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『終止系 第2話、第3話』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:餅米オカン
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1
冷たい床 コンクリート剥き出しの床に座っている
目隠しをされている 手首を縛られている
コンクリートが発する冷気の静寂の中 かすかな息遣いが聞こえる
私のほかに 誰か隣に座っている・・・多分、戸田だろう
彼はおびえきっている 彼の震える振動が伝わってくるから、わかる
私は・・・怖くは無かった こういう経験は何度もしているから
でも、今回は少し違った 何か違うのか 私には・・・わかった
解りきっていた わたしはここで死ぬ ここで終わる
この運命は回避する事が出来ない ただ死を待っている・・・
その中に何故だろう この指令がきたときのこととか鮮明に思い出した
そんな余裕があるんだ・・・ 私は・・・
ぱぁぁぁっと頭に記憶が広がっていった
誰も寄り付きもしない所に事務所がある。朝から晴れてても空は緑色。
雨の日のような湿気のある生暖かい空気。全てがこの事務所に人を寄り付けない。
表向きには腕の良い探偵事務所という事になってる。でも本当はそんないいもんじゃない。
運び屋、始末屋、ハッキング・・・時には命を狙われるような仕事・・・。
裏社会の入り口だった。でも・・・だれもそんな事は知らない。
私はそこで働いていた。働き始めて5.6年ぐらい。ベテランとはいかないが
長いほうである。今回の依頼は、とある組織のちょっとした資料を失敬する事。
どんな資料かはわからない。とりあえず盗って来いらしい・・・。まったく。
この依頼は一年前から進めてきていよいよ本格的に動く。
その組織には、工作員を忍ばせてある・・・と指令には書いてあった。
そんなに難しいのか・・・。
運転席、タバコをふかしながらそう思った。
また命が危ない依頼だと。指令書にタバコをぐりぐりと押し付け、火を消した。
「駄目ですよ。そんなことしたら。」
隣で新人の戸田が無理矢理私の手の中から指令書を奪った。
「これは僕にとってマニュアルでもあるんですからね」
「ああ。ごめん。つい、いつもの癖でね・・・。」
「いつもやってるんですか!?もうっ。平井さん!!」
彼は・・・なんというか几帳面・・・いや神経質だ。常識にしか従わないような。
新人だから、そのうえ初任務だから無理も無いだろうが、異常だ。
やっぱ神経質なんだろうな・・・。いや、私が無神経なだけ・・・か。
タバコを一本取る。口にくわえ火をつける。その間も戸田は説教を止めない。
「聞いてますか?平井さん!」
「・・・・。」・・・いいや。聞いてないよ。
そのまま無視して車を走り出した。
「もうっ」
ミラーに映る事務所がかすんでみえた。
2
「おい。」
不意に声をかけられ記憶が途切れた。・・・戸田、ではない。
「お前ら自分が何したかわかってっか?」
・・あぁ組織のやつだ。さっきは居なかったよな・・。
「・・・あれを表に出されるとボックン生きていけないんだよネェ〜」
口調が変わった。もう一人居るのか??
「でも君らも生きていけないよねぇー。任務失敗したらさぁ〜?」
「大目に見て逃がしてやろうとぉ思ったけど?あーんな馬鹿してくれるしぃ?」
あんな馬鹿??・・・あぁ、工作員の事か。
「そのせいで、こっち半分死にかけだからさぁ?・・・わかるよねぇ?」
「じゃぁ、二時間後にネェ〜」
私たちの余命は二時間。本部はきっとその事を知っても助けには来ない。
わかっている。本部にとっても私達は皆・・・捨て駒なのだから。
そんな事考えならも、また私は記憶をたどり始めた。
3
大手企業の本社ビル。・・・の地下に組織はいる。いや、むしろ大手企業事態、
奴ら組織だろう。・・・うちの事務所と作りは一緒である。
・・・まぁ、奴と違ってそんな悪い仕事ではないが。
車を止めそのビルをフロント越しに眺めた。
「でっかいビルですね。綺麗だし。」
戸田は、はぁ〜と感心しながら見ていた。私は四本目のタバコを口にした。
「外見だけだよ。」
タバコに火をつけ車を見つからない所に止め車を出た。
ココには社員として入る事になっている。そこから”本条 恭平”という人物に連絡を取る。
例の工作員の事だそうだ。・・・で、そこから地下へ行き組織の活動の写真を取り、
資料を盗みこの会社を出る。セキュリティはそんなに複雑ではないそうだ。
「・・・平井さん。失敗したらどうしましょう・・・。」
「んあ?んなこと考えたとこもねーな。」
1、2度伸びをしてタバコを吐き捨て靴でぐりぐりと踏み潰す。
「たくましいですね・・・」
横目でチラッと戸田を見るとネクタイを直していた。前を見つめ気合十分な顔だった。
・・・いや緊張でそんな顔してたのかもナ。
初々しいというか・・・真面目すぎと言うか・・・まぁいい。
とりあえず、会社の中へ入る事にした。
「おはようございます。」
受付の人に言われ、軽く会釈をした。声を掛けられビクビクしていた。
「・・・ねぇ。硬くなりすぎ。」
「・・・」
返事は返ってこなかった。緊張がピークなのだろう。あとは次第に下がる一方だ。
・・・そうだ。そこでだ。戸田の緊張を高ぶらせ、私すらも焦りだしたのは・・・。
6階リフレッシュフロアに着き、そこで本条に連絡をした。
「・・・もしもし?こちら、KK事務所の平」
「本条だっ。任務変更だっ。今すぐそこからぬけだせっ。」
慌てふためいてる。息を切らし、声を潜めた本条の言葉が聞こえた。
私は、ドキッとし緊張が走った。・・・いきなりそぉなるとは・・。
「資料の重要部分は、ほンブにもう・・・マ、回した」
「写真も俺が潜伏中のをまわしておいたっ。平井だな?あとは・・頼む」
「あ、後は頼むって本条!?なにを・・・」
「時間がないっ。指令だっ。『ココカラニゲダセ』・・・・。」
ゴォォォン・・・という音が無線の向こうから聞こえ本条の叫び声がそのフロア
全体に響くんじゃないかと思うくらいの大きさだった。
・・・頭が空っぽになった。『ここから逃げ出せ』それが指令・・・。
「平井さん」
頭が回んない。パニックを起こしている。おちつけ。おちつくんだ。
「平井さん」
エレベーターで降りる。いやこの朝の時間使ったら怪しまれる。階段だ。いや駄目だ。
地下へ直結している。奴らと逢いかねん。どうすれば・・・ちきしょうっ。
頭が回らないっ。
「平井さんっ」
「っ!?」
無線を私の耳からブチ取り下の階が見える窓へくっつけた。
戸田に思いっきり腕を引っ張られエレベーターに乗り、下へ降りる。
「早く逃げないと、無線電波をたどられますよっ!?」
「わかってるっ。解ってるんだよっ!!っちきしょ!!」
「落ち着いてくださいっ!!」
身体を思いっきり揺さぶられ戸田の顔を見た。涙をこらえてるガキみたいな顔して
いた。
「・・・あぁ。逃げるだけなのにな・・・。」
座り込み上を見た。綺麗に作られたデザインのエレベーター。その隅に不似合いな
モノがあった。・・・監視カメラだ。戸田はまだ気付いていない。
今さら平然さを装っても無理だろう。そこでわかった。逃げられないと。
でも・・・そこで指令を思い出した『ここから逃げ出せ』。
頭の中でおもった。・・・自分へ・・・指令変更・・・。
「戸田・・・。失敗してもお前だけは逃がすからな。」
これが新しい指令。
(つづく)
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2004/10/13(Wed)10:10:03 公開 / 餅米オカン
■この作品の著作権は餅米オカンさんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
はじめまして。モチゴメといいます。
ドウゾ、宜しくお願いします。
第二話、第三話と続けて描きました。
なんというか・・・。記憶探検したり、
現実に戻ったりしております。・・・。
うまく言い表せない部分も多々ありますが、
読んで頂き誠にアリガトウございます。
それでは続き頑張って描きます。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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