『何故、彼らは死ななくてはいけなかったのか。著者 井上トモキ 最終話』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:トロサーモン                

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前書き

2002年11月14日
何て事無い平日の朝であった。
私はその日朝からラジオを聞きながら「ねじ侍」と言う小説を書いていた。
するとラジオからこのような音声が聞こえてきた。
「午前9時頃、イノグチビルで爆発事故が起こりました。死傷者の数はまだ判明しておりません。政府はテロの可能性もあるので十分警戒して下さいとのことです。繰り返します…」
私は小説を書くのを止め、急いでテレビを付けた。
そこにはポッカリと15階から上が無くなっているイノグチビルが映し出されていた。
すると突然電話が鳴り私は電話を取った。
相手はイノグチビルに勤めている私の友人だった。
友人は泣きながら私に助けを求めているようだった。
私はどのようなことがあったのかを聞く事した。
友人はこう言った。
「分からない、何が起きているのか。」
それから連日のようにイノグチビル爆発事件 の報道が繰り返された。
そしてイノグチビル爆発事件が何故起こったかが判明した。
「爆発物が見つかった」
しかし私はその理由に納得しなかった。
今回、このイノグチビル爆発事件のインタビュー集出そうと思ったのはその発表に納得しなかったからだ。
インタビューをするにあたって、実名で良いと言った以外の人の名はすべて仮名とさせて頂いている。
では、本書をお読みなる前に今回の事件のポイントをまとめておこうと思う。
1、イノグチビルの爆発により15階から上がすべて消えた(イノグチビルは22階建てである。)
2、今回の事件による死亡者は92名行方不明者は174名である。

では、本書をお読み頂きたいと思う。

―――ではお名前と年齢と仕事をお願いします
「竹口シュウ、42歳 イノグチビルで警備員をしています」
―――では早速本題に入らせて頂きます。事件当時あなたは何をしていましたか。
「はい。私は警備員なんで他の社員の用にオフィスに入らず、警備室にいました。その時は大した仕事がなかったので私はずっとモニターを見ていましたね」
―――モニター?
「あの監視カメラの映像が映るモニターのことです。ずっとそれを見ていましたね。モニターは各階ごとに分けられているんで後、駐車場の奴などを入れたら24台あるんです。それを見ていました、その直後ぐらいですか。地震がきたんです」
―――どのぐらいの大きさでした。
「震度2〜3ぐらいでしたね。私はその間もモニターを見ていました。すると22階のモニターが砂嵐になっているんです。これはこの地震で駄目になったか?と思ったら今度は21階が砂嵐になりました。続いて20階とどんどん。」
―――あなたはその時どう思いましたか。
「いや…あの実はモニターの故障は何回かあったんでまた故障かと思いました。しかし17階のモニターを見ていると突然天井が光りました。そして砂嵐に、16階を見ると16階も天井が光って砂嵐と」
―――大体何秒ぐらいだったんですか。
「2,3秒ですね」
―――…その話を聞いていると一つ疑問があるんですが。
「なんでしょう」
―――発表では爆発物と言っていましたが、竹口さんの話を聞いていると矛盾点が幾つかあるんですが。あの爆発物だったら一気に無くなりますけど、竹口さんの話を聞いていると順番に消えていったみたいなんですが間違いありませんか。
「はい。そうです。…私もあの発表には疑問を持っています。…じゃああれはなんで起こったんですか?」


―――では名前と年齢と仕事をお願いします
「大森ヤスシ、32歳、仕事は消防署に勤めています」
―――では早速本題に入ります。今回の事件の経緯を教えて下さい
「はい。ただ…」
―――ただ?
「すべて伝えられるか…」
―――自分の覚えているところまでで良いので
「そうですか。では話させて頂きます。あの日は7時頃に出勤しました。その頃はあんまり人は居ませんでしたね。で自分はずっとそこで残っていた事務仕事をしていました。その後徐々に署員が出勤してきました。ちょうど夜の担当の人は帰りましたね、ハイ、その直後ですかね第一報が入ったのは。」
―――第一報はどのような物だったのですか
「イノグチビルでテロが発生、15階〜22階が爆破された模様、至急出動せよそんな感じだったような気がします。自分これを聞いた瞬間もの凄く怖かったんですよ。ああついに日本でもテロが起きたなって」
―――その後出動したんですね
「ハイ」
―――その後現場に着きましたがどのような感じでしたか
「ハイ、…まず消防車の数が凄かったですね。第3者からのような話し方になっていますがそれしか思いつかなかったです。後は…一つ言って良いですか」
―――良いですよ
「あの現場のビルを見た瞬間何とも言えない感じになったんです」
―――…どのような感じですか
「何て言うのでしょうか…これはやばいことになったなあって言う感想ですかね」
―――その後あなたはどうしたのですか。
「その後、自分は仲間と共に怪我人などの救助に向かいました。それでビルの中に入りました。自分はどんどん上の階を目指して上がっていきました。たださすがに15階近く上るとなるとしんどかったですね。それでやっとこさ15階まで上ったのですが…何て言うのでしょうか…」
―――焦らなくて良いですからね
「はい…まず目についたのは床中に紙切れや何かの残骸と死体がありました。アレは正直思い出すのも嫌です。あと、よくホテルなどで吹き抜けがありますよね。アレみたいな感じですね。出動前は爆破とか言っていましたが違うんです。綺麗って言ったら変ですが綺麗に無くなっているんです。…15階から上が全部無くなっていたんです。ええ」
―――テレビで話題になりましたよね
「ええ、だってその後どう捜査しても爆破した後など見つからなかったのですから。」
―――ちょっと待って下さい、後々発表された物では爆発物が見つかったと言っていますが。
「いいえ。爆発物は見つかっていませんよ」
―――それは本当ですか。
「はい。それどころか焦げ跡一つ見つかりませんでしたよ。」
―――じゃあ爆発物は見つかっていないんですね
「何度も言いますが本当に見つかっていませんでしたよ」
―――…じゃあなぜ発表では爆発物が見つかったってなっていたんでしょうか。
「…もの凄くバカらしいことなんですけど。これはもしかして陰謀ではないでしょうか。」
―――陰謀ですか
「はい。陰謀です。昔はやったじゃないですか。あのX−ファイルって言うドラマが。」
―――昔はやりましたよね
「アレみたいな感じで…すいません変な話をしてしまいまして。」


―――お名前と年齢と職業をお願いします
「井上ヒサコ、23歳、イノグチビルの15階の職場でOLをしていました」
―――あなたはあの事件の15階から22階までにいた人で唯一無傷で生還した人ですが当時はどのような状況だったのですか
「はい、私はあのときはまあ職場にいたんですが気分が悪くなってお手洗いに行ったんです。その前の日にちょっと飲み過ぎたんで。それでまあトイレで吐いたりしてたんです。」
それでちょっと職場に戻ろうとした時、突然地震のような物がきました」
―――地震?
「ハイ、地震です。ずっと揺れてました。」
―――何秒ぐらいですか
「10〜15秒ぐらいでしょうか…あの揺れている間上の方から叫び声が聞こえてきて、そしたら突然轟音が鳴りました。突然まぶしくなったので見上げると天井が無くなっていました。その時上へ上へ吸い込まれそうになりました。私はとっさに便器をつかみました。すると、どんどん周りの壁などが宙に浮いていくので…すいません。ちょっと待ってもらって良いですか」
ここで彼女は泣いた。次のインタビューが再開するまでに10分ほどかかる
―――どうですか?収まりましたか?
「はい…なんとか」
―――もう話さなくても良いんですよ
「…」
―――止めます?
「いえ…今日で終わりにしたいんです。」
―――終わりに?
「あの日以来、毎日悪夢を見るんです…同僚たちが何故私を助けなかったの俺を助けなかったのと、そう私に言いつのるのです。」
―――あなたがインタビューに協力して貰えたのもそう言う理由から?
「はいそうです」
―――分かりました。ではゆっくりで良いので」
「はい」
―――トイレにいたあなたに何があったのですか
「…どんどん周りの壁が外れていきました…私は必死に便器に捕まっていました。ふと上を見上げると、同僚たちが空へ上がっていました。」
―――空へですか
「はい。例えではないです本当に空へ上がっていました。それで私ももう駄目だなという気分になりました。すると突然風が止みました」
―――その後、何が起きたんですか
「…同僚たちが降ってきたんです。30人ほど。」

―――お名前と年齢、職業をお願いします。
「鈴井タカユキ 30歳、イノグチビルの向かいのビルで事務仕事をしています。」
―――では事件当日を順を追って説明して下さい
「あの日は朝8時40分頃に会社に着きました。会社はそのビルの13階にあります。私は会社に着くとまあほっと一息をついて仕事を開始しました。8時55分頃になり一旦仕事をストップしました。私の会社では朝礼があって、でちょうど8時55分から始まるんです。まあ朝礼と言ってもちょっとラジオ体操するぐらいなんですけどね。」
―――8時55分と言ったら事件発生から7分前ですね(事件は9時2分に発生した。)
「はい、そうです。ちょうど私がその光景を見たのもその朝礼の時でしたから」
―――その光景?
「まあ多分言っても信用して貰えないと思うんです。」
―――あなたが見たどんなことでもお話ください
「…その朝礼をしていた時なんですよ。ちょうどラジオ体操第2まで終わって後は社長の話だったんです。またその社長の話が面白くないんですよ。で私は外を見ていました。すると突然外が光ったんです。すると轟音がしました。私たちは急いで外を見ました。外を見ると…後は報道の通りです。」
―――質問です。あなたは先程、光を見たと言っていましたが光とはどのような光でしょうか
「うーん。強いて言うなら雷かな。」
―――雷ですか
「うん雷。でも雷ほど光ってなかったしな…本当のところよくわかんないっす」


―――何が起こりましたか
「突然よピカァって光ったんだよ。空が・・・そしたらバキインと音が鳴ったんだよ。何だあと思って空を見てたらビルの背が低くなっていたんだよ。ありゃたまげたね。」
―――何が原因だと思いますか
「あれじゃねえの・・・何て言うんだ?うーんと北朝鮮がミサイル打ち込んできたんじゃねえの。」
事件が起こった次の日の目撃者の証言

「こんな爆発の仕方は見たことはないですね。」
軍事アナリスト 向井シゲルの証言

―――お名前と年齢、職業をお願いします。
「山本ナツミ、22歳です。TSUTAYAでアルバイトをしています。亡くなった加藤タカユキの恋人でした。」
―――では事件当時の事を順を追って説明して下さい。
「はい、その日私は前日のアルバイトの夜勤から帰ったばっかりでずっと寝ていました。すると携帯電話が鳴って寝ぼけなまこで電話を取ったんです。すると彼からの電話でした。」
―――加藤タカユキさんは何と
「はい、最初はどうやらサボって電話をしているようだったんです。すると突然彼がそっち、地震大丈夫?ッて聞いてきたんです。でも地震なんて一つもきてないので地震なんてきてないでと言いました。彼はえっそんな事ないやろと聞き返した時、突然彼が眩しいと言い屋根が破れる!!と叫んでいました。すると吸い込まれる!!と言って突然電話が切れました。私はどうしたらよいか分からず泣いてばかりいました。とりあえずテレビを付けました。テレビでは朝からバカらしい番組をやっていました。すると突然画面が変わり、報道センターと俗に言われる場所からアナウンサーがテロが起きましたと言っていました。私は食い入るように見つめていました。すると画面が変わりイノグチビルが映し出されました。私はそれを見た瞬間吐きそうになりました。」
―――何故吐きそうに
「絶望感ですね。」
―――絶望感?
「私は昔から絶望を感じると吐きそうになるんです。それはテスト前だとか振られた時だとかそう言う時になりました。・・・変な事言いましたか。」
―――いいえ、それで良いんですよ。では続けて下さい
「はい。その5分後ぐらいから友達から電話がかかってきたりしました。かけてくる友達がみんな言う事はすべて同じであれはなっちゃんの彼氏の働いている所じゃないん、でした。私はテレビをずっと見ていました。するとどんどん死亡者の名前が呼ばれていきました・・・そして呼ばれました・・・」
―――あなたにとってもの凄く辛い事だと思います。本当にすいません
「はい。すいません。」
―――いえ
「・・・あの後私はずっと、ドアを見ていました。インターホンが鳴ってドアが開いて彼氏が立っているんじゃないかと。」
―――辛い事を聞いてしまってすいません。
「いえ。ただあの声が忘れられないんです。」
―――あの声?
「さっきも言いましたが、眩しい目が開かない・・・体が上に上がっていく。」

イノグチビルで―――
爆発直後の119番にかけられた電話の音声

電話のコール音
―――はいこちら119番です。
「どうしたら良いんですか?どうしたら良いんですか。」(女、泣いている)
―――落ち着いて下さい
「ビルが爆発したみたいです・・・あああああああああああ」
―――どうしたんですか
「上から人が落ちてくるの、どうしたらいいの。」
―――とりあえず落ち着いて・・・。
「きゃあああ。」(女絶叫する。」
―――どうしたんですか。大丈夫ですか?
「屋根を突き破って落ちてきた。この血は私の血じゃない。」
―――何が起きているんですか。
「人が落ちてきている、お願いあの音を止めて。」
―――あの音?
「人が当たる音よ!はやく止めて!!」

同時刻
佐藤マサノブはイノグチビル近くの交差点で渋滞にはまっていた。
しかし佐藤は空いていようがそこで立ち止まっていただろう。
なぜなら先程大きな光を見たからだ。
「もの凄い光でしたよ。」佐藤はそう語る。
佐藤は車の窓ガラスから顔を出してイノグチビルを見上げていた。
すると突然叫び声が聞こえた。
その声は単体ではなく複数であった。
そして空から聞こえてきた。
「本当に空から叫び声が聞こえてきたんです。するともの凄い音を立てて人が屋根に当たりました。」
ここからは地獄絵図となった。
「うわっ。と思って外に出たのがまずかったですね。」
佐藤は音に驚いて外に出た。すると空から何十という叫び声が聞こえてきた。
佐藤が上を向くと何十という人々が落ちてきているのだった。
落ち終わるまでの時間はものの10数秒だったが佐藤にはもの凄く長い時間に感じられた。
「叫び声と骨の砕ける音に肉のつぶれる音、ガラスの音、今でも時々夢にでるんですよ。」
死亡者の92人の半数以上はここで死んでいる。
「私は右往左往している女性に追い被さっていました。落ち終わった後、私たちは周りを見渡しました。そこには先程まで渋滞にはまっていた車の上に乗った死体、地面を赤く染める死体、ただの肉の塊となった死体、死体死体死体ですよ。」
佐藤さんはこの事件の後、カウンセリングに通っている。
「2、3日は眠れませんでした。なぜなら目をつぶればその光景が浮かび上がるからです。」
この2次被害による死亡者は幸運な事に誰もいなかった。
しかし重軽傷者合わせて52人。何かしら事件の後眠れなくなったなど精神的な被害を負った人は300人を超えると言われている。(これはカウンセリングなども入れる)
ここまで被害が拡大した事件の起こった理由は何なのだろうか。
軍事アナリストの向井シゲルと事件の起こった、イノグチビルに向かってみた。

向井シゲル。43歳。職業、軍事アナリスト。
あの事件について異論を発した男。

―――向井さん今日はよろしくお願いします。
「いえいえこちらこそ。」
―――では、イノグチビルに入る前にちょっと聞きたい事があるんですけど。
「何ですか?」
―――何故あなたは異論を発したんですか?
「いや。よく言われるんですけどあの異論は言っていないです。ただこんな爆発の仕方は見た事ないと言っただけなんです。」
―――そうだったんですか。
「はい。」
―――それはすいません。
「いえ。それよりイノグチビルに入りませんか?」
―――はい。

イノグチビルは閉鎖されている。今回入る事ができたのは特別な許可によるものです。

イノグチビル階段
「井上さん。あなたビルの爆発見た事がありますか?」
―――はい。っと言っても911テロの映像しか見た事はありません。
「そうですか。なら気付くはずもありませんね。」
―――気付くですか。
「はい。さっき爆発の話しましたよね。」
―――ええ。
「このビルの爆発何か変なんですよ。」
―――変?
「一つが瓦礫が飛んでいないんです。」
―――そう言えば瓦礫が飛んでいませんでしたねえ。
「2つ目が火災などが起こっていない。後三つ目が誰も爆音を聞いていないという事です。」
―――そう言えば。あの私はこれまでにいろいろな人にインタビューしてきましたが、バキンとおとが鳴ったと言っている人もいるんですが爆音を聞いたという人が居ないんです。
「はい。大体ビル5階分を消そうとしたら相当な爆薬がいるはずです。と言う事はそれに比例して爆音もするんです。」
―――・・・じゃああなたは何が原因だと思いますか?
「正直、分かりません。もし兵器だとすると・・・いやそんなはずはない」
―――なぜ?
「もし兵器の極秘実験だとしましょうしかしこんなに人目につかせる必要があると思いますか。」
―――ますます訳が分からなくなってきた。
「ははは。実は僕も何ですよ。」
―――ははは。あっ。もう少しで15階ですね。
「ほんとだ。この辺階段がボロボロですね。」
―――大丈夫かな。
「・・・(向井さんはこのときに足で階段の強度をチェックしている。)意外と丈夫そうです。」
―――・・・意外と上がれますね。
(15階着)
「・・・本当に何もありませんね・・・。あっ。誰だ。」
―――あっ。なんだあの数人のグループは。
「何でここにいるんだ?おいお前達は誰だ?」
グループの一人が大声を張り上げる
「我々は光を見たもの達です。」

―――何をしているんです?
「光を待っているんです。」
―――光って何ですか?
「我々をこの世界から抜け出してくれる光です。」
―――何を言っているんです。
「彼らは選ばれたんですよ。」
―――だから何を言っているんです。
「彼らは神に選ばれたんですよ。」

そう言って彼らはずっと空を見ていた。
ずっと、ずっと、ずっと。

帰り際、向井氏は私にこういった。
「井上さんも引っかかったら駄目ですよ。あいつら本気で信じているんですから。」
私は今回、分かった事は二つである。
一つはこれが爆発事件ではないかもしれないという事。
二つは新興宗教団体ができた事。
この二つの接点はイノグチビル爆発事件。

このインタビューから1ヶ月半がたった頃である。
私は自宅でこのインタビューの編集をしていた時であった。
突然電話が鳴った。
私は電話を取る。
―――はい。こちら井上です。
「向井です。この前の。」
―――ご無沙汰しています。
「テレビ・・・見ましたか?」
向井氏の口調は恐怖を感じているような口調であった。
―――いや?どうかしたんですか?
「早く付けて下さい。」
―――はあ・・・。
私がテレビを付けると臨時ニュースをやっていた。
内容はインドネシアの島の街が消えたという事件であった。
観光客の取った映像が流される。
映像
ボートの上。
観光客の妻か恋人の顔がまず映される。
すると突然ピカッと光る。
カメラは光った方に向ける。
島が映る。
島が5,6回ほど光る。
観光客がため息を漏らす。
突然カメラ全体が真っ白になる程の大きな光が差す。
そして音が割れるほどの爆音、画面が揺れる、続いて爆音、また爆音。
ボートは急いで島に行く。
カメラは島に上陸する。
カメラは多分町であった所を映す。
カメラは画面一杯に広がった瓦礫を映す。
撮影者はため息を漏らす。
「井上さん・・・これイノグチビル事件に似ていませんか?」
―――向井さん情報を集めれるだけ集めてもらいませんか?お願いします。
「いいですよ・・・井上さん、これはもの凄くやばい事ですね。」
ニュースキャスターはこの映像が終わるとこういった。
「原因は不明です。」

―――お名前と年齢、職業を教えください。
「大泉トオル、43歳、大阪で教師をやっています。」
大泉さんにインタビューできたのは事件後直ぐというわけには行かなかったがそれでもまだ混乱しているようだった。
―――では事件当時の事を教えください。
「はい。私は家族でインドネシアのとある島にバカンスに来ていました。ちょうど事件のあった日は晴天で雲一つないほどの晴でした。私たち家族はホテルの側にある海で泳ぐ事にしました。ほんとにあの日は気持ちがよかった・・・。すると2,3時頃ですか突然雲が近づいて来ました、それに風も吹いてきました。すると、空がピカッと光ったんです。まるで雷のようでした。しかし音は鳴らないんです。何とも奇妙な光景でしたね。」
―――その時ビーチには何人ぐらい人がいましたか。
「大体200人ぐらいですか・・・。あの200人がみんながみんな空を見ていたんです。多分それほど奇怪だったんでしょうね。」
―――それからどうしたんですか?
「それから私は家族を呼びました。ここに来いと。ちょうど集まったと同時に突然空が今までにないほど明るく光ったんです。ピカって。すると耳が破れるかと思うほどの轟音が聞こえました。爆発音だと思います。私は妻と子ども2人を引っ張って急いで海の中に入らせました。」
―――何故海の中に?
「分かりません。多分本能的に動いたんでしょう。」
―――その後は?
「私と同時に海の中に入る人も一杯居ました。何回も空が光りました。それと同時に轟音。耳が痛くなりそうでした。そこら中で人々が泣き叫んでいました。娘・・・16歳なんですけど泣き叫んでいました。妻も恐怖に駆られた顔でした。息子もお父さん?お父さん?と何回も呼びかけていました。私は島の方を見ました。私たちの泊まっていたホテルが粉々になって爆発しました。辺りに破片が飛びました。私は日本語で急いで海に入れと海岸にいる人々に言いました。その直後ホテルの破片がその人達の上に落ちました・・・。」
―――その後どうしましたか?
「爆発音が聞こえなくなってから15分ぐらいした後、海にいた100人もの人々が一斉に海岸に向かいました。彼らは海岸で目が虚ろになっていました。私たち一家もずっと海岸にいました。一日後ぐらいには他の国からの軍隊が来て、私達は救助されました。」
―――あなたは今回この事件で気になったものはありますか?
「特にないですが・・・一つ言えば原因ですね。」
―――はい未だに原因が分かっていませんね。それでどうかしましたか。
「私は考えたんです。これは第三次世界大戦じゃないかと・・・しかし原因は分かっていないんです。何とも気持ち悪い事件で・・・。」


2004年6月25日にインドネシアのとある島でおきたこの事件は死亡者約4000人、重軽傷者1347人と多くの犠牲者を出した。
島の中心部分が最も酷く死亡者の大半はここでできたと思われる。島に上陸した人によると瓦礫と焼死体が一杯だったそうだ。そして島のあちこちにはクレーターができておりこの事件がどれだけ酷かったを物語る。
今回の事件で最も衝撃を与えたのはあの映像であろう。
観光客の撮った映像。
今回はその映像を撮った、ロバート・ギルバートさんにインタビューをしてみた。
ロバート・ギルバートさんはあの事件になるとジョークを交えたり、少々早口になったりするので聞き取れていないところもある。
ロバート・ギルバート。あの映像を撮った男。

―――ではお名前と年齢と職業を教えください
「ロバート・ギルバート。43歳、歌手をしています。」
―――私はあなたの大ファンです。
「ほんとかい?そりゃ嬉しいなあ。」
―――あなたのギターテクニックは最高ですよ。
「嬉しすぎて言葉も出ないよ・・・。あのギターテクニックを習得するまでに10年はかかったからね。いや、まだ習得はしていない。」
―――何故言い直したのですか。
「人生は練習だ。私なんぞまだハンパ者だ。10年かかってあのギターテクニックを習得したが、まだまだのびる物だ。今度新曲出したらあっと驚かせるよ。」
―――楽しみにしています。では・・・事件当時の事をお話ください。
「・・・私は妻と(妻はメグ・ギルバート、もちろんあの有名なドラム奏者である。ロバート・ギルバート氏とメグ・ギルバート氏は2人でバンドを結成している。)バカンスに来ていたんだ。思えば3年ほど連休は取っていなかったしね。とにかく私と妻はバカンスに来ていたんだ。まあここに来て三日目かな。もう泳いだし、買い物にも行ったから彼女は島の周りを見てみたい、船で見てみたいと言ったんだ。僕ももう泳ぎたくなかったし・・・二日目にカニに足をつねられたんだ。全く笑い話だろう。僕は彼女に賛成したんだ。どうやらホテル側が主催しているそうゆう船のツアーだったんだろうね。大体1時半頃だろか、僕らは船に乗ったんだ。船には30人ぐらい乗っていた。船の大きさはディズニーランドとかのあの船みたいな感じだ。」
―――ジャングルクルーズですか。
「(指を鳴らして)そうだ!!それだよ。まあ僕らはそれに乗ったんだ。それぐらいから僕はずっとカメラを回していた。すると運転手が2人いたんだ。何故だ?と思っていると一人が立ち上がったんだ。そしておもむろにマイクを持つと皆さんこんにちは〜とか言ったんだ、これは何のまねだと思うと、彼女が僕に話しかけてきてディズニーランドのジャングルクルーズみたいだねと言ったんだ。僕はその時すべて解ったんだ!!彼らはディズニーランドの物まねをしていたんだ!!」
―――いや、世界には色々なツアーがありますね。
「ほんとだよ・・・。マジでグレイトだった。とにかくそのガイドの喋りを聞きながら僕らは島を回っていた時だったんだ。すると突然雲が出てきて風が吹き出したんだ。僕は早く帰らなきゃ船が沈むと思っていたんだ。すると突然空がピカッと光ったんだ。もの凄い光だったよ。なんだこれは!と思って光った方にカメラを持って行くとちょうどそこに島があったんだ。島は何回も光っていたよ。するともの凄い光がしたんだそして突然ドーン!と音がしたんだ。僕はびっくりしたよ。耳が潰れるかと思った。そして何回も何回も音が聞こえたんだ。第三次世界大戦か?と思ってたら突然音が消えた。僕達、観光客と運転手達は言葉の一つも出なかった。」
―――その後、皆さんは島に向かいましたよね。
「ええ。僕らは島に向かったんだ。僕はずっとカメラを回してた。島はボロボロだったよ。とりあえず僕らは島に上陸した・・・。後は君も映像で見ただろう?」
―――ええ。あの瓦礫が一杯映っている映像ですよね。
「実はあの映像には続きがあるんだ。」
―――えっ?
「よく聞いてくれ。僕はあの後ずっとカメラを回していたんだ。すると山奥の方で何かがピカッと光ったんだ。そしてその光は上がっていった。そして突然消えた。」
―――それは何だと思いますか。
「・・・。分からない。強いて言えばミサイルかな・・・一つ言っていいかい。」
―――何ですか?
「僕はあれはUFOだと思ったんだ。」

電話
―――もしもし。
「もしもし、向井です。」
―――向井さん。どうしたんですか。
「あのこの前頼まれていた情報なんですけど。」
―――どうしたんですか。
「イノグチビル事件ありますよね。」
―――はい。
「イノグチビル事件の行方不明者の一人が事件後に保護されているんです。」
―――えっ。
「しかも6ヶ月後ですよ。とある田んぼで倒れているのを見つけたらしいです。」
―――で今その人はどうなっているんですか。
「それが・・・自殺したんです。」
―――えっ!?
「死ぬ前に言葉を残しているんですけど・・・奴らに監視されている。そう言ったんです。」
―――奴らって・・・。
「もう少し情報を集めてみます。井上さんも頑張って。」

それから1週間後。
テレビからこのような事が流れていた。
「イノグチビル事件の行方不明者の山本タクが保護されました。」

山本タク氏が保護された件について。

朝7時頃、岸田シゲル氏はいつものようにバスを運転していた。
バスの中は通勤の客で一杯だった。
「道は田舎なんであんまり車は通っていないんです。しかもこの辺車を持っている人が少ないんです。だからいつも満員になるんですけどね。」
7時15分頃、事件は起きる。
「ちょうどカーブを曲がった時です。人が道路に倒れていたんです。」
それが山本タク氏だった。
「僕は急ブレーキをかけ乗客にマイクでちょっと待って下さいみたいな事を言って外にでその人を見たんです。その人・・・もう山本さんでいいですよね。山本さんはまだ息をしていました。僕は119番をしました、しかし間に合わないかもしれないと思い路線も変更して急いで病院に向かいました。」
山本氏はもの凄く衰弱していた。
「後から、会社に怒られましたよ。」
しかし結果としては良かった。
最後に岸田さんはこう語る。
「でもビックリしますよ。そりゃ、人が倒れているなんてね。でももっとビックリした事があってちょうど前に車が走っていたんですよ、1台。ちょっと信号に捕まってしまいましたが、1分ぐらいしか差がないんですよ。ええあの道路に入ったのは。と言う事はあの山本さんは1分間の間にあの道路に入った事ですけど・・・絶対にそれはないと思います。何故かは説明できませんが・・・。」
しかし岸田さんの言っている事はあっている。
山本さんはもう立てないほど衰弱していたのだ。
じゃあ何故そこまで来れたのか?


山本タクの記者会見。

山本タクの発言は「」他の質問者は『』私の質問は―――とする。
ちなみに私は遅刻してしまったため質問からしか聞いていない。
(S新聞社のIさんどうぞ。)
『山本さんあなたは何故あんな所にいたんですか。』
「分かりません。たぶん私は運ばれてきたのでしょう。」
(M新聞社のYさんどうぞ)
『山本さん。あなたは今まで何処にいたのですか。』
「・・・私はずっと、ここにいました。」
『ここって何処ですか。』
「この地球ですよ。」
山本タク氏は終始ずっとこのような電波的な言動を繰り返していた。
山本タク氏は意味もなく宙をずっと見ていたりと。
(井上さんどうぞ)
―――あなたはあのビル爆破からどうやって助かったんですか。
「彼らに助けて貰ったのです。」
―――彼らって?
「彼らは彼らですよ。彼らは我々を見ています。」
新聞社屋テレビ局の質問は思っていたよりもなかった。
それはやはりどう質問をすればいいか分からなかったからであろう。
(他に質問はありませんか)
私は手を挙げる。
(井上さん)
―――山本さん・・・彼らって一体誰ですか。
「彼らは私たちを監視しています。24時間。1年中。」
私は続けて質問する。
―――彼らとは某国の人々ですか?
「某国?いやそんな低レベルの物じゃありませんよ。」
―――じゃああなたは何を言っているんです。誰の事を?
進行者が止める
私はそれでも質問をした。
―――私は1年をかけてビル爆破事件のインタビューを取ってきました。中には体が宙に浮くや光を見たと言っていますがあなたはそこで何を見たんですか?
「・・・神を見ました。」
―――神?じゃあ兵器ではない?
「兵器?そんな物ではありませんよ。あれは神の光です。」
―――あなたは先程から神や彼らと言っているが一体何者なんですか。その神とやらは。
すると山本タクは突然笑い出した。
「分からないんですか・・・?」
―――じゃあ一体誰なんですか?
「・・・もう遅い。」
―――何を言っているんです?
「奴らが見ている。奴らに声は聞かれている。奴らはもう側まで来ている。」
―――何を言っているんです?
「奴らが見ている。奴らに声は聞かれている。奴らはもう側まで来ている。」
会場はざわざわと音を立てていた。
―――何を言っているんです?
「奴らに気をつけろ。」
そう言うと突然山本タクの体が爆発した。
山本タクの体は小さな肉片となった。


生き残りはこれでまた0になった。


向井氏とのインタビューとまとめ。

―――向井さん。あのインタビューは見ましたか?
「はい。」
―――あのインタビューをした後自分で重要事項を紙に書いて作ってみたんですけど。
僕は紙をぶちまける。
「結構いっぱいありますね。」
順番に消える、宙に浮く、大きな光、風、人が落ちてきた、大きな光、神、光、こんな爆発は見た事がない、別の島で同様の事件、5,6回光った、爆発、爆発の後飛び立っていった光、彼ら、人間ではない、もう遅い、奴らが見ている、奴らに声は聞かれている、奴らはもう側まで来ている、気をつけろ、山本氏の爆発。
―――向井さん。この事件何が原因だと思います
「・・・・・・」
―――向井さん?
「私には理解できません。いやしようとしないだけかもしれない。」
―――私は昨日ずっとこれを見ていました。これはヒントが一杯出ています。もう私たちは答えを知っています。・・・しかし、私たちはその答えを直視するのが怖いんです。
「・・・・・・」
―――向井さん。あなたももう気が付いたでしょう。
「・・・そんなはずはない。」
―――私は脅しをかけているんじゃないんです。ただあなたの意見が聞きたいだけなんです。
「・・・これは単なるテロのはずだろ?そんな俺は信じねえぞ!」
―――向井さん落ち着いて下さい。
「落ち着けるはずねえだろ!!こんな・・・漫画みてえな結論なんて!」
―――向井さん・・・じゃあこの事件は何が原因だって言うんです。
「井上・・・あんた本当にインタビューしてきたのか・・・?実は俺を騙そうって言う話何じゃねえのか?本当はこんな事件発生してないんじゃねえのか?」
―――向井さん・・・・・・インタビューもしました。騙してもいませんし事件も発生しました。
その結論がそれなんです。
「なあ井上・・・嘘だと言ってくれよ。まさかお前も信じている訳じゃないよな。」
―――信じているんじゃないんです。可能性として一番強い物です。
「・・・・・・お前も信じているんじゃないか。こんな馬鹿げた結論見た事無いぞ!」
―――向井さん。冷静に。
「馬鹿げてる。馬鹿げている。そんなあんたはこれは人間ではない何かがやったというのか。」
―――山本氏の発言をそのまま使えばね。
「はっ!あんたはこの事件はUFOがやったとでも思っているのか。」
―――可能性です。UFOかもしれないという事です。

後書き。

終わりに。
この事件とインタビュー

私は1年半にわたってこの事件のインタビューを続けてきた。最初はこれはとんでもないテロだな、そう思っていた。しかしその中で浮かび上がったのは最後にも言ったが人間ではない何かが行ったという結論だ。もし読者の中にはこの結論に満足していない人もいるかもしれない。怒っている人もいるかもしれない。
この本は世間で言うトンデモ本に認定してもいい。ただしここで書かれた事はすべて実際の話だ。脚色などは全く行っていない。
した事は人の名前を変えた事だけである。

向井氏との対談でも言ったが私はすべてのキーワードを紙に書いた。そして考えた事がそれであるだけで大した証拠もない。これを単なる妄想と考えてくれても良い。後は読んだあなたが考えればいい。
最後に、とあるテレビ番組で使われていた言葉を引用する。

「事実を積み重ねる事が必ずしも真実になるわけではない。」


2005/04/05(Tue)01:01:08 公開 / トロサーモン
■この作品の著作権はトロサーモンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作家、村上トモキの初インタビュー集のインターネットアップバージョンです。
代表作

ウエポン・オブ・チョイス
ねじ侍
電池ねこ
キラー。
くるくるサンデイ。
サタデー・イン・ザ・プール―キラー2
4月5日発売。

村上トモキ1970年生まれ

子どもの時にラジオから流れてきたロックに圧倒されてそのまま大学の傍らロック歌手に。
すると初めて書いたアクション大作「ウエポン・オブ・チョイス」が何と一杯賞取ってもうたのでそのまま作家へしかし「電池ねこ」では日常のひずみを描き大成功を納める。ジャンル分けが不可能な「ねじ侍」もベストセラーと米国と英国発売される事も決定。そして現在初の群像劇くるくるサンデイが発売とバイオレンス三部作の2作目のサタデーインザプールが発売予定。と何か忙しい日々を送っているようです。

趣味 映画と音楽
映画は「マーズ・アタック!!」が大好き
音楽はのほほんとした曲が好きだそうです

「20食続いてカレーでもいける」村上トモキ談
「30食続けてオムライスでもいける」
「ビーフシチューなんて食うな!!」
「クリームシチューを食え!!」
好きなものコロッケ
嫌いなものカニクリームコロッケ

私服がスーツ


今まで読んでくれた皆さん方本当にありがとう御座います。

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等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。