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『幽送屋』 ... ジャンル:ファンタジー ファンタジー
作者:みすと
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―設定―
現代日本、いまだ成仏できない幽霊や怨念の塊の悪霊たちがさまよえる世界。
その霊の成仏や除霊をおこなう者たちがいるその名も「幽送屋」。幼き幽送屋が織り成す非日常的ストーリー。
プロローグ
・・・・ふと空を見上げてみる、今日は特別満月が綺麗に感じた。夜は基本的に好きなほうではない、職業がらそうはいかないのだが。しかし今日の夜は冷えるな・・・・、静岡の夜の町をゆったりと歩む少年がいた。見た目はただの高校生だ。その歩みにあわせるかのようにそばを黒猫がついてくる。心なしか少し白くぼんやりとした光に包まれている。この猫はそうかんたんに人に見られることはない・・・・。少年は歩みを止めその黒猫に視線を移す。はたからみればただ下をぼーっと見つめている変な少年になってしまうとおもったのですぐに視線をはずした。少年はその口から漏れる声を通行者に聞かれないように小さな声で黒猫に言った。「さあ、今日もがんばらなきゃな・・・いくか、クロス・・・・。」クロスと呼ばれた黒猫は少年をちらりと見つめてちいさく頭を下げてみせた。少年はその仕草を確認して、再び歩みはじめた。黒い闇に向かって。
本文
昼 「うぅ・・・・・・・。」
かえってきた地獄のペーパーに目をやり想像通りの結果に落胆して机にからだを預け た。
ここは私立高等学校如月学園の1−B教室である。彼の名前は神埼 允(かんざき まこと)クラス1の「めんどーくさがりや」である。
「では、みんな。車と相撲をとらないようにして帰りましょう。」
担任のウザイ話がおわり、やっとめんどくさい一日が終わった。さて、帰るかと思い立 ったそのとき
「なぁ、允。いま噂になってる話ししってか?」
うぐ、捕まってしまった・・・・・・と思いながら振り向くとそこにはニヤニヤと笑い ながらたっている一人の少年が健在していた。
「知らん。で、それがなんだって?」
「なに!?しらねーのか?」
そう思ったからニヤニヤ笑いながら話しかけてきたんだろうが!
「ゆーれいだよ。ユーレイ!近頃この学校で出るんだってよ!おまえ信じるか?」
「・・・・・・・すまんね。おれ幽霊否定派だからさ。」
「だよなーお前はそういうの興味なさそうだしな〜。でも実際みたってやつが結構い るんだぜ!なんか赤い鎧着て刀持ってる落ち武者的な幽霊なんだって。」
「・・・・・刀・・・・ねぇ・・・・・・・・?」
「それでさー、」
「ちょっとまて・・・・、幽霊が霊感ない人に偶然的に見えるのは深夜だぞ?そんな 時間に幽霊みたやつは学校でなにやってたんだ?」
「さあな、ところでなんでそんなことわかるんだよ?」
「・・・・まえ見てた番組の霊能力者がそう言ってたんだ。」
「ふーん。まあいいや。どうだ!確かめてみないか?」
「確かめるって・・・・・忍び込むのか!!」
「ばか!声がでかい!いいな、今日の夜12時だぜ。」
「ばれたらどうなるかわかってんのかよ・・・・・・・・・。」
そんなこんなで結局自分に否定権はないらしく参加するという約束を(むりやり)さ せられてしまった。允は美術部の幽霊部員なのでニヤニヤ笑い男と別れたのち、そのま ま帰路につくことにした。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
そよ風に揺られながら目を閉じて静かに小さな声で言う。
「でてこい、クロス。」
すると允の前に薄い白色の光が現れたと思うと、すぐにその形を変化させて猫の姿にな った。
「どう思う?」
桜並木の道を歩いているのは允だけなのでほんの少し声を大きくする。黒猫クロスは允 に並んで歩みを進める。少しして黒猫は静かに言った。
「・・・・基本的な悪霊ってやつだろうな。」
それを聞いて允は
「やっぱそれか・・・・・。困ったな・・・・。」
「いつものことだろう、悪霊は自我を失っている怨念の塊だ。成仏はできないだろう 除霊するまでだ。」
「ふぅ・・・簡単に言うけど今回はけっこうやっかいだ。付属商品がいるからな。途 中ではぐれたーみたいな感じでやるしかないだろう。」
黒猫はそれを聞いて苦笑する。
「腕のみせどころだろう?幽送屋としてのな。」
「やってやるよ。とっとと学校の変な噂にピリオドをうってやんないとな。」
そう言い放つと帰路を歩く歩みをはやめた。
夜 「さて、もうすぐ学校だな・・・はぁ・・・寒い・・・。」
ニヤニヤ笑い男との約束で仕方なく深夜の学校に忍び込むこととなった允は寒さに耐 えながら学校へ向かっていた。しばらくして学校の校門が見えそこに人影を確認した。
「で、こいつらはなんなの?」
允はニヤニヤ笑い男のほかに2人おまけがついていることのわけをニヤニヤ(以下略)に たずねる。
「やっぱビジュアル的に男2人ってのはおかしいだろやっぱ女の子がいないと!」
さらについてきたおまけは同じクラスの女子2人だった。好奇心に胸を躍らせているら しい。じつに厄介だ。一人はショートヘアーの赤坂 美恵(あかさか みえ)もう一人 は髪を左右リボンで縛っている青野 理恵(あおの りえ)である。よく学校ではなし ている仲間がそろったらしい。ちなみに允以外まったく霊感ゼロである。
「さあ、忍びこもうぜ。」
ニヤニヤの合図で校門を乗り越えた4人は今夜のために先生の戸締りチェックの後に再び 空けておいた一階の窓をくぐり学校に入った。無人かつ夜の学校はやっぱり暗くて不気 味だった。
「うっわ〜、なんかでそうな雰囲気だね〜・・・。」
静かな声で青野がいった。その声は薄暗い廊下に反響してさらに夜の学校のムードを高 める。さすがにニヤニヤ顔だった男も笑っていない。やめればよかったのにな、とか思 いながら先を進む3人の後についていく允だった。
時はゆっくりと刻まれていた、あれから30分ほど学校を歩きまわったが何も起こる ことなく先を進む3人の顔にも疲れと眠気が表れていた。しばらくしてこの状況に耐えか ねた赤坂が
「ねぇ。やっぱりうそだったんじゃないの?」
その言葉につられたように青野もつづいた
「そうだよ。やっぱり幽霊なんているわけないじゃん!」
乗り気だったくせに、とか思う允。
「そうだな・・・・、しゃあない。帰ろうか?いいな允?」
「いいんじゃないか?つーかなぜ俺に聞く?。」
「よし、じゃあ出るか。」
そお言うともときた道を戻り、窓から外に出た。
なにかが違った・・・・・・・・。空、地面、空気までもが・・・。気づいたのは允 だけだと思っていた・・・・しかし
「なにか・・・息苦しくない?」
言葉に出したのは赤坂だった。
「そお?」
どうやら赤坂以外に気づいた者はいないようだ。また厄介なことになってきた。霊感 がある者と無い者では悪霊による影響が異なる。霊感がない人ほど影響を多く受けてし まうのだ。逆に少しでも霊に対する力があればそれがフィルターとなって霊力を多少な りとも防いでくれる。
(・・・・・・・・・・・・・来る。)
刹那、空気がねじれたような錯覚ののち、現れた。
そいつは全身を真っ赤な鎧で包み長刀を腰につけている。
体は闇そのものだった。唯一2つの眼光が赤く輝いている。
これだけ強い悪霊を見たのはひさしぶりだった。
(これだけ強いものだと・・・霊力が少しでもあればはっきり見れちまうな。)
横を見ると赤坂以外倒れている。その赤坂は前を見つめ苦しそうに息をしている。
悪霊はゆっくりと長刀を鞘からぬくと片手でその鈍く輝く刀の先を赤坂に向けた。
允はゆっくりと赤坂の前にかばうようにでる。
「霊力をもつものの魂を食らわんとする悪しき者よ・・・。お前はこの世のものに害 しか及ばせない・・・・。よって、幽送屋の名の下に貴様を除霊する。」
赤坂はいつもとはまったく異なる允の表情と言葉に驚いた。
「・・・・・・・・・・ま・・・允・・?」
「大丈夫。ちょっとつかれるが、あれくらいの悪霊ならいける。少し静かにしててく れ。」
悪霊は刀を下に構えた状態で走りこんでくる。
允はゆっくりと右手を前にかざした、そして叫ぶ。大きな声で
「来い!!我と契約せし清き闇の力!クロス!!!!」
允の前にまた白い光が現れ近づいてきていた悪霊を吹き飛ばした。その光は形をすぐ に変化させて黒猫になった。
「さあ、クロス。相手は刀だ。こっちも行くぜ?」
「わかった。久々に俺がでるのもわるくないだろう・・・。」
その言葉をきいた允は再び右手を前にかざすと、クロスは黒い光の球体へとすがたを 変えた。そしてその黒球を手でつかむ。
再びきびすを返し走りよって距離をつめた悪霊はその長い刀を血で染めようと允に切 りかかった、が、それは受け止められた。
先ほどまで黒球だったものが長刀へとさらに変化していた。鈍い黒色の刀身なのにそ れからは恐怖など感じさせない清き闇の力の象徴。
「こんどはこっちからいかせてもらおうか・・・・。」
下から上への切り上げは悪霊の長刀、鎧もろとも真っ二つに切り裂いた。
清き闇が悪しき闇を浄化した瞬間であった。
朝 今日も空がきれいだった。ゆっくりと暖かい大地を踏みしめて歩く。ふと昨日の夜の ことを思い出す。あれから赤坂以外は悪霊の影響によって倒れたが允と赤坂で公園のベ ンチにはこんで寝かせておいた。寝ぼけてこんなところにきてねてしまったんだろうと 錯覚していることを願って。
「に・・・・しても。はぁ、赤坂にはどう話そう・・・。一夜あかして夢だっ た・・・・・ってな感じに記憶の整理をしておいてほしいんだけどな。」
下から静かなこえがした。
「そううまくいくかな?」
「だよね・・・・。」
しばらくあるいていると後ろから声がした。
「おはよう!允!」
赤坂だった。
「ああ、おはよう・・・。ところで昨日変な夢見なかった。」
すると笑いながら答えた。
「うーん。私は夢だよなっておもってたんだけど・・・・。」
「・・・・・たんだけど?」
赤坂がふとしゃがんで地面を見つめた。視線の先にはクロスがいる。まさか・・・
「実際、目の前にいるしね。なんか昨日以来薄くてぼんやりだけど・・・その・・・ 霊がみえちゃってんだよね・・・・。」
「はぁ・・・・・やっぱ見えてるのか・・・昨日のあいつが引き金になって霊力を開 放しちまったのか・・・・・また厄介だなぁ・・・。」
赤坂はゆっくりと立ち上がり俺の顔を覗き込んだ。
「昨日の允ちょっとかっこよかったよ。」
「え?」
赤坂はちょっと顔を赤らめながら
「昨日のことはみんなには黙っとくよ。さぁ早く学校いこ?おくれちゃうよ?」
そういうとニコッとわらいながら走っていってしまう。
「・・・・・・たまにはこういうストーリーもいいものなのかな?」
それを見ていたクロスが
「まぁいつも、悪霊の除霊や霊魂の成仏の手伝いばっかりしてるよりたまには学園生 活を楽しむのもいいものだろう。・・・ところでいいのか?」
「何が?」
「もうすぐホームルーム始まるぞ?」
「なに!?もうこんな時間か!ゆっくりしすぎた・・・・。」
ため息をひとつつくと少年は走り出した。黒猫とともに
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2005/03/27(Sun)16:44:02 公開 / みすと
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■作者からのメッセージ
はじめまして、みすと です。
さて、初めて投稿させていただきました小説ですが今回の物語は悪霊退治になってます。物語の展開がはやくてちょっと読みにくいかもしれませんがよろしくお願いします。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。