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『待ち合わせ【読みきり】』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:相家 有名
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○1.引っかかる
男がその待ち合わせ場所に遅れて来た。彼女はまだ来ていない。5分たった。男は電話をかけている。いらいらしている。相手は出ない。彼女はまだ来ない。10分たった。たばこの吸殻が地面に散らばっている。男は人目を気にしているようだ。それから5分たった。男は電話している。電話に彼女が出ないことを確認すると男は帰っていった。
「ねえ、あいつ帰った?」
トイレから出てきた彼女が言った。
「今帰った」
それから女は、男の事を痛烈に言い始めた。
「怒りやすい」とか「自分のことばかり考えてる」とか「大事に思ってくれてない」と。
話を適当に受け流しながら俺は思った。なかなかスタイルよさそうだな。おたのしみだ。どんな声を上げるのだろうな。
○2.広美が待っている。
昌一は走っている。
広美とは妙な縁がある。付き合いは長い。高校で長距離やってたころからずっとだ。いや本当は大学卒業のあとはその縁も切れるはずだった。就職した会社が違ったからだが、それも彼女が勤めた会社が2ヶ月で倒産して、新しい就職口がうちの会社だったために、結現在に至っている。
あいつはわがままだ。いつも自分勝手に好きなところにこうして呼び出しては俺を走らせる。それも本気でないと最悪なことに機嫌が悪くなるのだ。
彼女は少しおかしい。大学に通っていたころ彼女の部屋に泊まって、次の日帰る別れ際にいきなり「へたくそ!!」と言い放って走り去ったことがある。周りの人の目に俺は「ち、違う!」と訳のわからない言い訳を言った。
広美は、高校時代の彼女はそんなにいい選手ではなかった。足が速いわけでもなく、練習熱心、てわけでもなかったが、走るときは何時間でも走り続けた。いつも楽しそうに。
街にいる周りの人が驚いて俺を見ている。確かにこんな奴そうはいないだろう。おかしいと思うのも当たり前だと思う。しかし俺はもうなれてしまった。
広美のセンスにはついていけない。原色系が大好きなのだ。彼女の部屋は目がちかちかする。なんでも自分の色にしている。飼っている猫には赤い服を着せ、インコはもともとカラフルだ。誕生日プレゼントにすごい色のマフラーをもらったときは正直困った、あんなのとても使えない。
あの女は世間をなめている。うちの係長が、人がいい事を利用して好き勝手にやっている。勝手に休み取ったり、仕事を断ったり、いつまでもアルバイト気分でいるのだ。
それでも走ることは嫌いじゃない。今でも。
広美は高級志向ではないが安月給なのを知っていて俺をからかう。この間もあいつは「誕生日プレゼントはダイアよね」とのたまい、俺は「そんなもん誰が買うか!(買えるか)」とやりあったところだ。
あの頃俺は嫌になっていた。みんなの期待や妬みがプレッシャーとなり結果を出すのがつらかった。広美のような自由がうらやましかった。でも彼女はいつも非難じみた目で俺を見ていた。俺がストレスのはけ口として彼女を求めていたから、だろうか。
今はそれも無くなってしまった。だから彼女は俺を走らせたいのか。それが理由だろうか。しかしそんな事はどうでもいい。俺も嫌いじゃない。だから走る。それでいい。
広美が待っている。
○3.待ち合わせ Aサイド
私は彼を待っていた。
見知らぬ男が声をかけてきた。
(ナンパか?)
あなたはきょうこさんですか?
違います
男は謝って私から離れた。そしてその「キョウコ」てのを待っているのだろうけど、時々私の方をちらちら見ていた。胸のちいさな赤い花がかなり目立っていた。私は気味が悪いので逃げたかったが、待ち合わせているからそういうわけにもいかない。
私は男から見えない噴水の裏へ移動した。大体あいつが遅い。もう15分も過ぎている。
ハイ30分経過……
Telをかけた。
「あのさ急に用事は言っちゃってさー、いけねぇ」
「ひどーい! 用事って何」
「高校の先輩がー、来たから、あのさ、酒に誘われちまってよぉ」
電話の後ろで笑い声があがった。どうせうそに決まっている。こんなときはなに言ってもごまかされちゃう。
だから「だからさ、こんどまたつー」
「ばか!」といって電話切ってやった。
久々のデートで楽しみだったのに、付き合い始めたときはあんなんじゃなかったのに。暗いし寒いし帰ろう、とか思っているとやはり「キョウコ」もこなかったのか男も下を向いてその場に残っていた。同じようにドタキャンされた(だろう)男に少し同情した。
とにかく最悪。ひどい、ひどい、ひどい。私はぷりぷりしながら駅へ向かった。果たして私のことを大事に思っているのだろうか、私は切符を買った。
そして私は、今日も学校に遅刻した二宮鏡子のことを思い出した。まさか「キョウコ」って鏡子のことじゃ無いよね… そういえば鏡子、近々インターネットで知り合った人とデートするとか言っていたような… いつかはいってなかったけど。そんなことを考えるとあの男の待っている「キョウコ」が鏡子のような気がしてきた。
そんな必要ないと思ったが、一応電話してみる事にした。
「鏡子? 今何してる」
「みんなで騒いでるよ!」「イエー!!」
後ろで歓声のような声が上がった。
「ねえ、ひよ前にさー「キョウコ」を待ってる変な男がいるんだけど『あ…
あんた待ち合わせとかしてない?」どうしよ合コンが入ってて忘れてた、友子、彼まだ待ってる?』
「わからない、帰っちゃったかも」
「ねえ、今日は用事ができていけなくなったからって彼に言ってくれない。ね、おねがい。番号知らないしさー。」
「あきれた、なにそれ」
「だってまだ待ってたらかわいそうじゃない。ね、」
「嫌だ、自分で言えばいいじゃん」
「そんなこと言わないで、ね、いいじゃん、こんどクゴラーメンおごるからー」
「ヤダよそんなき『ええー、漫才かよ! こいつとじゃできねぇよ!!』????」
聞きなれた声がした。
「聞こえた? 聞こえるか、ううんと、えっと、それじゃよろしく友子」
「ちょっと鏡子…」
切られた、あいつ! 電話をかけなおす。
「なに?」
「ねえ、そこに隆司いない。」
「いないよ」
「うそ、今あいつの声したもん」
「いないってば、気のせ『じゃこんっどは、3番が6番にキスー、Yehhh』…」
後ろのはしゃいだ声は隆司のものだった。あの馬鹿。もう馬鹿。
「ちょっと合コンしてるだけだって」
「隆司を出して」
「…わかった……『#$%&*&%$#*〜=〜=〜』…あっ、こら!…」
電話は切れた。
そして再びかかってきた。
「ごめんね友子、逃げちゃった、ひどいやつだねー」
「……」
「…ねえもう切るから。よろしくね友子」
嫌とごねる自分も嫌だったのでそのまま切った。
直ぐにあの男ン所へかけ直す。「…現在この携帯は電源が入っていないか」
私は悔しかった。情けなかった。涙出そうだった。あんな奴だったなんて。私はあの哀れな男に要件なんか伝えず早く帰りたかった。
あいつ、帰ったらなんてゆうか!彼のだらしない顔が浮かびまたむかついた。(むかむかむか)男のいたところに戻ったがなんだかんだで
遅くなったのだろう、男はいなかった。何で私だけこんなつまらない役回りしてるのかな、とうらめしく思ってると男はしょんぼり現れた
。
あまりのしょんぼりにわらっちゃいたいくらい。えと、男の名前って何だっけ?かけ直すのは嫌だったのでとにかく声かけた。
あのう、鏡子に頼まれたんですけど
?きょうこさんが??
鏡子は急に仕事が入ってこられなくなった、ごめんなさい。だそうです
……
(反応無い、怖い)じゃこれで(やっぱ遅れた連絡に怒っているのかな)
ちょっと待て、やっぱり君がキョウコじゃないのか?
違うって!
逃げようとすると腕つかまれた。
ちょっとヤダ離してよ!大声出すよ!{何人か彼女らを見たので、そうとうでかい声です}
ええと待ってくれ、ちょっと話が聞きた
そんなこと言ってホテルとかにつれこむでしょ!!!
などともめながら、説得された私は結局近くの喫茶に彼と二人で入った。彼は「キョウコ」にからかわれたと思ったこと、を私に話した。私は、「鏡子」が約束を破って合コンにいって、たまたま近くにいた私に伝言を頼んだ事、を話した。
恋人に裏切られたこともあって、ちょっと男性不振気味だったが誠実そうな人だと私はおもった。彼は納得がいった風で、鏡子が来なかったことがショックなようだった。私は私で言い訳するあいつが浮かんで腹ただしい。ちょっと話してみてもいいかな、かわいそうだし。あいつへのあてつけでもあった。だから
このあと二人で食事しに行かない?
と彼を誘ってしまった。彼も同意して、そして彼が鏡子と行くはずだった店に行くことになった。
そして久々にうきうきした。これも運命ってやつ、なんてね。
○4.ファンタジーラブ 〜ありえない話〜
登場人物
主人公: シナノ
前彼 : 光一
あの人: 孝治
友人 : のっこ
その他: 多数
あたしがあの店で働いていたのは彼のためだった。
彼はグータラ。働こうなんて気さえない。小説家になる、とか言ってるだけであいつが何かを書いているところなんて見たことない。なんか彼に期待してなかった。でも彼に出て行ってほしくなかったから、一生懸命仕事してた。
あの日、あの人に会わなかったら多分まだ彼とぐだぐだ付き合ってたと思う。高校時代の同級生だけど、じつはよく知らない。お金持ちの優等生だということ(全国模試で80以内には入ってた)くらいしか。あと生徒会長もやってたな。まるで空想の中のエリートのようだった。ものすごいうわさだったけどあまりに世界の違う人だと思って興味なかった。
あの人があたしの働く店に来たのは本当に驚いた。(あんま品のいい店じゃないので)いわゆる親父たちの接待だった。そしてあたしが呼ばれて接待することになった。あの人はあたしにすぐ気がついたようだ。あたしはわからなかったけど。いきなりあたしの本名をいわれた、思いっきり引いた。何考えてんだろう。話を聞くと某大企業のサラリーマンだそうで、ぐうたら彼とのあまりのレベルの違いになんか悔しかったのを覚えてる。だから高いボトルを特別に開けてあげた。そしてもう来るな!と思った。
でも後で何回もあたしの店に来た。あの人が一人で来ることはなくいつも接待だった。そのつどあたしが必ず呼ばれて、ある意味あたしは迷惑だった。同級生、昔のあたしを知っている人とは、やりにくくてしょうがない。でも彼はいいお客さんだった。とても洗練されてて、品があって話すこともとてもおもしろかった。変なことされる心配はまずないと思ったし、実際なかった。楽であるといえばいえる。でもあたしはあまりあの人が好きでなかった。ここで負けたら、なんか自分に腹立たない、人間として。
しかし、その日は来た。
あたしはいつものように店に来て準備してた。のっこはあたしにいつものように「あいつにみつがしちゃえ」とか、話してた。そこへあの人がやってきた。珍しく一人で。あたしに用があるらしい。それがいきなりあたしと結婚を前提に付き合ってほしい、ということだった。あたしはいきなりのことにボーッとしてしまったが、すぐに体制を整えて「考えさせて」と答えた。のっこがあたしをひじでつついた。
それから話はごっちゃごちゃになる。あの人は帰ったがこのことは店中に広まった。仕事友達たちは嫉妬して意地悪しだすし(やはり人気があったのだ)、店長はよそよそしくなるし。(店長は女性で、この話題を客に話すことはこの人が罰金にした)やっとのことで帰ってものっこが光一とあたしの両親に話したらしく、彼は憤慨して「そいつにあわせろ!ぶっとばしてやる」とか言ってるし、両親が電話であたしにアドバイスしだすし、のっこはそれ聞いて笑ってる。
あたしはあたしで、実際どうしたらいいか困っていた。のっこに相談するなんて血迷ったことしてたぐらいだもの。あの人のことが嫌いだったはずなのに、なんかいざ、となるとどうしたらいいのかがわからない。
あの人は翌週、再びやってきた。
結局、どっちつかずのまま再会をすることになってしまった。
半分うそだと思っていたあたしのとっては、むしろ冗談でいてくれたほうが楽だった。あの人はあたしの返事を聞く前に、もう一度あたしと結婚を前提に付き合ってほしいとはっきりいった。あたしはやっぱりおいそれと決められそうになかった(これがもしのっこなら…これ以上は考えない)。そしてずるいなと思いつつも友達として付き合うなら、と返事した。彼のことは内緒で。その返事は彼には以外だったらしく、意外とでもいいそうな顔をした。しかし、一瞬考えると笑顔を浮かべて承知した。
X月X日。最初のデートは高級レストランで食事。
あたしはビルの何十階というところからの夜景なんか初めてだったし、本格的なフレンチは、前のっこたちと行ったところなんて目じゃないくらいだった。彼はアルマーニのスーツに、ネクタイがびしっときまっていて、かっこよかった。靴はプラダだし、コートはバーバリーだった。あたしは、シェアードのコート、コーデュロイのワンピースにコーチのバック、グッチの靴で対抗したけど身についた品のよさでは完敗してた。あの人は慣れた落ち着いた感じで、料理をこなしていった。意外におたつくあたしを彼はさりげなくフォローしてくれたし、面白い話をしてあたしを落ち着かせてくれた。そして、料理がうまい。
食事のあとは彼も用事があるとかで、お抱えの運転手が、よく知らないけど高級そうな車であたしのアパートまで送ってくれた。(でもあたしのアパートまでは路地が狭すぎて入って行けなかったけど)
X月X日。2回目のデートは彼の別荘で映画鑑賞会。
あたしが映画を好きだっていうことを前電話で話したら、彼も映画好きで家の別荘には映画シアターがあってすごいらしい。それで彼の別荘でビデオを見ることになった。友達たちも招いて上映会をたまにやるらしい。あたしも友達を呼んでもいいというので、それならと何か?のためにのっこも誘った。彼にはあの人と付き合うことは言ってなかったので、のっこと買い物にいくことといってあり、のっこにもそう口裏を頼むことを条件にした。果たしてのっこは1も2もなく誘いを受けた。
たこ焼き屋台、横取り亭の前にのっこと一緒に(あたしが頼んだ)待ち合わせた。(待ち合わせに早く来たからワンパック買って食べた)彼は軽で来た。このほうが、小回りがきくからだそうだ。(この車は知ってる、オペル、ヴィータだ。)彼は今日はカジュアルな服だった。(あたしもそうだけど)でも、ジーンズはビンテージものらしいし、高そうな靴(メーカー知らない)を履いている。車の中で彼は友人がだいたい5人くらい来ること、女性も来る事、友人の一人が映画監督の卵(とはいえまだAD)が映画を作ってきたことなどを話した。あたしものっこも大の映画好き(のっこはSexyな男優がいいのだけど)だから車内の話題は自然に映画のことになって、大盛り上がりした。別荘にはすでに彼の友人たちが集まっていた。女性が2人、男3人があたしとのっこに自己紹介した。あたしたちも自己紹介した。あたしは監督(の卵)は、大島渚のような痩せを期待していたんだけど、実際はデブでオタク系の人でちょっとがっかりした。
約束どおり映画の前に彼の友人が作った映像を見たが内容はいまいちだった。仮面つけた女の子が踊ったり、町の中を歩いたり、最後は人をナイフで刺したり。気持ち悪い。本命の映画は恋愛物だった。アリルが最後にヒースと結ばれるのが途中から想像できたけどいい映画だった。映画監督見習い以外にはものすごく好評だった。その後その大きな庭でバーベキュウをした。映画監督の卵というその人はみんなからつまんない、意味わからないと非難受けてた。のっこはその彼と組むしかなかった。というのは、他はみな自然と男女2人のペアになってあまりは彼しかいなかったので。
あたしたちは、その日を満喫した。別に変なことはまったくなしで。帰りは彼に(のっこも一緒に)送ってもらった。(期待していたそこのあなた!はいはい、ここはそういうところでないのよ)でものっこがいなかったら、どうなってたかは知んない。
X月X日。3回目のデートは遊園地。
新しくできたテーマパークに出かけた。彼がこういうのが嫌いなので久々にこういうところに来た。動きやすい服でたくさん乗り物に乗った。水がはねた、ぐるぐる回された、思いっきり落下した、気持ち悪くなった、いろいろ食べた。童心に返って、回転木馬、観覧車。(メリーゴーラウンドは間抜けだったかも)そしてディナー。前みたいに本格、て、わけでなかったけど、テーマパークの景色はそれなりの気分で楽しんだ。
しかしその頃彼にばれてしまったようだ。友達に見られていたらしい。それを告げ口された。それで疑わしいと思った光一が、4回目の待ち合わせ場所についてきたのである。
そこであの人をみてしまった。めかしこんでいたあたしも悪かったのかも。
X月X日。その日はドライブの予定だった。
あの人はBMWに乗ってきた(スポーツカータイプがこの他に2台あるそうだ)そしていきなり彼が現れた。あたしをつけて来たのだ。彼はあの人の胸倉をつかむとあの人を殴り倒した。あたしは、あのやる気のないあの男がこんなことをするなんて、驚いた。あの人は殴られた反動で、車に体をぶつけた。
「こいつは俺の彼女だ、勝手なことをしてもらっては困ンだよッ!」
あの人は殴られたのに顔色一つ変えないであたしに言った。
「この暴力を振るう失礼な人は誰なんだい?」
「待ってあのえっとね、あた「オイ、すましていんじゃねーよ、おめー勝手に俺の彼女を取ンじゃねーゾ!!」…」
彼があの人にけりを入れながら叫んだ。
「金持ちのぼんぼんがが、こいつの気持ちも知らないで、えらそうに(どかどかどか)ええっ!!! 死ねァ! コラァ!!」
「ねえやめて、もうやめてよ!!!」「うるせい!!ボケェ!」
あたしは地面に顔をぶつけた。光一は動きを止めた。顔から血が出てきた。
あの人があわてて、あたしに駆け寄ったが「来ないで」あたしは言った。
あの人はこんな経験が無かったのか半ば呆然としていた。
「もう、消えて」あたしは彼に言った。
「あんだよー。俺はお前のことが好きだから」
「ならなおさら。もう嫌なの、あんたのそういうところが
二度とあたしの前に現れないでよ」
彼は、しぶしぶ「これで終わりにはしないからな」と消えていった。
「幸治さん、貴方も帰って」
あの人はあたしをしきりに心配したが、あたしが強く言うと静かに姿を消した。
その後は、書くのがめんどくさいけど、彼と別れて、あの人と付き合うことになった。あんなに怒り狂っていた、光一が「別れよう」といってきたのだ。そんなのあり、とあたしは怒っていうべきだったのかもしれないが、あたしは言わなかった。なんか自分でもずるいかなと 思った。でもこの時はあいつにはほんとに愛想を尽かしていたから。もおいいんだ、忘れた過去のことは。
X月X日。日が開いた。5回目はクラッシックのコンサート。
あたしはあの人を待っていた。あの人はやはり本気なようだった。あの後何日か後にtelがあった。あのときの無礼をわびてデートの約束をした。あたしたちは待ち合わせた。彼岸公園のあの屋台の前に。
10分前に来て20分過ぎた。
あの人は来なかった。何で?
あたしは何であの人にこんなに期待するのだろう、
最初は、興味なかったのに。
痺れを切らして携帯で電話する
…でない
なんで?
何で何で何で?
誰か好きな人ができたのか、やっぱりあたしじゃだめなのかな。
嫌な不安が頭をよぎる。考えないようにした。
でも、待っているといろいろ考えてしまう。
…やだ、あたしは彼を信じる
一時間。彼はくる様子もないし、電話も無い。
帰ろうか。のっこが偉ぶってあたしに警告したことを思い出す。
むかついた、でもその通りになったのかな。
でもあたしは待った。結局そこで2時間。
横取り亭が場所を移動する。あたしももう帰ろう。
あっ!!電話だ!
「ごめん。急に会議が入って、電話している余裕が無かったんだ…」
すごく心配したんだから。もう安心。あたしは全然気にしてないから
○5.待ち合わせ Bサイド
男は待っていた。
かなり前からだ。それもそうとう緊張していた。彼は確かにこういう事が苦手そうにも見えたが、それだけでなくそれなりの理由もある。
まず、相手の顔を知らない。どこに住んでいるのかも知らない。(このあたりに住まいがあるのは知っていたが)詳しい事はまるで知らない。それよりも男を緊張させたのは相手は彼の憧れの女性である事だった。
彼こと宇佐川がこの女性「kyoko」を知ったのはずいぶん前になる。5年前にあるサイトのチャットで彼女とおしゃべりした、それがきっかけだった。彼女は内気で引きこもりの彼の湿りがちな生活を明るいものにした。彼女との会話が楽しくて、何時間もおしゃべりし続けたこともある。インタート上に自分のホームページを置いたときにも、彼女が毎日のように来て、盛り上げてくれたり、彼の悩みを聞いてくれたりした。
そんな彼女を彼はやっとの事でデートに誘ったのだ。5年もかかったのはようやく最近自分に自信が持てるようになったからであり、そんな自信も彼女の前ではひとかけらも出ないのではないかと宇佐川は思っていた。
そういったわけで、遅れるわけにはいかないと彼はずいぶんと早くから彼女を待っていた。
待ち合わせと言ってもお互い初対面だ。だからいろいろ前もって決め事がしてあり、宇佐川は胸に赤い花を、彼女は赤い花柄のワンピースを着てくる事になっていた。
待ち合わせに遅れる事5分、赤い花柄のワンピースを着た女性が現れたとき、すっかり彼は「kyoko」がやって来たと思った。声をかけるのは彼女のほうからということだったので、宇佐川は待ったが、その女性は噴水前に立ち、そこで待ち合わせしているようだった。
もしかしたら彼女が自分を見落としているのかもと思った宇佐川はすぐに声をかけた。女性は怪訝な顔をして「違います」と言ったので人違いとわかった。
しかし彼はひょっとしたらその女性がネットの彼女なのではと思った。彼女はちょっととしたいたずらをよくして、違う名前で宇佐川におかしなメールを送りつけ、人を驚かすのが好きだと言っていたからだ。
でもその彼女も少しするといなくなってしまった。
それから30分たった。彼は混乱していた。彼女に何かあったのかという心配や、約束を破られた悲しさと、人にジロジロ見られているのではないかという恥ずかしさで。
彼女に連絡を取ろうにも電話番号を知らないのでただ待つしかなかった。そして遅れてくるかもしれないしとにかく1時間は待とう、と彼は思っているのだった。
そのうち、宇佐川は「kyoko」は自分をからかって、後で自分を笑いものにしようとしているのかもしれない、とふと思った。そんなこと彼女がするわけないとは思ったが、するかもという不安がないわけでもなかった。
そんな不安と寒さを紛らわすのと、彼女がそこらにいるというかもという思いで、宇佐川はあたりをあちこち歩き回った。
宇佐川が元いたところに戻ってくると意外な事に、さっき宇佐川が話しかけた女性がいて、唐突に「kyoko」が仕事で来られないといった。その話を聞いて宇佐川は、やはりこの人が「kyoko」で待っている僕を笑いにきたのでは、という考えを強くした。帰ろうとした彼女にあわてて、「待って、君がkyokoじゃないのか?」と言った。
彼女は違うと言ったが、からかわれていると思い込んでいた彼にはうそのように思えてならなかった。彼女が逃げようとしたので、宇佐川は彼女の腕をつかんだ。彼女が叫んだので帰りの人たちが宇佐川たちを見た。彼はあわてて話を聞きたいだけだと言ったが彼女は信じてくれない。
しかし何とか説き伏せて、宇佐川たちは近くの喫茶店にはいった。
彼は話を聞きたい、とは言ったものの、彼女が「kyoko」である事を疑っていた。しかし事情を話し彼女の話を聞くとそうではなく、「響子」は宇佐川とのデートを忘れて、合コンに行ってしまったことがわかり彼は落ち込んだ。彼の中で出来上がっていた想像上の「kyoko」像が音を立てて崩れていくようだった。結局彼の独りよがりだったのだ、いろいろ考えていた事、これから行こうと思っていた高級フランス店や、どれだけキョウコのことを思っていたか告白しようとどきどきした事なんかがまるで馬鹿なことに思えた。
この時宇佐川は、目の前の女性のことを忘れてショックでボーっとしていた。すると、自分を友子と名乗る彼女は「キョウコの代わりに、私とこの後食事に出かけませんか」と笑顔で言った。宇佐川はあまり行きたい気分でもなかったが、食事の予約をキャンセルしてお金を無駄にするのももったいないな、と思い直しその誘いを受けることにした。
○6.ナンパ
「……」「……」
「よう、そこの彼女たち…」
「……」「……」
「おっ、その冷たい目がイィ!」
「……」
「ちょっとまってくれよー、なぁ、もっと仲良くしよーよー」
「……」「……」
「……」「……」
「ねねねね、おごってやるっつて言ってんのに!このぶすどもが!!」「……」「……」
「……」「……」
「いいねー、君もしかして芸能人?、…なに、なに、ま、まってくれよ
話すぐらいいいだろー、なぁ」
「……」「……」
「今日はなかなかこねぇ」
「そうっすね」
「良くないうわさでも立ってんのかね」
赤い服の女が目に飛び込んできた。いい女が。
「ソ・コ・ノ彼女…、か〜のじょ」「そう、あなた、いやぁ、素晴らしいお顔つきですね、モデルでもやっているのかなー」
女は下を向いた。しかしどこかへいく感じも無い。
「ほんと、俺見たことあるかも、確か先月のプリィに出てなかった?」
「そうだな、俺も見たよ、プリィ」
その微笑がイイ。速攻。
「ちょっと時間ある?そこらでお話ししない、ちも、おごるよー」
「いーじゃん、楽しくやろうよー」
俺たちは、3人で刺激的なひと時を、思い描くことができた。
………んだ?何だ?
突然男が走って現れた、なんだぁ。こいつは、街中ではおとなしくしとけよ。
「………広美、誰だよこいつら」
「昌一くん、ナンパされちゃった☆」
「なにー、面倒はごめんだぜ」
「本当は妬いてんでしょ、あたし美人だからもてて」
「もてなくていいよ、だまされる相手がかわいそうだ」
「あんだとー、なにいってんだ、てめー」
なめてるねーこいつら、人の存在無視しやがって。
「おめえら、何勝手やってんだよ。いいか、
この人は俺らと一緒に行く約束だぜ、怪我しないうちに消えな」
俺らは男の前に立ち、胸元をつかんで脅した。
けっ、この男たいしたことないぜ…
男は相棒を突き飛ばすと、叫んだ。
「広美、逃げるぞ!」
「は?! こういうときは相手を殴り倒してあたしに強さを見せるもんじゃないの?」
「つべこべゆうなよ」
とか言って、あいつら走り去った。俺らはすぐ追ったが
二人は尋常ではない速さで、追いつけなかった。
「はぁはぁ………ちっ、くそっ!なんか今日は調子でねえ」
バケツを蹴飛ばし拳を握り思わず天を仰いだその時。視界の隅に捕らえたもの。
おお、あの女、すげーケツしてるぜ。ぶりぶりのぼよよ〜んだ。「いくぞ!」「おお!」
「そこのか〜のじょ。俺らと遊ばない?」「……」「……」
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2005/01/16(Sun)18:32:15 公開 / 相家 有名
■この作品の著作権は相家 有名さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
初めて投稿いたします。
この作品は、「待ち合わせ」の言葉から、それぞれの短い話を作り1つにまとめたものです。
皆様のお口に合うかわかりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。(aiie)
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。