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『飛んでいけ、風船!』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:mizu
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ただ何となく、教室の窓から息を殺して運動場を眺める
砂埃とか揺れる木
教室内ではこの自然が数字となって、教師の口から吐き出される
自分の頬にベタッと張り付く机
僕は机に伏したまま、空を通り過ぎる飛行機を眺めてる
放課後という時間になっても、僕はここに居る
教科書とか筆箱が机の上で散乱する
「もう、終わったよ。」
声が聞こえると 僕の放課後
横のクラスの堀川がそう僕に告げる
高校一年生というのは、何とも不思議なものだと自分でも思う。不本意にもこんな馬鹿な学校に来てしまった自分を責める事も無く、自分はここになじもうと努力しているのだから。
「あつー。」
最近、熱帯夜が続く。
横の堀河が100円ショップの扇子で、暑さをしのぐ。その光景を、僕は笑う。
「何笑ってんの?」
堀川は可愛くない。まぁ、付き合いはじめた頃からわかりきった事だったが、少し後悔する。
「だって、笑うだろ。猿のような所から堀川は暑さをしのぐために扇子を使う事を最近になって習得したんだから。」
笑える。
手から離れた風船のように、僕らは進んできたのではないだろうか。
家に帰ったら、まずする事
手を洗って、うがいをして、歯を磨いて、服を着替える
そして、僕は布団の上で目を閉じる
人はすごい
こうやっているだけで僕は勇敢な戦士にでも卑怯な商人にもなれる
テレビゲームは飽きた
僕はへんてこな剣を持って野原を駆ける
ヒロインは
堀川じゃない、少年誌のグラビアに載っていた女の子がちょうどいい
そんな妄想にふけっていると、携帯が鳴る
メールだ
堀川だ
なんで堀川と付き合っているのか、わからない僕だった。でも、メールはその事を結果的に教えてくれた。
そのメールは、堀川の母親からのメールだった。
喧嘩をして出て行ったと言うメール。母親もずいぶん怒っていたらしく、堀川が出て行ってずいぶんと時間が経っていたらしい。
堀川が行く所なんて、僕の家か、何人かの友達の家ぐらい。なのに、どこにも居ないと言う。
僕は河川敷を自転車で疾走した。馬鹿みたいに。
自転車が宙に浮くようなスピードで、この片田舎を駆け抜ける。
足が痛いなぁ、って思う。
それより、堀川の事を考えていたかもしれない。
僕は意地を張っていた。
堀川の事は好きだ。でも、夢中になる事を僕は許さなかった。
馬鹿だと思う。
可愛くないやつ。
久しぶりだった。
幼い頃、堀川や他の友達とよく遊びに行っていた神社。
ギャングエイジという物だろうが、僕らはそんな事を知らずに夢中。
幼い頃はよく裏で遊んでいた。
堀川は居なかった。
僕は自転車を神社の前の階段の下の所に倒すように置いていた。
僕はひんやりとする階段に座っていた。
格好良すぎた。
自分の世界に閉じこもって、恥をかこうとせず。
ただ、静かに座っていた。
それで良いと思っていた。
イチャイチャするのは馬鹿のする事だと思っていた。
風船はどこに昇って行った?
僕はどうすれば良い?
ダーウィン、答えろ!
人は恋に溺れても良いのか?
それとも、恋は子孫を残すためのきっかけでしかないのか?
風船は昇って行く。
僕らの手に戻ってくる事は、ないだろう。
息を吹き込んだ原人、万歳。
手を離した祖先の人たち、ありがとう。
風船(目的)を失った僕たち、ばかやろう。
家に帰ると、そこには堀川が居た。
「ちょっと、今日、泊めて。」
悪そうにそう言う堀川。
風船はどこかに落ちて行く。
それがお花畑か、北極かは誰も知らない。
飛んでいけ、風船!
僕が生きてる間は落ちてこないでね。
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2004/08/20(Fri)12:22:46 公開 / mizu
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