『求めるもの 第一〜三章』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:みさき
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求めるもの
第一章
ぐしゃ・・・・・
「ナンバー・・・・224・・・・・・」
俺は小さく呟いた。
俺は224番目に作られた『試験管ベイビー』なのだ。
歳は数えるだけムダ。試験管ベイビーは十二から歳をとらなくなるのだ。
この試験管ベイビーとは簡単に作れるものらしいが、詳しい事はよく知らない。
ものごころついたときには小さな牢屋に足枷と手錠つけられて、毎日過ごしていたから。
一日に一度研究室に呼ばれて身体に馬鹿でかいコードやらをつなげられ、
検査されて牢屋に戻される。
外に出た事は無い。牢屋に置いてある本の知識のみだ。
一日に一回鉄格子の間から食事が運ばれる。
でも、食事なんて本当は俺達、試験管ベイビーに必要ない。
数少ない試験管ベイビーが自殺しないように 死なないように出来ているのだ。
それも、何でかは知らないけれど。
そんなこんなでもう80年は生きてると思う。
それ以上はめんどくて数えてないケド。
・・・・・汚くて臭い牢屋の中。
鉄格子から顔を出して周りを見回す。
長い長い廊下。向こう側からカツカツと足音がする。
どうせ見回り警備員だろ。
他にはなんにも見えねぇ・・・・
出たいなんて思わねぇ。
思ったって出られねぇ。
出られたって殺される。
何も・・・・できやしねぇ・・・・・
ずっとこのままなんだ・・・・・
俺は重い足枷引っ張ってボロ布が敷いてあるだけのベッドにダイブした。
「気持ち悪・・・・・」
舌噛んで死んだ事もあったけど、気付きゃ研究室ナ目が覚める。
そのあと死にかけるまで殴られ弄られもうこんな事はしないと思った。
何人か脱走した奴らもいたけど、やっぱり全員殺された。
俺だけこっそり、研究室で見たのだ。
特殊な術か何かで殺されたようで動いてなかった。
あれが『死』なのだろう。
俺もその後脱走した。
これで死ねると思った。
でも・・・・俺は生きていた。
俺は優秀な人材らしい。
そうゆうヤツは生かされる。
俺だってナンバー224なんて名前持ってるけど今、ホントは数十人しかいねぇ。
みんな脱走して殺された。
俺の向かいの牢屋にいたアイツも死んだ。
アイツはナンバー37と、随分昔の女だった。
俺はアイツととても仲が良かった。
アイツは俺の事を番号にちなんで『ツツジ』と呼んでいた。そして自分の事を『ミーナ』と呼べと言った。
ミーナは俺に『あいつ等研究者には逆らうな』と言った。
ミーナは脱走を試みて術で目を潰されたと言った。
それを聞いて、俺も絶対に逆らわなかった。
どんな無茶な事でも、研究者の命令に従った。
それでも毎日、牢に帰ったらミーナが励ましてくれるからがんばれた。
それなのに・・・・・・・
ある日検査を終えて帰ってきたら ミーナはいなかった。
どの研究者に聞いても
ミーナの行方はわからなかった。
俺は はじめて『寂しい』の感情を知った。
はじめて『涙』を見た。
ミーナの行方・・・・・三日後に知った。
牢屋の窓から見えるゴミ捨て場・・・・・・
そこにミーナの首だけあった
ミーナは泣いていた。
首だけで泣いていた。
『ミーナ・・・・・・』
「なつかしー・・・・・・」
俺はそっと窓に手をかけた。
この頃はゴミ捨て場に首が並ばなくなった。
残っているのは殆ど『優秀な人材』だから。
それか俺が見てない所で捨てられているのかもしれない。
「所詮俺には関係ないね。」
俺は牢屋の本をもう一度開く。
『霊覇の使い方』
霊覇とは、まぁ魔法みたいなもんだ。
空気中の酸素を融合し、炎を作り出したり ものを壊したりと
なかなか便利な術だった。
しかし これを使えるのは『人間』なのだ『試験管ベイビー』には無理。
なので試した事はない。
『心を静かにし 手に紋様を描きます 熟練を積めば 紋様がなくても出来ます』
『紋様に全神経を流し込み、イメージをうかべます。 掌があつくなったら成功です』
「くだらない・・・・・・」
俺は本をビリビリに引き裂き、窓から捨てた。
その後、俺の運命を大きく曲げる人物が現われる・・・・・
求めるもの 第二章
・・・・僕の名前はセルリア・ドライド。ごく普通の市民。二十五歳。独身。
でも裏の世界では天才泥棒として有名だよ。
・・・・え?ごく普通の市民のくせに泥棒するなって?
しかたないデショ・・・僕は別に泥棒なんてしたかないケドこいつに誘われて・・・・
「セル、なにゴニョゴニョ言っとっと。早よう行かんと追いてってしまうぜよ。」
こいつ、カガルウ・レルク。僕はルウと呼んでいる。歳は僕と同じで、僕と同居してる。
彼も裏の世界じゃ天才泥棒として有名。
ルウは三年前まで医者で、ガケから落ちて虫の息だった僕を奇跡的な手術で助けてくれた、僕の命の恩人。二十歳で天才医師と謳われた、医学の神様だ。
喋り方が変なのは、本に影響されたかららしい。
でも二年前簡単な手術を失敗して医師免許を取り上げられた。
その時僕が恩返しとして、家に招いて世話してあげたんだ。
今でもルウとの同居生活は続いている。
「わかったよ。」
僕の数m前で声を出しているルウに苦笑し、小走りでルウの背中を追う。
僕たちが泥棒を始めたのは五ヵ月くらい前から。
僕もルウもちょっとしたミスでバイト先をクビになり、三日四日食べない日が続いた。
何時もならもっと冷静に考えられたかもしれないけど、空腹でしょうかなくて、
食い逃げをしてしまった。
其れが思いのほかうまくいって、服やら食べ物やらを盗んでしまい、
其れをくりかえしているうちに、『天才』なんて呼ばれてる。
今考えたら他の道もあったかもと思うけど、後悔しても仕方がないし、それにこの職、僕たちにはあってるとおもうんだよね(苦笑)
今日はこの大きな研究所に忍び込む。
実はこの研究所には、あるウワサがあって・・・・・
八十年前から製作禁止されている『試験管ベイビー』を作っているって裏情報を手に入れてね
ルウが興味を持ってしまって、研究資料を盗むのが今日の目的。
こんなの盗んだってお金にはならないけどね。
「セル、ひとまず中の様子を見るぜよ。あそこに小さか窓のあるけん。」
ルウは何時もの独特なイントネーションで僕に言った。
僕も顔をキリリと引き締め、満月に照らされた一つの窓を見た。
その窓は人の顔二つ分くらいの大きさで、格子がされている。
格子の間から、腕一本位なら入るかな・・・・・
僕とルウは素早く壁伝いに走り、窓の格子に手をかけ、中を覗いた。
中には十三歳前後の一人の少年がいて、手錠と足枷をつけていた。
その少年の第一印象は、満月のように光る金髪と、死んだ魚のような眼だった。
僕もルウも、人目でそのコを気に入ってしまった。
「アンタ達・・・・誰・・・?」
少しかすれた綺麗なボーイソプラノの声。
僕は大きなダイヤよりも、
変な研究資料よりも、
このコが欲しいと思った。
求めるもの 第三章
窓から覗いていたのは四つの瞳。
月に照らされた真っ黒な短髪がえらく印象的だ。
「お前こそ誰ね。ここん研究者ん子供にしちゃ、えらい扱いじゃなか?」
右側の男が独特なイントネーションで喋った。
その男は右目が赤で、左目が灰色という、少し不思議な男だった。
そして左側の男はさっきからニコニコしているが、金色の瞳の奥の力に押されるような気がした。
「・・・・・・・・」
金の瞳の男は何かを考え込むと、掌のナイフを俺に投げた。
「ひっ・・・・」
俺は身を竦めたが、そのナイフは大きく軌道を変え、俺の足枷の鎖と手錠を断ち切った。
「え・・・・」
「コレで君は自由だよ。」
「な・・・何やっとるとね!セル!」
セルと呼ばれた男は 未だにニコニコと微笑んでいる。
「ルウ、少し黙ってくれる?どんな理由があったって、こんな子供に足枷つけとくなんて異常でしょ。きっとこのコは何らかの理由でつかまってんだよ。それに・・・・ホラ・・・・」
ルウと呼ばれた男は、セルという男が指差した俺の手首と足首を指差した。
そこには血がにじんでいる。
今日は研究者達とやりあったから・・・・・
チッ・・・今日はなんか嫌な事ばかりある・・・・
朝からミーナのコト思い出すし・・・・
今日の検査は痛みが激しくて 研究者と喧嘩して殴られたし・・・・
そして今、目の前にヘンな男がいる。
「・・・・・セルは昔から言い出すと聞かへんからね・・・・取りあえず、資料はもう明日でええわ。
今日はこのガキ頂こか。」
ルウという男はにぃっと笑って、窓についた格子をギュッと握り締めた。
「な・・・何してんだ。そんなコトしたって・・・・!!」
「うおりゃぁぁああぁっ!!」
ミシミシミシッッ・・・・・・
バギャッ!!!
格子は・・・・バラバラに砕けた。
どんな力してんだ・・・・
「何時もの事ながら、すごいねぇ・・・ルウ・・・」
「医者やったけど、腕力鍛えとったからね・・・・」
「こういう医者も珍しいよね」
「もうクビんなったケドな。」
こいつら・・・・何考えてんだ・・・・こんな奴らと・・・係わり合いになりたくない・・・・・
「ホラ・・・・行くでガキ。」
「行こうよ。そうだ、君の名前はあるのかな?」
「もう・・・・しらねぇよ・・・・・」
2004/11/27(Sat)22:23:54 公開 /
みさき
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■作者からのメッセージ
けっこう暗い話です。
第一話から主人公監禁状態です(汗)
これから変な泥棒コンビ、セル・ルウとこの研究所から脱出します。
取りあえず、初めての出会いの主人公とルウの二人の第一印象は「・・・変な奴・・・」です
でもやっと『主人公は金髪』っていう設定が出せました(笑)
主人公、次はセル・ルウに名前をつけてもらいます。
いつまでも名前がない主人公は変ですから(笑)
これからも応援よろしくおねがいします。
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