの依頼の、「幻影の城」と呼ばれる
城がある、森の前で集合だとさ」
俺は服を着替えながら、
「そうか」
と言った。
流石にフラックも切れたらしい。切れるのが早い。
「てめぇ、さっきから聞いてりゃよーー!!」
いきなり叫びだしたので、驚いた。
「俺がおかしいこと言ったか?」
質問で返してみる。
「てめぇの態度が気に入らねぇーんだよー!!!」
うるさいな。まったく。
外まで聞こえるじゃないか。
「分かったから、リンゴむいといてくれ。 リンゴが食いたい」
そう言うと、フラックにリンゴを投げ渡した。
「そこの、台所の下の棚に、包丁がある。切っといて」
そう言うと、俺はトイレに入った。
「あのヤロウ…」
言いながらも、しぶるフラックはリンゴの皮をむいた。
トイレから出てきた、俺も見て、フラックは舌打ちをした。
リンゴの皮をむいてる、フラックをみて、
「お、フラック。口のわりにいいやつじゃん」
と、言った。
フラックは包丁をおとして、
「そんな事ねぇよ!お前が遅いから、やってやってるんだろうが!」
俺は思わず、鼻で「フッ」と笑ってしまった。
さて、リンゴを食って、目が覚めた。
フラックと、その「幻影の城」とやらがある森まで向かう。
徒歩10分でついてしまった。
「意外と近いな……」
うん、近い。
「そうだろ、なんでこんなとこにこなきゃいけないのかが不思議だ」
フラックは普通の口調になってる。
どうやら怒ると、数分、口調が変わるらしい。
「それと、この中では、いつ死んでもおかしくはない。
そうじゃないと、こんなところにくる必要ないからな。
お前は、能力者として、このグループの中では下っ端だから、
命令はちゃんと聞け」
おお、意外と賢いじゃん。下っ端ってのは気に入らないけど。
「分かった」
こういうと、フラックはニヤニヤしながら
「それでよし!」
と言った。
気持ち悪いやつめ。
森の入り口には、3人の人たちがまっていた。
俺達のグループのやつらだ。
「遅いぞ!フラック!」
一人が大きな声を出した。
名前は確か……
「すまん、グリード。ザーインが起きないから」
そうだ、グリードだ。
しかし、こいつには、腰が低いんだな。
「言い訳にならねーぜぇ、フラック〜」
もう一人もフラックを責める。
こいつは確か、シルビアン・ザルフ。
そうすると、フラックは怒ったような態度で、
「黙れ!お前は俺より下っ端だろうが!」
なんで、こいつは下っ端とかにこだわるんだろう。
「うるさいですね。フラック。少しは黙りなさい」
さらに一撃。
こいつだけは覚えてる。
バルビオネ・ソルト・レルージュだ。
「ああ…すいません」
黙り込んだ、すげぇ。
「まぁ、全員そろったし、中にはいるぞ」
フリードがそういうと、全員森へはいっていった。
俺もおくれて、森に入った。
中は奇妙に、静まり返っていた。
森の中を歩きながら、
「なぁーんか、奇妙ですよね」
フラックはそういう。
するとグリードが、
「当たり前だ、ここで何人もの人が消えたと思っている?」
フラックは立ち止まって。
「すいません」
とあやまった。
こいつ、バカなのか?
その後、ずっと無言だった。
すると、3つの分かれ道をみつけた。
一つは奇妙な城へ向かう道、
二つは、普通の道。
もう一つあると言えば、俺たちが来た道だ。
「あの城は?」
シルビアンが言った。
「どうやら違うな。本部の捜査では、「幻影の城」と書いた看板があるらしい。
それらしい物も見当たらない。違うだろう」
グリードはそういって、また、まっすぐ歩き出した。
そうすると、また三つの分かれ道があった。
「また、城がある!?」
フラックは驚いたような声で言った。
「んっ……」
俺も少しは驚いた。
「おい、よく見ろ、看板があるぞ!」
シルビアンが叫んだ。
さっきはなかった看板だ。
「どれどれ……」
バルビオネが呼んで見せた。
「「この城こそ、幻影の城なり。ハンター達よ、用があるなら、入れ。」
と書いてますね」
グリードは、
「どうやら、敵は俺たちのことを感知してるらしい。どうせ
まっすぐ進んでも、またここに戻ってくるだけだろう。
いくしかないな」
そういうと、真っ先にシルビアンが城に向かった。
走りながら、
「調子にのりやがって、俺たちを何様だと思ってやがる!」
と言った。
フラックも
「ぶち殺してやる!」
といって、城へ向かった。
グリードも、
「まったく、世話がやける……」
といって、城へ向かう。
俺とバルビオネだけが残った。
「貴方は行かないのですか?」
と疑問そうに言う。
俺はすぐさま、答えた。
「ん…あぁ。行く」
そういうと、俺とバルビオネは城に向かった。
城門の前まできた。
俺たちを歓迎しているかのように、巨大な城門はあいている。
「迎合されてるな」
俺は言った。
「うむ…」
グリードはうなずく。
そうすると、俺達は大きな城門を潜り抜けた。
くぐっていくと、すぐそこに俺たちの10倍以上の身長がある、
巨人がいた。
やっぱりこんなやつ、いてもおかしくないか。
巨人は胡座をかいて、座っている。
大きな剣に手を置きながら。
その巨人はいきなり、
「むぅ…久方ぶりの客か…」
と、言った。
それにフラックは答えた。
「なぁにが、「久方ぶり」だ!調子乗りやがって!!」
フラックは攻撃しようと、身構えるが、
グリードはそれを止めた。
「な…グリードさん…」
その言葉を無視し、
「ここの門番か?」
と言った。
「そうには見えないか?」
と巨人も質問で返してきた。
グリードは眉間にしわをよせて、
「こっちが質問している。質問の答えになっていないぞ」
と言った。
巨人はうれしそうな顔で、笑った。
「生意気なガキよ!いいだろう、相手をしてやる」
俺は何でそうなるんだと思った。
ゆっくり立ち上がる巨人。
名前ぐらい名乗れ。
立ち上がると、すぐにグリードが戦闘態勢にはいった。
しかし、それをフラックが止めた。
「グリードさん、ここは俺がやります」
と言うと、一人で巨人に向かって歩いていった。
「かかってこい。俺だけで充分だ」
と挑発する。
「はは! 意気のいい奴よ! 一人でいいのか? 後悔するぞ!」
と挑発で返された。
この言葉を聞いた、フラックは本気の顔になった。
「お前も一人でいいのか?お前が後悔することになるぜ」
また挑発か。早くすませろ。
その言葉に、巨人はちょっと怒った。
「いいだろう!一分でかたをつけよう!」
そういうと、10Mはある剣を振り回した。
その剣は、正確にフラックのところに向かってとんでいく。
「どうやら能力はないらしいな……」
そう言って、片手でその剣をうけとめる。
「何!?」
そりゃ巨人はビックリするさ。うん。
「案外、弱いな。お前。外見だけだな」
そういうと、腕を思いっきり振り、あっさり剣を弾き返した。
グリードは俺たちに教えるようにつぶやいた。
「あれがフラックの第一の能力。体を硬化したり軟化する能力!」
そりゃいいけど、あれは硬化ってもんじゃないだろ。
あんだけ大きい剣を受け止めるなんて。
しかもはじき返したぞ。
「へ、たいしたことないぜ!」
と、シルビアンは言う。
こいつらの能力が俺は気になった。
剣をはじき返された、巨人は唖然としている。
驚いているようだ。
「す、少しはやるようだな!」
と、わざとらしく驚いてないように大声で言った。
するとフラックは、
「まだやるか? やめといたほうがいいぜ。
実力の差が、お前と俺じゃありすぎるからな」
流石に巨人も怒った。
妙な声をだしながら、本気で剣をふりおろしてきた。
「だから、無駄だぜ」
フラックは容易によけてみせる。
「力があるのはみとめるが、動きが遅いんだよ!」
そう言って、剣をつたって、巨人の顔まで登って行った。
「く…くそぉ!」
振り払おうと顔を振るが、落ちない。
「なぜだ!?」
驚いたような声をあげた。
フラックは笑いながら、
「いいだろう。教えてやるよ。
俺は硬化と軟化しかできないわけじゃない。
固体、気体、液体化もできる。これが俺の第二の能力だ。
そして、お前の毛穴の中に液体化した足を流し込んで、
その中で硬化させた。何をしようと、俺はおちねーよ」
と、長々しく説明した。
「さて、選ばせてやる。俺が液体化して、お前の耳から体の中に入り、
お前の眼ん玉をぶち抜いてやるか、それともここを通すか」
グリードはニヤリと笑った。
そして、
「勝負あったな」
と口にした。
巨人は勿論、死にたくない。
「通します!」
と、何故か敬語で答えた。
ばかな奴…
俺達は、難なく城に侵入できた。
外見の黒いイメージとは裏腹に、
白と青で構成された、色の城だ。
中に入っても、部屋は、5つしかない。
そこで立ち止まった。
「ちょうど俺達は五人いる。分かれて、この部屋を進むぞ。
合流場所はここだ」
とグリードが命令した。
「まぁ、それがいいかもしれませんね」
とバルビオネは同意している。
他の奴らも「分かりました」と言った。
俺も一応「分かった」と言っておいた。
そういえば、聞くことがあった。
「グリードさん」
と言う。
勿論返事は返ってくる。
「ん?」
と。
「少し質問があるんですが、いいですか?」
と、言った。
「ああ、いいぞ」
やっぱり、フラックに聞くよりこの人のほうが正確かもしれない。
「この中の人たちは全員、能力者ですよね?
それにさっきの戦闘の時、「第一」と「第二」の能力と聞きましたが、
そんなに能力を習得できるんですか?」
と、聞いた。
俺も、あることがきっかけに能力が発現したが、
まだ一個しかもっていない。
すると、グリードはアゴに手をあてて、少し考えた。
「まぁ、そうだな。全員能力者だ。
それに、能力をもつ人間は3つまで能力をえることができる。
しかし、習得条件は不明だ。
これで用はすんだか?」
と聞き返された。
「はい、ありがとうございます」
と俺は頭を下げた。
「さて、任務の再確認だ!まずこの城の奥まで進む。
そして誰か一人が、今から渡す爆弾をセットしてくる。
30分後に爆破するから、セットしたら、この無線通話機で
俺たちに報告しろ!わかったな!」
と言うグリードに対して、みんなは「ハイ!」と息を合わせて答えた。
「それと、この中には多分、何人か敵がいる。
戦力を分担させようって罠だろう。普通は5人で一つの部屋に入るが、
こいつらをここでしとめておかないと、どこで何をするかわからないからな。
誰がいようと、必ず倒して来い!」
と、真剣な顔で言った。
そして俺達は一人一人、各部屋に入っていった。
――――――――――――――――
一番目の部屋……
何故か一番の部屋にシルビアンが入っていった。
まず入って、驚いたのは、中が、花畑になっている。
木も何本かある。軽く1万平方メートルはあるだろうか。
シルビアンが出た場所は、大きな木の下だった。
綺麗に咲いている花がたくさんある。
しかし、いくつもの花が、宙を舞っている。
その舞っている花は、シルビアンの手足を優しく触りながら舞っている。
「なんだぁ?これは?やっぱり俺って花が似合うのか?」
と自分を褒める。
そういうといきなり、
「君は馬鹿か?自分に花が似合うと思っているのか?」
と言う声が。
即座に反応する。
「誰だ!」
と驚いたように叫ぶ。
そりゃ驚くさ。
「私は、この部屋に配置された、能力者、クルセイド」
そう、名乗った。
どこから喋っているのだろう。
辺りを見回すが誰もいない。
声の出る場所から、相手の位置を特定するため、喋りかけてみた。
「下の名は?」
と子供を騙すような感じで言ってみる。
すると返事が返ってきた。
「知る必要はない。どうせここで死ぬのだから」
と、言うと、シルビアンの小指が少し切れて血がでてきた。
これには驚き、傷口を見つめ、
「何っ!?」
と、思わず声をあげてしまった。
相手の場所も姿も分からない。
それで、攻撃されているのだから。
「てめぇ、卑怯だぞ!」
怒ったように叫ぶ。
すると、少ししてから、クルセイドは
「こういう能力なんだから、仕方ないじゃないか」
やわらかくこう言った。
こう言われれば、言い返すことも無い。
シルビアンは舌打ちして、後ろに下がった。
「とにかくやつの場所さえ分かれば、拳を叩き込める……だが
どこに…やつ能力もわかんねぇ。いったいどうすれば…」
もう一回、見回すが、見渡す限り花。
何本か木があるだけ。
「どうした?まさか俺の姿を見ぬまま、終わるんじゃないだろうな?」
というと、右足のところどころの皮膚が切れた。
それにまたもや、驚いた。
「いてっ!またか!!」
吹き出た血は、宙を舞う花びらを真っ赤に染めた。
シルビアンは怒り気味。
しかし、ここ一番の判断力を持っているのだ。
「(クソッ…どこだ…大体、何故戦場が花畑なんだ…
花畑…花…花びら…? まさか、花びらや花を使った攻撃では…?)」
と考えた。
試しに、宙に舞う花びらに触れてみる。
すると、触れた左手の一指し指がきれた。
すると、さっきの怯えたような表情は消え去り、明るい表情で、
「なぁーるほどなぁ」
そう言いながら、指から流れる血をなめた。
やつはそれ以来、話しかけて来ない。
「どうやらやつの能力は、「花を刀の様に鋭くする能力」みたいなものだろう。
しかしそうなれば、後一つ…いや、もしかしたら、二つか。
その能力が気になる…」
そういいながらも、花びらをよける。
能力次第で、勝ち負けは簡単に決まる。
このままだと、切り刻まれて死ぬだけだ。
シルビアンは、相手の位置を特定する。
「とにかくやつの居場所を探さなければ」
と言って、目をとじて、
「俺の第一能力は、「透視」する能力!!」
と言い放った。
そして、目を開き、周りを見渡した。
すぐ見つけた。
立っていた、木の根元にある、花だ。
「そこか、うおりゃ!」
と言って、木の根元にある、花を勢いよく殴った。
花びらは散った。
そうすると、その花は、
「グハッ!」
と言って、赤くなった。
血でそまったんだろう。
すると、花の中から、クルセイドが出てきた。
「なぁ…お前…何故分かった…」
と腹を押さえながら、質問した。
すると、シルビアンは得意げに、
「さっき聞いてなかったか?俺の第一能力は「透視」
いろんなものを見えるがあんまり役にたったことはない。
しかし、こんなところで役にたつとはな!」
と笑った。
クルセイドは、地面を拳で叩いて、
「くそ、予想外だ」
と言い、花の中に身を隠した。
そして、シルビアンはその花を睨みながら、
「お前の第二能力は「花に身を隠す」か」」
と言った。
返事は無い。
すぐさま、シルビアンは身を隠した花を殴った。
するとどうだろうか。まるで手ごたえがない。
「!? どこいきやがった!?」
と辺りを見渡す。
そうすると、いきなり
「私が、花から花に移動できないとでも?」
と言う声が聞こえた。
もうすでに、シルビアンとは20Mは離れていた。
「く、こいつ速いぜ!」
と、言ってしまった。
シルビアンとの距離をとった、クルセイドはこう言った。
「もう面倒だ、私の位置を見破って、一撃喰らわされたのは、
正直驚いた。しかし、もう終わりだ」
そう言うと、花からでてきて、顔を伏せ、地面に手をつけた。
「何をする気だ?」
と、疑問そうにクルセイドをみた。
ニヤリと笑うクルセイド。
するとクルセイドは、
「私の第三の能力でケリつける!
私の第三能力は「植物を操る」能力!」
自ら自分の能力を言った。
そして、顔をあげて、
「ちなみに君は、「花を刀の様に鋭くする能力」と「花に身を隠す能力」と
いったね」
と言う。
すると、シルビアンはクルセイドをにらみながら、
「ああ、そうだ!それがどうしたんだよ!!」
と、叫んだ。
すると、クルセイドは「フッ」と鼻で笑った。
「少しはずれだ。私は「植物を鋭くする」と「植物に身を隠す」能力だ」
と言って、また「フフッ」と笑った。
「ふーん。で、それで? 俺が勝つことには変わりない」
後ろに下がりながらも挑発する。
「それはそれは…私が勝つこと。ではないのかな?」
と言って、第三の能力でタンポポの種をシルビアンに向け、
一斉に発射した。
「何!?」
と驚いた。
だってタンポポ飛ばしてくるんだもんな。
そうすると笑いながらクルセイドが、
「私の能力をもう忘れたか? 君が自分でいったじゃないか」
と言った。
「まさか!?」
と、タンポポの種をジロリと見つめた。
「そうだ。その種を、「鋭く」した!」
そう言うと、シルビアンは危険を感じたのか、
すぐ、
「くそっ!!」
と、片足で地面を蹴って、横に反れる。
しかし、遅かったのか、左足と左腕に何十本も刺さった。
「く…」
と、初めて怯えた様な顔をした。
「シンプルだが、いい攻撃だろう?」
そういうと、余裕そうな顔を見せて、すぐさま足元の花の中に身を隠した。
右腕で左腕を押さえながら、
「クソ……この俺が…あんなやつに…」
悔しそうに言った。
するといきなり、両手を握り、両腕を広げて、
「いいだろう! 俺の第二の能力みせてやるよ!」
と叫んだ。
当然、相手はその能力をちゃんと、確認しに、
花から出てきた。
「期待してないから、早く見せてくれよ」
と挑発するクルセイド。
それに答えるように、
「俺もお前の能力には期待してなかった。
まぁいいか、見せてやるよ」
と言って、両手を広げた。
「これが俺の第二能力!!」
と、言った寸前、シルビアンの姿が消えた。
クルセイドは、驚いた。
「ん!?」
と言い放ち、辺りを見回す。
初めのシルビアンと、まさしく同じ状態であった。
と、そのとき、クルセイドの腹が抉れるようにへこんだ。
痛みもある。殴られているような痛み。
「がはっ!!」
と血を吐いた。
間髪いれずさらに一撃。
今度は顔をなぎ払うように殴った。
「ぐぶ!!」
歯が3本ほど抜け落ちて、横に吹っ飛んで、クルセイドは倒れた。
口をかばう様に押さえながら、眼をガンガンに開いて、驚いている
様な表情を見せる。
さっきの余裕な顔とは違う、何かに恐怖してるような顔。
「まさか、やつは遠隔攻撃の能力? いや違う。
直に殴られたような感触、これは…」
と言った時、もう一発、頭を蹴られたような感触が襲った。
「あば!!」
また、吹っ飛ぶ。
体の半分を地面にこすりつけながら。
すると、いきなり
「ふふ、いい気分だぜ」
と言う声が。
シルビアンだ。
すると、すぐクルセイドは起き上がり、
「どこだ!どこにいる!!」
と叫んだ。
すると、シルビアンは「プッ!」とわざとらしく言って、
「さっきから、ずっと近くにいるじゃねーかよ」
と笑いながら言った。
その言葉を聞き、クルセイドは辺りを見渡す。
だが、誰もいない。
「まさか…」
と、後退しながら言った。
「そう、そのまさかだ!」
と言って、シルビアンはクルセイドの鼻をへし折るように顔を殴った。
「アベッ!!」
と情けない声を出して飛んでいく。
「まさか、姿を消す能力…しかも、種が刺さった足で、俺のところまで、
走ってきたのか…」」
まだ生きているらしい。
鼻をかきながら、
「本当に、気分いいぜ」
と、シルビアンはうれしそうに言った。
姿を消したとしても、花が動く様子で、感知できるはず。
そう考えた。
相手がゆっくり歩こうが、動きはする。
「くそ…このガキめ…」
口調が悪くなってきた。
どこからか、シルビアンが
「本性あらわしたなぁ?」
と、茶化すように言う。
すると、クルセイドは、
「調子乗りやがって…殺してやるぅぅぅぅぅ!!」
と、上を向きながら、言った。
とうとう、完全に怒った。
そして、周りを見渡す。
シルビアンはやばいと思った。
「(切れた敵は強いんだよな…闇雲になる分、楽だけど…)」
これは、シルビアンの今まで、「ハンター」での経験上の話だ。
「とにかくやるしかねぇ…おい!」
と呼びかける。
声の出た場所に、クルセイドは振り向く。
「なんだ!」
どうやら、怒り狂ってる。
そんな顔をして、そう言った。
様子で分かる。
「お前、「姿を消す能力」って言ったよな?」
と質問する。
すると、
「それがどうした! 殺すぞ!」
と、もっと怒ったような声で。
これはやばいと思った。
「(早めにケリをつけるか…)
残念だが、「姿を消す」ではない!!」
と言って、クルセイドに向かって走り出す。
左足は、地面に引きずりながら。
「馬鹿めが!姿が見えずとも、
花の動きや音でわかる!」
と、自身有り気に、言った。
しかし、シルビアンは足をとめない。
「お前が音だけで、俺の居場所を当てれるか?」
と言うと、周りの木や花は全て姿を消した。
「何っ!!??」
とクルセイドは驚いた。
驚きはしたが、シルビアンの走る音、ザッザッと言う音で、
相手の位置を見極めようとした。
しかしこれは、無理。
そう言う能力者ではないと、不可能だった。
力の入れ具合で、音なんてコントロールできる。
シルビアンは、どんどん近づくにつれ、力を足に加えていき、
あたかも、動いてない、ただステップを踏んでるかのように思わせる。
戦いなれている、シルビアンになら、できる事だ。
シルビアンは音をコントロールし、徐々に、
クルセイドの近づく。
クルセイドの死角まできたシルビアンは、その場で止まった。
そして、首をふる、クルセイドに対してこう言い放った。
「お前、なさけねぇな」
そしたら、
「ックッ!」
と言って、振り向いた。
そして、シルビアンは振り向いたクルセイドに対して、
顔面に構えた拳を発射する。
見事命中。
「アガ…」
嫌な音を立てて、クルセイドは倒れる。
しかし、すぐに
「くそが…」
と言い、腕をピクピクさせながら、起き上がる。
両腕をブランとさせて、下を向いている。
今度は何をする気だ。
危険を察知した、シルビアンは、少し間合いをとった。
そして、身構える。
すると、もう一声。
「くそが…」
とクルセイドは言った。
シルビアンはその様子を、遠くから眺めている。
どうにも、奇妙だった。
さっきまであんなに怒り狂っていたのに、
今度は、静かに「くそが」しか言わない。
何かあるんだ。
そう考えた。
すると、いきなり、
「クソがクソがクソがクソがクソがぁぁ!!
と言い出した。
赤ん坊が泣き叫ぶような声で言った。
今は、クルセイドまでの間合いが5M前後、
後ろに立っている木までは10Mってとこだ。
流石に5Mも離れていたら、タンポポの種を飛ばそうと、
よけれるはずだ。
しかし、クルセイドは、まったく違う。考えもしなかった事をした。
「殺してやるぅぅぅぅぅぅ!!」
と叫んだ後に、
その花畑の花びらや、木の葉を全て操り、遮二無二に発射する。
「何をする気だ!!」
と、シルビアンは周りを見渡し、あせる様に言う。
そうすると、花びらや木の葉はいきなり鋭い、刀のようになり、
さっきよりも早いスピードで、襲ってきた。
「(しまった…まさか同じ手に引っかかるなんて…)」
と思いながらも、体を木に向かって、走らせる。
迷いは無かった。
足元の花びらも発射されてるわけだから、足には
数十本、いや、数百本の花びらが刺さっている。
シルビアンは片目をとじ、「ック…」と言いながら木に向かって走る。
木の下だけが、あまり、花びらなどが飛んでいない。
現に、木の葉をとばせる場所は、高さなどもあり、
約45度。
木の下は間違いなく死角だ。
多少の花びらなどでのダメージはうけるが、
全身に刺されるよりはましだ。
「うぉぉ!」
と、体中に何枚もの花びらが刺さっているのに関わらず、
木の下に飛び込む。
木の葉が45度下に降り注ぐ。
下に入るとき、ここを通らなければいけない。
間違いなく、頭から爪先にかけて、木の葉が刺さるだろう。
それでも木の下に飛び込んだ。
頭を、手で押さえながらなので、幸い、頭には一本も刺さらなかった。
助かった。
そして、全て飛ばしきったせいか、花びらが飛んでこなくなった。
「くそ…やばい…」
足は重傷、腕も重傷。
負けると思った。
そのとき、後ろから、
ドサッ!
と言う音が聞こえた。
何かと思って、ゆっくり振り向く。
いや、そんなに早く、頭を回転させれなかった。と、
言ったほうが正しい。
すると、そこには、全身に花びらや木の葉がささり、倒れている、
クルセイドがいた。
数秒しても、一つも動かない。
呼吸すら、聞こえない。
「こいつ…死んでる…」
そう、静かに言って、シルビアンも倒れた。
まだシルビアンは生きてはいる。
シルビアンの勝利だ。
2006/12/06(Wed)18:35:53 公開 /
邪神
■この作品の著作権は
邪神さん
にあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
これからバンバン書きます。
小学生並みの表現力しかもってませんが、よろしくお願いします。
できれば、感想等をいただければ励みになります。
作品の感想については、
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