『ナイショのオ仕事』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:亜季瀬                

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夜の渋谷をダラダラと歩いているあたし。
えらい子チャンはもう眠っている時間。
現在夜の10時。
カラオケ屋の角を曲がり、ピンクな渋谷に突入。
そこには中年オヤジやら童貞やらがうじょうじょいる。
あたしの目的は、というと。
1件の性感ヘルスに仕事をしに行く。

「こんちはぁー」

「あ、エリちゃん。早かったねぇ」
笑顔であたしを出迎えてくれたのは、この店の店長。
店長はエロいけど、遅刻しても絶対怒んない。
いつでもスマイル。
マクドナルドで働けば、スマイルの注文が殺到しそうなくらいいつでもスマイル。
大きな声では言えないが、あたしは風俗嬢。
でもこれはナイショネ。あたしまだ高校生だし。
退学とかなって親呼び出されたらこの仕事がばれちゃう。
「じゃ、これに着替えて」
店長があたしに差し出したのは、ロリータな服。
黒いヒラッヒラのドレスにメイドがしてそうなカチューシャが用意されていた。
あたしは文句を言わずに着替え始める。
着替え終わった直後、客が来た。
「いらっしゃいませー」
店長はお得意のスマイルで客を出迎えた。
そしてあたしは店の端で仕事を待っている。
今日の客は・・・、ちっ。オヤジかよ。
うわぁー、ここんとこずっとオヤジなんだよな。
ヨン様とか来てくれた方のがマシなんだけど。
ありえないけどね。
「56分コースで。かしこまりました。エリちゃーん!」
店長があたしを呼んだので、あたしは舌うちをして「はーい」とオヤジの元へ向かった。








「お疲れ様。はいこれ、1か月分の給料。」
オヤジとのつまらないプレイをした後、店長があたしに50万を差し出した。
「ありがとうございまっす」
軽く頭をさげる。
「明日はこれる?」
「うーん・・・。最近親怪しまれてるからなぁ・・・。わかんない。ゴメンネ店長。」
「あぁ全然平気だから。これないなら仕方ないね。じゃ、気をつけてねエリちゃん」
「あーい」
あたしは店長にピースをした。







「エリッ!!ここ教えてっ?」
数学の授業中、前の席の春菜があたしに聞いてきた。
「はいよ。ここはね・・・」
本当のあたしは学校にいない。
本当のあたしは店にいる。
つまり、学校では普通な子を演じているってこと。
あたしは意外に、成績優秀で明るい子・・・自分で言っちゃなんだけど、そんな感じだから多分風俗嬢なんて想像できないと思う。
もし風俗嬢なんて知られたら、あたしは崩壊だ。
友達にも親にも見捨てられるであろう。
「・・・ってわけ。わかった?」
「ありがとうエリ!やっぱエリって頼りになるわぁ。最高だよ!」
─────春菜残念。あたしは最低よ。
春菜は前を向いて、また授業にとりかかった。
あたしは授業なんかきかないで、ずっと今日来る客はオヤジだとかかっこいい童貞さんか、などと予想していた。





「うぃーす。てんちょー。」
「あ、エリちゃん。今日は遅かったね。」
遅刻したのに怒らない店長。
つくづく「やさしいなぁ」と感じる。
「あれ、エリちゃん今日これないんじゃ・・・」
「あぁ。親に『友達んちに泊まり行ってくる』ってパチこいたから。」
すると店長は笑い、「今日も頑張ろうね」と言った。
「すみませーん・・・」
気がつけば客が来ていて、不思議そうにしている客の顔が、また私達の笑いを誘った。



仕事が終わり、渋谷の街をブラブラ。
あーぁ、これからやることねーなぁ。
ナンパでもしてくれれば、暇つぶせるんだけど。
ブラブラしていると、どこからかあたしを呼ぶような声がした。
誰だよ、まったく。
しばらく無視していると、誰かにうでをつかまれた。
誰?と振り返ると、あたしと同じ歳くらいの男があたしのうでをつかんで、

「片瀬・・・?」

すごく大人びた身長と顔。
大人?と思ったら、制服を着ている。
誰こいつ。
え?何、なんであたしの名字知ってんの?
キモッ。
「誰?」
少し睨んで言ってやった。
「俺だよ、わかんねぇ?浩貴だよ!中1の時お前と仲良かった!」

この浩貴って奴との再会が、私のバランスをガタガタにさせる出来事となるのをあたしはまだ知らない。










「えーお前マジで忘れちまったの?ひでぇのー。」
近くのマックに、「浩貴」とか言う奴と入った。
彼はろくに食事をせず、「ひでぇのー」とか「忘れたのかよ」とかそればっかり。
あたしは彼を見ないで黙々とハンバーガーを食べている。
「・・・あのさぁ」
下を向いたまま彼に言う。
「何?」
「あたしあんた知らないし、そもそも気安く話しかけないで。だいたい中一の頃仲良かったとか言われても困るんだよね。そんなの過去のことだし。今は今でしょ。」
初めて彼の顔を見て話す。
すると、彼は笑った。
は?何コイツ。
何がおかしいんだよ。
「昔と随分変わったよな。でもそんな片瀬もクールでかっこいいんじゃね?」
クールも何も、あんたと話したくないだけだから。
そんなこと言われても困るんだよねぇ。
「とにかく!あんたとはもうさようなら。もう会っても話しかけないで。話しかけたらぶっ飛ばすから」
私は椅子から立つ。
「おい、片瀬っ」
彼の声を無視して、マックを後にした。



あぁうるせぇ。
こいつら世間で言うバカってやつか?
授業中だと言うのにまったく。
ていうかお菓子とか食ってる奴いるし。
先生メールしてるし。
明日模試だぞ?
今勉強できるチャンスを逃してどうする。
つまんないし、騒ぎたくないからあたしはずっとシャープペンをまわして遊んでいる。
「ねぇねぇエリ」
春菜があたしの方を向いて聞いてきた。
「昨日、男と渋谷歩いてたって本当?」
あたしの手からシャープペンが落ちた。
は?あたし昨日男なんかと会ってないけど。
ええっと、昨日は確か店を出て、なんか変な男に腕つかまれてマックに行って・・・。
ん?変な男?
まさか・・・。
自称、「浩貴」と名乗る変な男と歩いていたのがバレたってこと!?
「カ・レ・シ?」
イヤミったらしく春菜が言ってきた。
「あれは違くて・・・!ちゅっ、中学の同級生!」
「なーんだ」としけた顔をして春菜は前に向きなおした。
マジかよ、見られたのかよ。
うっげー・・・、最悪。
ギャーギャー騒いでいる皆に比べて、一人だけ渋い顔をしているあたしは何だかとてつもなくかわいそうだと自分でも思った。



授業が終わり、家に帰ろうと学校の門を出ようとすると、「例の男」が門の前に立っている。
「おつかれー」
手をひらひらさせる彼にあたしはあごをグーで殴る。
「ってえ・・・何すんだよ!」
すごく痛かったらしく、あごを押さえていた。
「話しかけたらぶっ飛ばす、っつったじゃん。」
え?と言う顔をしている彼にイラだった。
「もっかい言う!話しかけたらぶっ飛ばすって昨日言った!何べんも言わすなこのボケ!!」
怒鳴るあたしに構わず、彼はケータイを取り出した。
「番号教えて」
人の話は聞こうよ。
怒りを超えてもう呆れた。
「嫌だね」
当然のごとく断る。
だっれがてめーみたいなクズに番号なんぞ教えるか。
「・・・んならしょうがねぇな・・・」
手に持っていたスクールバックを一瞬にして奪われた。
うわ、こいつ無理やりでも番号知る気だ!
彼はあたしのバックをあさっている。
「ちょっと何すんのよ!」
バックを取り返そうと思ったが、簡単によけられてしまった。
「あった」
彼が手にしているのはあたしのケータイ。
何だかさっそくあたしの番号を入力しているみたいだ。

「ふざけんなっ!」
彼を力いっぱいに殴る。
が、あたしの拳は彼に触れていない。
「残念。まだまだ甘いな」
そう言って彼はあたしのケータイを返す。
「あいにく俺、空手部入っててね。じゃあな」
ケータイを片手に彼は走って帰ってった。
ムッカーーーーーーーーーーー!!!!!
何?今の!!
死ね!死んどけ!
今日は店に行く気分じゃないので、仕事をサボることにした。


明日午前1時27分、渋谷のピンク街にて、あたしは全てが崩壊することになる。




2004/11/16(Tue)17:53:46 公開 / 亜季瀬
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■作者からのメッセージ
更新しました。やっぱエロいテーマって難しいですね(笑
今日は校内のマラソン大会でして、見事に10位でした。つかれました。
そんな話しはさておき、これからは面白い話しにしていこうと思いますので、ヨロシクです。でわ!

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