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『Dream 〜序― 一』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ヒスイ
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ここは医療術の最先端を行く国、アース帝国。
周りの国からは『不老不死の国』といわれている。―ある意味それは嘘ではない、かも知れない。なぜなら彼らにとって不老不死になるのは一種の娯楽になっているのだから…。
序章〜夢〜
「ナタリー、夕食の準備を手伝ってちょうだい。」
「はーい!」
アース帝国のとある街。ここは身分の低い者が住む街、スラッカン。帝国の国民のほとんどがこの街に住んでいる。この街の者は最近、貴族になることに憧れている。貴族になることは並大抵なことではないが、それでもスラッカンの人々は貴族になることを決してあきらめはしない。それは不老不死になれるからだ。
「お父さん、夕食の準備ができたよー。」
「おう、わかった。」
物語の主人公の名はナタリー=ウェストン。貴族になることを夢見るごく普通の少女である。ナタリーは好奇心が強く、活発で武術が大好きな子だ。女の子は家事ができないと嫁に行けない、とよく親から言われているが、家事をする気は一切なく、どちらかというと勉強の方が好である。
「ナタリー…お嫁にいけなくなるわよ。」
「いいの。いいの。」
ナタリーは答えたものの、実はこのごろ将来のことが心配になってきていたのだ。
「あたし、貴族になるもの。」
「貴族の女性はあたしなんていいかたはしません。わたくしと言うのです。」
「いいの!あたしは武術専門の貴族になるから。」
「ナタリー…。」
母親のジルはあきれて黙り込んだ。父親のコーマスが言った。
「ははは!ジル、俺たちよりも何倍も頭のいいナタリーに口で勝とうなんて、できるはずがないだろう!」
「コーマス!」
ジルが怒って怒鳴り返した。コーマスは大声で笑うと、ナタリーにウインクした。
ナタリーは父、コーマスが大好きだった。小言は言わないし、薬草などの知識を教えてくれたし、山で生き抜く知恵も教えてくれた。
母のジルはそういう現場をみつけると、女の子にそういう知識はいりませんと怒鳴り、ナタリーの手をひっぱって行き、無理やり家事を覚えさせようとする。
「父さん、今度の仕事はどこまで行くの?」
ナタリーの父は、商人でこの国の特産品を周りの国々に売っている。収入はまあまあだが、生活に困りはしない。
「そうだな…サグン国かな?」
「サグン国!?それって北にあるんでしょう?父さん凍え死んだりしない?」
「ナタリー、俺を誰だと思っているんだ?天下の商人、コーマス様だ!」
そうコーマスが言うと、ジルは決まってじゃあ、この生活を何とかしてくださいとくってかかる。そのたびにコーマスは、笑って妻の小言がなかったら俺ももっともうけられるという。ジルがどういういみよと聞くと、小言が怖くて商売を早く切り上げちまうというのだ。
ナタリーはそんな二人を見て、この生活でも、苦しくないと思う。だって二人は喧嘩するほど仲がいいのだから。
「で、いつ出発するの?」
ジルが聞く。
「うーん…明日だな。」
「明日!?早すぎますよ!」
「俺に言わないでくれ、国王が国境がなんとかと言ってあさってから国境越えに鐘がかかってしまうんだ。そうすると商品を運ぶコストが…。」
そのあとコーマスとジルはナタリーにはわからない専門用語でお金がかかるようになった時はどうやって商品を運ぶかなどを話し合っていた。
ナタリーはそっと席を立ち、自分の部屋に行った。
部屋に着くと、父に何を買って来てもらおうかと考えた。
「どうせなら、北独特のものがいいしな…あ、お菓子にしよう!北のお菓子に!」
ナタリーは心をはずませながら北の特産品などを思い浮かべた。
次の日。
「じゃ、言ってくるよ。」
コーマスがそう言ってナタリーとジルにキスをした。ナタリーはお土産を買ってきてとしっかりと伝えた。コーマスは、いいぞ。と答え、商品をたずさえた小隊をひきいて国境に消えていった。
ナタリーは消えるまで父の背中を見つめた。
「さて、ナタリー…・これからみっちりと家事を教えますからね!」
ジルがにやりと笑いながら言った。ナタリーはその笑顔に背筋がぞくっと震えた。
「あー…勉強のやりのこしが…。」
そう言って立ち去ろうとするナタリーの襟首をジルはしっかりとつかんで離さなかった。
それからの日々は、ナタリーにとってはつらいものだった。朝早く起され、家事を手伝わされ、洗濯物を干し、掃除をし、食事を作り、コーマスが居ないため、まきわりもするはめになった。
一日が終わった時にはとても勉強なんてする気力は残っていなかった。
「あー…つかれた!」
ナタリーはそう言ってベッドに倒れこんだ。そのままうとうとし、気がついたら深い眠りに落ち込んでいた。
夢を見た。
コーマスが森の中を小隊をひきいて歩いていた。
コーマスが何か言って、小隊の人たちが笑った。
ナタリーはその光景をなにやら不思議な気持ちで見ていた。
と、いきなり小隊から笑顔が消え、恐怖の色が出た。
誰かがなにか叫んだ。
みんなが散り散りになって逃げ出す。
その後を見たことのない男達が追っていき、全員を刺し殺した。
その中にコーマスがいた。
ナタリーは悲鳴を上げた。
が、そえれは…
ナタリーは悲鳴で目を覚ました。眠い目をこすり、顔を上げると部屋を出て悲鳴の聞えた方へと歩き出した。
悲しそううな表情を浮かべた見知らぬ男の人とジルがいた。何かを抱きしめていた。
「母さん?」
ナタリーは嫌な予感がして聞いた。ジルは何もうつっていないその目をナタリーに向けた。
「母さん。どうしたの?」
ジルはそれを聞くと、わっと泣き出し、何かをナタリーに差し出した。それは父、コーマスがつけていた首飾りだった。嫌な予感がした。
「母さん、父さんに何かあったの?」
ナタリーは声を荒げて聞いた。ジルは泣きながら首をふるだけだ。
「母さん!」
ナタリーはジルをゆさぶった。ジルは泣きながら消え入りそうな声で呟いた。
「ああ……嘘よ……コーマスが……・あの人が……死んだなんて……・・。」
ナタリーはその瞬間世界が止まったと思った。何も聞えなくなった。静寂が訪れた。家の中にはジルのすすり泣く声しか聞こえない。ナタリーは非常識ながらも、父親の死を悲しむより先にこれからどうするかという考えが頭をよぎった。
父が死んだ。収入源はない。どうすればお金を手に入れることができるか…。どうすればお金を稼げるか…この家にはコーマス以外男はいない。じゃあ、あたしが母さんを養わないと…・どうやって?答えは単純。お金を手に入れるには貴族になるしかない。
「母さん。」
ナタリーは消え入りそうな声で言った。
「あたし、貴族になる。」
そう言った瞬間、ジルが顔を上げ怒鳴った。
「あなたまで出て行くの!?私をおいて行ってしまうの!?」
ナタリーは言った。
「違う!母さん!これからは別の方法でお金を手に入れなきゃならない!あたし達にはそれは無理、だからあたしが貴族になってお金を…!」
平手打ちを食らった。ナタリーは驚いて母を見た。
「だまりなさい!私は―――あなたを―――そんなふうに―――育てた覚えは―――ありません!」
先ほどまで泣いていたのが嘘のようにジルは怒鳴り散らした。終いにはコーマスの死を告げにきた男の人が止めないと、ナタリーはジルに殴り殺される所だった。
「なんで分かってくれないの!?」
「わかってないのはそっちよ、ナタリー!貴族になんてなれないのよ!」
でも、近いうちに数百年ぶりに試験があるらしいいですぜ。と死を告げにきた男が呟いた。ジルはその男を睨みつけた。
「ほら、試験があるんでしょう!?貴族になるチャンスじゃない!!」
ジルは首を激しくふって怒鳴った。
「許しません!貴族になるなど―――この―――私が絶対に―――許しません!!」
ナタリーはかっとなってジルに平手打ちをくらわすと部屋に走って戻っていった。
部屋にもどって勢いよくドアを閉めると、ナタリーは思いっきり壁を殴りつけた。
「母さんのわからずや!だったらどうやってお金を―――収入を得るのよ!」
ナタリーは何度も何度も壁を叩きつけ、終いには疲れてそのまま寝てしまった。
次の日、ナタリーは気まずい思いをしながら台所に向かった。台所には昨日の男がおり、気まずそうに手をいじっていた。
「おはよう。」
ナタリーはぶっきらぼうに言った。ジルは無視した。ますます沈黙が重苦しくなった。
しばらくしてジルが口を開いた。
「昨日のこと…」
ナタリーは母親を見上げた。
「許します。その男と一緒に都まで行きなさい。」
ぽかんとしてナタリーはジルをみた。それをみてジルは言った。
「考えたんです。たしかに収入を得るてだてがありませんから。」
ナタリーはジルに飛びつきそうになった。それをジルが止めた。
「ただし、チャンスは一回のみ、試験に落ちたらまっすぐ帰ってきなさい。」
「うん!」
ナタリーは有頂天になりながら答えた。
「わかったら早く準備をしてさっさといきなさい。」
「はーい!」
ナタリー=ウェストン十三歳の試練の旅がここにてはじまった。
一章〜実現にむけて〜
「剣の構えがあまい!もっと腰を引け!」
今ナタリーに剣を教えているのは、父の死を告げにきた男だった。名はラファエル=ハミルトン。見かけは三十代前半だろうか、とても強そうには見えない。実際、いつもなにかに怯えているように見えた。だが、ナタリーに剣術を教えているときは、とても強くすばしっこい。目に見えないほどに。
「ラファエルが早すぎるんだってば!」
今しがた剣が手から弾き飛ばされたナタリーは悔しそうに言う。するとラファエルがナタリーの頬を打った。
「そんなことでつべこべ言うな!貴族の中には俺よりも早い奴はいくらでもいるぞ。こんなことでへこたれていたらあの世界では生きては行けんぞ!」
ラファエルがナタリーに喝をいれた。その声が大きすぎたのか、森中の鳥たちが一斉に飛び去っていく。
ナタリーたちがいる森は首都の手前にあり、来るのに一ヶ月という時間を費やした。
「さあ、やるぞ!」
ラファエルは、旅を始めたときに貴族になるための試験の基礎を徹底的にナタリーに叩き込んだ。
試験は二つあるらしい。筆記試験と剣術試験だ。ナタリーは勉強の方は大丈夫だったが、剣術がまるっきりダメだった。
どういう風にというと…
ラファエルが剣を突き刺してきた。ナタリーはそれをうけながした。が、ラファエルのちからが強すぎて、衝撃で手がしび、次の攻撃を迎えうつことが出来ないのだ。
「お前はいったい武術で何を学んだんだ!」
そのたびにラファエルがどなる。ナタリーの教わった武術とこの剣術はマッチするように思えるが、ナタリーの大きな敗因は、金属のこすれる音が嫌いな事だ。
ナタリーはどうやらこの音が聞えるたびに奥歯が歯がゆくなり、剣を握っていられなくなるのだ。
ラファエルはつくづく言っていた。
「お前のやっている武術と剣術を融合させれば、男にも負けないぐらい強くなれるのに…。」と。
ナタリーはそれを聞くたびに顔をしかめる。自分でもわかってはいるが、金属がこすれあう音が聞えるたびに耳を塞ぎたくなってしまって、武術のことを忘れてしまうのだ。
「明日、首都につくからな。」
ラファエルが練習用の剣をしまいながら言った。
「うん…。」
ナタリーは気の無い返事を返した。
ラファエルがその夜、今まで貴族試験に参加した女性の事を教えてくれた。たいがいは筆記試験に合格するが、剣術試験で落ちるらしいのだ。
ナタリーは胃がどすんと落ちこんだような気がした。
次の日。
ナタリーは朝早くから起されて薄暗い森の中を歩き始めた。前にいるラファエルは剣をはなすとまるっきりダメ男に変身して、鳥が飛び立つ音にも、飛び上がって驚く。
そんなラファエルを見てナタリーは溜息をつく。
「ラファエル、いつになったらつく?」
「え…えっと…ききき今日のひひひ昼頃かな?」
ラファエルはどもりながら答えた。ナタリーはもう一度溜息をついた。
しばらくはさくさくと土をふむ音しか聞えなかったが、ふいにラファエルがぴたっと止まった。
「ラファエル?」
「しっ!」
ラファエルが人差し指を唇にあてた。
「ななな何かいる。」
不安そうな顔をしながらラファエルが言った。(実際彼の顔は青ざめていた。)
震えながらラファエルは剣をにぎった。とたんに、
「ナタリー!ふせろ!」
「え?」
ラファエルがナタリーの襟首を引っつかんで地面に押し付けた。
「うぶっ!」
ナタリーは息が詰まった。と同時に後ろにあった木に矢が刺さった。
「うわ!?」
ナタリーは驚いて矢を見た。
「誰だ!ででこい!」
ラファエルが伏せながら言った。
と、霧の中から人がでてきた。
「おやおや、鹿と間違えてしまいましたよ。あなた達があんまりにもみすぼらしいのでね。」
どうやら現れた青年は貴族試験を受けるために首都に旅している途中の地主のあととりらしかった。
「いやあ、父上に言われて首都に向けて旅していたらなんと貧乏人の薄汚い農民を鹿と間違えてしまったよ。」
青年は意地の悪そうに微笑をうかべると、金髪をかきあげた。それからまた言った。
「おや?もしかしたらそこのレディは貴族試験をうけにここまで来たのかな?」
ナタリーは言い返した。
「そうよ!」
「あーはっはっはっはっは!君のようなひ弱な女の子がかい?なんだ私は売春しにわざわざここまできたのかとおもったよ!」
ナタリーはかちんときた。青年は続けた。
「君は最低限の教育はうけているのかい?ムリだろうな、なんせ貧乏な農民だものな!スラッカンの教育基準は最低らしいからな!」
青年はまた大声で笑うと霧の中に消えた。
しばらくナタリーは怒りでその場を動けなかった。
「なによ!あいつ!」
ナタリーは起き上がると、こぶしを木にたたきつけた。
「おちつけナタリー。」
ラファエルがなだめた。
「もう!貴族なんて血筋でやればあんな奴とはちあわせになる事なんて無いのに!」
この国の貴族はすべて試験に合格したものしかいない。貴族に与えられた土地は、血筋が管理していくのではなく、継がせたいと思ったら試験に後継ぎを合格させなければならない。
ラファエルは剣をおさめた。
「ででででも、ナタリーここここの制度のおかげでききき君は貴族になれるんだよ?」
「わかってるわよ、そんなことくらい…。」
ナタリーは乱暴にちらばった荷物を片づけながら言った。
昼過ぎ。
ナタリーたちはやっと首都に着いた。
だが、休むひまなく試験会場に向かった。ナタリーたちがついたときには試験の説明が行われるところだった。
ナタリーは試験会場を見回した。試験会場は宮殿の中庭だった。(もっとも中庭は剣術の試験会場だが。)
貴族の息子の姿もちらほら見えるが、スラッカンから来た者のほうが多かった。女の子は一人もいない。
「―――以上。」
「…え?」
ナタリーは周りを見るのに忙しく、説明をまったく聞いていなかった。
「ナタリー宿に帰るよ。」
ラファエルが小突いた。
「え?うん。」
ナタリーはラファエルのあとに続いた。
と、聞き覚えのある声が聞こえた。
「帰ったほうがいいんじゃないのかい?」
ナタリーは声のする方を見た。今朝の青年だった。
「貴族試験に落ちてっここで売春婦になる前にさ。」
青年の周りにいた何人かの少年――おそらく青年の従者――達が笑った。
ナタリーは飛びかかろうとした。
「よせ、ナタリー。」
とっさにラファエルがナタリーの肩をつかんだ。
「でも!」
ラファエルは首を振った。
青年達はせせら笑いながらどこかへいってしまった。
「ナタリー、聞いていなかったようだかもう一度言うが、試験前のいざこざは失格になる要因になる。」
「そうなの?」
「まったく聞いていなかったようだね・・」
ラファエルは宿に帰りながらナタリーに教えた。
「いいか、試験前の準備として一ヶ月時間がある。だから、ナタリーお前には剣術の師範を見つける。OK?」
「え…あ、うん」
とはいったものの女の子だからといって剣術の師範になってくれる人はいなかった。
さじを投げようとしていた時にラファエルがやっと師範を見つけた。
「すごく変わり者のじいさんらしい。」
試験開始三週間前の事だった。
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2005/02/14(Mon)21:19:29 公開 / ヒスイ
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■作者からのメッセージ
初投稿のファンタジー小説です。
これから不老不死についてなどあかしていくつもりです。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。