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『超能力〜等価〜/読者、筆者』 ... ジャンル:リアル・現代 ミステリ
作者:Town Goose
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語り〜五語 爛減(ゴゴ レンゲン)〜
「読者」である俺にとって、この物語は常にシリーズ物の一つの幾何章でしか無い。だから最初に語るべきは主人公である。だが、困ったことに俺が主人公。
だから、置いてゆく。この物語は第2話以降のどこかから始まるものであり、設定なんてものはそのうち分かってくるものさ。
現実とか架空とか、もうそんな話はどうでもいい。
ただそこに「読者」と「筆者」がいればその物語は完結するものでしょ?
【プロローグ 前半】
寒い日だった。
其処に仄かに薫る、暗澹。そこに普遍はなく怠慢と半永久の幸福と現実を見る幻想(げんじつ)。
朝起きると、全身が苦痛の塊であった。揶揄ではなく、事実、全身が無くなりかけるような劇痛。忘れたものが、痛い。無い筈の、有る全身がキシキシと痛む。
向こうで母親が無くなっている。
気付かずに、忘れている。
少し、少し、部分、部分
自身の痛む現実(ぶひん)から、一つ一つ、選別されるように
自分の独つ独つ、痛んで
アレの一つ一つ、忘れて―――
「どうしたの?爛減」
気付かない
母親は、もう戻らない、アレはもう、存在を忘れてしまった。
自分は、もう戻れない、自分はもう、存在が痛んでしまった。
今は午前2時、始まる朝を怨みつつ
泣きながら、自分(ものがたり)を嗤った――――――― error night mother and me…
■■■■■■
畜生、寒い。
今は春、それも中盤に差し掛かり暦では夏まであと半分も無いほどの。
まったく、最近の異常気象は真冬のような寒さを停滞させる。高校一年、生まれてから15年しか生きていない未熟者だが、少なくとも俺が小学生の頃は春に路面が凍るなんて異常は無かったはずだ。
そんな気分最悪で愚痴を撒き散らす自分。嫌な事があるのだ、過去でなく現在進行形で。
実は今、俺はとあるマンションに来ている。それも時刻はまだ明るい、総てを曝け出すような白昼のことである。
日曜日の昼真からなぜ俺はこんな処へいるか。いや、自分でもよく分からないのだが、とにかく事が起きたのだ。
――――なんでも、ここで殺人事件があったらしい。
〜♩ ♫♩♪ ♬♩♬ ♫♩♪♬ ♩♬♪〜
午前3時のことである、死の着信音が室内に響き渡のは。いや、自分で仕掛けたユーモアにしては笑えない現実であった。事実、大筋においてその設定が間違っていないのがどうかしている。
《変な奴がいるからどうにかしろ》
眠気眼に取った電話は、俺が答える前に皐月さんからのそんなとんでもねー一言で打ち切られた。その後faxで詳細が送られて来る辺りマジでこの人どうかしてる。
幸い今日はエイプリルフール、アハハと社交辞令的な笑いで冗談として吹き飛ばしてしまいたかったが、侮るなかれ、冗談とを知らないこの人は常に大真面目なのだ。
いやもう、断れるわけが無い。
なにせ、温和な人で、呆けていて、鈍感で、ドジで、とにかく、そんな性格……を真正面に笑い飛ばし、敵対するような性格をしているのだ。
冷徹、
頭が切れる、
俺にやさしくない、
そして有言実行。更に極めが座右の銘が滅殺である。
いや、俺に優しくない、実はこれが一番厄介である。皐月、この人は冗談が冗談じゃ無くなるのだ。……だが、この物語は話したくないのでお蔵入りとする、しかも開封厳禁のお札付で。
……っと、話が逸れた。まぁ、そんな訳で今、自分こと五語 爛減(ゴゴ レンゲン)、殺人マンションの前である。ドアの右上には風情も糞も無い、プラスチックに埋め込まれた名前、それがこの宮元家であることを証明する看板(だいめい)である。ハッキリ言ってホラー映画みたいで不気味だ。と、言ってもドラマのように立ち入り禁止と書かれた黄色いテープは無いし、チョークで描かれた人型も無い。
つまり、「だから」
だから、異常なのだ。人が死んでいる事実があるのに警察、あまつさえ人さえも寄って来ない。だが、このような事件を俺はよく知っている。
家内部殺人、つまり家の中で行われ他人(ほか)である殺人は、すぐには見つからない。
現状、コイツは人を殺しに行くのではなく、殺しに待つ野郎だと言うことか。
……やべーな、俺、行ったら殺されちゃうかも。
だが、行かないと殺されてしまうのも事実。どちらが痛く殺されるか、現実(ソレ)を天秤に掛けた時点で俺の楽な選択肢は一つしかなかった。あの人、マジで存在自体が殺人みたいな人だもん。……あれ?それって―――
……自分の尊厳のため、ここは不問としておこう。
さて、とにかく入らなければ物語は始まらない。「読者」である俺は絶望の溜息を吐きながらドアノブに手を掛けた。妙に冷たいそれは、よくない過去を連想させる。
俺は、過去(それ)を、捻り、押し出す。
必然、ドアは強靭に抵抗する。自分と言う異分子を拒絶するように………馬鹿が、単純に反対、引き戸なだけだ。苦笑&お茶目な俺、気取った文章が恥ずかしい。
がちゃり、
なんだ、意外にもドアは普通に開いた。
おじゃまします。不法侵入者は場違いにそう小さく呟いて玄関へ上がる。
最悪を想定した自分に拍子抜けする。でもなんだかラッキーだ。チェーンも掛かっていないし、怪しい仕掛けも見当たらない。むしろ、招き入れられたような……この野郎、其処まで言って鬱に入る俺。
つまり、事実なのだ。要するにアレだ、来るものは拒まず、ただし出さず、みたいなそんな概念。簡単に言えば、この犯人に俺を拒絶する意思は無いってことですか。
どうも事態は最悪のケースらしい
部屋は意外にも明るかった。遠くの一点でチカチカと光が点滅し、照らし出している。玄関の靴は綺麗に揃ってこちらを向いていた。家族総ての靴が同一の色で纏められているのは何とも微笑ましい光景である。
俺は土足で構わず玄関を抜ける。うわぁ…、前言撤回、ここもまた同一の色で纏められた空間。で、こっちはマジで趣味が悪い、全体、人間の血のソレである。
そしてその中央に横たわる物が5つに者が1つ、5つは人間の形を模した生々しいなにか。または人間を維持していない何か、どっちでもいい。とにかく人間のソレでは無い。
――――物語はいい具合に外れている
◇
……僕の家庭は、天才の家庭であった。
秀才でもなく
優等でもなく、
天才
一部に突出した異常のような才気
劣等者
僕は、そんなことをよく言われた。この世界に劣ってしまった存在だと、親から繰り返し繰り返し……。
そう、自分は馬鹿だったのではなく、劣等だったのだ
何かしよう。何をすればよいかは分からなかったが、勉強をすればよくなると
努力をした
いや、それはもはや努力と言うより渾身に近い
食事以外の総ての一生を勉強に費やし、時にはその食事(休息)さえ採らずに
その渾身有ってか、僕は少しだけ頭が良くなる。
あることが、理解できるようになったのだ。
とても嬉しかった。
こんな自分でも、この世の中で一つでも理解が出来たことに……渾身に憾む
―――意味がないのだ
僕には、勉強の結果は無かったのだ。
ここまでの一生を賭けて、渾身その、唯一つの絶望を導き出した。
なんと言う誤解
自分は努力が報われないのではなかった。努力の結果が認められないのだ。
そうだ、人間に、平等と言う言葉ほど欺瞞に満ちたものは無い。IQのテストで点数が取れる奴はそのテストを受けるまでに勉強したから点数を取れるのか?
否、断じて否だ。結局人間においての定義とは「平等」ではなく「範囲」、曰くトップとボトムしか決められていない。
努力もまた然り。心の持ち様だと高い奴(天才)の言う努力を知らぬ努力。秀才にさえなれない劣等者であるが故の報われぬ努力。
世界を観てみろ
低い者が、高い奴に駆逐される絵図
笑ってしまう。いまさらこんなことに気付くなんて。
本当に今まで、気付いていなかった
つまり、人間とはこの世に生まれた瞬間から劣等と高等が決められていたのだ。
―――そして、致命傷な理を解する
馬鹿は秀才には成りえた
劣等は秀才にさえ成りえない
―――なんてことだろう
ならば、劣等と決められた自分を、この世界において自身で自身を救う知能は無いではないか。
理解すれば、自分は、他人からは見捨てられ、自身には己を救う手立ては無かったのだ。
最悪、いや……
それは最劣の、人生
……この現実を、今、泣いた
夢として持つ事さえ許されない幻想を、なんど観ていたのだろう。
【無駄な努力はするな、分を弁えろ】
ここまで、的を得た言葉は無い。
だが、この言葉を理解することが出来ない劣等者にとって、時間の掛かりすぎた言葉
努力して
努力して
努力して
努力して
やっとの思いで理解して
親に誇ろうと思って
ソノ理解したイミを考エテ
……レットウの意味を知り
……………………ソコで自分ガ、オワッテイタ
涙が、頬を伝う
あまりにも、理解が、悲しかった
ソコに見栄は無い、単純にただ自分が報われない
それが、悲しかった……
思い返す、言葉(かこ)が走馬灯のように羅列する
それはもはや致命的に劣等だと母親が
劣等
それはもはや致命傷に欠陥品だと父親が
劣等
それはもはや致命的に人間失格だと周りが
劣等
それはもはや致命傷に粗悪品だと
劣等
人間失格 それは人間に落第した
欠陥品 それは人間ですらない
粗悪品 それは―――
ああ、なんだ。つまり、
僕は、人間じゃぁ無かったんだ―――
◇
マジで空気が淀んでいる。
いや、空気と言うより多分、物語が淀んでいるんだろう。
喩えるなら、小説の、最愛の人の殺されるワンシーンがループして何度も重ね繰り返されるような最悪のイメージ。
しかし、まぁ、こいつの家庭事情なんて心から知ったこっちゃ無いが、そうとう荒れているらしい。ご愁傷様です。ついでに神に祈っておこうか、アーメン。
危ないものは後回し、俺は其れと対峙することなく、俺は先から明るさを灯す唯一点へ居場所を移す。……どうも原因ってのは際立つように創られているらしい。
―――勉強机が、明るかった。ジジジ、と言う切れ掛かった電球の音。そこの上に展開されているノートが一冊。綺麗とは言えない字であった。書きなぐりのように何度も同じ計算式が重ね書かれている。
ソレを捲るたびに感じるイメージは渾身、一撃必殺が繰り返されるようなそんな物語、次も、次も次も………其処にあった悲壮を、俺は知らない。
「壮絶、だな」
最後のページを捲って、そんな言葉がどこからか漏れた…、そのノートには最後にこう締めくくられていた。
《人間失格》、と。
続
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2005/09/01(Thu)23:27:19 公開 / Town Goose
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■作者からのメッセージ
プロローグです。これはまだプロローグです(汗
擬似タグを使おうとしたら何故か表示画面がおかしい事になってしまいました(泣 慣れない事はするもんじゃありません
第一話に何時になったら入れるのやら…頑張ろう…
ご感想宜しくお願いいたします
一言
劣等者というのはアレです、やっぱり決められているんだと思います。自分はまだ馬鹿であると信じています。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
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