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『The Story of Fantasy』 ... ジャンル：未分類未分類 作者：令: あらすじ・作品紹介
突如平和な村を襲う魔物。そして黒き指導者。村に、ただ一人生き残ったラディスは黒き指導者を討つために旅立つことになる。旅をする術を知らぬラディスはどうなるのか？; １２３４５６７８９101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
１【平和、そして崩壊】

レブナ大陸北部に位置する山奥の村。
人は釣り、もしくは自給自足で生計を立てていた。
人民の数もおよそ１００いくかいかないか。穏やかで、静かな、ひっそりとした村だった。
そんな中に住む一人の少年、ラディスは今日も一人、剣術の稽古へといそしんでいた。

「ヤァッ！！タァッ…」

村の奥地にある森の中。
稽古の相手は、師匠であり父でもある、クレヴァーだった。クレヴァーの顔は、きちんと髭も整えられ、キリとした眉毛が光るいかにもごく普通の中年の顔だった。

「…また。いつも言っておるだろう？そこはひじが上がりすぎている。そんなことでは、魔物にすぐに隙をついてくださいと言っているようなものだぞ。」

そう、魔物。
人肉を喰らい、血を啜るという化け物だ。
実際、この目で見たことはないが、一歩でも村から出れば襲ってくるという。

「親父、いつになったら俺は村の外へ出れるんだ？俺だってもう１８だ。いい大人だろう？こんな歳でまだ一度たりとも外へ出たことがないなんて聞いたら笑われるぜ。」

ラディスは、一度もこの村を出たことがない。いや、自分では出ようと思い何度か試みたのだが、それをいつもクレヴァーに見つかってしまい押し戻されてしまうのだ。
どんなに酒に酔っていても、逃げ出そうとしたラディスを捕まえたときのクレヴァーの台詞は決まってこうだった。

「お前は、出てはいけない。お前を一人前に育て上げるのが、俺の役目だからだ。」

目をギラリと光らせ、真剣に言う父の顔を見ると、ラディスは何も言い返せなかった。

そして、今に至る。

「お前が村から出てはいけないのはな…。お前がまだ半人前だからだ。お前が心配なんだ。だから…」

「なんなんだよ！いつもいつも、半人前半人前って。俺のどこが半人前なんだよ？親父も俺くらいの歳のころにはもう旅をしてたって言ってたじゃねぇか！」

「うるさい!!!」

一喝。

逃げ出そうとしたラディスを捕まえたときの表情よりも厳しく。

「なっ何だよ。それくらいで俺がビビるとでも思っ…」

「黙れ。お前にとやかくいう権利はない。今は、俺に従って、ただ剣術の稽古に励んでいればいい、それだけしていればいいんだ。」

「……ちぇっ、分かったよ……。あーあ、もうやってらんねーよ。俺先に帰るからな。」

「そうすればいい。頭に血が昇っているときに稽古などしてもマイナスになるだけだからな。」

帰り道。
森の中は穏やかだ。俺の心は熱く滾っている。周りと内とが反発しあい、体がぐらりと揺れる。
それはやがて静まり、俺の心の中も夜空に滴る水面のように穏やかに落ち着いてくる。

そのときだった。

「ズズズン…ズズズン…」

まるで地響きのような音が遠く後方で聞こえる。それは着実に大きくなっていき、すぐ傍まできていた。

「何だっ…！？」

は、と思い出す。あの辺りには親父がまだ残っているはずだ。親父が危ない！

来た道を走って戻る。心の中はまた熱く滾り始めた。こんな気持ちになったのは生まれて初めてではないだろうか…、そう思っているところへ視界に飛び込んでくる。
背中を血まみれにしてうつ伏せに倒れている、親父の姿が。

「親父ッ…！！」

駆け寄って抱き起こすと、口元も血を吐いたらしい、真っ赤に染めている親父の姿があった。

「ゴホッ…ラディス、か…。逃げろ、できれば…、村の皆にもそれを伝えて…」

「親父っ、大丈夫か！！何があったんだ？！」

「魔物…か。黒い馬に乗った指導者らしき男の後ろから無数の魔物が現れて、俺に襲い掛かってきたんだ…。グっ…そして奴は俺を死んだと見ると否や、村の方へ…早く、早くしねぇと村の皆が…。俺はもう助からねぇ、早く、お前たちだけでも…」

「親父っ、もう喋るな。俺が村に連れて行くから、な？」

「馬鹿野郎…そんなことしてたら間に合わねぇよ…。置いていけ、俺はもう駄目だ…」

そのまま、親父は気絶してしまった。
２つの意味で、一刻を争う。俺はすぐに親父を背負うと、全速力で村へと駆けた。

約１０分。

今まで剣術の稽古の一環として行ってきた走り込みが、こんな形で役立とうとは。

だが村に走りついた俺が見た光景は、目を疑うものだった。

「村が…ねぇ。」

俺の目に飛び込んできたその光景は、焼き払われ、もとのかたちを留めることのない廃墟と化した村だった。
あちこちに焼死体が溢れていた。まだ火がついている家屋もあり、うかつに近づけない状況だった。

そのとき、あることに気づく。

「親父…。親父…？親父？親父？！親父ぃぃ？？！！」

俺が背負っていた親父は、既に冷たくなってきていた。
予想以上に背中の傷が深かったらしい。すぐに止血しなかったための失血死であろう。

俺は、燃えている家屋の中へ親父を入れ、埋葬したあと、小さな墓をつくってやった。

そして、死に際に親父が言った言葉を思い出す。

「黒い、指導者らしき男の後ろから現れた魔物に俺は襲われた…」

恐らくは、いや確実に、村を燃やしたのも奴の仕業だろう。

黒き指導者。

俺は誓う。親父に、村の皆に。

必ず、この村を破滅へと追いやった忌まわしい敵を、自分の手で、殺すと。

森で薬草、茸をとって旅支度を整えると、俺はすぐに村を出た。

続く; 2005/12/07(Wed)15:31:58 公開 / 令
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