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『―Help.―プロローグ』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:黒羽根
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プロローグ:海原
一族は皆、都会へ憧れを持ち、去り行ってしまった。残された子供五人。島を愛する者。それはそれは悲しい結末を、たった今迎えた……
助けてと、何度もそう願った。けれど呼べる名前がくて、それでも助けてと叫ぶ自
分は、相当アホらしい。それでも本当に助けてほしくて。
一人の少年は独りでそこへ座り込む。断崖絶壁の上、彼は四つの墓の前に腰を降ろした。それは死んだようにボーッとした目で、何も考えようともしていないのがすぐに分かるようだ。
―ミンナミンナ、死んだんだ―
四つの墓を眺めて、後ろを覗いた。そこはかつて彼と、その四つの墓に眠る者達が日々生活をしていた跡地。その筈なのだが、襲われたのか、見る影も無い程グチャグチャで、敷き詰められた緑色の芝生は黒く焦げていた。
「このまま崖から飛び降りようか…痛いだろうなぁ……」
二日前、この名も無い無人島は海賊船に襲われて、この有様。四つの灯火は無残にも消された。その時の彼といえば、何も気付かず森へ入り動物たちと楽しい一時を過ごしていたのだ。
その、その刹那の間だった。名も無い無人島に名も無い五人が住むのは案外簡単で、五人だけの世界が楽しいと思えるほどだったのに。
「あー、グチャグチャになるかな…下砂浜だけど石あるし」
名も無い彼は絶望に立ち尽くして、崖の淵にまで歩み寄る。薄肌色の布で簡単に作られた民族衣装が潮風に揺らいだ。その瞬間に彼は崖から足を滑らせて、下に輝く白い砂浜へ真っ逆さま。瞬間、呆然とした少年は叫び声を上げた。
「うわぁぁぁぁぁあああああ」
うつ伏せのまま物凄い勢いで墜落する少年の瞳から流れる涙は上へのぼるように消えていく。その刹那、自分の真下に人影が見えて、ぞっとし、その人影の上へ音を立てて落ちた。
「きゃぁぁ!」
「いって―――――――」
少年は尻をさすって目を細めると、下に違和感を感じて目線を運ぶ。そこには女の人が仰向けで目を回していた。途中で枝引っかかったため、女性に目立つ傷は見当たらず、偶然にも少年に怪我は無かった。茶色の短い髪に、白いワンピースと帽子が良く似合うその女性。少年は始めてあった都会の人間に少しの不安と好奇心を感じ、横たわる女性が目覚めるまでそこにいた。
しばらくすると女性はめを覚まして、一瞬少年を見て、ニッコリと笑い立ち上がる。少年に手を伸ばして立ち上がらせると”大丈夫?”と逆に問われてしまった。
「上から落ちてきたけど…大丈夫だった?」
「あ、あぁ…こんなんたいした事無いから」
「そっか。強いんだね」
「エルシア―――――!出発すんぞオォォ!」
煌く海から誰かを呼ぶ声が聞こえて、その海を見つめたらそこに浮かぶのは海賊船だった。この女性がエルシアで、尚且つ海賊の仲間とでも言うのだろうか。
けど目をこらしてみれば、襲ってきた海賊船とは違う旗。シルバーの布地に蒼いドクロ。飾りに緑の葉。
小さな少年はこれを海賊の旗とみるのは難しい事だった。刹那に少年は、”光だ”と思い、手を振って去るエルシアという女性の手をひっぱった。
―助けてくれるんじゃないか。この俺をこのどん底から、助けてくれるんじゃないか?―
そんな気持ちを抱きしめて”なぁに?”と尋ねるエルシアに、震えをあげて小さな声で言う。
「……助けて――――――――」
少年は大海原に誓う。必ず仇を取ると、その夕日の煌きは、忘れない。
プロローグ(完)
次回へ続く
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2005/01/19(Wed)15:34:19 公開 / 黒羽根
■この作品の著作権は黒羽根さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
今回のプロローグはやけに短いですがすみませんでした…
えーとこれは海賊のお話です。一応……(汗
前回の作品が 子供:女 大人:男
だったので逆にしてみました…なんて安易な…
すみませんw
今回の作品も頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします。
それでは次回にまた会いましょう。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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