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『堕落した天使 誕生編T』 ... ジャンル:異世界 ファンタジー
作者:KAZUTAKA
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あらすじ・作品紹介
黒魔術に魅了された、人間達の闇の勢力と神と天使の光の勢力の戦いは熾烈を極めていた。
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無限の荒野のディア=オーラの果て。
そこにそびえ立つ広大な聖堂には、昔から神と天使が住んでいた。
黒魔術に魅了された人間達の闇の勢力と、神と天使達光の勢力の戦争は熾烈を極めた。戦争の魔の手は光の勢力の聖堂にも及ぶ。
聖堂入り口を守る天使。そしてそれを破って聖堂に侵入する、人間達。
降り注ぐ黒魔術の炎の閃光。崩れる壁に石像。
聖堂を支配する四人の炎、雷、氷、風を操る神は怖気づいていた。人間の黒魔術のパワーは天使達が使う光の魔法の力に勝っていた。
四人の神は自分達の魔力を注ぎ込み、対人間用の天使達を創造した。
アデノもその一人だった。
堕落した天使 誕生編T
燃えるような赤毛の天使のアデノは、膨大な書物が収められているアーカイブの中で人間と戦っていた。いや、というよりも隠れていた。
―じめじめした嫌な空気だ。アデノは鼻をひくつかせながら呟いた。
アデノは倒れた棚の中から崩れでた大量の書物の中に埋もれていた。人間達は気づいていない。
そのモグラのような天使は、魔法書の間から“地上”の様子を盗み見た。
石畳の床。高い天井。窓には色々な模様のステンドグラスがハマっている。
そして人間達、将軍、までは行かないが中々豪華な鎧を身につけた、巨大な剣を持つゴリラのような男、恐らくこいつは隊長だ。青白い不気味な顔の弓を持った男。その男は不気味な顔が彫られた盾を持っていた。何から何まで気味の悪い野郎だ。そしてローブの男だ。
闇の勢力である人間は、黒魔術を使ってアデノを探しているようだった。
怪しい紺のローブを身につけた人間が杖を振り回して意味不明の呪文を叫ぶと、杖から小さな羽の生えた緑色のゴブリンのようなものが飛び出て、周りを見回した後、飛び立った。
あいつは………、さっき黒魔術の書で見たな。確か、主人が敵だと認識しているものを探すんだったかな。さすがに呪文までは書かれていなかったが。
となると、ここにいるのはあまり安全ではないようだ。
だが、かといって逃げ出す事も出来ない。今ここから出れば、人間に見つかり十秒後には黒魔術に焼かれて焦げた肉になってしまう。
アデノは隊長の顔を凝視した。目の横に切り傷がある。
その男がなにやら大声で喋りだした。アデノは耳を隙間に近づけた。
「どうした、まだ天使は見つからないのか」
ローブを身に着けた男が、隊長に歩み寄り、かしこまった口調で言った。
「はい、まだ見つかりません。ですがもうそろそろ、あのゴブリン共が………」
言いかけたところで、ローブの男は言うのをやめた。
すると隊長が笑い始めた。そして何かを命じたようだ。不吉な気配がした。
隙間に目を戻すと、アデノのすぐ近くでゴブリンがバタバタと指を指していた。
―しまった!
ゴブリンの向こうではローブの男がゴブリンの指の指している部分、つまりアデノに向けて杖を向けていた。その次の瞬間、杖の先から物凄い速さで炎が発射された。
アデノは本の海から背中の翼を使って飛んだ。一冊の本がゴブリンの頭に当たり、ゴブリンがふらふらと飛び回る。
炎が間抜けなゴブリンに当たる。だが炎はそれを気にせずにアデノへ向かって飛んでいく。アデノは動揺し、翼の動きが一瞬止まった。その隙を炎は見逃さなかった。
隊長がゲラゲラと笑った。
アデノは黒く焦げて煙を発している右足を庇おうとしたが、痛みで体が動かなかった。
青白い不気味な顔の兵士がゆっくりとアデノに近づき、屈んだ。
次の瞬間、兵士はアデノの髪の毛を握り、ばっと立つ。
アデノが呻いた。すると兵士の盾に彫られた顔の形が変わり、笑った顔になった。
兵士が言った。「隊長、こいつをどうします」
隊長は顔を残酷に歪ませて「こっちに連れて来い」と叫んだ。
無表情で兵士はアデノの髪を握ったまま、隊長の方へ歩き出した………。
兵士は隊長の前に来たときに、アデノを地面に叩き付けた。アデノの口から涎がだらんと垂れる。
「さぁ、そいつをケルファに渡せ」隊長はまた残酷に顔を歪ませた。
ケルファと呼ばれたローブの男はアデノを黒魔術で宙に浮かせ、また地面に叩きつけ、さらに宙に浮かせた。
隊長は静かな声で言った………。
「やれ」
するとケルファは杖をアデノに向けたかと思えば、杖を派手に振り回しながら小声で呪文をぶつぶつと言った。
アデノの聞いたことのある呪文だ。長い呪文だった。
これは死の呪文、死の呪文だ。聞いたことがある。ああ、死の呪文だ………。
朦朧とする頭の中でアデノは必死に考えていた。
アデノは気絶寸前だった。―もう限界だ。だが死ぬときに安らかに死ねそうだ。
だが、中々、死の時間は来なかった。何か壁が崩れたような音がしたな。
気絶する直前に、アデノは最後に黒い髪の男の天使が人間達を巨大な剣で切り裂き、金髪の女の天使が自分に近づいてくるのを見た。頭の中で、何かの断末魔の叫び声が響いていた。その叫び声の高い部分がドンドン消えて行き、低い声だけが牛の鳴き声のように頭の中に響いた。
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2005/11/20(Sun)16:36:36 公開 / KAZUTAKA
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■作者からのメッセージ
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