-
『かけがえの無い宝』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:寺
-
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
プロローグ
昔、世界は二つ存在したという……
今現在も繁栄を続け、人々が穏やかに暮らす世界『カルティス』と、
いつの間にか姿を消し、今では異世界となった世界『ロゥ』。
異世界『ロゥ』の研究をするものは世界中にゴマンといるが、
未だにその謎は解明できずにいた。
第一章『信じる者と信じぬ者』
此処は草原のど真ん中。一つの大きめの建物からは、多くの若者たちの声が聞こえる。その若者達の中に、この物語を左右する青年がいた。
ある一室で、二人の青年が話をしている。一人は青、一人は茶の髪を持つ青年が。
「異世界『ロゥ』? 俺は信じないね。第一、そんなモン在るわけねえだろ」
茶髪の青年は友人にそう言い放ち、部屋を出た。とり残され、腕を組んで首をかしげた彼の名はルーク。珍しい宝を探して世界中を駆け巡る者達の集まり『トレジャーハンター協会』の一員であり、異世界『ロゥ』の存在を信じつづける青年である。
「……ったく、相変わらず頑固だなあ」
ルークはそう独り呟いて、椅子に座り込んだ。
一方、部屋を出た茶髪の青年の名はステート。ルークの親友で、同じ『トレジャーハンター協会』の一員であるが、唯一“伝説”というものを絶対に信じない男だった。
ステートは廊下の窓際を歩いていた。外の景色を眺めながら、ステートは自分の部屋へと歩いていった。
空は雲ひとつ無い快晴だった。外にはどこまでも草原が広がり、草原と青空が交わっていた。邪魔なものは一つも無い。実にスッキリした景色だった。
部屋についたステートは机の上に畳んであった世界地図を手に取り、床に広げた。
この世界の説明を簡単にしておこう。
カルティスの世界は『レーヴュア大陸』と呼ばれる大きなひし形をした大陸のことで、周りに少々島が在る。
そして、大陸を治めるのは大陸中心に城を構えるラベルサックだ。
その他にも、大陸の北には大きな森があり、その森の中心には謎の神殿がある。
南には大山脈、西の端には昔の城の跡、そして東側には、ここ、『トレジャーハンター協会』の本部があるのだ。
話を戻そう。
ステートは暫く地図を眺めていたが、バッと地図のある地点を指差した。
場所は大陸の西端、昔世界を治めていた国の城の跡地である。
ここには、昔城が使われていたころの財宝が今も眠っているという……
「……ここだな、よし!」
ステートはそう呟くと、部屋の隅に置いてあった剣を掴んで部屋を出た。
そして入り口のネームボードにこう書き込んで、ステートは目的地へと向かった。
“ステート:ただ今捜索中
行き先:大陸西端 マーギ城後”
第二章『マーギ城の探索』
「ここだな」
古びた城を前にステートが言った。城はことごとく破壊されたままになっていて、人の気は全く無い。ステートは目的地、マーギ城後にたどりついた。
ステートは城を見上げて、城内に足を踏み入れた。
マーギ城は十年前、世界の支配権がラベルサックに移ったとき、ラベルサックの過激派集団によってほとんどが破壊されてしまい――その集団の若者達は、当時のラベルサックの王によって裁きが下されたが――足場などが不安定だったが、幸い日当たりがよかったので夕方でも明るかった。
暫くすると、警戒しながら城内を進むステートの前に、一つの部屋が姿を現した。ステートの見る限り、まともに残っている部屋はここだけだった。
「ここは王の間か……何かありそうだな」
あるもの全てをくまなく探るのはトレジャーハントの基本の基。ステートはそう呟き、早速部屋の探索を始めた。壁の煉瓦の隙間まで、まで、ステートは探しまくった。
が、一向に何も見つからなかった。何かがあるはずだと思い、ステートは残りの椅子を探した。すると、椅子の下から何やら鍵のようなものを発見した。
「おっ……、とすると何処かに扉が……」
ステートはそう呟くと部屋の隅を探しまわった。すると、部屋の入り口近くの床に、鍵穴を発見した。ステートは先ほど見つけた鍵を穴に差し込み、回してみた。扉はギシギシと音を立てて開き、奥から階段が現れた。その奥を覗いてみると、そこは一筋の光も存在しない暗黒の世界が広がっていた。しかしこれが逆に、ステートのトレジャーハンターの血を騒がせた。懐中電灯も持たないまま、ステートは階段を下りていった。
第三章『転移ゲート』
懐中電灯も持たないステートにとって、頼りになるのは野性的な勘のみだった。が、ステートに野性的な勘などは無く、ステートはただまっすぐ歩くしかなかった。一筋の光も無いマーギ城の地下を、ステートは警戒しながら歩いていく…。
やがて、ステートはある壁に頭をぶつけた。
「痛っ! 何だこりゃ」
ステートは目を細めて壁を見た。壁には特に変わった装飾は無かったが、右のほうに何やらドアノブのような物がつけられていた。
「! これは……よいしょっと」
ステートはドアノブを回してみたが、無論、錆付いていてノブが空回りするだけ。その音は、虚しく地下通路に響き渡った。
「畜生っ…うおりゃあぁぁっ!!!」
ステートは力の限りドアノブを回した。すると、ドアノブが大きな音を立てて外れ、ドアが軋むような音を立てて開いた。すると驚くことに、部屋には明かりが灯っていたのだ。ステートは唖然としながらも、その部屋の中に入っていった。まるで、何かに吸い寄せられるかのように……
ステートは部屋に入った途端、ある物に目を奪われた。
それは、部屋の真中に立つ石碑だった。石碑は、青白い光を放ち、誰かが此処を訪れるのを待っているようだった。ステートは石碑に歩み寄った。何やら文字が書き記されているようだ。ステートはしゃがんで文を読んでみた。
この世、二つ存在す。
しかし、謎の知的生命体「ベーグ」により、二つの世界、切り離される。
ベーグの力により、一方には平和が、一方には魔物が現れた。
一部のベーグはその後、平和の訪れた世界へと移り住み、姿を消す。
一方、魔物の訪れた世界でも、
両親を持った一部のベーグとこちらの住民達によって
平和を取りもど……
書き記されていた文は、ここまでだった。
「…………」
ステートは立ち上がって部屋全体を見渡した。
「……この石碑といい、文といい…、此処は一体……」
その時、一瞬ステートの頭にある予感が走った。ここは噂に聞く異世界『ロゥ』に関係するのではないか…という予感が。
「…!! まさか………!!!!」
ちょうどその瞬間の出来事だった。
石碑がエメラルドの光を発した瞬間、その光に包まれてステートはその部屋から跡形も無く消え去った。そして、石碑の文にこんな付けたしが現れた。
“平和を取り戻した。
しかし、そこに今一人のベーグが迷い込んだ。
この出来事は、魔物が現れた世界を大きく変えることになる”
第四章『異世界』
ステートが目覚めたのは深い森の中だった。辺りに人気は無く、シーンと静まり返っていた。ステートは目覚めると、周りの景色を見渡し、自分の身に何か起こってないかを確認した。幸い、怪我も無く、剣もきちんと在った。
「ここはもしや……『ロゥ』?」
ステートは小声で呟き、もう一度辺りを見回した。
だが、どの方向を見ても目に入るのは木、木、木。しかも見たことも無い種類の木ばかりだった。それを見た瞬間ステートは確信した。
“ここはレーヴュア大陸、いや、カルティスではない”と。
とにかく人のいる場所に行こうと、ステートは立ち上がって行く当ても無く歩き出した。
「おい! そこで何をしている!?」
そう呼び止められたのは、歩き出して十五分くらいしてからだった。声のした方向を向いたステートは我が目を疑った。見た目こそはただ槍を持った戦士、つまり人間そっくりなのだが、その声の主には“翼”があった。堕天使を思い浮かばせるような二枚の漆黒の翼が。そして、ステートがそれを見た瞬間、声の主は翼を羽ばたかせてステートの許へと飛んできたのだ。ステートは警戒心を持ちながらも、まずは様子を見ることにした。
「お前は……ベーグ!? 何故こんなところに……ちょっと待っていろ」
黒翼人間はステートにそう言い、何処かに飛び去っていった。ステートは自らが呼ばれた名“ベーグ”とは何だ、と考えていた。が、突然見知らぬ場所に来て少し混乱していたのだろう。ステートは、マーギ城の地下で見た石碑に刻まれていた文さえ思い出せなかった。
暫くして、先ほどの男がもう一人の男――同じ種族だということは明白だった――を連れて戻ってきた。
「この者です」
先ほどの男が連れてきた男に言った。連れられてきた男はステートを見つめた。
「うむ……」
連れられてきた男は考え込んだ。
「如何します?」
「……もしかすると、『あちら』からの迷い人かもしれん。とりあえず巡回を続けてくれ。俺は城に行き、ジアーク様に報告する。いいな?」
命じられた男は「はっ」と答え、何処かへと飛び去っていった。それを確認すると、残った男はステートのほうを見た。暫く唖然と見聞きしていたのでハッとしてしまった。
「……よし、ベーグの若者よ、俺について来るがいい」
そう言うと男は歩き出した。ステートも「ああ」と簡潔答え、男について行った。
森の中の道無き道を、男は正確に歩んでいく……
やがて森を抜けると、ある城が姿を現した。夕陽に照らされて紅く輝く城は、明らかにカルティスには存在しない城だった。
第五章『カージュ・グレイジェル』
「なあ、あの城に行くのか?」
ステートは男に訊いた。男は微笑して、
「ああ。あの城は、俺の仕える国『ニゲア』の城だ。今から我が君主、ジアーク様に会いに行く。行くぞ」
と言い、城へと歩き出した。この世界では無知のステートは、不安の中をただ男の後をついていくしかなかった。
驚いたことに、城門には兵一人、鍵一つついていなかった。
“何で何もついてないんだ?”とステートが訊くと、男は寂しげな表情を見せてこう言った。
「……この門には、ジアーク様が自ら魔力の結界を張ったんだ。門だけじゃない。この城の全ての入り口がこうやって守られてるんだ。しかもこの結界にはとてつもない魔力が込められていて、城の者や、許可を得た者以外が此処を通ろうとしたり、この門に触れただけでも即お陀仏だ。ただし、城の者と一緒にいれば大丈夫だからな。けど……、この前、此処で偶然遊んでいた子供が、門に触れて……。
便利にはなったけど、その分、また危険も増えた。利点があれば必ず難点もある。この大原則には、いくら魔法とて逆らえないんだ……」
ステートは男と共に門をくぐると、門を見上げ、城も見上げた。この城全体が、いつ誰かを殺しかねないバリアーに覆われている……ステートは、男の言った言葉が少し解ったような気がした。
「おい! 何やってんだ、行くぞ」
その男の声でステートは我に返った。男は既に城内への扉の前にいた。走っていくと、男が“如何したんだ?”と訊いてきた。ステートは“何でもない、ちょっとの考え事だ”と答えた。そして、男が扉を開けようとした時、
「そういえば、名前を聞いていなかったな。なんていうんだ?」
と男が言った。
「ステートだ。ステート・ティマー」
ステートは躊躇いも無く自分の名を言った。
「そうか、ステートか。俺はカージュ・グレイジェル。ニゲアに仕える槍戦士(そうせんし)だ、宜しくな」
「ああ、宜しく」
二人はそう交わし、城内へと入っていった。
-
2004/10/22(Fri)18:25:51 公開 / 寺
■この作品の著作権は寺さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
……書き直してみたところもありますが……あんまり進歩が無いような気が……
またよろしくお願いします。出来る限りアドバイスを生かしていきたいので。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。