『犯罪者から血を受け継ぐモノ 1話』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:刃
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人は百億万の奇跡が重なり合い、生まれる。
親は子を選べず、子は親を選べず。これが人生最初の不幸だ。
なのに私は、最悪な父親に巡り会い。
最低な人生を歩んでいる――
―犯罪者から血を受け継ぐモノ―
平成十四年四月十六日――。
私は県立の高校に進学した。知り合いが誰一人いない学校へ。
今日は入学式。カーテンから差し込む光を浴びて目覚める。
着替えてリビングに行っても、誰も居ない。居るはずがない。
トーストでパンを焼き、その間コーヒーを沸かす。
ベランダに出て、花たちに水をやり終わってることには、パンも焼ける。
軽く朝食を食べ終わると家を出る。
あまり家には居たくない。一人で居ると思い出しそうだから――
今日から歩きなれない通学路を歩く。春にもなって鳥たちも活発に動き出す。
チュンチュン鳴いて、「春だよ」と言ってるのか、私を見て「何しに来た」
と問いかけてるのか、真相が鳥たちにしかわからない。
坂を上がると、校門が見えた。普通の人にとってはすがすがしく、
校門を抜けれるだろう。でも私は違う。胸によぎるのは、【不安と恐怖】のみ。
校門をまっすぐ行くと掲示板があった。そこにはクラスが張り出されている。
「真美ちゃん一緒!」
「ホントだ! 香奈ちゃんよかったね!」
友達同士が同じクラスになって、喜んでいる声が聞こえる。
正直うらやましくなった。私も普通に生まれて、普通に育ったのなら
そうやって喜び合える友達もいるはずだ。
だけど、そうじゃない。現実は違う。あの男のせいで私の人生は狂った。
そんな苛立ちを押さえながら、自分のクラスを探す。
― 一年A組 ―
自分のクラスがわかったところで、教室へ向かう。1年の教室は3階にある。
私のクラスは階段を上がってすぐ横にあった。
教室にはいると黒板には、席順が書いてある紙が貼ってあり、
私の席はベランダ側の一番後ろ。
内心ほっとした。一番後ろの一番端って一番目立たないから。
みんなから、「暗い人」って思われてもいい。
人との関係を持ちたくなかった。出会ってもすぐ別れがくるだけだし。
しばらくして、担任が教室に入ってきた。
「今日から1年間君たちの担任をすることになった、羽島 尚人(はじま なおと)と
言います。よろしくな。」
担任こと羽島先生はありふれた挨拶をした。そして、一人一人順番に出席を
取り始めた。
「八女 憂(やめ ゆう)――。ぁ」
私の名前を呼んだ瞬間羽島先生は「こいつがあの」って感じの顔をした。
「はい。」
私が平然と返事をすると、ハッとして出席を続けた。
やっぱり教師達は知っているんだろう。多分入試で合格点数に達していたとき、
焦っただろう。そりゃそうだ。犯罪者の娘なんて人間誰しも近くにいるのは嫌
だから。
「赤垣 大輔」
先生がある生徒の名前を呼んだ。だが返事がない。
席は全部埋まっているから、来ていない人なんていないはずなのに。
ふと隣を見ると、一人の男子が机の上に伏せていた。
「寝てるのかな」と思い、確かめるため少し揺すってみた。
その時、かすかに見えた「赤垣」の文字。
「赤垣ー。いないのか? どいつだ? 」
未だに先生は名前を呼び続けている。それがうるさくなって、私はそいつを起こした。
「ねぇ、赤垣君。起きなよ。君呼ばれてるよ?」
「………ぅ………」
うなった! また二、三度揺すってみると、やっと起きてくれた。
「何?」
「赤垣君だよね? 先生が呼んでる。返事した方がいいよ」
私はそう言って、ベランダの方を向いた。
「赤垣!」
「は、はい!!」
「早く返事しろ!よし。居るんならそれでいい。」
「すみませんでしたー。」
そいつが立って、深々と頭を下げると教室中がドッとわいた。
先生が全員の名前を呼び終わるとナイスタイミングと言わんばかりの
タイミングでチャイムが鳴った。それと同時に挨拶をして先生は出て行った。
「ぇ、、、ねぇ!!」
「な、なに?!」
いきなりびっくりした。もう話す事はないだろうと思っていたやつと
もう一度話すとは思っていなかったから。
「君、名前は?」
「は?あ〜。八女」
「下は?」
「憂」
「憂ちゃんかぁ〜。よろしくね!」
「優ちゃん」他人にそう呼ばれるのは十六年間」生きていて初めてだった。
「俺の名前はね〜」
「知ってる。赤垣大輔でしょ?」
「何でしってんの?! もしかしてファン?」
えへへと笑いながら聞いてくる。
「さっきあんなに名前呼ばれてたら、覚えたくなくても覚えるから。」
「そっかぁ〜。っちぇ」と言いながら、そいつはまた伏せて寝に入った。
青い空、時々流れてくる雲そんなモノ達がきれいだなって思っていたら、
また声をかけられた。
「憂ちゃん。」
「なに?」
「さっき言いそびれたけど、俺のこと大輔って呼んで」
「嫌だ。」
「何で?」
「男を下の名前で呼んだことがないから。」
そいつは一瞬びっくりしたような表情をしたが、すぐに笑顔に戻り
「じゃぁ、俺が一番?」
なんて聞いてきた。まだ呼ぶとか言っていないのに。
「まだ呼ぶとか言ってないじゃん。」
「憂ちゃんは優しいから呼んでくれるよ。」
私が優しい?何でわかるの?今日出会って少し会話して、どこに優しく感じられた?
「どうして、優しいとかそんなことわかるの?」
疑問をぶつけてみた。でもそいつからは思ってもみない答えが帰ってきた。
「だって、さっき俺が寝てるの起こしてくれたでしょ?それに外の景色見て微笑んでる
顔見たら、誰も悪い人なんて思わないし。」
「寝てたんじゃないの?」
「それは憂ちゃんの勘違い。」
腹の立つやつだ。予想をしない言葉を発しては、笑顔で笑いかけてくる。
「で、呼んでくれるの?くれないの?」
「どっちでも。。。」
「じゃぁ呼んでね!」っと言ってまた伏せた。今度は本当に寝たみたい。
それから二時間にも及ぶ入学式が始まった。校長先生の無駄に長い話や、生徒指導の
先生の普通に考えればわかる注意事項の説明。学校の代々伝わる校歌のお手本など。
かたっ苦しく、かったるい入学式は何度やっても嫌なモノだ。
終わった後はもう一度教室に戻った。
そしたら、隣の大輔君がまた話しかけてきた。
「ねぇ。ねぇ。優ちゃん」
「何?」
「家どこ?」
「勝山の方」
「マジで?! 一緒に帰んない?」
どうしようか迷った。まぁ、どうせ用事はないし。「いいよ」と返事をした。
「これで終わります。起立! 気をつけ! 礼!」
「ありがとうございましたー」
やっと学校が終わった。
「じゃぁ、帰ろっか。」
「うん。」
それ以来無口のまま、校門をでた。
それから少し歩いたときに彼が口を開いた。
「ねぇ。優ちゃんって何人家族?」
どう聞かれて、言葉が出てこなかった。本当は三人。でも今は…………
「いない。」
「え?」
「家族なんて一人もいないよ。」
「あ。ごめん」
彼は何かを察したのか、謝ってきた。
「いいよ」
また無言が続き歩いていると家が見えてきた。
「私ここだから」
そういうと彼は、笑い出した
「どうしたの?」
「いや〜。家近すぎでしょ。俺もこのマンション。」
「うそ。何階?」
「五階の五号室。優ちゃんは?」
「五階の四号室――」
私が答えた瞬間彼はさっきよりも増して笑い出した。
「あはは〜。もぉ〜。近すぎだって!」
「私に言われても……」
「まぁいいや。上がろうよ」
階段を上がり、五階に着くと「じゃぁまた明日」と言ってわかれた。
また初めての経験。あれほど人と関わりを持つことに違和感のあった私が、
すんなりと、何の疑いもなく彼と話せた。「じゃぁまた明日」明日も仲良くできるか
どうかわからないのに。いつあのことがバレて、彼が遠くなっていくかわからない
のに、約束してしまった。
今日と同じ明日なんてないのに…………
+++
コン――。 コン――。
日曜日――。誰かがドアをノックする音で目が覚めた。
面所で顔を洗い、軽く手ぐしで神を整えて玄関へ向かった。
「はい。」
「俺! 大輔!」
その名前を聞いてすぐにドアを開ける。
「なに?どうしたの?」
「いやぁ〜。暇だからどっか行こうよ!」
と彼の得意の笑顔で誘ってくる。
嘘の……一瞬の濁りもないその笑顔に、いつの間にか惹かれていってることを
私はまだ気づきもしなかった。
「私今起きたんだけど」
「待ってるよ。上がっていい?」
自分の家で待ってれば?と思ったが、口に出すのはやめておいた。
彼をリビングのソファーに座らせ、私は別の部屋で着替える。
「同じ部屋なのに広いよなぁ〜」
問いかけてるのか、独り言なのかわからないが一応答えた
「まぁ、一人部屋だしね。」
そう答えながら部屋を出て、キッチンへ向かった。
後から「コーヒー飲める?」と付け足して。
彼は「うん」とだけ答え、部屋を物色しだした。
普通は止めるであろうその行動もなんだか、おもしろく愛しかったので
ほおっておいた。
「ぁ! アルバムじゃん!」
やっぱりニコニコしながら私の生いたちの写真を眺める。
できたてのコーヒーを持って、隣に座るとある疑問をぶつけられた。
「何でお母さんしか写ってないの?」
予期せぬ質問――。どう答えていいのかわからなかった。
もし、本当のことを彼が知ってしまったら、もう彼とは話せない。
一緒に帰ることも、部屋でこうやって話すこともできなくなってしまう。
「ぁ……私、父親いないから。」
「そっか……あれ?お母さんは?」
どう答えていいのだろう。死んだ……この答えは間違えじゃない。
でも、「どうして?」って聞かれたら、どうやって答えればいい?
私にはわからないよ―――。
「し、死んじゃった。」
「……ごめん……」
「ううん」
彼はそれ以上聞かなかった。こんな優しい男の子は初めてだ。
今までの男はみんな、人のことをちゃかしたり、家庭の事情を知ったとたん無視。
最低な奴らばっか。でも、彼は……大輔君は違うのかな?
「ねぇ。憂ちゃんって、ちっちゃい時かわいいね」
「え…?」
「だって、無邪気に笑ってるんじゃん! 」
ニッって私の方を向いて笑ってきた。だから私も思わず、「プッ」って吹き出しちゃった。
「今もかわいいのに。何で笑わないの?」
と真剣な顔をして聞いてきた。大輔君は顔立ちがはっきりしていて、輪郭はスラッときれいで、
きりっとした瞳。モテるだろうな。といわせんばかりの顔立ち。
そんな大輔君が真剣な表情でこっちを見る。
何も悪いことをした訳じゃないのに、何かしら罪悪感に包まれる。
「笑いたいんだけどね…。大きくなるにつれて、素直に笑えなくなっちゃった。」
そう言ったとたん。私の頬に涙が流れた。泣きたい訳じゃないのに、泣いちゃいけないのに。
涙は勝手に頬を伝い、膝の上で弾けた。どんど溢れてくる涙は止められなかった。
「…ぅ…ひっく…」
流れる涙を必死に止めようとしていると、不意に歯視界が暗くなった。
「ごめんね……もう、聞かないから。何も聞かないから。何か理由があるんだよね。言えないんだよね。ごめん……。」
大輔君はそう言いながら、きつく抱きしめてくれた。私が泣きやむまで。ずっと―――。
「ご…めんっ…ね」
泣いたせいで呼吸が乱れて、言葉がちゃんとでない。でも、大輔君はわかってくれた。
「うん。いいよ」
二、三度頭を撫でて、「よし!」と言うと立ち上がった。
「じゃぁ、帰るわ!今は一人の方がいいでしょ?」
コクンッ―――。私がうなずくとまた一度頭を撫で、「おじゃましました」と一言残し帰って行った。
ガチャ――。
「ただいま」
「あら。お帰り大輔。はやいわねぇ。今日はあんたの好きなすき焼きよ!」
「ごめん。今日はいいや」
「え……。どうしたの?具合でも悪いの?」
「俺部屋行くわ」
憂ちゃん―――。一体何があるんだろう。でも、聞けないよな。
あ〜もう。どうすりゃいいんだよ! 変に聞いて嫌われたくないし。あ!もう何も聞かないって言っちゃったじゃん。
一目惚れって………大変だよな―――。
コンコン――。
「大輔ー。入るわよ?」
「何?」
「ほら。おにぎりでも食べなさい。」
「あぁ。置いといて」
母さんは、テーブルの上に置くと、そのまま座った。
「今度は何?」
「何かあったの?顔が暗いわよ」
「いいじゃん。何でも」
「ママに言えないことなのね。そうなのね!」
誰がママだよ。と吐き捨ててベットに横になった。
「何よ。。乗ってくれたっていいじゃない。あそうそう。」
「またかよ」
またくだらぬ話だろうと思い、寝ながら聞こうとしたら、俺にとっては重大だった。
「隣に引っ越してきた…確か八女さん?あの子のお父さんは、あの子のお母さんを殺したんだってね」
俺は耳を疑った。父親が母親を殺した?!やっと、憂ちゃんの言ってと事が繋がった。
でも、どうして……どうして父親が母親を殺すんだ?
「何で?何で殺したの?」
「さぁ、母さんも詳しくはわからないけど…色々と問題を抱えてる見たいよ。じゃぁ、母さん戻るわね」
そう言って母さんは出て行った。
あれから何時間もたつのにまだ、俺の頭の中には
「あの子のお父さんは、あの子のお母さんを殺したんだってね」
母さんのあの言葉が頭を巡る。なぜ、憂ちゃんが笑顔を見せなくなったのか……。
泣いた理由がわかった。でも新たな疑問が次々と浮かんでくる。
俺は、これ以上考えてもらちがあかないと思い、寝ることにした。
2005/08/11(Thu)00:07:10 公開 /
刃
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■作者からのメッセージ
あぁ。。。急いで打ったので、誤字脱字等あるかもしれません。。そのときはご報告を。
+++
どんどん展開が…。この先予想すると、もしかしたら予想できるかもしれません。(意味わからん
でも、予想しないでくださいね。(何でや!
まぁ、、、まだ終わりません!
+++
作品の感想については、
登竜門:通常版(横書き)
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