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『夜の番人+続編』 ... ジャンル:ファンタジー ファンタジー
作者:あきてる
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三日月の夜。ああ、久しぶりの仕事だな。
ったく、面倒くさがりのおれにこんな仕事を押し付けやがって……
神サマ、恨むぜ。
おっと、自己紹介が遅れたな。あんたが今日の新人サンだな。おれは夜の番人。
へ? 名前は無いのかって? 無いことはないけど、おれの名前なんか知ったって得なんかしないさ。どーせこのお話が終わればオサラバだからな。ま、それは置いといて。
おれの仕事はその名の通り、夜の番人をすること。つまり夜を見張るんだ。なに、大したもんじゃない。ただこーやって三日月に腰掛けて、夜の人の行動を見張って、夜が明けたらそれを神サマに報告する。ただそれだけのつまらなーい仕事サ。まったく、こんなことに何の意味があるってんだ。おれにはさっぱり理解できない。
あ、そーいやあんたにグチっても仕方ねぇよな。こりゃ失敬。
……ところで、あんたは? へ? このお話が終わったらきっと私もオサラバだから、言ったって意味ないって? ははっ、あんた意外と面白い事言うな。
ま、そーゆーことだ。今夜限りだけど、よろしくな。
―◇――◆――◇―
え〜っと、
A氏が公園のベンチで独りで酔いつぶれる。
B子がカレシと○×駅で待ち合わせ。
C男がD美にプロポーズ。
……ああ、もう飽きてきた。
まったく――夜明けまであと一時間、か。……ん? なにあせってんだ? ……え? ビルの屋上に人が立ってる、今にも落ちそうだって? ……あ、あれか。
……あれはあの人が下した決断だ。放っておけ。
なに、止めないのかって? ……気持ちはわかる。けど……――けど、おれには、おれたちには何も出来ないんだ。夜の番人は、見張るだけ。つらいなら、見ないほうがいい。……
一名、ビルの屋上から転落、死亡。自殺……と。
……ああ、そうさ。おれは何も出来ない、人でなしさ……。
おい泣くなよ。……おれだって、本当は止めたいんだ。でも、おれたちが行ったところで、何も出来ないんだよ。人間にはおれたちの姿は見えないし、触れられもしない。声さえも聞こえない。
……ここで泣いてたらあんた、夜の番人は務まらないぜ。夜の番人になるために、あんたここに来たんだろ?
夜明けまでまだ少しある。仕事はまだ終わっちゃいないぜ。元気だしな。
―◇――◆――◇―
――残りも少なくなってきたな。まさかもう、泣いてなんかいねぇよな。……よし。
……あんただけだぜ。え、何がって? おれの仕事を引き継ごうとしてここに来た奴らの中で、あーゆー場面とおれの態度見て、帰らなかった奴。……あんた、いい番人になれそうだ。おれが保障してやるよ。……なに笑ってんだ? へ? 意外に優しい、見直したって? ははは……なにをご冗談を……
―◇――◆――◇―
……もう夜が明けるな。……ん? なんだ? ……え、試験? そうだったっけか? ……ま、いいや。別にいーだろ? そんなの。あんたは絶対夜の番人になれる。決定。文句言われたらいつでも来な。おれが文句言えねぇようにしてやっから。
……あ、そーいや名前、言ってなかったな。へ? 言っても意味ないって言い出したのはおれじゃないかって? だってあんたはもう夜の番人に決定。任命されたんだ、おれにな。――自分でも驚きだぜ。まさか、あんたがそんなに才能ある女だとは思わなかったからな。それなのに、現役の名前ぐらいは知っててもおかしくねーと思うけど?
へ? まだ言わないで、私が正式に夜の番人になったら、その時に教えて? ……わかったぜ。そのかわり、その時は必ず真っ先におれのところに来てくれよな。……よし。
♪指きりげんまん嘘ついたらハリセンボン飲〜ますっ、指きったっ♪
笑うなよ、結構真剣なんだぞ?
あ、もう終わりか。――次に来る時は、任命証忘れねーで持って来いよ。
……待ってるぜ。
――続・夜の番人――
おっ、その任命証は……君だね? 試験に合格したって言うコ。確か五年ぶりの合格者だって聞いてるよ。あの難しい試験によく合格できたね。……え? 現役と約束した? へ〜、そうだったんだ。あの人はいつもグチばっか言ってるけど、あの人は誰よりも自分の仕事に誇りを持ってるんだ。ぼくも何回か話したことあるけど、あの人、何かフツーそうで全然フツーじゃないね。よく分からないけど、特別なモン……って言うのかな? そーゆーの、感じるね。
……ってしゃべりすぎちゃった。ゴメンね。さて、前にも来た事あるらしいからわかると思うけど、ここをまっすぐ行けば“現役の特等席”につけるから。
じゃ、また。合格おめでとう。
―◇――◆――◇―
う〜ん……眠い。チクショウ、今日も仕事か。しゃあない、行くか。
まったく、面倒くさがりのおれにこんな仕事を押し付けやがって……
神サマ、恨むぜ。……おいそこのあんた、笑うなよ。
……ん!? あんたは確か――前に、おれんとこに来た! おうおう、よく来たな。――任命証もちゃあんと持ってきたな。どれどれ……?
『任命証 ミュール・ネイネライド殿』……へ〜、そーいえば名前知らなかったな。ミュール・ネイネライド、か。覚えなくちゃな。え〜っと、『あなたは第五十七回夜の番人採用試験に合格したのでこれを賞します 神の遣い連合』
……何だよ、もっとちゃんとしたの作れねーのかよ。――ったく、神遣連(しんけんれん)も落ちぶれちまったよなぁ……え? 神遣連って何かって? そりゃあ“神の遣い連合”の略称だよ。覚えときな。
……え、それより、おれの名前を教えろ? 約束したじゃないって? ……フッフッフ、そう簡単に教えちゃあこのお話が面白くなくなっちまう。だろ?せっかくリクエストしてもらってアーキのやろうがやろうなりに頑張って書いたんだから。 そこで、おれから一つ、テストを出す。それに合格したら、おれの名前を教えてやるよ。役立たずでバカなおれの名前をな。
んで、テストの内容はこれだ。
まず、今からこの下にある公園にいる五十人の人間のうち、五人の目だった行動を記録する。
次に、それをおれに報告する。そしたら、また別の五人の行動を観察する。
これを繰り返して、夜明け三十分前に全て終わらせる。
……へ? 五十人もいるのに、三十分前には終わらないって? 夜の番人にはスピードとパワ――パワーはいらないか、とりあえずスピードも重要なんだぜ?
よし、あと十秒後に開始な。大丈夫大丈夫。あんたなら――ミュールなら出来るって。……5、4、3、2、1、ゼロ! よし! テスト開始!
―◇――◆――◇―
……残り人数二十五人。残り時間一時間二十分。――おっ、来たな? どれどれ……
……よし、オッケイ! 残り二十人。残り時間五十分。――これで、おれのチェック時間が長すぎるせいでダメだったらどうするかな……
って、おれの独り言はいいんだ。あんたは早く行けって!
―◇――◆――◇―
……おっ、来たな。……よし、オッケイ! 残り五人。残り時間――十分。
……無理か? へ? 勝手にダメにするなって? ミュール、お前ちゃんと――やってるな。
――残り五分。残り人数三人。
――残り一分。残り人数……おっ、来たな? ……よし! オッケーイ! ハイ終〜了〜
ピッタシ三十分前! 合格ッス。
――へ? なんでこんな無茶っぽいことさせたのかって? ……ま、その〜なんだ――あんたと、もう少しだけ“おれ”と“あんた”の関係でいたかったのさ。そうじゃないと、この二人称は面白くないし。ま、これはアーキの勝手な固定概念だけどな。
あ、ほら見ろ、流星群だ。きれいだなぁ。
……あんたも、そう思わないか?
―◇――◆――◇―
さて、じゃあお約束どおりおれの名前をお教えするとしましょうか。――え? 今の話を聞いたら聞きたくなくなった? 一生“あなた”は“あなた”でいいって? ――やっぱ、あんたも面白い事言うな。よし。
……う〜ん。でもなんかしっくり来ないなぁ……どうしようかな?
――あ、おれ今いい事思いついてしまったよ。
―◇――◆――◇―
あ、おはよう。
もう結構なれた? ――ああ、まぁあの人だからね。楽しいだろうね。
ぼくなんかはいっつもこーやって皆の遅刻検査みたいなのをやってるだけだからね。
――あ、サデムさん、おはようございます。……え? おれより先に名前言うなよって? ……あっ、すいません! ……でも、ま、いーじゃないですか、ね。
あ、ちなみに言うとぼくはウェルゴ。じゃ、仕事頑張って、ミュール!
―◇――◆――◇―
――ったくウェルゴの奴……おっと、そんな場合じゃなかったな。うん。じゃ改めて……
えっと、おれが夜の番人のサデム・ジャスだ。これからクビになるまでの間、よろしくな!
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2005/08/15(Mon)12:40:53 公開 / あきてる
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■作者からのメッセージ
ちょっと『……』がまだ多めですが、+続編です。
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