『三戸』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ブライ                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
運命と呼ばれるものは本当にあるのだろうか。自分が他の誰かと会うのは運命
なのだろうか。死ぬのも運命、生きるのも運命、出会うのも運命。すべては運命に定められている。たまには自分の意思で決めていきたい。自分が求める運命を。こんなくだらないことを考えながらテレビを見ている自分の姿がある。これもまた運命というものなのか・・・。
「つまり、ここには霊が住んでいるということですか?」
「はい。とても邪悪な霊です。」
心霊番組だ。俺の名前は威風一機。高校生。親は二人とも変わっている。父親は霊感がかなり強く、母親は巫女をやっていた。当然、俺もその霊感とやらがあるらしい。初めて霊が見えたのは六歳のころだ。初めは怖くてしかたなかったけど今では怖がることもない。無視していれば何もされないのだから簡単なことだ。だからテレビでやっている心霊番組で霊が映っているのもわかる。
「宿題めんどくせぇなぁ。」
ベットに横たわる。そして、ふと顔を壁側に向けた。すると目の前に3体の奇怪な生き物がいた。
「うわぁあああ!な、なんだこいつ。」
「おかしいな、我々の姿が見えるのか?」
「んなバカなことがあるかよ!人間が見えるなんてよぉ。」
「ちょっとあんた達、そんなこと言ってもこの人間はみえてる
 みたいだよ。」
15cmぐらいの丸い形をした生き物。大きい目玉が真中に一つついている。
その下に大きい口がある。いちよう小さい両手と小さい両足もある。とてもシンプルな生き物だ。これには俺も驚くしかなかった。霊なら見慣れているけどこんな化け物は見なれているはずがない。両手を使って床をはいずりながら後ろに下がる。
「く、来るな!こっちに来るなっ!!」
俺は手当たりしだい物を投げつける。けれど、そんなこと気にしない様子で3体の奇怪な生き物は近づいてくる。
「どうする?青古。」
「どうするもこうするもなぁ・・・。神に報告するべきか。」
「んなめんどくせぇことすんなよ!この人間に事情話せばいいじゃねぇか。」
「しかし、こんな事態は前例が無い。勝手に判断していいのか。」
三匹は口論の末、一機に事情を説明してきた。彼らは「三戸」と呼ばれる妖怪で、とりつかれた者の悪事を毎晩神に報告して痔命を縮めていくという妖怪である。
「私の名は青古。よろしく。」
「俺様の名前は白姑。白姑様と呼びな。」
「私の名前は血戸っていうの。よろしくね。」
まとめて見ると、紳士的な奴が青古。偉そうな態度の奴が白姑。女の奴が血戸。すると、いきなり三匹が俺に近づいてきた。
「な、なんだよおまえら。」
「いいから黙れっつーの!」
すると三匹は俺の体の中に入ってきた。穴が空いたわけじゃない。まるで俺が
映像だったのかのように三匹の体は簡単に俺の体の中に入っていった。暴れまわる俺。当然だ。すると三匹が体から出てきた。
「そんなに騒がないでくれる?私達だって揺れるんだから。」
「まぁしかたない。説明しよう。」
すると青古が説明しだした。三戸は人間の体の中に入ることができ、それぞれ入る場所が決まっている。青古が頭部、腕。白姑が胸。血戸が腹と脚。それぞれ分担も違うのだ。こいつらは俺の寿命を0にしない限り自由になれないらしい。だから必死に俺の悪事を探すだろう。何か騒動な予感がする中、1週間が過ぎた。今は授業中。他の生徒には見えていないから三戸は俺の机に乗って授業を聞いている。とりあえず今のところ悪事は一つもしていない。
「おいおい、人間は座っていることが仕事なのか?楽なもんだ。」
「それより早く行動してもらわないとこまる。悪事をしないと
 我々が大変なのだからな。」
「あら〜、イッキって他の人間に比べて字が下手ねぇ。」
「お、おまえらもっと少し静かにできねぇのか!!」
クラス中がシーンとなる。そして俺の方に視線を向ける。当然先生もだ。ようやく事態の異変に気づき頭を下げてまた黒板を見た。そして周りも不思議に思いながらもまた授業に集中した。ようやく昼休み。俺は学校の屋上でヤキソバパンを食べていた。
「なぁ、たのむからうるさくしないでくれよ。」
「それなら悪事をすればいい。永遠にサイレントな時を味わえるよ。」
「それよりイッキ、てめぇ何やってんだ?」
「あぁ?何って食事じゃねぇか。」
「食事?何それ。興味ある〜!おしえて、イッキ。」
どうやらこいつらには食べるという習慣が無いらしい。全部の妖怪が無いというわけではなく特定の妖怪は無いということだ。俺はめんどくさがりながらも
おしえることにした。
「う〜んとつまりだな、俺はこのヤキソバパンを食うことによって
 体に大切なエネルギーをとったり空腹を満たしたりとなぁ。」
「じゅあ、ヤキソバパンを食べなければ人間はどうなるの?」
「死んじゃうよ。すぐには死なないけどね。」
すると三戸は驚きを隠せない顔をしていた。初めて知ったこととは言え、驚き
すぎるほどのリアクションだった。
「すごい、君達はすごい生き物だ。」
「そ、そうか?」
「そんなことを守らないだけで死ねるなんて、すごい生物だな。」
「・・・・え?」
この時俺は実感した。やっぱりこいつらは意思はあっても妖怪だということを。そしてわかったのだ。人間と妖怪の違いというものを。

2004/09/27(Mon)21:29:00 公開 / ブライ
■この作品の著作権はブライさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。