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『BOY』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ユウタ
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パソコンに向かう一人の若者。かなりいらついた表情でキーボードを叩いている。まるぶち眼鏡が汗をかく鼻までずり落ちている。
カタカタ…カタ…カタカタカタ‥
忙しく指が動く。
画面には「チャット」と書かれている。某HPのチャット中喧嘩が起こったらしい。
「なんのつもりだぁこいつはぁ・・!」
「「あんたバカじゃないの?そうやって熱中してさ。冷静になりなよ。」」
「「もうやめなよ二人とも!」」
また若者の指がキーボードを叩いた。凄い剣幕だ。
「「あああああああああああああああああああああああああ」」
と画面に表示される。
「「うっははは!既に狂ったか。」」
「「マナー違反だよ二人とも!」」
バァン!
キーボードを両こぶしで思いっきり叩いた。
「「おfcdtgvbvcxgtgtgfvgsc」」
と画面に表示される。
「「BOYさんが入室しました。」」
「「また一軒みっけ……っと‥。」」BOYと名乗る者が入室。
「何だこいつ‥」と若者が呟く。
若者の喧嘩相手、YOUが発言。
「「こんにちわ、BOYさんw」」
若者の名前、BAKAが発言。
「「貴様YOU!こういうときだけいい気になりやがって‥」」
「「うるさいなぁ。そんな喧嘩してるならさ、直接会いなよ。」」
BOYが発言した瞬間、パッと周りが真っ白になった。そこは外でも若者の部屋でもどこでもなかった。本当に周りに何もない真っ白の空間だった。
そして目の前には小学生。地べたにぺたんと座り込んでいる。
凄くびっくりしている表情だ。
「貴様が‥。YOUか?」
「え…。え?はい‥」
「ハハハハハハハハ!こ〜んなガキがおれと喧嘩していたなんてなあ!!」
「あ〜い。そこまで‥。」
ニット帽を眼のすぐ上までかぶり、エアガンを右手に持っている青年は、若者に近づいた。
「どうも、BOYです。」
「ここはどこだ?」
「パソコンの中♡」
「嘘いうな。」がばっとBOYの胸倉をつかむ。
「嘘じゃないよ。俺がここに二人を連れてきた。証明してあげる。」
ぱっと景色が変わった。地面にはコンテンツの文字。
ゲーム、料理、電車、地図、映画‥。ここは大型ホームページのようだ。
すぐ上には、マウスの矢印がいくつも動いている。
「………ね?ここはパソコンのホームページの中。」
「なんでここに俺達を連れてきた!?」
「パソコンってのは年齢関係なくチャットしたり、喧嘩したりできるでしょ?そこがパソコンのいいトコなんだけど‥。」
青年はエアガンを発砲。小学生のほっぺのすぐ横を掠めていく。
「PCの中で二人みたいに喧嘩してたりすると…」
パッと景色が変わる。
地面には「心メーター」と書かれている。凄い数のメーターの値が上下している。ここは人の心を管理するページのようだ。「心メーター」のタイトルの横に「管理人 BOY」と書かれている。
「こうやって人の心が傷ついていく。これがゼロになるとそのチャットや掲示板は自動的に削除される。それを防ぐのが俺の仕事。」
バッとBOYを離す若者。
「じゃあ、こいつをひねり潰せばいいんだな?」
小学生はがくがく震えている。
「任せとき♡」
パン!!!
エアガンの弾は若者の心臓を貫く。
若者は何も言わずゴトンと倒れた。
「喧嘩のデータ収集完了。」
若者の目の前は真っ暗になっていった。
BOYの姿はみるみる遠くなっていく。
若者は目を開けた。
画面上のチャットには「「BOYが退室しました。」」と表示されていた。
そしてパッと画面にあの心メーターのページが映し出されていた。
そこには血を流して倒れている自分と、がくがく震えながら座り込んでいる小学生の姿があった。そしてBOY…。
BOYがパン、とエアガンを撃つと小学生も倒れた。
画面がパッとチャットに戻る。
「ふざけやがってクソBOYが…」
若者は力が抜けたようにベッドに倒れこんだ。
起きた頃には喧嘩のことなど忘れていた。
もちろん、BOYという青年のことも。
2 某アバターゲームにて
オンラインゲームは本当に便利だ。便利というか、楽しい。アバターを自分で作って、チャットしたり、服を着せたり、あるいは冒険にでるゲームもあるだろう。そんなゲームでも、BOYは活躍する。心メーター(BOYが管理する人の心を管理するぺージ。検索してもでてこない。)が爆発して、そのページがつぶれないように。
もちろんBOYが誰かは誰も知らない。会っても、記憶は消えてしまうからだ。
さて、オンラインゲームの中に、「スマッシュ あどべんちゃー2」というゲームがある。
内容はなかなか豪華。自分で髪型、顔、服、武器などを選び、キャラクター(アバター)を選択する。完全3Dで、フィールドは奥が見えないほど広く、かなりリアルだ。もちろん自分のアバターもリアルで、ところどころ可愛いモンスターや、どでかいモンスターがうろついている。それを倒しながらお金をため、武器を買ったり、服を買ったり、髪型変えたり…。とにかく自由度100%。魔法使いや戦士などの職業から、遊び人まで様々な職業につくことができ、中には営業マンなんてのもある。店を開いて商品輸入して、繁盛を目指す。こんなことまでできるのに、全て無料なのだから、当然プレイ人数は爆発する。そこでは色々なおしゃべり(チャットまで出来るのだ、このゲーム。)や交渉(アイテム交換可能。)が繰り広げられる。そこには言い合いや喧嘩などもあるだろう。
ドリングスという町がこのゲームの中にある。言えば、このゲームの首都。いつもにぎわっている。営業マンなどが宿を開いたりしているので、宿に入ればそれはもう暖かい空気が流れるものだ。ここには格闘場があって、多くのプレイヤーが腕試しに出場する。レベル制限があって、初心者コース、中級者コース、ベテランコースで分かれている。そこはトラブルが多発。利用規約に「ドリングスの格闘場」の規約まであるほどだ。反則技やひん死状態なのに止めを刺し、言い合いになったりする。大人達がこんな小さな問題で苦情を送ったりもするのだ。それでもレベル上げがしたいなどの願望がある人たちがここに集まる。人気なのだ。
今日もあるフィールドでけんかをしているユーザーがいた。
「「おい!」」
「「はい?」」
「「知ってたか?人がモンスターと闘ってるのに横から攻撃するのはマナー違反なんだよ。」」
「「でもさぁ。君がそこで闘ってるから後がつまってるんだよ。ここは小道なんだから。」」
「「仕方ねえだろ!始めたばっかなんだから!」」
「「暴言はきすぎ。なんで熱中してんの?」」これがとどめの一発だった。何故冷静に話し合いが出来ないのだろうか。「「しねしねしねしねしね」」とぶち切れたユーザーが言う。その途端そのユーザーは接続を切った。
「「待ったほうがイインじゃん?」」ニット帽をかぶり、右手にエアガンのアバターが発言した。その途端接続を切ったはずのユーザーが戻ってきた。
「「うわ!戻ってきた!」」そういったのはラットというユーザー。レベルは23。
もう片方のユーザーは名をヒィトと言った。レベルは45。
そしてそれを引き止めたのが「BOY」。レベルは1208。異例のレベルだが、このゲームにレベル制限はなかった。
「「ずっと見てたけどさ。俺がこまるんよ。今ので大分下がったわ、メーター。」」
「「うるせえなぁ。口出しすんな!」とラット。
BOYがエアガンを発砲。ラットのすぐ後ろの森が吹き飛んだ。
「「決着付けようさ、二人とも。喧嘩はいくない。」」
そういった途端、ラットとヒィトは真っ白な空間にいた。その目の前には、BOYが鼻歌を歌いながら立っていた。
3 BOY VS ラット&ヒィト
このとき二人は何を思っただろうか。BOYという存在を信じられなくなっただろうか。
いや。夢だと思ったろう。夢でもこんなことはない。
PCの中へ、引きずり込まれたなんて。ラットのプレイヤーが口を開く。
「ここはどこだよ、BOY。」
BOYはエアガンをくるくる回している。
「答えろBOY。ここはどこだ!」言いながら頭をかきむしった。
かすかに…。奥のほうから聞こえてくるBGM。いつも聞いている、あの音楽。引きずり込まれる直前も流れてた。そう。ドリングスのBGMだ。
身を切るような突風とともに景色が変わった。町人が、村人が。楽しそうに生活している。そこはスマッシュ あどべんちゃーの世界。
………笑えない。あまりにも笑えない。むしろ怖いぐらいだ。
「いらっしゃいませ、お二人様。」ニコッと笑いかけるBOY。
ラットは後ろを向いた。
「いらっしゃいだぁ…?」振り返りざまにBOYに一発。
BOYは少しだけよろけ、そこにあぐらをかいて座り込んだ。周りの町人がザワザワしている。
ヒィトは腕を組んでむっつりしている。
「BOYか。どっかで聞いた名だとは思ったよ。」ヒィトは苦笑した。
「あのチャットでもいたよ、こいつ。」
ハッとヒィトを見上げるBOY。焦っているのか‥。
「あのチャットで、喧嘩してる二人を止めた奴だよ。そいつらが消えた後に見たものは、忘れねえさ。」
「何があった…?」ラットがヒィトに詰め寄った。
「画面にBOYたちがいた。」
「見られてたかぁ、ヒィちゃん。あそこにいたとはねえ。」
BOYはエアガンをリロードした。
「俺っちはね。このゲームが破裂しないように頑張ってんの。心メーターっていうさ、人の憎しみとか悲しみとかを管理するとこを守っててさ。」
銃口をゆっくりラットに向ける。
「でもこの弾を打ち込まれちゃえば大丈夫。嫌なことも忘れちゃうよ。」
ラットはかなり動揺している。
「よけろ!!ラットォ!!」
パァン!弾は地面に小さな穴を開けた。ラットは間一髪で右に逃れていた。
「つまり撃たれたら終わりなんだよ!!あいつのことも今の事も忘れちまう!」
「それでいいじゃん。心メーターが回復するんだから。」
「なぁ、BOY。人間は自分で悲しみから立ち直れるんだよ。」
ラットは息切れしながら言った。
「そのままでここで死んでいった人を知ってるさ。」BOYは微笑んで言う。
「とにかく撃たれるつもりはねえ。お前の存在をインターネット上に叩きつけてやる!」
ヒィトが熱を込めていった。
「周りの町人に迷惑だけど、暴れさせてもらうよ。」とラット。
「俺を殺す気?無理だと思うけどなぁ。」BOYはずり落ちたニット帽を持ち上げた。
エアガンをフルオートにして乱射してくるBOY。
「逃げろ!!武器屋だ!」
二人は人ごみの中に消えていった。
撃たれたら消える。あいつの記憶も。それじゃあいけない。人の心を誤解しているあいつに教えてやる。人は心を人に管理されることはない。悲しみや憎しみからは人は立ち上がれるんだ!
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2005/05/05(Thu)16:09:22 公開 / ユウタ
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■作者からのメッセージ
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