『存在コラージュ』 ... ジャンル:ショート*2 未分類
作者:少年ラヂオ。
あらすじ・作品紹介
赤い肉片の彼と救われないおんなのこのお話。
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彼の目は混沌と濁っていた。まるでそれが現在あたし達が存在しているこの世界の様に、救い様のないような。
彼の頸から下はなく赤い肉片が飛び散っているだけだった。けれどもあたしは彼の頸から下を知っている。何故ならば今あたしの手の中に彼のそれがあるからだ。あたしは彼をこんな姿にした張本人だ。
どうして彼をこんな姿に変えたのか、あたしには解らない。あたしが張本人だというのに。けれども簡潔に述べるとするならば「生き絶える過程を観たかった」からなのだろう。
残忍だ、血も涙もない。 そうあたしの中であたしは言うけれどきっとあの時のあたしには届かなかったのかもしれない。
あたしは快楽を手に入れた。人が死に逝く様を、生き絶える過程そのものがあたしに生きる意味を与えてくれる。あたしを骨の髄から癒してくれる。
規制なんていうものは形だけだった。
下半分の月があたしを溶かしてゆく。酸性雨があたしの脳を蝕んでゆく。静かな風の音があたしの視力を奪ってゆく。
あたしには何も残らない。あたしには花も向けられない。
彼から白濁の煙があがっていった。それは途切れる事無く霄へと融けてゆく。彼はまもなく眼を閉じて何も聞こえなくなった。頸から下の赤の増殖も止まった。
おやすみなさい。
ゆっくりと慈しむようにあたしは彼へ吐いた。その詞も煙と共に霄へ融けた。
彼の眼が開けられることもあたしの心が満たされることも、鳥と虫が愛し合うことが赦されない様にそれはありえる筈がないことだった。
彼の中の魂が枯れた様にあたしの中の水が涸れる日が来る。魂と意識を持たないあたしにとってはそれは死を意味する。けれどもあたしは今生きている、まだあたしはそれだけで十分すぎる事実だわ。
2005/12/29(Thu)20:57:00 公開 /
少年ラヂオ。
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■作者からのメッセージ
シリーズ物ですが、きっと公開するのはこの話だけかと思います。
生きる意味が解らなければ、生きている感じがしないと。私はそう思います。
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