『進路希望調査票』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:犬                

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なんとなく思う。もしこの世界に僕の考えたストーリーがあっても
僕はきっと何もしない。何も知らない

切り裂くような風。今日も寒いもう6月だというのに…今年は冷夏だろうか?
ちょうどあった自動販売機で缶コーヒーを買う
「ゴスッ。」
うしろでなにか音がした。すぐ振り返る。風で倒れた植木鉢が悲しく転がっていた。
「はぁ」
僕の人生はずっとこうなのだろうか…
高校3年生の僕はもう進路も決まってなきゃいけないはずだ。けど僕には夢がない。
何でもできそうな気がして何をやればいいのかわからない。かといって誰かに道を決められるのも嫌だ。
ちょっと前まで小学生だったはずなのに。僕はいつの間にここまで来てしまったのだろう。
後悔する生き方はしてないはずだけど振り返ると何もないことに気づく
どうせ今こんなに悩んでいても普通のありきたりな未来が来ることもわかっていた
だから僕は夢を見てしまう

こんな事を考えているといつの間にか家に着く。
「ただいま。」
「お帰り。」
自分の部屋へ行きテレビをつける。ちょうど6時のニュースがやっていた。
最近は嫌な事件が多い。日本でも先週テロがあったところだ。
まぁ田舎の人間には関係ない話なのだが…
制服を着替え僕は夕食を食べに下に降りる。

・・・・・はずだった。
下の電気が消されている…さっきまで母さんがいたのに。
「かぁさん?。」
「…。」
静かに階段を下りる。何かがいるような感じがする・・・
電気のスイッチに手を伸ばす。
「カチッ。」

「パンッ。」
…倒れるかと思った。すごくびっくりした。
けど僕の前にはなぜか家族が勢ぞろい手にはクラッカー。
「誕生日おめでとう〜。」
…はぁ
「驚かすようなことすんなよな。」
「いいじゃんか。こんなに祝ってあげてるの中学生以来だぞ。」
馬鹿な妹が馬鹿にしたような口調で言ってきた
「まぁたまにはいいんじゃないの?こんなに仲のいい家族珍しいぞ。」
父が言う。
「うるさい。」
「さぁ今日は外食よ。」
普通かぁさんが作るもんじゃないのかよ!
そう思いながらも僕は車に乗ってしまう。はぁ…

家族みんなは僕にあぁしろとかこうしろとかまったく言ってこない。
言い過ぎというのも困るがこうも言ってこないとは…
いいのか僕が引きこもりになっても
まぁそんな勇気もないか…

さむっ
「暖房つけて。」
「あぁわかった。」
去年なんて4月にはもうクーラーつけてたのに…
地球温暖化か…
あっ寒くなってるんだから違うか…
「ついたぞー。」
 バタンッ
外の寒さは半端じゃなかった。
レストラン家族といくの久しぶりだな

ふと横を見ると空が真っ赤になっていた。
とても綺麗で見とれてしまうような夕焼け…夕焼けか?
「すごい夕やけ。そら真っ赤。」
妹がまた邪魔をする。まぁとにかく店の中に入ろう
バタンッ
「いらっしゃいませぇ。」
窓側の席に座る。なんとなくさっきの夕焼けが見たくて。
「ほんとにすごい夕焼けだな。ほら明(あきら)見てみろよ!」
「もう見たよ。」
「お兄ちゃんなにその態度!今日はお兄ちゃんの誕生日なんだからね。」
「あぁ。」
また窓を見る。なんとなく怖いけど何度も見てしまう。
気がつくと僕の目の前にはとても見たこともないくらいの…ステーキだ。
まぁいまはこれを食べてしまおう。
…ごちそうさま。
すばやく車に乗り込む。今日はなんか変な日だったな。
車の窓からは町の光と空の赤がまだかすかに残っていて。なにか絵でも見ているような気分だった。
「おい。明、高校卒業したらどうするんだ?」
「まだわからない。」
「そうか。夢とかないのか…。」
「ウン。」
「お兄ちゃんは一生部屋でテレビ見てるんだって〜。」
「光(ひかる)やめなさい!。」
「おかぁさんは大学に行けばいいと思うけど。」
「うん。」
…どうせどんなに悩んだって他の人と同じような生き方しかできないんだもんな。
けど他人と同じでも自分が楽しければいいのかな…
けどやってて楽しいことってないしな。しいていえばゲームくらいか…
このまま何も見つからなくても僕はどうせ暮らしていくんだろうな。やりたくない事やって他の人と同じように…

「ズゴォォォォォォォォォ。」
すごい音で僕の考えはかき消された。
ジェット機か…
「ついたぞ。」
家に着きすぐ自分の部屋に行ってテレビをつける。もう日課になってしまった。
「ザァァァァァァァ。」
砂嵐だ…。
どこのテレビを回しても砂嵐。
「アンテナか?」
…調べたが何んでもなかった。
「テレビ映んないんだけど他のうちもそうなの?」
「そうらしいわよ。なんでかしら?」

ゲームでもするか。まぁそのうち直るだろ。
……レベルを56まで上げたところまでは記憶があるのだがいつの間にか僕は眠ってしまっていたらしい。
セーブ画面からチャンネルを回した。
どこも砂嵐だった。
「あっ映った。」
僕は運がいいかもしれない。だがつまらなそうな番組だ。ニュースなら何とか許せたがこの番組はもろ教育番組と言った感じだ
画面に一人の男が映っている。外人だ。
外人のしゃべる声にあわせて通訳が抑揚のないしゃべりでついてくる。
「…ここは日本ではない、繰り返すここは日本ではない…フリージア…新…国…。」
?音声の調子が悪いらしい。先ほどから画面がちらついている
日本ではない?
「町内会からお知らせです。ただいま電話回線やテレビ通信機器が一切使えなくなっております。もうしばらくお待ちください。」
「…。」
町内会の車が通り過ぎていった。
…どうなってしまったんだ。またテレビに目を向けたがもう先ほどの砂嵐に戻っていた。
下に行ってみるとリビングにみんなが集まっていた。
朝からみんな集まるなんてなんか新鮮だ。
「父さん。会社は?。」
「電車が動いてないんだよ。」
「なんで?」
「わからない…。電話も使えないから会社に連絡も取れないんだ。」
「車は。」
「国道は渋滞で入れないってさ。」
「光は?。」
「私はみんながいるからいるの。」
「…。」
お前は学校が近いんだから行けよ…と思ったが言わないでおくことにした。
とにかく電車が使えないんじゃ俺も高校にいけないな…。
さっきの続きが映ってないだろうか?
僕はまたテレビを見に自分の部屋に戻る
砂嵐をずっと見る。…見るのが怖い。けど見なくちゃいけない。

やはり僕は運がいいようだ。すぐさっきの外人が出てきた。

「ここは新国家フリージアです。皆さんは解放されました。」

これからはもう逃げられない。
これからは言い訳は許されない
何もないじゃない。しなかっただけだ。
そして僕は決めた。







2005/07/23(Sat)22:59:59 公開 /
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■作者からのメッセージ
授業で先生が日本はミサイルを撃たれたら抵抗できないからすぐのっとられるぞ。
と言っていたので書きました

完結しちゃいました

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