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『弱肉強食』 ... ジャンル:ファンタジー アクション
作者:カゲロウ
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今から3千年後地球上の生物が息絶えた。地球を覆った白い霧は太陽の光さえ遮断してしまう程濃いものだった。まず、初めに植物が死んでいき、それをエサにしている草食類も植物の後を追うように死んでいった。人間は神に祈った。このままでは地球に住むあらゆる生物が息絶えてしまう。しかし、祈りとは儚いものだ。次々と生物は死にいき、
最後には人間だけが残った。しかし、もうその数は五百人あまりしかいなかった・・。
ああ、神よ何故このような白い霧を地球に振りまくのですか?
また一人また一人と人が死んでいく。そして、最後の一人も今…息絶えた。
その時、パァっと一筋の光が霧の中から差し込んだ。その光は今生きたえた人間の影を作った…。
1
バキッガッドコッガガガガッバキッ!!深緑の森から一斉に小鳥が飛び立った。
「ぬぉぉおおぉぉぉぉぉおおぉっ!!」
赤い髪を激しく揺らしながら一人の青年がもの凄い勢いで森を駆けてゆく。
バキバキッガガガッドコッ!
しかし、木々をなぎ払うこの音を奏でているのは青年の後を涙目追いかけてくる高さ二メートルはあろうイノシシだ。しかも、巨体には似合わない可愛い羽根が生えてる。
「も・・う少し・・だよ…な・・!」
青年は死にもの狂いで走っている。まぁ、実際走るのやめたら死んじゃうしね。
その時、五十メートル先くらいからぴかっと光った。
(あそこか…)
青年が最後の気力を振り絞り光ったところまで走った。
その時!
パァーン!
銃声が森中に響いた。
ドスンッ!
すると、さっきまで涙目で走っていた巨大イノシシが急にその場で眠った。
「はぁ・・はぁ・・やったか・・。」
青年は額の汗を手で拭うと疲れてその場でへたり込んだ。
「お疲れ様。リュンちゃん。」
右手にやや小さめの銃を持ったちょっと痩せめの青年が岩陰からひょいっと出てきた。
リュンと呼ばれた青年はちょっと不満そうな顔をしながら痩せ気味の青年の顔を見た。
「おい、ジン。俺の体力のこともちっとは考えろよな・・。ここまで奴の巣から一キロはあるぞ。」
ジンと呼ばれた青年は銃を腰のポッケの中にしまいながら笑った。
「いやぁーごめんごめん。ほら、僕あんまり距離感がないでしょ。」
ジンはケラケラと笑った。その顔を見たリュンはむかっとした。
「距離感がないなら、銃なんか使うなよな!」
がらがらっ何かがこちらに向かってきた。
「ジンお前もう連絡入れといたのか?」
リュンが不思議そうな顔をしてジンに尋ねた。
「あ、うん。銃を撃った後にすぐ連絡いれたんだ。」
ふー・・んとリュン。
「お疲れ君たち。」
馬(といっても大きさ八メートルもある)が引いてきた馬車から一人の老人が降りてきた。
「はい、報酬」
報酬という言葉でリュンは元気がでたのかすぐに立ち上がった。報酬の入った封筒はジンに渡された。すぐにジンから封筒を奪い取りリュンはその中を確かめる。
「ち、ちょっとリュンちゃんやめなよ!恥ずかしいじゃん!」
そんなジンをリュンは無視し札束を数える。
「うん♪OK♪毎度あり♪」
まるで別人のようなルンルン声でリュンは老人に言った。
そう彼らはこんな獣と戦う仕事をしているのだ。腰に刀をかけていて赤髪で長身の男は
リュンベル。銃を使う痩せ気味の青年はジン、ちょっと顔が女の子っぽい。
二人は金さえもらえれば例え火を吐くドラゴンだろうと空飛ぶライオンとでも戦うちょっと名の売れてる二人組みなのだ。ちなみに今回の仕事は動物園を作りたい金持ちの老人の依頼でこの馬鹿でかいイノシシを捕獲した。というわけで二人の説明終わり!本編を楽しんでください♪
二人は食堂に入った。立ち込めるいい匂いにジンは唾を飲む。かどっこのテーブルに腰をおろしメニューを見た。
「いらっしゃいませー。メニューはお決まりですか?」
「じゃー僕はキュレイのステーキとサンザン山サラダとレイファンゴの角煮と・・」
「頼みすぎだ!」
と、リュンが横から注意した。
「えー、でもぉ・・。」
不満そうな顔をしたジンをリュンは睨みつけた。
「ちぇっわかりましたよ。」
ジンがとても不満そうに言った。
「そちらのお客様は?」
「カイレイ魚の煮込み」
ジンがおえっとはいた。そう、ジンはとても魚が嫌いなのである。逆にリュンは魚しか食えないのだ。
(本当に、あんな生ぐさい食べ物のどこがいいんだが・・ぶつぶつ)
心の中でジンが呟く。
食事が運ばれてきてジンはお腹にかけこむようにすごい勢いで食べている。リュンは丁寧に魚の骨を取っている。本当に凸凹コンビなのである。
魚の骨を取っていた手が止まった。視線を左にやると、明らかにひ弱そうな男が立っていた。しかし、ジンはそんな事にも気付かず飯を食べている。
「何か用?」
男はちょっとびくびくしながら頭を下げた。その時ジンは飯ほ全部たいらげてやっと男の存在に気付いた。
「君たちに頼みたいことがあってキレイの村から来たんだ・・。」
「まぁ、座ってくださいよ♪」
と、ジンが自分の隣に座るよう男に言った。
「そりゃまた遠いところから来ましたね。」
それもそうだ。キレイの村からこの町グリンスパまで四十キロはある。
「そんなことはどうだっていいじゃん。で、おじさん。僕たちに何を依頼したいの?」
リュンが深いため息をついた。
「実は私の村ではここ最近カシェルがでるようになって村人がたくさん襲われているんです。」
カシェルとは巨大なカマキリのような生き物で小さいもので体長五メートル大きいもので十メートルにもなる生き物だ。
「へぇー・・。たかがカシェル如きになんで俺たちがいかなきゃならねーんだ?そういう仕事を任せられる奴なら他にいくらでもいるだろう?」
すると、男は辺りをきょろきょろ見渡し身を乗り出しリュンにひそひそ声でいった。
「今から話すことはどうか内密に・・。」
リュン小さく頷く。男は体をもとの位置に戻してコホンッと一息はいた。
「ところであなた方は今までどれくらいの大きさのカシェルと戦いました?」
すると、ジンが自慢気な顔をした。
「ヘッヘーン僕らはカシェルの中でも最も大きい十メートルを倒したことがあるよ♪」
リュンが頷く。すると男が深いため息をついた。
「なっ!なんだよ!?馬鹿にすんのかよ!」
と、怒るジンに男は失礼とだけ言った。ジンは怒り貧乏ゆすりを始めた。
「その、実はうちの村で出没するカシェルはゆうに二十メートルを越す超巨大なカシェルなんです…。」
ジン貧乏ゆすりがぴたっと止まった。
「お願いします!報酬は十二分に払います。ですからお力をお貸し下さい!」
男はそういってかなりの大金が入った封筒をテーブルの上に出した。
その中身を見てジンは飛び跳ねそうになった。しかし、リュンは不満そうな顔をしている。
「少ないな。」
えっ!?とジンが立ち上がった。
「な、何言ってんだよリュンちゃん!?超巨大カシェルだけでこんなにもらえるなら全然いい仕事じゃん!」
リュンが深いため息をつき、男を見つめた。
「あんたよぉ、一つ聞くけど俺たちがカシェルを殺したらそのカシェルの死体はどうする気だ?」
男がびくっとした。ジンは何言ってんのリュンちゃん?状態だ。
「そ、それは畑に栄養としてまいたりカシェルからてれる鎌で武器やら何やらを作ると思います。」
男がそういうとリュンはにたぁーと笑った。
「おーし、じゃあさこの金全部いらないからさ、カシェルの死体は俺たちがもらうぜ?」
男はびくっとした。
「ちょ、リュンちゃん何言ってんの!?いつからそんな趣味が…・」
リュンはギャーギャー騒ぐジンをほっぽといて男との会話を続けた。
「どうする?俺はどうしてもそのカシェルの死体がほしいのだが・・。」
男は諦めた様子で
「わかりました…。報酬は今渡し奴の三倍は渡します。ですから、死体の方は私の物としてもらいたい。」
リュンがまたもやにたぁーと笑い男の前に手を出した。それを見た男はぎょっとした。指が四本立っていたからだ。
「よ…四倍・・?」
「どうするあんたにゃ悪い話じゃないだろ?」
男はくっと声にだしていうとコクリと頷いた。すると、リュンは本日三度目のにたぁ笑いをした。
「おいジンいくぞ。」
ジンはまだ話の流れがつかめないで頭を混乱させていた。
宿を探しながら歩くリュンは腰にかけていた刀を取り出すと
「おもしろい戦いになりそうだ。」
と、にたぁーと笑った。
手ごろな宿を見つけたリュンはまだあのことを考えているジンをひきづりながら宿に入った。金を払い部屋の鍵を渡され、部屋へと向かった。部屋に入ると
「なんであんなカシェルの死体が欲しいの?」
とジンが問いかけてきた。
「馬鹿だなお前は・・。いいか?体長二十メートルのカシェルっつたらかなりの高値で博物館とかに売れるんだよ。」
ジンがはっとした。一瞬わかったような顔をしたがまたわからない顔をしてしまった。
「でもさ、あんな大金だよ?二十メートルのカシェルってそんなに高いの?」
「ばーか!二十メートルのカシェルっつたら多分少なくとも二十億はくだらないぜ?」
ジンの頭がボンッ!となった。
「だからあの男はこんな大金を払っても死体が欲しいんだよ。死体がありゃ払った金よりもらえるし村の危機も救えるっつう訳だ。」
ジンがなるへそっ!と手をたたいた。
「だから、明日はヘマすんじゃねーぞ」
ジンはにこっと笑い
「わかってますって・・ところで作戦の方は?」
「そーだなー、お前の銃じゃ奴に効かないし今度はお前が囮になれるな♪」
うげっとジンは吐いた。
「さー、明日は早いから寝るぞ」
そういうと、リュンはベットにごろんと寝転んだ。ジンもベットあおむけになって寝転んだ。明日の戦いにそなえて…。
「…きろ・・おき…起きろ!」
リュンの声でジンはベットから落ちる形で目を覚ました。
「あ・・お早う…リュンちゃん」
まだ、寝ぼけた顔をしているので叩いてやった。
出立の支度を済ませユニコーンの馬車でキレイの村へ向かう。途中何匹かカシェルをみたが大きさは五メートルぐらいのしかいなかった。
村の手前二キロぐらいで馬車をおりそこからは徒歩だ。歩くこと三十分。村に到着するやいなや二人の前には想像を絶する光景が広がっていた。なんと、二十メートルを越すカシェルが村のほとんどを破壊していた。村人はほとんど食われていた。
「!っあぶない!」
一人の男の子にカシェルの鎌が襲い掛かった。
カキーーーーンッ
硬いものがぶつかった音響いた。
ひゅるんひゅるんひゅるんドスッ。
きしゃゃゃやゃゃゃやゃゃ!!!
厚さ三十センチはあろうカシェルの鎌が宙に舞い、地面に突き刺さった。
斬ったのは…リュンだ。
「お前…いい加減しろよ・・」
カシェルのもう片方の鎌がリュンに襲い掛かる!
ヒュンッと空気を斬るような音がしたとたん鎌はまた宙に舞った。
リュンは刀を鞘に収めると鞘が赤くなっていく。
「焔の神、火産霊神よ今我の敵をその地獄の業火で葬れ」
鞘の中から炎が噴出した!
(リュンちゃんされを使っちゃたら…。)
カシェルが今度は足で踏みつけようと襲い掛かる!
その時!
「炎撃迅流!烈焔業火迅!!」
リュンが抜刀すると紅蓮の炎が二十メートルもあるカシェルを真っ二つにした。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
カシェルの体から炎が噴出す。リュンがまだ燃えている刀を鞘に収めるとカシェルを燃やしていた炎も一瞬で消えた…。
「おい、大丈夫か?坊主」
男の子は何が起こったんだかわからないような顔をしていた。
「おいジン!生き残りは他にいるか!?」
ジンは悲しそうな顔をした。
「生き残りはその子だけみたい…」
「そうか…」
リュンは男の子の頭をポンッと叩いた。すると、男の子はいきなり走り出した。
「おい、どこ行く?!」
あとを追うリュンとジン。ついた先は藁でできた一軒の家だった。カシェルにやられたんだろう傷跡が生々しく残っていた。そこに、人の死体が三つ。
「母・・ちゃん?…父ちゃ・・ん?ねーちゃん?起きてよぅ・・ねぇ起きてよ!!」
その光景からジンは眼をそらした。しかし、リュンはしっかりと見ている。
「うっ・・ひぐっ…うっううっ」
男の子はその場で泣いてしまった。
「泣いたって人は生き返りはしないぞ坊主・・」
村に冷たい風が吹いた…。
次の日。昨日は居心地が悪いが壊滅した村で一泊した。なぜならジンがどうしても
「村の人たちのお墓を作ろうよ」
と、言って一人で死体を土葬するための穴を掘り始めてしまった。
リュンはハァーっと深いため息つきながらもジンのところで歩く。そんなリュンを
見てジンはニコッと笑う。そんな様子を放心状態の男の子だまって見ている。
「おい!坊主!お前も手伝えよな!」
聞こえているのか聞こえてないのか男の子は表情をぴくりとも動かさない。
ぶちっ!と、リュンの頭の何かが切れた。
ずどんっずどんと一歩一歩をわざと重たく歩きながら男の子の方に歩いていく。
そんなリュンをジンは必死に止めようとしたが振り払われた。
座り込んでいる男の子のところまで行く。
「立てよ…」
しかし、男の子は微動だにしない。
「立てっつてんだよ!」
がっとむなぐらをつかむと無理矢理立たせた。これには流石の男の子の顔も恐がり始める。しかし、すぐにその顔は悲しみにつつまれていく。
「だって・・母ちゃんも・・父ちゃんも・・ねえちゃんもみんなも死んじゃったんだよ…・僕も一緒に死にたい・・。母ちゃんたちのところに行きたいよぉ・・」
そう言った男の子の眼から大粒の涙がこぼれる。リュンはそんな男の子を見ても険しい顔で男の子を見つめている。そこにジンが駆け寄る。
「ちょっやめなよリュンちゃん!」
そんなジンを横目で見た後、瞳を男の子に向けた。
「そうだ・・。お前の父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃんそれに村の奴らも死んだんだ。でもな、生き残ったお前はこの現実から逃げちゃいけねぇんだよ!生きて生きて強くなってお前の守れなかった大切なものが心配しなくなるぐらい強くなって!また大切なものができたら今度は壊させねぇように強く生きろ!それがお前の家族たちの思いなんじゃねぇのかよ!」
・ ・ ・壊れた村に沈黙が流れる。
ばっ、と男の子を掴んでいた手が外れる。リュンは男の子の頭をぽんっとたたくとさっきまで掘っていた穴へと向かった。まだ、泣いてる男の子にジンは身長をあわせるよう足を曲げた。
「厳しいようだけどリュンちゃんはね、ああ見えても君より苛烈な人生を生きてきた人なんだ・・。だからリュンちゃんの言ったことを心に死にたいなんて思わないで強く生きよう!」
そういうと、ジンも掘っている途中の穴へと向かった。
「たくっなんで俺がこんなことしにぁいけねぇんだよ・・。金だって四倍もらえるはずだったのに要のカマキリが黒こげになっちまうし・・ぶつぶつ」
ぶつぶつ文句を言いながら穴を掘っているリュンの横にひょいっとジンが来た。なぜかまんべんの笑顔だ。
「リュンちゃん優しいところあんだね♪」
「あぁ、何がだよ?変な事言ってねぇーでちゃちゃっと掘れ」
ジンがハハハッと笑う。
ひょいっと小さな影がリュンの横にできた。あの男の子だ。
がっがっ、とシャベルで穴を掘り始める。
「強ぇーじゃねーかおめぇ」
リュンはニカッと笑いながら男の子の頭をポンッポンッと優しく尚且つ強く叩いた。
掘り始めてから三時間。小さな村と言ってもざっと村人は二百人はいる。いちいち一人一人の墓を作るのは流石にめんどうなので一つの穴に死体を葬ることにした。
「ふぅーやっとできたかぁ、よし今度は死体を全部こん中にいれんぞぉ」
一人また一人と穴に葬っていく。そして、男の子の家族も葬る。
リュンが男の子の頭をポンッとまた叩いた。今度は強くない。
「泣くんじゃねーぞ・・坊主・・」
「う・・ん…」
村人全員の死体を穴に葬った。すると、リュンが刀に手をかける。
「ん?何するのリュンちゃん?」
「俺からの手向けだ・・」
リュンが抜刀の構えをとる。
シャッ、と鋭い音が響く。
ぶぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ
すると、大穴から炎が吹き上がった。しかし、その炎はさっきのような熱さがなく暖かい感じがする。
カチャ、と刀を収めると炎は一瞬で消えた。しかし、驚くことにあんなに燃えていたのに全く死体の方は燃えていないのである。
「炎撃迅流浄火迅・・死者の魂を浄化する技だ…」
空から暖かい風が降りてくる…。
2
太陽の陽が届かないほどの白い霧が立ち込めるこの森。ここは大昔住んでいた先住民たちを滅ぼした時の状況をいまだ保っている死の森と言われる森だ。人はおろか動物もいない。そんな危険な森に姿を現したのはリュンとジンだ。“中央の街グリンスパ”から馬車で五時間そこからあるいて二時間かけてここへやって来た。しかし、今回この地に来たのは仕事で来たわけではない。今日はリュンのプライベートで来ている。回りが暗いせいか二人の気分も暗くなり会話はほとんどない。歩いてから三時間はたっただろうか、祠が現れた。リュンを先頭を祠へと入っていく。奥に進むにつれ光が見えてきた。その光は太陽の光にも似て遠いと優しく暖かく、近くにいくにつれ恐く暑いものへと変わっていく。
ジンが汗だらだらに対しリュンは全く暑さを感じていないかのように涼しい顔をしている。リュンがジンにここで待っているよう指示をだす。ジンはその場に疲れた様子で座った。どんどん前進していく。すると、爬虫類の死骸のような塊が姿を現した。しかし、その爬虫類は今にも動きそうな威圧感を出していた。爬虫類の周りには炎が渦を巻き人が来るのを拒んでいるように見える。しかし、リュンはお構いなしに炎の渦の中を歩いていく。炎の渦はリュンを試すかのごとく勢いを増す。リュンは眉一つ動かさず、ずんずんと進んでいく。爬虫類の死骸の前まで到着する。すると、刀を抜き死骸にむかって突き刺した。刀の周りに炎の渦が巻く。すると、刀がその炎の渦吸い込むように取り込んでいく。
しゅゅゅゅゅう、
炎の渦は全て刀へと吸い込まれた。リュンは死骸から刀を抜き取り鞘に収めるとボソリと
何かを呟いた。出口に向かい進んでいくと途中ぐっすり眠っているジンがいた。
ゴツンッ!と一発頭に拳固を食らわしてやった。
びっくりしたようにガバッと起きあがるジン。涙目で訴えた。
「いってぇー!なんだよ!リュンちゃん!殴ることないじゃないか!」
手で顔を覆いハァー、とため息を一つ。
「もし、肉食の怪物でもいたらどうするつもりだ?」
それを聞いたジンが鬼の首でも取ったかのような顔をした。
「ハハハッ!リュンちゃんここは死の森だよ?生物なんかいやしないよ♪」
「それはどうかな…」
ジンはそんなリュンの言葉を聞こうとせず、勝ち誇っている。
「ところで用事はもうすんだんだよね?それなら、早く帰ろう!この森は薄気味悪くて仕方が無いよぉ…」
そうだな・・とリュンが言うと二人は祠の出口を目指し歩き出す。
祠を出て回りを見渡す。相変わらず薄気味悪い。森をでないと馬車がないのでうんざりながらも、歩き始める。一時間ぐらい歩くと平地が広がる。
ぴくっ、とリュンが足を止める。
「?どうしたの?リュンちゃん?」
「後ろに跳べ!ジン!!」
そう言った瞬間、ジンの足元がボコッと膨らむ!
「うわわっ!」
ジンはすぐピョン、と後ろに跳んだ!
すると、バゴーーーンと地面を破壊しながら姿を現したの巨大なムカデだ!
「デス・ジェノ・・」
デス・ジェノとは体長が十メートルもある巨大なムカデだ。強靭なアゴを持っており人が噛まれたらまず即死だ。しかも、厄介なことに体中に毒があり触れたらたちまち痙攣を起こす一癖も二癖もあるムカデなのだ。
「な、なんでデス・ジェノが死の森に?!」
「とにかく殺るぞ!!」
「はいはいさ!!」
バッ、とリュンがデス・ジェノの前に跳び出す。
カチカチカチカチッ
聞くだけが吐きたくなるような音を出しながらリュン向かい突進してきた!
ガッ!!
かみ殺しに来たデス・ジェノの顎を鞘で思いっきし打ち上げた!
デス・ジェノの頭が浮く、その時!
パーーーーーーン!
銃声が轟く!ジンだ。銃弾はデス・ジェノの一点を貫いた!
わずか一センチの銃弾でデス・ジェノは倒れた。
「ふぅー、」
と、息を抜いたジンにリュンがよる。
「お前、相変わらずいい腕してるなぁ・・五ミリずれるだけで殺傷能力0になるようなところを的確に狙らえるなんて・・」
本気で褒めているリュンにちょっと照れながら
「え、だってさデス・ジェノとは三回も戦ったんだよ?十分練習できたよ♪」
この話、リュンにとっては苦い思い出がある。二人がコンビを組んでから初めて来た依頼がデス・ジェノの討伐だった。その時まだこの時のようなコンビネーションがなく作戦という作戦を立てずに討伐に出てしまったのである。現地でデス・ジェノの弱点は顎の下にある黄色い点とだけジンに教えとき、デス・ジェノの生息する森へ歩く。死の森の時と同様地面から出てきたデス・ジェノに対しリュンは避けると同時に斬りつける。
しかし、致命傷に至らなく穴へと潜っていってしまった。デス・ジェノの気配が消えるとリュンは愛刀に付いた青い血をふき取ろうと紙でふき取ろうとしてましい、デス・ジェノの毒におかされてしまったのである。なんとも、間抜けな話である。プライドの高いリュンはその時のことを思い出すだけで顔から炎が吹き上がるように赤くなるようになってしまった。結局ジンががんばって一人でデス・ジェノを倒し、何とか生きて帰ってこれたのだった。今のリュンからでは考えられない話である。
「チッ、行くぞ・・」
あの時の事を思い出したのか顔がちょっと赤くなっている。
「ところでさ、なんであいつここにいるんだろう?ここには生息していないはずなのに・・」
「さぁな…」
会話はここで途切れてしまいまた沈黙が流れる。
ふぅぁぁぁあ、とジンが大きなあくびをかいた。
(ん?)
あくびのせいで涙目になった目を手でぬぐい森の奥をこらして見る。
「どうした?」
「うーん、あっちで何かいたような…」
リュンがまたデス・ジェノか、と顔を赤くする。
「あ!何か光った!」
リュンも眼をこらして見てみる。確かになんか奥で光っている。
(何だ、ありゃ?)
光がこっちに近づいてくる。光はリュンたちの十メートルぐらい前まできた。
パァァァァァァァ、
いきなりまぶしい光を放った。二人は腕で眼をおおった。
光の球体の形が変化していく。
(足?)
球体から人間の足のようなものがでてきた。そのあと、胴、腕と人間の形になっていく。
顔もできてきた。そして、光が消えそこには一人の人間がいた。その容姿にリュンもジンもびっくりした。身長は百四十センチぐらいだろうか、女の子でかわいい顔をしている。
長い紫の髪の毛をしている。しかも、おどろくことに服を着ていないのだ。
「えっ!えーと・・?」
とジンが赤面ながらうろたえる。
ひゅんひゅんひゅんっドスッ!!
少女のすぐ横に空から大きな鎌が落ちてきた。
カッ!
いきなり少女の目があく!
びくっと驚くジン。
少女はすぐ横にある鎌に手をかけ、リュンに襲い掛かってきた!
「なっ!?」
少女とは思えない怪力で自分の身長より大きい鎌を振りかぶると容赦なくリュンにそれを振り下ろす!
「ちぃっ!」
刀でガードすると刀ごと切られると悟り、大きく後ろに跳んだ!
!!!
カシャン、カシャン、カシャン!!
なんと、鎌の刃の裏に重なっていた長さの異なる刃がリュンに襲い掛かる!
(くっ!)
避けきれないとわかり、刀で最後の一枚の刃を弾く!
力はリュンの方が強く鎌が弾かれる!
グルンッ
少女はその力の方向に回転して、遠心力を利用して更に切りかかってきた!
バッ
リュンは大きくジャンプして何とか鎌を避けた。
(なんちゅーガキだ・・)
クラッバタッ
少女はなんのまえぶれもなくその場に倒れてしまった。
「なっ?!」
ジンがリュンにかけよる。
「大丈夫?!リュン?!」
「ああ、大丈夫だ…しかしこのガキは・・」
「そうだよね・・服着てないし・・」
バキッ、とジンを殴る。
「お前はそういうところしか見てねぇーのか馬鹿ヤロー」
リュンが少女に近寄り意識が無いことを確かめると上着を一枚少女に着させおんぶした。
「え?その子もって帰るの?」
「当たり前だろ・・こんなとこに置いといたろ死んじまう…」
ジンがニコッと笑った。
「やっぱリュンちゃんて優しいね♪」
ニコニコ笑うジンにリュンが鎌を指さした。
「…やっぱジンちゃん優しくない…」
少女の鎌を持ちながらジンがつぶやく。
「それにしてもさぁよくこんな重たい鎌振り回せるね、この子」
ジンがリュンの背中で眠る少女を見る。
「そうだな・・」
と、珍しく何か考え事をしているリュン。そんなリュンを見てジンはあえて聞かなかった
やっと町に着きまず初めに病院に向かった。医者に事情を話さないと白い眼で見られたので嘘でなんとか乗り切った。そりゃ、本当にあった事を話してもどうせ信じてもらえないし…。
「まぁ、大事には至ってません。ただ、栄養不足で三日は入院した方がいいでしょう」
医者の見解にほっとジンがはいた。
「ありがとうございました」
と、頭を下げる。
病院から出てジンが聞く。
「あの子これからどうするの?」
「俺が預かる」
…えぇぇ!!
よっぽど以外な返答だったのかその場で尻餅をついてしまった。
「な、なな、何で!?」
「俺が決めたことに文句あんのか?」
と、にらめれてしまった。
「まさか…リュンちゃんにそんな趣味があったなんて…」
ゴツ!!
「本当にありがとうございました。」
リュンと頭に包帯を巻いたジンが頭を下げる。少女も元気になり今日はタ退院の日なのだ。
しかし、少女は言葉を発しなく黙秘したまんまだ。まぁ、鎌で暴れられるよりマシだ。
「これからどうするの?リュンちゃん?」
「あいつの服がないだろう・・」
!!!
ジンが石化した。
あ、ああ、あのリュンちゃんが…!!見知らぬ子に服を?!
今度は声に出さず心で叫んだ。死にたくないし。
「おら、何ボサッとしてんだよ、早く来い!」
・ ・ ・ ・ 一体リュンちゃんに何が起きたんだぁぁぁぁぁぁぁ??!!
まだ石化しているジンは何か心の一部が欠けたような感じがした…。
洋服屋に入ったら白い目て見られた。それもそのはず二人の男の服装はあきらかに
店内では浮いているからだ。しかも、女の子の服売り場にいるのだから周りの客から避けられる。青い髪の青年はもじもじと恥ずかしそうだ。赤い髪の青年もちょっと顔を赤らめている。
(サイズがわからん…)
赤い髪の青年はちょっと困りながらもどの服にしようか迷っている。
青い髪の青年は我慢できず、話を持ちかけた。
「こ・・これでいいんじゃない?僕・・ここから早くでたいよぉ・・」
青い髪の青年の手には黒いふりふりの服がある。
赤い髪の青年もあんまりここにいたくはないのか、服をあんまり見ずにレジに向かう。
「い・・いらっしゃいませー」
やはりレジでも引かれている。黒い服はカウンターに出す。
「お・・お会計五万と千六百になります・・」
高ぁ!!
二人の青年は口をあんぐりとあけた。
(おい・・おめぇ、服の値段ぐらいちゃんと見ろよなぁ・・)
こそこそと会話をはじめる青年二人に店員さんは引きつった顔をしている。
(だ、だってここから早く出たいんだもん!)
周りからみると本当にあやしい・・。店員さんは手と手を握り、勇気を振り絞って二人に問いかける。
「お、お買い上げになられますか?」
もう早くここから出たいそんな思いが青年を動かした。気付くと六万をだしお釣りももらわずにダッシュで病院の方に走っていた…。
「ミッションコンプリート!」
汗を拭いながらリュンが太陽を見た。
ジンはまだ恥ずかしそうな顔をしている。
「よぉし!行くぞ!」
ずんずんずんと病院に入っていくリュン。ジンも後を追う。
「こんちわー」
ガラッと一つの病室を開ける。
室内にはベットが六つ置いてあり、リュンたちは一番右かどっこのベットへと向かう。
ベットの上には少女がボーーッと窓から外をのぞいている。
コッコホン!とわざとらしくもリュンが咳き込む。少女がこちらを向いた。
びくっと二人の青年が動いた。少女とはいえこの前カラクリ大鎌で殺されそうになったのだから恐がるのも当然だ。少女はそんな二人をジーーッと見つめる。汗がたれる。
「あ、そうそう!お前に服買ってきてやったんだ!いいかんじの服でしょ?」
リュンが玉砕覚悟でジンが持っていた服を少女に見せる。これで無反応だったらどうしよう・・。そんなことを考えると笑顔がひきつる。
・ ・ ・沈黙が流れる。ジンはなぜかとてもきれいな姿勢できようつけしている。
「ありがとう…」
唐突に少女が話した。あまりの不意打ちにリュンがびっくりしながら後ろに一歩下がる。
「あ、ああ、そう?良かった気にってもらえて・・ハハハッ」
と、リュンが笑いながら服をベットの上に置くとふぅー、と息をはいた。
そんなリュンを少女は見つめる。ふと、少女の視線がリュンの刀で止まった。
「この刀は…」
呟いた少女に不思議そうにジンが聞いた。
「その刀前見ませんでしたっけ?」
なぜか敬語だ。そんなジンの質問に少女は視線をジンの方へ動かさず刀を見ながら口を開いた。ジンは視線がこっちにきたらどうしようと思っていたので、ふぅーと肩の力を抜いた。
「そうだっけ…」
少女の声を聞くとまた肩に力が入る。
リュンはもうなれたようで病室にあったポッドの中からお茶を注いでいる。
お茶を飲みながら少女の近くに腰を下ろすと少女に聞いた。
「覚えてないのか・・?」
コクリッと頷きながらも刀を見つめる。
ジンがえっ?そうなの?と言う顔をする。とたん、体の硬直が解けた。
「あなた・・もしかして七つ星の・・」
ガバッ、とリュンはその大きな手で少女の口をふさぐ。えっ?えっ?と戸惑うジンに部屋からでるように指示をだす。ジンが部屋から出るのを確認すると、少女の口をふさいでいた手をどける。
「こんなところでそんな話をするんじゃない!」
大きな声をあげてしまったとリュンはハッ、とし目をつぶる。
「ここでしちゃいけない話なの?」
リュンが肩肘をベットにつけながらコクリと大きく頷いた。
「ところでお前名前は何ていうんだ?」
「ムン・・星の位置は…」
ガバッとまた少女の口をふさぐ。しかし、今回はこれが返って目立ってしまった。
「だから、その話はしちゃだめ!わかった?」
念を押すリュンに素直にもコクリと頷いたムン。
「とにかく、今日は一緒に宿に行くぞ」
リュンはイスから立ち上がると少女に言った。
「どうして?」
ハァー、とため息をつく。質問の多い少女だ。
「いいか?ムン。お前一人じゃこの世界生きていけないし、しかも七つ星の一人なら尚更ほおってはおけんだろう?」
「あ、今私には話しちゃいけないってこと話した…」
リュンがちょっとハッ、した。
「おじさんがだめって言ったのになんでおじさんは話すの?」
おじ・・さん?
「ムン。俺はおじさんじゃないぞ?まだぴっちぴちの十九だ。」
顔がひくひくしている。
「ぴっちぴちってなあに?」
ラチがあかないと悟ったリュンはムンを連れて病室を出た。
ガラッ
病室を出るとリュンはジンを探した。
(どこ行きやがった…あいつ・・)
グーグーと聞き覚えのあるいびきが耳に入る。リュンは少女にまたあのことは話すなと念をおす。すると、また少女がなぜ?と、質問してくるのでハァーとため息をついた後頭をぽんと手を置いた後フロアーに置いてあるソファーに向かう。
少女は先ほどまでリュンの手があった場所に両手を添えた。
「どうしてだめなんだろう・・?」
ゴヅン、病院中にものすごい音が響く。流石に少女もびっくりしたようで手で耳を押さえながら両目を閉じた。目を開けるとリュンが立っていてその手にはぷらんぷらんのジンがネズミのような姿でいた。
「いてててぇ、」
ジンは氷の入ったビニールで頭を冷やしている。あの後宿に帰るまでジンが目を覚めることがなかった。
いつの間にかさっき買った服に着替えているムンがいた。
「どうすんの?こんな小さい子仕事に持ってけないし…」
「私は小さい子じゃありません…」
なぜジンには敬語なんだと思いながらもリュンが質問に答える。
「ムンは俺たちで育てる」
「えぇぇぇぇええええええぇえぇ!!?」
ムンが両手で両耳を押さえる。
「仕事にも持ってく」
「ど、どうして!?」
「どうしてってお前こいつも七つ・・」
ハッとリュンが口を押さえる。
「七つ?そういえば病室でもムン・・だっけ?」
ムンがコクリと頷く。
「ムンちゃんが七つ何とかって言ってたよね?」
うん、とムンが言ってしまった。
(馬鹿…)
と心の中でリュンは呟いたが元はといえば自分の責任だ。
「なんなの?七つ何とかって?」
・ ・ ・ハァー
観念したような息を吐いたリュン。二人のやり取りに無関心なムンは壁に掛けてあったカラクリ大鎌を背伸びしてとろうとしている。
「七つ星…昔世界を滅ぼそうとした神に仕えていた七匹の聖獣のことだよ・・」
リュンは少し哀しげな顔をしながら語り始めた…。
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2005/08/27(Sat)23:32:17 公開 / カゲロウ
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■作者からのメッセージ
正直言って見苦しい作品でごめんなさい!
私小説初心者なので・・。
何か改良したらいいなぁとか意見などは
大歓迎なのでどんどん言ってください。
あと、この作品は長作になりそうなので長い目で見てやってください。
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等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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