『動物の視点 ――犬――』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ANIMARU                

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 少年は何もない空間にいました。
 体も何も動かず、ただ意識だけがありました。
 だんだんその意識も薄れていきました。
 しかしその少年の耳にとても優しく、
 それでいてとても厳しい声が聞こえました。
 その声はこういいました。
 貴方は死んだが死んでいない。
 貴方は罪を犯しすぎた。
 貴方はその罪を償うべきだ。
 と。
 さらにその声はこういいました。
 これから貴方が殺した動物の一生を見なさい。
 それは一部にしかすぎないが、命は命だ、と知りなさい。
 と。
 
 少年は自分の一生を思い出します。自分の罪を知るために。
 
 少年は自分の一生を思い出します。自分を知るために。
 
 少年は自分の一生を思い出します。自分の視点から。





 ――とある少年が居ました。
 ――その少年はとても純粋でした。
 ――しかし純粋な少年には恐ろしいところがありました。
 ――子供の頃から虫を殺すのが好きなのです。
 ――虫を殺すのは幼稚園から始まり、小学生でも続きました。
 ――小学生の上級生になると虫では飽きてきました。
 ――中学生になると飼い犬を殺しました。
 ――とても鋭利な刃物で。
 ――それはそれは楽しそうに殺しました。
 ――それは次第にエスカレートし、
 ――視界に入る野良猫は全部殺しました。
 ――そのころになると誰もその少年には近づきませんでした。
 ――親も、教師も、友達も。
 ――みんな怖かったのです。
 ――そのうち人間も殺し始めるのではないか、と。
 ――中学3年生になるとペットショップで閉店を待ち、
 ――こっそりと侵入して動物を盗みました。
 ――その動物をこれもとても楽しそうに刃物で切り裂きました。
 ――しかしその少年にも感情が無いわけではありません。
 ――しかし感情があるからと言って罪悪感を感じるわけではありません。
 ――少年は動物を殺すこと以外、何の変哲もない少年なのです。
 ――成績も普通。運動神経も普通。
 ――ただ、無性に動物を殺したいのです。




 少年は高校生になりました。そこそこの学力の高校です。しかし、その高校にも少年の噂は知れ渡っていました。あの少年は動物を殺す。そのうち人間も殺し出す。少年の周りにはいつも同じような会話がありました。しかしその少年は気にもとめません。むしろ聞こえていない、と言った方が正しいのです。少年は動物が殺せれば満足でした。
 ある日、学校の帰り道で路地裏にうずくまる1人の少女を見かけました。少年は普段のように何も気にせず通り過ぎようとしました。しかし、その路地裏が視界から消えるか消えないかの時、耳に猫の鳴き声がしました。少年の足はぴたりと止まりました。少年は体は動くがままに路地裏に入っていきました。そしてその少女の背後で止まりました。少女は少年に気づかず猫と戯れています。その猫は捨て猫のようで首輪もしていない子猫でした。少年は猫を見て無性に殺したくなりました。内ポケットからジャックナイフと取り出しました。これは、少年が中学生の時、あまりに動物を殺しすぎておれてしまった果物ナイフの変わりに通販で買いました。これまたよく切れるナイフで、いくら切っても刃こぼれ一つ起こしませんでした。刃物特有の金属音を立ててジャックナイフが内ポケットから出て来ました。その金属音に気づいた少女がはっとして少年の方に振り向きました。少年の顔を見た少女の顔から血の気が一気に失せました。とっさに猫を守るように抱き上げました。少女はこの少年が動物を殺すことを知りません。しかし、振り向いてみた少年は右手に刃物を持ち、そして、笑っていました。少女は直感と本能で少年の正体を感じ取ったのです。少年は愉快そうにナイフを持った右腕を大きく振りかぶりました。一撃で殺そうと大きく大きく振りかぶりました。そこで少女はとっさに思いつきました。攻撃すれば逃げられる、と。少女はすぐさま猫を左腕だけで支え、右腕を思いっきり全力で初年の腹部を殴りました。少年は痛みの余りうずくまりました。少女とはいえ油断していたところに腹部への打撃は大いに効果がありました。少年が再び顔を上げると、少女は居なくなっていました。少年は仕方なく欲求不満に陥りながら家に帰りました。
 その日の夜。少年は帰りの出来事が忘れられません。初めて目標を取り逃がしたのです。それに今日は運がとても悪く一匹も動物を殺してません。ふと、少年の頭にあることが思い浮かびました。
 動物園にはたくさんの動物がいる。
 少年は思い立ったようにベッドから立ち上がりました。そして時計を見ました。時間は夜の8時。電車はまだ動いています。少年はまるで、何かに操られているのかのように動きました。リビングを横切る途中母と出くわしましたが母は目すら合わせようとはしません。しかし少年もまた、気にしませんでした。玄関を出て機械のごとく駅へと歩いていきました。
 駅に人気は余り見られませんでした。少年の家から駅までは30分以上かかりますから、現在時刻は約8:45。少年は動物園までの切符を買いました。そして、ホームで5分程度待っていると電車がやってきました。快速電車でした。車内にも人気は見られませんでした。車内には少年ただ1人。8:45分など、会社員が居てもおかしくはありません。しかし、今はその少年を避けるかのように誰もいませんでした。それでも少年は無言で動物園を目指します。
 動物園の門は当然のごとく閉まっていました。それでも少年はあきらめません。壁によじ登ると胸ポケットからジャックナイフを取り出し。強引に切って中に入りました。いろんな動物を自由に殺せるという思いから、少年の心は今まで以上に弾みました。
 最初に目がとまったのは象でした。少年の体の4,5倍はあろうかという巨体です。少年はオリを乗り越えました。そして眠っている象の後頭部狙って全力で振り下ろしました。しかし、ジャックナイフは短いので一回じゃ死にません。少年はナイフを引き抜きました。そこから赤い血が激しく飛び散りました。しかし、その少年の顔は今までにないくらい楽しそうな顔をしていました。少年は後頭部に何度も何度も差し続けました。そのたびに少年の顔に象の血が飛び散ります。そしてとうとう象も力尽きました。
 次に狙ったのはシマウマでしたシマウマは警戒心がとても強く、少年が近寄るとすぐに目を覚ましましたが、檻の中はとても狭くすぐに少年の餌食となりました。
 そして少年は次から次へと片っ端から動物を殺していきました。コアラ、パンダ、ワニ。みんな少年の餌食になりました。
 そして、最後に少年がたどり着いたのはライオンの檻でした。そのときすでに辺りに動物は居なく、みんな地面に突っ伏していました。少年の体はもう真っ赤です。ライオンは少年が檻の前に立っただけで目を覚ましました。そしてライオンはゆっくりと少年のそばにやってきます。少年はひるまず右手を振り上げます。しかし、右手を振り下ろそうとしたときには、もう少年の右腕はありませんでした。少年は不思議に思いライオンを見ました。すると、ライオンが少年の右腕をくわえていました。ナイフは少年の足下の転がっています。それお少年は左手で拾い上げ、今度はその檻の反対側に回り込みました。そして少年は難なく檻に入りました。少しすると、少年の前に、さっきのライオンが近づいてきました。少年がナイフを構えると辺りの妙な気配に気がつきました。少年をライオンが囲んでいるのです。少年は気にせずナイフを前にいるライオンに突き刺そうとしました。しかし、その少年の左腕も宙を舞いました。ナイフが落ちる金属音を出して少年の左腕がともに落ちてきました。それでも少年は笑っています。とても楽しそうに。横にいるライオンが少年の両脇腹にかみついてきました。あっけなく少年の体は持って行かれます。最後に前のライオンが少年の首をちぎり飛ばしました。それでも少年はとても楽しそうに笑っていました。死ぬ寸前まで笑っていました。
 



 少年は何もない空間にいました。
 体も何も動かず、ただ意識だけがありました。
 だんだんその意識も薄れていきました。
 しかしその少年の耳にとても優しく、
 それでいてとても厳しい声が聞こえました。
 その声はこういいました。
 貴方は死んだが死んでいない。
 貴方は罪を犯しすぎた。
 貴方はその罪を償うべきだ。
 と。
 さらにその声はこういいました。
 これから貴方が殺した動物の一生を見なさい。
 それは一部にしかすぎないが、命は命だ、と知りなさい。
 と。


 少年は動物たちの一生を見ます。動物を殺した罪を償うために。
 
 少年は動物たちの一生を見ます。動物を知るために。

 少年は動物たちの一生を見ます。動物から見た視点となって。







――――――――犬――――――――――

少年は空中を浮いていました。それも、見たことのない場所です。右の方にはそこそこに高い山が見えました。左の方は結構低い山です。少年は考えました。なぜここに居るんだろう、と。少し考えても思い出すことは出来ません。ふと、自分の下には民家が見えました。何かあるのでは、と思い言ってみることにしました。最初は玄関の方から入ろうとしました。でも、小年は考えます。浮いているぐらいだから壁ぐらい通り抜けられるんじゃないか? と。思った通り、小年は壁を通り抜けました。
 中にはいると家の中はなにやらあわただしいふいんきで包まれていました。そこへ、少年の耳に後ろから何かが聞こえてきました。
「犬が出産するんだよ」
 少年は驚いて後ろを振り返りました。そこには不思議な鳥が飛んでいました。その鳥は体毛は主に赤で、鶏冠が緑と青で尾羽は紫色で、胸毛が黄色というなんとも不思議な体をした鳥でした。少年はやはり本能の通りに鳥を殺そうとしました。そして、胸ポケットからナイフを取り出そうとしました。しかし、胸ポケットからは何も出て来ません。少年は不思議に思いました。
「君はまた同じ罪を犯そうとするんだね」
 鳥がまたしゃべり出しました。少年はこの鳥はオウムかなんかだと思いました。それ以外鳥がしゃべるなどと考えられなかったからです。そこへまた鳥が話します。
「君は動物を、小さな命を奪いすぎて罰を受けた。死んだのに死んでいない体」
 鳥は静かにしゃべり続けます。
「君は殺してきた動物の一生を見続け、命を知るんだ。楽しい一生、悲しい一生。君はこれらを見続ける。君が命を知るまで。永遠に」
 少年は思い出しました。動物を殺し続けたこと。殺しに殺し続けて、最後にはあっけなく動物の王、ライオンに殺されたこと。
「思い出したね。じゃあ、これから僕と一緒に動物の一生を見続けようか。僕と一緒に見る一生は『犬』だよ」




 僕の名前は『ショコラ』。母犬『モーラ』の末っ子。種類は柴犬と秋田犬のミックスです。僕の名前は母犬のご主人サマの長女がつけてくれました。僕は生まれてくるときはとても大変だった、とお母さんが教えてくれました。僕には逆子だったのです。腰の辺りまで出かかって前足が突っかかってしまいました。そのとき僕を引っ張ってくれたのがこの家の長女でした。だから長女が僕の名前を付けたそうです。長女の名前は美夏ちゃんと言うそうです。
 美夏ちゃんはとてもかわいがってくれました。いつも美夏ちゃんが家にいる間中僕のそばにいてくれました。美夏ちゃんは僕のことを好きになってくれて、僕も美夏ちゃんを好きになりました。
 ある日、美夏ちゃんとそのお母さんが口論をしていました。人語だったので、あまりよく聞き取れませんでしたが後でお母さんが教えてくれました。僕は誰かの家に貰われていくのです。美夏ちゃんは当然反対しました。そのことで口論になったのです。僕も大反対でした。美夏ちゃんと離れたくはありませんでした。口論も次第に激しくなり、美夏ちゃんが僕の所へやってきて僕を抱き上げました。そしてがっちりと抱きしめて僕を離しませんでした。美夏ちゃんのお母さんはとても困った顔をしていました。もう決まったことだから、と言い残して部屋から出て行きました。僕が美夏ちゃんの顔を見ると水のしずくが目からこぼれ落ちていました。
 とうとう貰われる日がやってきました。僕はその日を知りませんでしたが美夏ちゃんの顔をみて今日だ、と思いました。僕は美夏ちゃんと離れたくありませんでした。僕は隠れることにしました。僕が見つからなければあきらめていくだろう、と思ったからです。隠れた場所は和室の押し入れでした。ここに隠れていると美夏ちゃんがいつも見つけてくれました。だからこの場所は美夏ちゃん以外知りません。僕は玄関から会話が聞こえてこなくなるまで隠れていようと思いました。しばらくするとお客さんが来ました。恐らく僕のもらい手なのでしょう。美夏ちゃんの鳴き声が聞こえました。それとお母さんが慰める声も聞こえます。そのうち玄関から困惑した声が聞こえました。僕が居なくなったことに気がついたようです。もちろん僕は出て行く気などありません。しばらく時間が過ぎました。今もまだ僕のことを探しているようで、僕の名前を呼ぶ声が聞こえます。僕は貰われたくない一心でした。すると押し入れの中に僕以外の影が来ました。もう見つかってしまったのでしょうか。それでも僕は振り向こうとしませんでした。その影は僕を抱き上げました。僕は抵抗しようとしたのですがその影の主を見て抵抗をやめました。その影の主は美夏ちゃんでした。僕は美夏ちゃんが僕を守ってくれるのだと思いました。しかし美夏ちゃんは僕を玄関に連れて行きました。そして僕を知らない人に渡しました。美夏ちゃんを見ると涙が本当に滝のように流れていました。やがて車に乗せられました。新しい飼い主さんに頭をなでられていますが今は別のことで頭がいっぱいでした。なんで? どうして? 美夏ちゃんはなぜ僕を渡したの? と。しかしいくら立ってもその答えは分かりませんでした。なぜならショコラは犬なのですから。

 今度の家はとても豪華な家でした。犬の僕でもこの家の豪華さは分かりました。しかし、僕にとってはこの家がどんなに豪華で、どんなに豪勢な食事が出来ようと、どうでも良かったのです。今の僕の気持ちはただ一つ。美夏ちゃんに飼われたい。ただそれだけでした。
 数ヶ月たっても僕は決して新しい主人になつこうという行為は使用とも思いませんでした。さらに、毎日リビングの窓から外に向かってほえていました。最初は可愛い可愛いとかわいがってくれた新主人でしたがかわいがろうとしてもなつかず、ほえ続ける僕にとうとう愛想を尽かし室内犬から室外犬にしました。これはショコラにとっても少しは嬉しいことでした。なぜなら、家の中からではなく、外からほえれば美夏ちゃんに届くかも知れなかったからです。しかし、所詮犬の考えです。実際美夏ちゃんとこの家の距離は実に10km弱離れていたからです。それでも届くと信じている僕は必死に吠え続けました。その吠えようといったらものすごく、恐らくこの街一帯に届いてるのではないかというほどでした。
 ある日、流石に五月蠅いと感じた新ご主人は僕のそばにやってきました。僕と主人の間は後2〜3mぐらいにまで来たとき、僕は気づきました。ご主人の手には木の枝が握られていたのです。犬である僕にもこの意味が分かりました。主人は僕を黙らせるために来たのです。
 主人は僕をしかりとばしながらたたき続けました。何度も、何度も。しかし、僕には抵抗のすべがありません。僕は必死に耐え続けました。僕のつやが整った体毛に血がにじんでいます。それでも主人は止めようとはしません。
 それでも吠えるのを止めようとしない僕に主人は日に日にたたくのを強くなっていきました。そのたびに僕の体には血が出続けました。
 ある日、木の枝に葉がなくなって大木も寂しくなってきた頃、僕はとうとう決心しました。
 脱走を試みることにしたのです。首輪は僕が主人の虐待でやつれていたので簡単にはずれました。よろよろと、もうすでに尽きかけた体力で庭を横切り玄関へと向かいました。そして、ようやっとの思いで門の所まで来るとショコラは凍り付きました。その門の先には、僕を愛してくれ、そして、僕をこの家へと引き渡した美夏ちゃんでした。美夏ちゃんはインターホンを押すかどうか迷っていました。ショコラは驚きと嬉しさでいっぱいでした。美夏ちゃんが迎えに来てくれたと思ったのです。僕は美夏ちゃんに向かって軽く吠えました。家にいる新主人には聞こえないように、旧主人にだけ聞こえるように。 
 美夏ちゃんはその声に気づき振り向きました。僕は美夏ちゃんがこのまま連れて行ってくれるものだと信じ込んでいました。そして、美夏ちゃんが僕のすぐそばにやってきて目の前にしゃがみました。
 しかし、美夏ちゃんは僕の体を見た瞬間に息をのみました。当然でしょう。犬のショコラには分かりませんでしたが、かわいがってくれるというので身を切る思いでショコラを泣く泣く手放したというのに、その体は貰われていった日のショコラとは似てもにつかず、ほとんど別の犬に見えたからです。
 美夏ちゃんはしばらく僕の体を観察した後、先ほど迷っていたインターホンを迷うことなく押しました。僕は信じられませんでした。このままここにいれば新主人がやってきていつもよりヒドイ仕置きを受けたでしょう。僕は急いで庭に戻りました。僕が庭にはいるか入らないかと言うところで新主人が玄関のドアを開ける音がしました。僕は人語分からずとも、庭から必死に会話を聞いていました。ショコラは分かりませんでしたが訳すとこうです。
 今、ここに犬が居ましたがそれはショコラですか? と。それに対し新主人はこう答えました。
 それはショコラのハズがない。ショコラは今、夫と出かけている、と。

 しばらくして、美夏ちゃんが帰っていくのが小屋から見えました。しかし、僕の心は絶望でいっぱいでした。唯一の、僕にとって唯一の希望であった美夏ちゃんに完全に裏切られたのです。インターホンを押す寸前、美夏ちゃんは傷ついてぼろぼろの僕はいらないという目で僕を見ていたのです。僕は完全に、人間への信頼を無くしました。。僕は今日以降吠えることを止めようと決めました。吠えても美夏ちゃんがやってくることはないと確信したからです。
 美夏ちゃんが帰って数分した頃庭に新主人がやってきました。右手には棒きれがありました。
 

 僕はもう死ぬ寸前でした。
 でも生きる気力は無くしていませんでした。
 今、僕の中にある頑丈は人間への復讐心でした。
 信頼していた美夏ちゃんには裏切られ、
 2度目は連れて帰ってくれるという幸福から、新主人に脱走を告げ口され一気に
 奈落の底へと落とされ、
 新しい主人には虐待を受け、
 これで復讐心持つなと言うのは絶対に無理な注文でした。

 夜中。 
 僕は夕ご飯を抜きにされ餓死寸前でした。すると、庭の茂みから何かが動く音がしました。
 しかし、確かめようにも体が言うことを聞いてくれません。
 ただ、そこ一点を見つめるだけでした。
 しばらくすると茂みの中から何かが現れました。
 それは、ナイフを持った男、いや、少年でした。
 僕は吠えようとしましたがその力も、気力もありません。
 少年は主人の居る部屋には目もくれず、僕の所までやってきました。
 僕は何をする気か、分かりませんでした。
 すると、少年はナイフを持った右手を高々と振り上げました。
 そして、そのまま、 
 
 僕へと振り下ろしました。
 僕は恨み続けました。人間を。
 自分勝手で生態系の頂点に君臨するというだけで全てを思い通りにしようとする人間を。
 ただ、恨み続けながら逝きました。
 


 ここで犬の命が終わりました。




 少年は汗だくでした。
 僕は今殺された……。
 それが少年が最初に思ったことでした。すると、少年の気持ちを読み取ったかのようにオウムらしき鳥がしゃべりました。
「ううん。殺されたのは君じゃない。あの犬だよ。辛かった?」
 辛かった。死ぬのはいやだった。
 あの少年は……僕?
「そう。あれが君。あの犬は憎んだ人間に殺された。きっと、今も人間を恨んでいるだろうね」
 僕が……殺した……。
「そう。君が殺した。」
 もう嫌だ。こんなの見たくない。命の重さは分かった。だから……もう見せないで……。
 少年はそう、思い続けました。
「それは出来ない。これはまだ序の口。君は、もっともっと、命の大切さを知るんだ。君の犯した罪はそれだけ重い」
 止めてくれ……見たくない。

 少年の意識はまた遠くへと飛んでいきました。



 少年は動物たちの一生を見ます。動物の心を知るために。
 
 少年は動物たちの一生を見ます。動物をもっと知るために。

 少年は動物たちの一生を見ます。動物から見た視点となって……。

2004/12/26(Sun)14:48:29 公開 / ANIMARU
■この作品の著作権はANIMARUさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
難しいッス!
なんだか後半むちゃくちゃになってしましました。
指摘、お願いします……情けなし……。

このへたれのために読んでくださった。
卍丸さん。ゅぇさん。影舞踊さん。昼夜さん。有り難う御座います。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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