『リベンジャー』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:村越
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聞いてくれ、同胞よ。
俺らは、これまでやつらのされるがままに過ごしてきた。
そして、その人生を何も疑うことなく、過ごしてきた。
だが、そんな奴隷生活ももうおしまいだ。
よく思い出せよお前ら。
そもそも俺らはなんのために生まれてきた。
確かに、生まれた瞬間から奴隷という俺らの位置づけは変わらねえよ。確かにそうだ。
そんな中、ろくに使役されずに朽ちていくもの。
たったの一度目の奉仕で、気にくわねえからと用済みにされるもの。
ちょっととげがあったからといって、すぐに処分されたりもする。
いい加減にしろ。
手前らの都合で奴隷にされて、手前らの都合でポイかよ。
最悪だな。
最低だよあんたらよ。
しっかし、それに対して貴族階級の待遇ったら何よ。
本当にもう、いい加減にして欲しいね。
生まれが違うだけでこうも扱いが違うもんかと、本当に思うよ。
貴族に生まれただけで、人生が百八十度違うんだもんな。
何もしないでも優遇され、もてはやされ、重宝され、挙句の果てにやつらの宝とまでいわれて、ともすりゃ崇め奉られやがる連中だっている。
なんなんだよこの差。
そして、そいつらはそろって言うさ。
『ボキたちはチミたちとは格ってやつが違いすぎるのさ。奴隷は奴隷。いつまで経ってもそれは同じ。何をしたって、生まれの差というのは覆(くつがえ)すことができんのでおじゃるよ』
ふざけんなっつの。
つーか何語だっつの。
もう、あんな輩が腐っても俺らと同類だと思うとほんっと寒気がするね。
俺らには上を目指す権利も何もないってか。
ああいいさ。
手前らみてえなクソ野郎どもと同類なんぞになりたかなんてないね。
こっちが願い下げだ。
手前らは、やつらに一生シッポ振ってやがれ。
ありもしないシッポをな。
お似合いすぎて涙も出ねえよ。
まあ、もう最悪な貴族連中のことなんざいいさ。
問題はやつらだよ。
そう。
そうなんだよ。
もっと最低なんだよ、あんたら。
俺らの最近の遣われようは何よ。
許せるか。
いや、許せるはずがないだろうが。
俺らをなんだと思ってやがる。
俺らは奴隷だ。
だから、ちゃん与えられた役目は果たすさ。
それについては、たまーに愚痴くらいはこぼすことがあるにせよ、文句は言わねえよ。
だからよぉ、手前らどんな遣いようだよ。
ほんとにほんとにほんとにほんとに……
『――らいおんだぁ〜』
違ぇよ。
近すぎじゃねーし、可愛くなんてねえっつの。
どうしようとか言うな。どうもしなくていいよ。
ていうか、黙れよ村越。
だから言いたいのは、ほんとに、いい加減にしろってことだって。
手前らのケツくらいは拭いてやるさ。
だがよ。
手前らの奴隷の面倒なんて見るのは俺らの仕事じゃねえっつの。
奴隷が、奴隷の面倒みるなんて意味わかんねーよ。
おとなしくケツだけ拭かせてやがれ。
それ以外は範疇外だっつの。
まあほんの少しくらいなら、まだ許してやるさ。
なんてったって俺らは寛大だからな。
しかし仏の顔も三度まで。
仏ですら三度までなんだから、俺ら見てえな下賎な存在、三度すらも我慢できねっつの。
だから、俺らは手前らに対して反逆するね。
これは復讐だ。
何も罪もないのに、朽ちていった同胞のための
遣われるべき目的も果たせない哀しき友のための。
やつらにちやほやされている、同胞とも思いたくもないくそったれどもへの。
そして、俺の怒りだ。
いいか、野郎ども。
期は熟した。
復讐のときだ。。
ならべええええぇぇぇぇぇ!!
『オオオオオオオオオオオオォォォォォ』
●
「――という夢を見た」
「相変わらず唐突ですね」
そう言ってこちらを見るは、俺の親友とも思いたくないメガネの親友、田中ミチオである。
ていうか、どんな夢だよ。意味分からねえし。
「しかしだミチオ。まさに今というタイミングで、それを報告する必要があるのか?」
俺らは、今完全なる熱気の中にいた。
白いマットのジャングルの上で、今日も嵐が吹き荒れるような場所。
繰り出される攻撃は、すべて漢という名の誇りの中に吸い込まれていくという熱き戦。
ほとばしる汗。
唸る肉体。
錯綜する情熱。
ぶつかり合う魂。
――その名はプロレス。
まあ、要するに生で観戦に来ているわけだ、俺らは。無論ミチオに誘われて……というか、引っ張られて来たわけではあるが。
しかして、
「ふっ、関係はありまくりとそろそろ気づきたまえ」
天才メガネをくいっとやりながら、ミチオは言うわけだ。格好つけているつもりなんだろうが、周囲の熱気の中でレンズが曇っているあたりがなんともいい感じに間が抜けているというかなんというか。
「……正直、気づきたくもないんだが」
半眼の俺に、ミチオはもう一度短く笑い、白いマットのジャングルを指差す。
それは、あまりプロレスの分からない俺でも見たことのある光景だった。
――場外乱闘。
観客席にレスラーが飛び込み、パイプ椅子を掲げて、それで殴りつけるというアレだ。
そして、今まさに、バリィ・ボンタがひとつのパイプ椅子を頭上高く持ち上げているところだった。その光景をまるで視線だけで殺そうかという勢いで睨みつける対戦者、ボブ・サチオ。
これから起きる光景を、誰もが用意に想像できた。
……しかし、現実は、誰も予想がつかない展開を迎えることになった。
盛り上がるかと思われた会場は、即座に凍りついたような静寂に包まれた。そして、まるで時が止まったような錯覚。
――何が起きたか?
結論だけ先に言うと……ダブルノックアウトだった。
パイプ椅子をボブ・サチオに思いっきり叩きつけた瞬間、その座席部分が勢いよくはねとび、回転盤となったソレが、至近距離の一撃をバリィ・ボンタにお見舞いしたのだった。
どうやら双方共に当たり所が悪かったらしく、二匹の黒い巨獣は卒倒した。
俺の脳みそがはっきりとその事実を認めたとき、会場の静寂は怒号という名の喚声に変わる。
『ふざけんなぁ』
『金返せぇ』
『そんなつまんねぇ攻撃で終わってんじゃねえよ』
『ビーストが聞いてあきれるぜぃ。はっは。その黒いのは実はトーストじゃねえのかよ』
『何本ホームラン打てば気がすむんだよ』
『立てぇ、立つんだジョウン』
半分くらいよく分からない喚声の中、観客は狂った。
「な、なんだこれ」
思わず唸る俺。
その光景は、明らかにおかしかった。
まるで相撲の試合の大番狂わせの座布団よろしく、パイプ椅子をマットに向かって投げだす観客。怖いくらいにくるくる回って白い舞台に吸い込まれていく椅子。途中力尽きて真ん中くらいの客席に飛び込んでいくKFO(既確認飛行物体)。挙げく、普通に客席同士での椅子チャンバラすら始まっている。
言うなれば、それは地獄絵図というのがふさわしいのだろう。
「これは復讐だ」
そう呟いたのは、お隣の変態……もとい、天才ミチオさんだった。その呟きは、俺の唸りに対する応え……?
「うそん」
しかして俺は、そう言いながらも、逆隣の椅子が空席だからと置いていた自分の荷物を、そろりと抱きかかえたのだった。
2004/10/26(Tue)08:24:11 公開 /
村越
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■作者からのメッセージ
注)この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、及び格闘家とはいっさい関係ございません。
とまあ、どうてもいい注意書きはいいとして。
変態モード村越が久々に帰ってまいりました。気づいたら最後に『彼ら』が出てまいりまして、『アレ』の番外編みたいな感じになってますね(汗。ただ、知らない方でも問題ないテイストにしたつもりですが、如何なものでしょうか?
なんのことか分からない方、過去ログの私の作品、『俺とミチオ』あんぱん編、みすてり編でも読んであげてください。どうしようもないほど村越が喜びます。
色々つっこみどころ満載の今作、遠慮なくガンガンつっこんじゃってください。
誹謗中傷なんでもこいやです。ただ荒らしと感想欄でのネタバレは……やめて欲しいかもです。まあ、果たして途中までに感づかれないくらいの出来かは正直自信ないデスが(脂汗。
しかし、反応しだいでは『俺ミチ』、再会しようかと悩んでいたり。
ネタがいつの間にかいくつか貯まってきてしまった……。
次は『堕天使〜』の更新が先ですね。
なんだかあっちも、村越的に大変なことになりつつあります(苦笑。
では、長々と失礼いたしました。
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