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『迷う金魚』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:きゃむ
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昨日、御祭りで晃が赤い赤い金魚を買ってきた。
最初は、すくうのが破れて苦労したけど、なんとか一匹だけ取れた。と笑う晃は日焼けをした
普通の17歳の男の子だった。その金魚を貰う私というのは24歳のOLであり、恋人だっている。
「ありがとう」と私がビニルの中に入り器用に泳ぐ金魚を眺めると「気に入った?」と晃は
目を少し輝かせながら言う。ここで本当の事…「私、生き物とか苦手なのよね。」というのは
何故か私の良心に反する事だと思ったので「うん。可愛いわね。」と言っておいた。
私が生き物は苦手な理由は「死」というデメリットだった。生き物なんだから仕方ない。と
前誰かに言われた記憶があるが、愛着を持って育てだ分、死んでしまった時のダメージは
大きいと私は考える。金魚の寿命はいくらくらいなのだろうか?そう思いながらまだ金魚を
眺めていると後ろから晃が「その金魚の名前どうする?」とか「何に入れて飼うの?」とか
色々言っていた。「茜さん。」いきなし名前を呼ばれてびっくりして振り向くと晃は
すぐ傍にいた。「名前は、俺の名前付けてよ。」そう言って柔らかく笑う晃は大人びていて
とても17歳の毎日サッカーに明け暮れる青年には見えなかった。
晃には妙な色気があるのだ。と私は考える。年上の女をも魅了してしまうその笑顔。
さぞ学校ではもてもてなのだろう。そんな事を考えていると「ね、ね。名前!どうすんの」
よっぽど自分の名前をつけて欲しいらしい。私が折れて「いいわよ。じゃぁこの金魚の名前は晃ね」
といった。そうすると晃は満足そうに笑い「俺、時々晃の様子見に来るから!ちゃんと育てろよ!」
そう言い私の部屋を出ていった。まるで晃は嵐のようだ。
その晃というのは、私の隣の部屋に1人暮らしをしている、いわば隣人だ。
何回か挨拶をしていくうちに、妙に晃から話しかけてきた。
私に異性として好意があると知ったのは、挨拶を始めて3ヶ月後の事だった。
私は丁重にお断りをした。「ごめんなさい。私、恋人がいるんです。」(これが丁重かどうかは分からないが)
そう言うと晃はがっかりした素振りも見せず「じゃぁ、俺と友達になってもらえませんか?」
この一言が私と晃の始まりだった気がする。それから毎回晃が美味しいと感じたお菓子を
わざわざおすそ分けしにきてくれたり、借りてきたDVDを一緒に見るようになった。
晃は私を引きつける力をもっている。
もちろん晃を異性として見た事がない。いっつも「人懐っこい弟」という印象だ。
もちろん晃の事は恋人には言っていない。恋人は独占良くが強いのだ。
もしも「時々隣の男子高校生が遊びにくる」と知ったら、とても嫌な事が起こると思ったのだ。
いつのまの夕方になっていた。ひとまずまだビニルの入ったままの金魚をテーブルに置き、
この金魚をいれる適度な水槽は無いかと物置の方へ向かう。
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2005/07/11(Mon)16:28:40 公開 / きゃむ
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■作者からのメッセージ
こんいちは。初めまして。
ここは始めてなので、とても緊張します。
これからちょくちょく話を書かせてもらうので
どうぞ宜しくお願いします。
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