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『〜夢魔〜』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:名も無い作者
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皆様ご機嫌麗しゅう?お初にお目にかかります。
さて、皆様は『夢魔』というものをご存知ですか?
もしご存じない方々はご用心くださいませ。
夢魔に魂をとられてしまいますからね。
まあ賢い皆様は『夢魔』をご存知でしょうから、心配いらないかと思いますがね…。
「キャハハハハハハハ!何この親父、見た目より結構もってんじゃん!」
「ゲホッゲホッ…お、お願いだ…それは今月の生活の…ゴホッゲハ…」
「ガタガタうっせえんだよ、おっさん。お前が働いた金は、ちゃ〜んと俺らが使ってやっからさ」
H県瀬川市の三浦公園では、帰宅途中のサラリーマンが複数の高校生に『オヤジ狩り』されていた。高校生は男女五人グループで、金髪・煙草・ピアスなど、いかにも悪い奴らですといわんばかりの格好をしている。
「慶太、おまわりが来た。そろそろひきあげた方がいいぜ」
「ちっ…!」
慶太はサラリーマンへの暴行を中止し、仲間達と暗闇の中へと走って逃げて行った。
三浦公園から800m程離れた場所に慶太の家はある。家のつくりは西洋風にできていて、ちょっとした金持ちが住んでそうな感じの家だ。
慶太が玄関を開けて入ろうとしたとき、リビングのほうから父親の怒鳴り声と、母親の泣き声が聞こえた。慶太は、
――――――――またか。
と思って、リビングへは行かずに、階段を上って自室へ戻った。
上着を脱ぎ捨てて慶太はベッドの上に寝転がる。両親の声は慶太の部屋にまで聞こえてくる。慶太は不愉快な顔をしながら寝返りをうち、呟く。
「……くたばれ」
心の奥底から願った一言だった。
いきなり、開いていた窓から部屋の中へ強い風が入ってきた。部屋の中のものはその風でばらばらに飛び回る。慶太は起き上がり、窓とカーテンを閉める。両親の声を聞きたくないので、早く寝ようとベッドのほうへ戻ろうとした。
慶太は目を見開いた。ベッドの上に女が浮いていたのだ。女はとても今時とはいえない格好をしていた。まるでインチキくさい占い師が着ているような服を着ている。肩には金の髪が垂れている。顔は薄い布で覆われていて素顔が見えない。
慶太は驚きの表情を隠せなかった。部屋に人が入る気配なんてなかったし、目の前にいる人間は浮いているのだ。そして女はこっちに近づいてきた。歩いてではなく、浮いて…。女の顔が慶太の顔と数cm差までの距離になった。慶太は腰を抜かし、その場にへたり込む。
「私は夢魔。あなたは願い事がありますね?」
女は自分を夢魔と名乗った。夢魔が求めるものを差し出せば、どんな願いでも叶えてくれるらしい。慶太は夢魔に説明を受けて30分後に、ようやく落ち着きを取り戻してきた。
「じゃあ、俺があんたになんか与えれば、俺の願いを叶えてくれるんだな?」
「そういうことです。理解が早くて助かります」
慶太は半分信じてはいなかった。しかし、願いを叶えてくれるというのなら、信じてみる価値はあると思い、とりあえず夢魔が求めているものを聞いてみた。
「その代価っていうのは何なんだ?金か?それとも物か?」
「わたしが求めるものはあなたの魂です」
慶太は思わず吹き出してしまった。魂?俺の?やっぱりこいつはインチキだ。少しでも信じそうになった自分がとてもバカに思えてきた。
しかし、慶太はあることを思いついた。こいつがインチキなのは確かだ。世界中の人間を俺の家来にせろとか、総理大臣にならせろとかいう願いは叶えられないだろう。だが、簡単なことならこいつでもできるに違いない。例えば人を殺す、とか…。
「決まったぜ!俺の両親を殺してくれ。それを叶えてくれたら魂でも何でもくれてやるよ」
慶太は、どうせ魂なんてとれないのだからと思って願いを言ってしまった。
「では、あなたの願いをかなえましょう」
夢魔がその言葉を言った即後、下のリビングのほうから両親の悲鳴が聞こえてきた。慶太は驚きながらも、階段を急ぎ足で下り、リビングへ入った。
するとそこには、白い泡のようなものを出しながら、目を見開いている父親と母親が横たわっていた。即死のようだった。身体に外傷はなく、どうやって死んだのかは慶太にはわからない。
慶太の表情には笑みがあった。くたばってほしいと心の奥底から願っていた両親が、今死んだ。もうあのうるさい怒鳴り声や泣き声も聞こえない。やっと静かになった。
「あ、はは…ひゃ…ひゃひゃひゃひゃひゃ!ホントにやってくれたぜ!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
ところが、慶太はあることを思い出しゾッとする。
「わたしが求めるものはあなたの魂です」
夢魔は自分の魂をとるのだろうか。そんなわけはない。あいつはインチキなのだから。…でも、あいつが願いを叶えると言った即後に両親は死んだ。ということはインチキではないのか?だとしたら俺は魂をあいつに…
「願いは叶えました。約束どおり、あなたの魂をもらいます」
いつの間にいたのか。夢魔は慶太の背後に浮いていた。
慶太は青い顔をしながら夢魔から離れようと後ずさりをする。
「ヘ、へへへ…魂だって?とれるわけねえだろうが!とれたとしてもお前なんかにわたすわけねえだろうが!!」
夢魔は慶太の言葉に気にもせず、慶太のほうへ手を伸ばす。
「りょっ両親を殺してくれたのは感謝してるぜ。だからお前が俺の両親を殺したことはおまわりの奴らには黙っといてやるよ。だから…だからはやく俺の前から消え失せろ!!!」
…ーポーピーポーピーポー…
「あ、三宅さん!お隣さんのところに警察が来てるけど、何かあったの?」
「なんでもご家族そろってリビングのほうで死んでたらしいわよ」
「えっ!!!泥棒か何か入ったのかしら!?」
「それがね〜?泥棒が入った形跡はないらしいのよ。それに、三人とも外傷が全くないんですって!警察が死亡原因を確かめてるんだけど、1時間たってもそれがわからないのよ…」
「まあ…」
「あと、ご夫婦の死に顔は苦しそうだったんだけど、息子さんの死に顔は眠っているような顔だったんですって」
「怖いわね〜。何かの病気かしら?」
「さあ〜?でも…不思議よね〜…」
あらら、お馬鹿さんがここにいましたね。かわいそうに。
皆様もお気をつけ下さい。この少年のようになってしまいますよ?
ああ!皆様は賢いからこのようなこと言わずとも、ご理解していらっしゃるにきまっていますよね。
さあ、わたくしもそろそろ行かなければ。
では皆様、くれぐれも夢魔にはご注意を…。
おっと!また言ってしまいました。余計なことを申し上げたことお許しくださいませ。それでは。
<終わり>
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2004/12/14(Tue)21:46:21 公開 / 名も無い作者
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■作者からのメッセージ
こんにちは、名も無い作者です。
今回は『世界の鍵』の方のイメージがわかなかったので、お遊び程度に短編かいてみました^^)
ご感想いただければ光栄です。では、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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