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『ミュージックボーイズ 俺おかしいですがなにか?「4」〜「7」』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:NINETY−NINE
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「4」
あの衝撃の事実を知ってから2日、余計川柳さんに話しづらくなった。もう自分は彼女の目にはうつってないのか・・。そう思うたびに心が痛む。
この恋は終わらそうと思うのに・・終わらせることができない。
どうすればいいんだ?授業中にそんなことをずっと考えてると
勉強にみがはいるわけがない。
「山下くん64ページの2行目の【彼はそのとき思った】から読んでください」
「・・・」
「山下くん!」
「は・・はい!!」
こんな調子だ・・・
給食の時間だった。同じ班の赤木さんが聞いた
「ねぇねぇ翠って矢部君とメールしてるんだって???」
いいわすれてたが川柳さんの名前は翠(みどり)という・・良い名だ・・
「ええ!?なんで知ってるの?」
「だって噂すごいたってるよ〜、ねっ山下君」
ビクリっ!なんて答えたらいいだろうか・・ここはあくまで明るく・・・
「うん、すんげーたってるよ!自分が知る限り学年の90パーはしってるな〜。」
川柳さんはかなり慌ててる・・
「なんでみんなしってるの〜、矢部君から聞いたの?山下君!」
う・・どうしたら、すなおに言うべきか
いや〜昨日翔太と誠と帰ってる時にきいたんだ、なんていえるはずが・・
「風の噂でききました」
このようにとぼけるのが一番だ、赤木さんが川柳さんの肩をひじでつつきながら、
「この〜あんなかっこいい矢部君とメールしてるなんて幸せもんめ〜」
「やめてよ〜」
川柳さん・・ああ、貴方はもう雲の上にいる・・
友達と遊んでる時にもこの話は持ち上がった・・
コンビニの駐車場でみんなで立ち話してるときだ。
友達の一人が
「ありゃ時間の問題だな」
「あと1ヶ月以内でつきあうな」
もう一人が答える
聞き耳をたてる・・
「しかしお似合いだよな〜あの二人〜まったく憎いぜ」
などとうらやましがる奴もいる、自分もそうだが・・
「誠はなんていってるん?」
「どうだかよくわからないが、かわいいといってるらしい・・」
『まじで!?』
みなが声をそろえる。
「付き合うに100円!」
「俺も!」
「俺も!」
「俺は50円!」
金かけるのかい・・
「洋明は?」
二人が付き合うなんて信じたくない、けど・・・
「付き合うに80円・・・」
「おいおい、これじゃ賭けになんねーよ」
・・
「俺帰るわ」
・・・
「え?どうして」
・・・・
「用事思い出した。じゃあな」
・・・・・
「おいまてって」
・・・・・・
自転車にのりながら川柳さんを思った。
こんなに人を好きになったのは初めてだった。昔のように心から笑いあえる時がくるのだろうか。
小さく「クソッ」とつぶやいた・・。
土曜日親とベースをかいに行った。この時は川柳さんのことは考えなかった。どんなベースを買おうか?そんなことを考えていた、水色?赤?黒?
小中君によると
「セットで買った方が楽だしお得だよ」
セットのもので買うとなると3万以内で収まるらしい。
いよいよ店の中に入る、期待で胸が躍っている。
「いらっしゃいませー」
迷わずベース売り場へ向かう、色とりどりなベースが置いてあり黄色い値札には【超特価!!今買わなきゃ損!】と書いてある。誘惑されそうだ・・。
「初めてですか?」
若い女性店員が聞いてきた。
「ええ、そうなんですよ」
母が答える。
「初めてでしたら、こちらのほうがいいとおもいます」
笑顔でいいながらセット商品のベースを持ってくる。
黒と茶と白が混ざった渋いベースを持ってきた、なかなかいい・・。
「え〜とこちらアンプやコードセットで29800となりますね」
「へ〜アンプもセットでですか〜安いですね〜」
母は関心している・・。店側にとっちゃいいカモだ・・恥ずかしい。
「ねえ、これにしてみたら?」
母が自分に尋ねる、じつを言うと自分は最初このベースが気に入っていた。
「うん、じゃあそれにする」
そっけなくそう答えると、店員はそれをレジまで持って行き、チューニングをし、カバーをし
「それじゃあお会計を」
母がお金を払い僕の手にベースが手に渡る、ずっしりと重かった。
「たいせつにするのよ」
母は笑顔でいった。僕は決め台詞を言った
「もち」
次の日学校で小中君にベースを買ったことを報告した
「小中君ベース買ったよ!」
小中君うれしそうに
「おお!じゃあまずは基礎練しなくちゃね」
「わかった」
そう言うと小中君は急に顔を変えてこう言った。
「ギターの浅見君だけどやめたよ」
「え!?なんで?」
「浅見君全然練習してないんだ、それにバンドの話にも混ざってこないし」
浅見は部活でもそうであったがサボリ癖があった。ギターの練習もそうであったのだろう。小中君は「いい加減にやるのであったら、一緒にやる必要はない。」と、いったそうだ。浅見もその言葉に逆ギレしバンドからぬけたそうだ。ここで一番の問題はギターの代役をだれがするということだ・・。
誰が?
とりあえずそのことは小中君が考えておくとのことだ、たよりになる人だ。
教室に戻ろうとしている時に歌声が聞こえた
「ゆこう!ゆこう!ターミナルは夜空の向こう!!」
ラップ系というか速いテンポで歌う歌を歌っていたのは、山賀というやつだ。あいつは不思議な奴で悪い奴じゃないが一緒にいると疲れる・・。
あいつのまわりにはギャラリーが何人かあつまり歌をきいている。
「えらい!つらいことあんなら指突っ込んではいちゃいなさーい!!」
さらにうたってる・・、おもしろいはおもしろいが危険な行為をしてることにまだ気づかないのか?先生がこっち見てるんだぞ。
「お前らなにしてんだ!」
その声に皆きづくと
「やべ逃げろ!」
いっせいに近くの階段をかけおりその場から逃げた、
「まったく・・」
先生はごりっぷくのようだ。
「お前はなにしてんだ?山下・・。まさかお前もあいつらといっしょになにかしてたのか?
「いや先生まさか〜なにもしてませんよ」
すこしため息をつくと先生は自分の教室にもどっていった。
山賀 政太郎・・面白い奴だ・・。
帰り道でのことだ、いつもは翔太と誠とかえるはずだがあいにく今日は誠は風で休み、翔太は彼女とかえっている。
久しぶりに1人で帰るのかと思ったとたん後ろからドン!とてをたたかれた
「あれ?いつもの2人は?どしたんよ」
山賀・・なんでお前サッカー部だろ。
「今日一緒に帰らね?」
「べつにいいけど・・・」
山賀は満足そうな顔で
「よし!じゃあお互いの悩みを語り合って励ましあおうか!!」
少し不安を抱きながら一緒に帰路についた。
「5」
少し痩せ気味で髪の毛は少し茶色がはいり、つんつんにたて前髪は2、3本おでこにたらしている。
「あ〜あっちぃ〜もう6月がおわっちまうんだな〜」
山賀はそう言いYシャツの第1第2ボタンをはずした。暑そうにしているには裏腹に彼の横顔は狼を思わせるような涼しげな顔をしている。こいつのあだ名はべたではあるが「ウルフ山賀」である。ホントにべただ・・。誰が考えたんだ・・。
山賀とはじめて話したのは1年の時の校外学習で東京へ行ってる時だった。
新幹線で東京へ向かってる時だった、その時山賀は地元駅の集合時間に間に合わず後から東京に行くというわけであった。だがこいつ山賀 政太郎は地元駅のホームで待ち構えてる先生の目をかいくぐり僕達の乗っている新幹線に時間ギリギリで乗り込んだのだ。
「ハァハァ、あ〜そこの少年この俺を悪魔からかくまってくれ〜」
山賀は顔を赤くし、汗はだらだら流しながら僕が乗っている席に乗り込んできた。
「お、おい」
と、僕が慌てていうと、彼は軽蔑するような目でこちらを見ながら
「へぇ〜君は同じ学年の仲間を先生に売っぱらうんだ〜」
こいつ何を言いだすかと思ったら・・
「わかったよ。勝手に座ればいい」
少しむっとしたような声で言った。山賀はいかにもラッキー!という顔をして、
「へへ、サンキュ」
と笑いながら僕の横に座った。そのまま無事山賀は新幹線の中を安全にすごし東京についた。だがその後先生に呼び出しを食らったのは言うまでもない。
あの時から約4ヶ月、山賀とは話していない。
「いや〜こうやって話すのは新幹線の中ぶりだな〜、ねぇ山下君」
どうやらあっちもあの時のことを覚えているらしい。なぜかその言い方がむかついたので僕は少し敬遠するような言い方で、
「記憶力はいいんだな」
と、つぶやいた。山賀はあっけらかんとした顔で
「長所ですから」
と答えた。4,5分沈黙が続いた。相手も少しこちらを警戒してるようだ。
シュタシュタシュタシュタ、と足音だけが聞こえる・・。
さらに1分ほどたって山賀が目を丸くして急にこんなことを聞いてきた。
「なぁ俺達のいる意味ってあんのかな?」
正直ビックリした。あの山賀がこんなことを聞くなんて天地がひっくりかえてもないと思ったからだ。
「な・・なんだよ、急に」
「だから俺達に存在価値はあるのかってことだよ」
こいつ頭でもうったのか?そんな難しいことわかるわけねーだろ。とりあえずそれらしいことでも言っとくか。
「あんじゃないのかな。だって俺やお前がいなくなったら家族がかなしむだろ」
それを聞いた途端、山賀は声を張って
「俺の場合、そんなことはない」
な・・なんだ急に・・。山賀の少し怒りを込めた目を見てあることをおもいだした・・・。
山賀には両親がいないということを・・。山賀の両親は山賀(政太郎)が生まれた途端離婚、山賀は母親に引き取られたが母親は引き取って2年後蒸発。
わずか2歳の山賀は施設に預けられ、今にいたる。もとからの明るい性格もあってか普通に小学校中学校へと進学できたという話だ。
だが心には両親がいないという傷をもっていた・・。それをこいつは必死で隠してたんだということを今気づいた。
「ご・・ごめん」
思わず謝る。
「いんや気にしないでいいよ。もうなれた・・。」
そうは言ってるもの山賀の目には深い悲しさを感じた。僕の視線に気づいたのか慌てて強引に話をもどした。
「話はもどるけどさ。俺が思うに俺達の存在価値はどんだけ存在証明をしたかどうかだと思うんだよね」
少し鼻の穴を大きくして学者のようにえらそうな態度でそう言った。
「哲学者だな〜お前」
山鹿は「どうも」と言い、話を続けた。
「たとえばすごい偉大な人がいる、その人は偉人と言われるために色々な努力をしてきた。そしてその努力が人々の目に触れたたえられ彼が無き後も後世に偉人として語り継がれていくんだ。その彼がしてきた努力こそが存在証明っていうものだと思っている。ただ努力したからってすべてが存在証明になるとは限らないけど・・。」
「え?どういうこと?」
夢中で聞いてる自分に気づき少し周りを見渡す、西の空に太陽が沈んでいた。オレンジのような赤のような色に染まっている空を見た。
とてもきれいだった。
山賀は話を続ける。目を見てみるとさっきの悲しい目とは打って変わって希望に満ち溢れた目だった。
「報われない努力ってやつかな。分かりやすくいえば自分のための個人的な努力であり人のためにはまったくの意味をもたない努力だ。例を出してみれば、ただただマッチョになりたいがための筋トレだな。たとえマッチョになって学校で自慢してもその人気はほんの一時だ。そうだろ?」
「ま・・まぁそうだな」
意外なほど彼の話は共感をもてた。なんなんだろうか?なにか近いものがあるのだろうか?【存在証明】・・それは自分にとってどんなことを意味してくるのだろうか・・。
「俺が言いたいのは俺達はちゃんと存在証明をしているのだろうか?ということだよ」
「存在証明をしているのだろうか?かぁ・・・」
すこしため息混じりにそう言った。そう言えば最近の自分は心にぽっかりと穴が開いていた。それを埋めてくれたのが音楽だった・・。毎日自分はなにをしているのだろうと思っていた、その思いを音楽がぶち飛ばしてくれた。
山賀。俺は存在証明を今必死でやろうとしているぞ!お前はどうする?
お前は存在証明しているか?
心の底から毎日が楽しいと思っているか?
自分は少しづつだがそう思えるようになってきたぞ!
家の前まで来た。なんだかあっという間の出来事だった気がした。山賀が右手をあげながら
「じゃあな、また明日学校で会おうぜ」
と言った。ここで急に山賀に言いたくなった。さっき自分が思ったことを今山賀に言っといたほうが良いと思った。心が自分の心の底がそう自分に言い聞かせた。
「山賀!僕は存在証明しているぜ!」
胸が熱くなった。ヒューッと風が吹いた。とても涼しくてさわやかな風であった・・。
心がおちついた・・。
山賀は少しびっくりした顔をしたがすぐに穏やかな顔に戻り、こう言った。
「じゃあお前は俺の良い見本だ。これから俺の良い見本として俺を正しき道に導いてくれよ!」
山賀の顔はとても満足感に満ち溢れていた顔だった。
彼が歩いた道の後には一輪のきれいな薄い水色をした花が咲いていた・・。
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2004/07/26(Mon)21:12:40 公開 / NINETY−NINE
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■作者からのメッセージ
「4」〜「7」スタートで山賀と山下の駆け引きに注目してください^^
みなさんの意見を参考に「5」を書きました改善されてればいいのですが^^;少し難しい話になっていますのでそこのへんもよろしくおねがいします。
追伸「4」〜「6」を「4」〜「7」にしました。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
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