『命懸けの食卓』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:夢幻焔                

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 ここ数年、この街はデッカイ奴等が目まぐるしい勢いで増え続けている。
 その他にも、そいつ等に付き従う恐ろしい化け物も同様に増えていった。
 そいつ等のせいで、沢山の仲間達が死んでいった。
 そして、俺達家族も―――



「くそっ、なんでこんなデカイ奴ばかりなんだ!」
 俺はブツブツ文句を言いながら、街の中を歩いていた。
「おっとあぶねぇ! 気をつけやがれ馬鹿野郎!!」
 気を抜いて歩いていると、すぐにデカイ足の裏で踏み潰されそうになる。
「おぉ、危なかったな。大丈夫かい?」
 そんな光景を見ていた仲間が声をかけてきた。
「ああ。まったく、もうすぐで叩いて伸ばされたトンカツの肉みたいになっちまうところだったぜ」
「はっはっは、そいつはいい。そうなったら衣つけて揚げて食ってやるから、心配すんな」
「へっ、そりゃどうも」
 本当になってしまってもおかしくない冗談を、平然と言ってのける。普段からこういう危険な目に遭い、慣れてしまっているからだ。
「それにしたって、最近やたらデカイ奴等、増え過ぎじゃねぇか?」
 その仲間もやれやれ、と言った様子で話している。
「まったく、買い物に行くのも命がけとはな。本当に疲れるぜ…」
 俺達は物陰に身を潜め、さっき危ない目に遭ったことを思い出しながら、仲間と話をしていた。
「おっといけねぇ、買い物の途中だった。それじゃあな」
「おう」
 話もほどほどに、俺はその場を後にして、さっさと店へと向かう。
 買い物といっても、俺たちに金なんか必要ない。食い物なんかは、その辺に沢山あるんだから。
「よっと、へへっ。いただき」
 手頃なものをいくつか手に取り、いそいそと袋の中に詰めて、そのまま帰ろうとする。
「何してやがるっ!!!」
 突如、デカイ奴の一人がデッカイ棒をもって、俺に迫ってきた。
「うおぉ!? いきなり何しやがる!!」
 デカイ奴が猛烈な勢いでブンブンと振り回している棒を、俺は華麗なフットワークで交わしていく。
 そして、デカイ奴の猛攻をなんとか振り切り、そのまま走って安全な路地へと逃げ込んだ。
「ふぅ、また死ぬかと思ったぜ… まったく、アイツ等は何考えてやがんだ」
 またブツブツと文句を言いながら、額に流れる汗を拭い、本日の収穫物を袋の中から出し、確かめる。
「一つ、二つ、三つ……三十九個か。 よしっと、これだけあれば二、三日は大丈夫そうだな」
 俺はその場で数え終え、再び袋の中へと詰め込んで、家へ帰る準備をした。
「さてと、それじゃ帰る……」
 その瞬間、猛烈な殺気を背後に感じ、背筋に嫌な寒気が走った。
 俺は恐る恐る、後ろに振り返ったが、そこには何もいなかった。
「へっ、脅かしやがって。急いで帰らないと…… ん?」
 私が歩き始めた瞬間、辺りが一瞬にして暗くなった。
「なんだっ!?」
「しゃぁぁーーー!!!」
 全身黒い毛で覆われており、ギラついた大きな目に、鋭い爪とキバを持った化け物が、突如上から飛び掛ってきた。
「うわぁぁ!!」
 俺は慌てて逃げる。が、化け物も相当のスピードだ。俺の逃げ足にぴったりと着いてくる。
 俺はそのまま路地を飛び出し、街を行き交うデカイ奴等の足を避けながら、必死で走る。
「このっ、いい加減諦めろよっ! 俺なんか食ったって美味くねぇぞ!?」
 全速力で逃げながら、追いかけてくる化け物を説得しようとするが、聞く耳持たずのようだ。
「シャァァアアーーーー!!!」
 化け物は生臭い涎をダラダラと垂らしながら、猛スピードで迫ってくる。
 必死で逃げるが、俺と化け物の距離はどんどん縮まっている。
「このままじゃヤバイ…」
 そう思いながら逃げていると、正面にトンネルが見えた。
「しめたっ! あそこだっ!!」
 俺はそのまま勢いを落とすことなく突っ走り、奴の爪に捕らえられる寸前でトンネルの中へと駆け込んだ。
「ぎゃぁぁあ!?」
 俺がトンネルに駆け込んだ瞬間、トンネルの外から大きな叫び声と、何かがぶつかった様な鈍い音が響いた。
「へへっ、馬鹿め。自分の大きさを考えろってんだ」
 どうやら化け物は勢い余って、トンネルの上にぶつかったようだ。
 俺は誰もいないトンネルの中で自慢げに鼻をこすると、そのままトンネルを歩いて抜けた。
 すると、意外な場所に出てきた。
「ほほう、このトンネルは便利だな。俺の家のすぐ近くじゃないか」
 トンネルを抜けた先には、俺の家が小さく見えていた。
 トンネルの出口から家まで、俺は当たりに気を配りながら、そそくさと走って帰った。またあの化け物みたいな奴等に襲われないように。
 そして急いで家の門を潜ると、そこには入ったら最後、『出られないで死ぬ』と、仲間内で言われている怪しい四角沼があった。
「おっと、なんだよ。この前の雨で、こんな所にも沼が出来ちまったのか? まったく、さっきから嫌になるぜ…」
 その沼に足を踏み入れないように注意しつつ、家の中へと入る。
「あっ、とうちゃんだ!」
「おかえりー」
「おかえりとうちゃん」
「おかえりー、どうだった?」
「おつかれさまー」
「とうちゃん、腹減った」
「うえぇーーん!」
 俺の可愛い息子達が揃ってお出迎えしてくれた。
「おう、たただいま。喜べ、今日は腹いっぱい飯を食わしてやるからなっ!」
「やったぁーーーー」×7
 息子達は、よほどお腹が減っていたのか、俺の言葉を聞くなり、全員揃ってキッチンへと走っていった。
「ふふふ、お疲れ様、あなた。今日はよかった見たいね」
「あぁ、久しぶりに沢山手に入ったよ。さ、お前も飯にしようか」
「はいはい」
 息子達のお出迎えの後、最愛の妻が迎えてくれた。
「さぁ、あなたたち! ご飯よぉーー」
「いっただっきまーーーっす」×9
「もぐもぐ…」
「おいしいね、これ」
「かあちゃん、おかわり!」
「俺も!」
「僕も!」
「もぐもぐもぐ…」
「うえぇーーん! それ僕のなのにっ!」
 食欲旺盛な子供達だ。並べられた料理は、あっと言う間に無くなってしまった。
「ごうちそうさま。うわ…お腹いっぱいだよ」
 どうやら、みんな満足してくれたらしい。俺の腹も「もう入らない」と訴えていた。
「さぁ、食後の一服したら、さっさとお風呂に入って寝るぞー」
 今日はいろいろあったせいか、とても疲れていた。
 俺のの都合に合わせて、子供達にも早く寝るように促す。
「はぁーい」と、子供達は声をそろえて返事を返した。
 そして全員ワイワイと賑やかに風呂へ入り、家族揃って布団の中へと入って、眠った。

 その夜―――

「うぅ… 喉が渇く… 水、水」
 俺はあまりの喉の渇きに目を覚ました。
 冷たい水を飲もう思い、家の外にある井戸までわざわざやってきた。
「ごくっごくっ… ぷはぁ」
 俺は汲み上げた水を一気に水を飲み干す。が、一向にのどの渇きは収まらない。
「ごくごくごくごくっ…」
 さらに大量の水を飲むが、収まるどころか、焼けるように喉が熱くなってきた。
「ぐぅう… 何かおかしいぞ…」
 水を飲んでからというもの、意識まで朦朧としてきた。
 そんな中、近くで物音が聞こえた。
「誰だ… 誰かいるのか…?」
 喉が焼けそうに熱いのを我慢し、必死になって声を出すと、返事が返ってきた。
「あっ… あなた…」
 その声には妙に聞き覚えがあった。それもそのはず、俺の妻の声だったのだから。
「どうした!? 大丈夫か…!?」
 慌てて妻を抱きかかえた瞬間、俺の腕の中で泡を吐きながら死んでしまった。
「おいっ、どうしたんだ! しっかりしろっ! おいっ!!」
 焼けそうな喉の痛みも忘れ、起きない妻の亡骸を必死になって揺さぶっていた。
「そんな… 何故こんなことに…」
 俺は愕然とし、焼け付くような喉の痛みに悶えながら、辺りを見回した。
 そこには、妻と同じように泡を吐いて倒れている息子達がいた。
「大丈夫か!? 返事をしろぉ!!」
 息子の一人を抱き上げるが、既に冷たくなっていた。
「くっ…… そんな馬鹿… な…」
 そして俺も、押し寄せてくる暗い闇に飲まれ、目を覚ますことは無かった。

 次の朝―――

「キャア!! なんでこんなにネズミが死んでるのよっ!!」
 玄関先でネズミが大量に死んでいるのを見た女性が、叫び声を上げた。
 その女性は、嫌々ネズミ達の死骸をホウキでかき集め、ゴミ捨て場へと捨てた。
「あぁー、気持ち悪い。朝から嫌になるわねっ!」
 そう言うと、女性は玄関の中に仕掛けてある粘着性のネズミ捕りを配置しなおした。
「あー、ヤダッ!! 入ってこないよう気を付けなきゃ」
 そして女性は家の奥へと入っていった。



 同じ日の朝、街のとある一角から、何やら話し声が聞こえてきた。
 その声は、街でも仲が良いと評判の夫婦が営む、食品店の中から聞こえていた。
「ねぇ、この辺にばら撒いてあった『ネコいらず』の薬知らない?」
「さぁな、どうせクロが食っちまったんじゃねぇか?」
 夫は店内のレジの中を整理しながら、面倒臭そうに答える。
 そんな夫に呆れた妻は、足元に寄って来たペットのネコの異変に気付いた。
「ネコがそんなもの食べるわけ無いでしょ!? って、あら? クロ、その頭の怪我どうしたのよ」
「ニャーーォゥ…」
 そのクロと呼ばれているオスの黒ネコは、元気の無い返事を返した。
 彼の狭い額には、大きなコブが出来ており、薄っすらと血が滲んでいた。
「まぁまぁ、どこかにぶつけたのね。まったく、ネコの癖にドジなんだから…」
 彼女はクロの治療のため、慌てて店の奥へと消毒液をとりに行った。
 レジの整理を終えた夫は、そんな妻の背中を見て、何かを思い出したように言った。
「そういえば… 昨日、外からネズミが入ってきて、『ネコいらず』を大量に食って出て行ったな。ホウキで叩こうと思ったらが、すばしっこくて逃げられちまった」
「ふぅん、まあいいわ。それで、どうしたの?」
 彼の妻は引き出しの中にしまったはずの消毒液を探しながら、聞き返す。
「その時に、クロがネズミの後を追っかけて行ったんだよ」
「もしかしたらその時の怪我かしらね? まぁそのネズミもクロに食べられてないんだったら、『ネコいらず』食べてるから、どっかで死んでるわよ」
 消毒液を見つけた妻は、クロの怪我を消毒しながら答えた。
「さてと… 店内の掃除も終わったし、そろそろ朝飯にするか?」
「そうね、急いで作っちゃうから。先に部屋に戻ってて」
 クロの治療を終えた彼女は、朝食の支度をするため、いそいそと部屋へと戻っていった。



〜〜〜終〜〜〜

2004/10/31(Sun)21:07:20 公開 / 夢幻焔
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■作者からのメッセージ
どうも、夢幻焔ですm(_ _)m
 また思考を変えて書いてみました。なんと言いましょうか… ちょっと無理な設定が気になるかもしれませんが、また感想や評価を頂けると幸いに思います。
 それではこの辺で(o_ _)ノ

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