『望まれた修羅』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:つん                

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 あのときは、嫉妬の炎に一瞬目が眩んだわ。
 まさかとは思っていたけれど。いえ、寧ろ予想してたわね。
 最近のアナタは、様子が私に似ていたから。
 どうしてもね、行動の端々に滲んでしまうの。
 罪悪感がこれっぽっちも無いなんてこと、ありえないから。
 浮気は犯罪ですものね。
 でもまさかそんな事は無いだろうと、高をくくっていた私も確かに存在していたわ。
 アナタは私がいないとダメな人なんだから、私が浮気する事はあっても、アナタがそんな事をするだなんて……。
 本当に不意打。

 悲しいなんてことはないけど……。

 ええ、私が悪いの。
 私がアナタに言ったんですものね?
 そんなに悔しいならアナタも浮気してごらんなさいと、確かにそう言いましたとも。
 それに、アナタというものがありながら浮気を繰り返して、とっかえひっかえやってたのは私ですから。
 ええ、私が悪いの。

 でもそれは理屈。
 嫉妬とか、そういうのは理屈じゃない。
 私の身勝手さを、ほぞをかんで見詰めていたアナタにはよく解るでしょう?
 アナタよく泣いてましたから。
 その情けない可哀想な姿が心地よくて、わざとバレるような浮気を、私はしていたし。

 これはその仕返しなの?

 なんて子供じみたまねを……。
 でもそれならいいのよ、たまには優しくしてあげてもいいわ、甘い顔をすれば直ぐに機嫌を直すんでしょう?

 でも、もし本気なら……。
 一緒にホテルから出てきた女は、私なんかよりずっと若かったわ。
 あのときになって初めて、アナタと私の歳の差に気付かされたような気さえする。
 私は歳をとりすぎた……?
 アナタはそれに気付いてしまったの?

 ああ……。

 まぁいいわ、あの女に会えば全て判るんだから。
 直ぐに別れさせてあげるんだから。縁を切ってあげる。
 私の方がずっとお金もあるし、アナタだって夢中でいたでしょう……。

 アナタが本気だったとしたら……
 そんな事になったら、悔しくて私、あの女をどうにかしてしまう。

 ほら、もうあの女の家に着くわ。


 □□□


 アナタは今夜来るんだろうか、いや、きっと来る。
 ああ見えて嫉妬深い人だから、あんな現場を見せ付けられたら、今日中に部屋を割り出すだろうし。
 そしたら当然来るのだろう、彼女を殺すために、アナタは……。
 ここは彼女の家だけど、もう金を払って彼女には出かけてもらったよ。

 これはアナタと僕の問題なんだから。

 浮気を繰り返すアナタに、嫌気が差したわけじゃない。
 むしろその逆だ。
 アナタが挑発的に男を代えるたびに、僕はアナタに惹かれていく。
 しかしアナタは僕から離れてゆく。
 そうとしか思えない。
 僕なんかよりマスクのいい男なんて腐るほど居るだろうし……。
 僕はアナタと釣り合わない。僕は若すぎる。

 僕だけを見つめていてくれと、泣いて頼んでも、アナタは鼻で笑うだけだった。
 それどころじゃない、あろうことか僕に浮気を勧めた。
 ……ショックだった。
 やはり、解ってはいたけれど、アナタの中での僕の存在価値なんて……

 それで思いついた。
 今回の計略。
 アナタはうまくハマってくれた。
 ホテルから出てきた僕と彼女を目撃したはずだ。
 だから今夜アナタは来る。
 彼女を殺しに。
 または彼女と話し合うために。

 僕がアナタを愛するのと同じだけ、僕を愛しているのならば、アナタは来る。

 でももし来なかったら?

 その時は……。
 もう、どうせアナタの浮気を止めることはできないのだから……。
 その時は……。

 ……もうそろそろ来る頃だろうか。

 明かりを消しておこう。
 僕だと解っては困るのだ。
 アナタは彼女を訪ねるのだから、彼女が僕だと知れたら何の意味もなくなってしまう。








 何もかもが溶け合い混ざり合う闇の中、扉が一度細く開き、そして閉ざされた。

2005/02/14(Mon)06:33:31 公開 / つん
■この作品の著作権はつんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は言葉少なにならないよう努力しました。
それでもやっぱり不安なので、解説を加えておきます(汗汗
これは浮気を繰り返す女が、男に逆に浮気しかえされ、頭に来て浮気相手の女の家に行くはなしです。
しかし男の浮気は実は演技で、
浮気を繰り返す女の心を量るために行った行為なのです。
なので男は浮気相手の女の家で独り彼女を待ちます。
浮気を繰り返す女が男に嫉妬することを望んで
今回も言葉足りない気が……
とにかく未熟な私に感想と評価をお願いいたします。

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