『死神の嘔』 ... ジャンル:ショート*2 ショート*2
作者:瑠華                

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―誰かが謳っている?―

―それは誰の嘔?―

―何を謳ったモノ?―



『ばっかだなぁ、本当バカだよ人間って』
「バカって何よ!」
とっさのことについ反応してしまった。
でも誰だって自分の悪口を言われれば文句の一つは言いたくなるだろう。
それに本当にバカにしたような声だったから。
「てかあなた誰!ここどこ!」
私はついさっきまでマンションの屋上にいたのだ。
それなのに私は真っ白な場所に立っている。

そして私の前に立つのはこの空間に不釣合いな少年。

少年の印象は真っ黒。
纏っているローブがそうさせた。
でも髪は綺麗な銀だし肌は真っ白。
羨ましいとも思う。
何しろ私は普通の日本人の黒だったから。
でもやっぱりおぞましかった。

血の色に似た赤い眼が。

「本当にここどこよ?あぁ!もしかして天国!?」
『ふざけんな、ボケ』
「だぁぁぁ!ボケもダメでしょ!」
……いつからツッコミになったのだろう、私は。
『お前さぁ、自殺って痛くない?』

自殺。

そうだ、私は死んだハズだ。

マンションの屋上から飛び降りて。

「……やっぱり天国の入り口じゃん」
『救いようのないヤツだ』
少年はやれやれと大げさにため息をつく。
『自殺しても、天国行けるって思ってた?』
「当たり前でしょ!死んだってことには変わりないし!」
今思うとやっぱり死んだ方が楽だった・・・と思う。

あいつらの顔を見るくらいなら、死んだ方がましだ。

『可愛そうなヤツ、いじめくらいでさぁ……』
「いじめくらいって何よ!……あれ?」
なんでこの少年は私の自殺した理由をしっているの?
「それより君、誰?」
『死神』

……はぁ?……

「私悪いことしてないわよ!なんで天使じゃなくて死神なの!?」
『お前、お前の魂殺したろ?』
「え……」
『その時点で地獄行き決定ってワケ』
地獄って……鬼とかがたくさんいる……地獄!?
「嫌よ!私なんかよりあいつらの方が地獄行きなんだから!」
『いじめなんてどこでもあるだろ』
「私の前で陰口ばっかり!笑って……笑って!」

―あんたって本当にトロイし、キモいよ―

ぺたり。
立ちたくない、吐き気がする。
悲しい、悲しい。

『でもさぁ、あんたのことを信用してくれてたヤツもいるだろ?』
親友。部活の友達。幼馴染。
『そいつらを、悲しませていいってのか?違うだろ』
手が伸びてきて私の頬を撫ぜる。
とても冷たかった。


でも温かかった。


『でも、終わり。さようならってヤツ』
「……謳ってよ」
『は?』
「謳って」
『……聞こえてたのかよ』


真っ白な空間には。
真っ黒な少年が。
嘔を謳っていた。




2005/07/10(Sun)02:20:48 公開 / 瑠華
■この作品の著作権は瑠華さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
やっぱり自殺した人って地獄行きなんですかね?
でも天国とか地獄がある時点で私は幸せだと思います。
死んだらどうなるか。
そのまま何も考えられなくなって消えてしまうのか。
そのまま天国が地獄へ行くのか。
行けるならまだ幸せですよね。

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