-
『桜姫』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:千穂
-
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
毎年、春が嫌いだった。
死んだ事を思い出すから。
けれどもそれは事実だったから。
桜が咲いても、散っても、葉桜になっても…春の記憶は根付いてた。
そんな事実は欲しくなかった。
彼はいつも艶を心配したから。
艶もまた、貴方を夢見た。
いつか貴方の隣で眠ることを、夢見る。
1話「艶と羽織」
≪羽織≫と≪艶≫
そんな2人が生まれもった運命など、艶は知らん。
ただ、羽織は艶に何かと優しくしてるから、艶はその気になったのだ。
「じゃ、好きなんじゃん?」
「違うよ。艶にはもっといい男が似合うね」
各駅停車の電車なんて名ばかり、艶にとってはめぐとの大切な相談の時間。
「自分で言うなよ」
めぐは電車に乗る前に買ったピザまんをうまそうに食べた。
食う為に買ったものを早く食べようとして何が悪い。
女子高生にとって電車のルールなどそんなものだ。
「いや、でもほんと。マジな話。艶は羽織先輩が好きじゃないの。解る? けれども羽織先輩の事を考えると…うん、なんっうの? そう、それだよ」
「ソレって何」
めぐはジュースも飲む。艶も喉が乾く。自分で言うのもアレだが、お喋りなんだ艶は。だから羽織先輩の事もついついめぐに喋ってしまった。
出会いは5月。遅刻指導で呼び出された教室に艶は教師より先に扉を開けた。
その扉の向こうにいたのが≪羽織≫
彼は気持ち良さそうに寝ていた。
彼の寝顔がどうも気に入らなかった。初恋の相手に似てる。
第一印象。
最悪だった。初恋といやぁこっぴどくフラレたし。艶は彼を嫌いになった。
「……寝てる……んだよね」
眼鏡を乱雑に置いて。机に顔を擦り付けて。
「うん」
聞こえた声に艶は口から心臓が出そうに驚いたのを覚えてる。
それが出会いだった。
-
2004/10/01(Fri)23:01:49 公開 / 千穂
■この作品の著作権は千穂さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。