-
『読書の裏切り』 ... ジャンル:ホラー ショート*2
作者:勿桍筑ィ
-
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
読書の裏切り
俺は漫画とか、アニメとかが嫌いだ。ましてや、オタクなんかを見るとイライラしてくる。何でそんなに、漫画が面白いんだ。アニメのどこが良い。そんなの見ても何の利益もない。無駄な時間を過ごすだけだ。それに周りからも気持ち悪いと思われるだけじゃないか。
街で、漫画や本を読んでいる人を見かけると馬鹿らしく思えてくる。みんな気持ち悪い。そんなに真面目になっちゃて。変人ばっかり。
俺は、小学校の辺り頃から漫画には興味は無くなっており、いつも漫画ではなく小説の方が興味があり、いつも読んでいた。休み時間になったらすぐに本を読む。漫画を読む奴よりかっこいいと思ってさえいた。
そんな時、友人からこんな事を言われた。
「お前、いつも本読んでて暗いし、気持ち悪いよ。そんなに面白いかよ」
この言葉を掛けられて、俺は小説を読む事も止めた。ただ、気持ち悪いとは思われたくなかっただけで。
だから、小説を読むことでも、気持ち悪いと思われるのだから、漫画なんてまさにだ。
だから、家には本棚がない。本など無い。俺は読み物は何でも気持ち悪いと思われると感じている。
だから、新聞もない。だから、今までの教科書も買ったその日のうちに全部捨てた。もちろん漫画なんて無い。
ある日、家に俺の唯一の同い年の大学に通っている友達が来た。そいつは、俺の漫画嫌いを知っていた。俺に、「小説を読むことは気持ち悪い」と言ったのも此奴だ。
「なんだよ。急に呼び出したりして」
そうだった。来たのではなく来てくれたのだ。
「いや。急に人と喋りたくなって」
「そう、か……」
友人も俺と同様、本を読むのが嫌いである。だから、俺は此奴と友人になった。だが、今日は此奴と会うのは小学校以来だった。
「久しぶりだけど、お前の家って本棚ないんだな」
友人は、首をくるくる回しながら何故か不思議そうに言っていた。
「そうか……。昔はお前の家もそうだったじゃないか」
そう言って。少し間があった。
そして、友人が何か楽しそうに話をし出した。
「なあ! それより、お前昔小説読むの好きだったよな」
「昔はな。でもお前の言葉で嫌いになったよ」
すると、友人は顔色を変えて言った。
「お前少し‘本読んだ方が良い’ぞ! 本じゃなくてもいい。新聞でも何かの資料でも良い。何でも良いから読んで、情報を集めなきゃ生きていけないぜ」
「お前が言ったんじゃないか。本を読む事は気持ち悪いって」
「確かにあのころはそう思った。でも高校生になって変わったんだよ。本を読むこと、新聞なんかを読むことは今後の人生のために良いって。お前もこれからでも遅くはないよ。な! 何か読むようにしろって」
俺は裏切られた。小学校の頃からずっと騙され続けていたのだ。此奴の言葉に。許せない。
「俺の人生を返せ!」
「は!? 何、言ってんだよ?」
と、此奴の手に本が握られていたことに気づいた。
「それは何だよ!」
俺は、それに指をさしていた。
「あっああ。これは、お前に読ませようと思ってな」
「……お前って奴は……」
俺の目からは涙が出ていた。俺は俯いたまま床に両手をつきながら続けた。
「本当に、良い奴だな」
「あ、ああ。今からでも遅くはないよ。一緒にこれから一杯本を読もうぜ」
友人は俺の手を持った。俺は顔を上げて、相手に対して笑っていた。
「……ありがとう。ははは、お茶でも飲んでいけよ」
「ああ」
俺は台所に行き、棚からカップを二つ出し、お茶を沸かした。
向こうでは、友人が楽しそうに、持ってきた本と漫画がどれくらい面白いか喋りまくっていた。
「そんなに面白い物なのか。早く読んで君に感想を送るよ。後で、メルアド教えてくれ」
「そうだな。ははは! 良かったよ、お前に笑顔が戻って」
俺は台所から、おぼんに載せたカップを二つ持って友人に渡した。
「さあ、単なるお茶だけど、飲んでくれよ」
「ありがとう」
友人は、あぐらを掻いて、そのお茶をがぶ飲みした。
「はあ! 喉乾いてたんだよ」
友人は笑っている。俺も笑っている。俺は楽しかった。
俺の人生を狂わした男が、俺の作ったお茶を飲んだのだ。俺は楽しかった。愉快だ。
きた。
「う……何か気持ち悪くなってきた」
友人の顔色が変わった。
ははは! 俺は心の中で笑っている。爆笑ものだ。ははは!
友人は何かを言いながら涙を流し始めた。ははは! 楽しい! 惨めだな。
さてと、ゆっくりと友人を観察するか。初めての漫画でも読みながら。
友人の飲んだお茶には、たっぷり漂白剤を入れておいた。
嬉しい。
-
2005/09/19(Mon)16:08:31 公開 / 勿桍筑ィ
■この作品の著作権は勿桍筑ィさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
どうも、皆様勿桍筑ィです。
この作品は、とても短いです。一応ホラーとして書きましたが。決してお化けが出るとかという物ではありません。
実際に有りそうで無いような……。
友人の言葉にも力を入れましたので。
久しぶりなので、文章が前より更に稚文な物になってしまいました。それでも読んでいただければ幸いです。
読んでいただけたならば、感想を御願いいたします。±点だけとかを入れるのはご遠慮下さい。
では失礼いたします。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。