『PROTECTER』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:sena                

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〜とある事務所〜
「いい子いた?」コーヒーを持った若い女性がパソコンに向かっている青年に尋ねた。
「候補は現在この二人です。」
「どれどれ・・・・なかなかいいじゃない」彼女は満足そうに頷いた。
「じゃ、この子達で」青年はENTERをクリックしファイルは閉じられた


〜某有名私立中学 寮〜
けたたましい目覚ましの音がもうすぐ高校生となる3年 佐野正行をたたき起こした。
「畜生!!学校が今日から始まるとは知らなかったぞ!!」
玄関から同じようにけたたましい声が聞こえる。
彼の名は財前憲正。この学校始まって以来の天才で、スポーツも万能非の打ち所がない究極の輩であった。
それに比べ正行はALLNO.2という究極の凡人+αという微妙な輩であった。
「早く起きろ!!」憲正が制服を正行に投げつける。
「まだ冬休みだろ」正行がゆっくりと起きる。
「今日は転校する日だろ!!起きろ」
正行がやっと思い出す。
「やばいぞこれ!どうしよう?」正行がすばやく制服に着替える。
「もう手遅れだよ、一本後の電車かそれとも」
「それとも?」さきほど憲正が用意してくれたバッグを抱えながら正行が聞く。
「走れるか?」


〜駅・ホーム〜
通勤者や通学者などで溢れかえっている駅も冬休みとなると早朝はほとんど人はいない。
しかし、今日に限ってやけに人が多くにぎやかになっていた。
そして、そんなことも知らずに二人の少年が転げ込んできた。
「何番線にのればいいんだ?」
正行がポケットから走ったせいかグシャグシャになった切符を取り出す。
「3番線だ!!」
ポケットに切符をしまうとする正行を無視しながらまるで国体に選ばれた陸上選手のような速さで憲正が正行を引きずりながら階段を駆け上がる。
しかし、懸命な努力にもかかわらず発車を知らせるベルが二人をあざ笑うかのように大きく鳴り響く。
「それっ!!」憲正が正行を列車内に放り込むと彼も飛び込んだまるで今度はオリンピック選手のように。
「ま・・間に合った・・・」憲正が体を起こし仰向けになりながら言った。
「お前の速さじゃないと間に合わなかったな」引きずられただけでそれほど疲れていない正行が憲正を起こす。
「だいじょうか?」息を調えながら憲正が言った。
「階段のときも引きずってたから」
「まぁ〜だいじょうぶだよ」激痛の背中を軽くさすりながら正行が憲正の分の荷物も持つ。
「しかし、今日はやけに人が多くないか?」
確かに憲正の意見は正しかった。見るからに席は空いておらず、しかもほとんどが制服を着た女子高生であった。
「修学旅行かな?」正行が違う車両に移ろうと反対を向いたときだった。
「ねぇねぇ〜僕ちょっとこっち向いてくれるかな?」後ろから女の子の声がする。
まるでロボットのように言われた通りに体が反応する。
「きゃ〜カワイイ!!」
一瞬にして二人の視界は暗い霧に入ったかのように奪われた。
「な・・なんですか!!」
正行が何とか霧を振り払い、憲正を助け出す。
この学校に来てから男子校のため女性と会うことなどまったくなかった。
しかも抱きつかれるとなると・・・。
「大丈夫か?」憲正の顔を覗く。
「あぁ、らいじょうぶ」息苦しかったのか、それともにやけているのかものすごく複雑な表情で答える。
「その顔なら、レオナルド・ダ・ビンチも喜んで書いてくれるよ」
今度は憲正を引きずりながらその抱きついてきた女の子たちに向かって言った。
「あなたたちは何者ですか?」
「私たちは聖シルス学院の生徒です」
委員長と思われるすらっとした体格の人が奥から人ごみを掻き分けて出てくる。
「すいませんでした、わが校の生徒が大変申し訳ないことを」
出てきた人がものすごく美人な事に驚きつつ正行はその場から立ち去った。



〜新東京駅・駅前広場〜
人でにぎわう駅前広場に二人の少年があまりの人の多さに驚きながら案内板にもたれかかった。
「あの人きれいだったな〜」憲正がまるでどこかの童話のお姫様のように言う。
「ハイハイそれはよかったですね。」
正行が急いで憲正からあふれる妄想を消す。
「今は待ち合わせ場所に向かう途中だろ」
大勢の人が人間の川となって歩いている中、二人は流れに逆らいながらも歩き出した。
「魚の気持ちがわかるな」憲正がバッグを大事そうに抱えながら言った。
何とか川から出た魚たちは目的の場所に向かい始めた。
「白いワゴン車が目印だ」
二人はあたりを軽く見渡した。
「あれだ!!」憲正が白いワゴン車を指しながら走り出す。
まるで、お目当ての虫を見つけた虫取り少年だなと正行は思いながら、荷物を抱えなおしながら虫取り少年の後を追いかけた。


白いワゴン車に近づくと一人の青年が慌てて飛び降りた。
「もう着いていたの?後一本遅いと思っていたのに・・ごめん」
自分たちより年上の人がなぜか自分たちよりひ弱そうに見える。
「いいや、こちらもお伝えしなくて・・・申し訳ありません」
二人がなぜかつられて謝る。他人から見ればどこかの漫才を見ているかのようだ。
「じゃ、これに乗って」
白いワゴン車は二人を乗せて、彼らの運命を乗せて走らせた。


〜白いワゴン車〜
「君たち魔法について知っている?」
いきなり場違いな質問を食らったのは車に乗ってから5分後のことだった。
「魔法のこと?」
憲正が後部座席から”そんなのそこらの看板に張ったあるじゃないか!!”とでも言いたそうな顔で言った。
確かに”魔法”は正行も知っていた。「どこかの研究チームが”魔法”を発見した」という見出しで何回も新聞やテレビで見ていた。
しかし、”魔法”が存在するってことだけが伝わっただけでそれがどのような構造なのか、誰が保有しているのかなどの詳細は知らなかった。
「それがどういう関係があるんですか?」
「知っているならその次だ」
青年は見事なハンドルさばきを見せつけながらカーブを曲がる。
「この子達に見覚えがあるよね」
彼の内ポケットから現れたのは、二枚の別々の少女が写った写真だった。
「知らないとは言わせないぞ」
車を道端に止まらせ、楽しそうに青年が振り返る。
「なんだって、君たちの嬉し恥ずかしの初恋相手なんだから」
二つの完熟トマトはうつむく。
「そんなに恥ずかしがるな。俺にだって初恋の人がいたんだから」
正行が少し切なそうに、懐かしそうに小さく言った。
「けど、僕ら引っ越して・・・・」
「今から彼女たちの学校に転校するって言ったら?」
”えっ!!”二人とも上ずった声が暖房の効いた車内に広がる。
「君たちは今から学校に着くまでにちょっとした問題を解いてもらうよ。キーワードは”魔法””彼女”そして”学校”」


道行く人を眺めながら、正行は彼女との淡い初恋を思い出していた。
まだ中学一年のときだった。まだ自分は恋愛など訳わからなかったはずだった。それなのに僕はあの日・・・。
その日僕は部活のため持ってきたサッカーボールを教室に忘れたことに気がつき、下駄箱から構内靴を取り出そうとしたときだった。
「正行〜。これ忘れてたわよ」
下駄箱の陰からひょこっと現れたのは幼馴染の和泉このかだった。
「おっ!!気が利くな、サンキュー!」
いつも彼女は自分に対してとても気が利いていた。友達は”おまえに気があんじゃないの?”といつも自分をちゃかしていたっけ・・・。
そんなことを思い出していたとき彼女のうつむきながらいった。
「正行ってさ、結構いい奴だよね」
とても普通じゃ聞こえない言葉があの時は聞こえた。
「いまさら気がついたのか?」
冗談を飛ばすと、彼女はちょっと怒り気味に言った。あれが全てのきっかけだった。
「気付いてたわよ!!だって・・・私・・正行のこと・・好きなんだもん」


「おい!!こら!!起きろ!!」
三拍子が正行を起こし、彼の目の前には真剣に考えている憲正の顔があった。
「何寝てるんだ!!」
”俺の意見を聞け”とでも言いたそうな顔で正行をちゃんとした姿勢に矯正する。
「俺の意見では、というか完璧な答えだと推測しているんだけど、たぶん”彼女たちは魔女で今からその学校に行き”っというところまではいっているんだけどお前の意見は?」
さらに複雑な顔つきで憲正が取調べ中のベテラン刑事のように正行に迫る。
「よくわからないけど、あと一つヒントが残っていると思う」
「やっぱりか、俺もそう思ったんだよ・・・」
また先ほど同様に彼は複雑な顔つきで悩み始める。
おまえは、”悩む人”か!!と心で彼に叫ぶとワゴン車は立派な城壁の下をくぐり、洋風の商店街に入った。
「すごい・・」
正行の口から自然に言葉がこぼれる。
そんな洋風の商店街を抜け、また先ほどよりは幾分小さいがこれもまたスゴイ城壁の下をくぐった。
「おい、松下!!」
一台の同じ車の対向車がこっちに向かって呼びかける。
「どうした?」
車が対向車と横幅すれすれで止まり、それにいきを詰まらせそうになっていた正行が大きなため息をついた。
「J−1で出没したらしい。であちらさんが救援を呼んだもので」
青年がうなずき、訳がわかっていない自分たちを紹介し始める。
「彼らが新規の隊員たちだ」
対向車の運転手は嬉しそうにうなずき言った。
「よろしく、俺は山口義武。一緒に守って行こうな」
握手を求められ、彼の手と握手をしながら憲正が言った。
「守るって?」
青年が横から介入して言った。これぞとばかりに。
「それが、隠された最後のヒントだ!!」


「それより、あなたはいったい?」
正行はふと彼の名前を聞いていないことに気がつき、何でいまさらと思いつつも聞いた。
「俺は高3松下弘樹って言うんだ。よろしく」
「そして、何かの隊員?」
憲正が複雑な顔つきで尋ねる。
「そうだよ、それよりさっきの推理の答えを聞かしてもらってもいいかな?」
正行は昔のことを思い出すことに夢中になっていて憲正に聞かれてから、最後のひとつのヒントのことをまるきっし忘れていた。
”やばい!”という表情で最後の切り札憲正様をうかがう。
「聖シリス学園は自律神経系に特殊な一本の神経が多い成長期の少女を集めたものであり、彼女らは”魔法”という非現実的な能力を保有している。そして君たちが招集されたPROTECTER(通称PT)という機構は国連直下の秘密機構であり、”魔法”保有者と親しい関係がある、また銃の発砲経験がある少年によって構成された機構でもある。彼らは保有者につきまとう危険から保有者を守り、排除せねばならない。現時点では突如召喚される”鬼”というものが彼女らを狙っていることが判明しており、召喚者の逮捕が行われている」
切り札憲正が言ったことは、推理の答えだけではなくこの後に行われるはず説明会の分も一気にしゃべった。
「このパンフにかいていたからね」
憲正が椅子の下からパンフレットを取り出し、ベテラン刑事のごとく犯人に王手をかけるようにいった。
「なぜ、僕らは今からその現場に向かわないのかね?」
彼は鬼とか言う奴と戦いたいんだなと正行は思った。
「凄いな、ここまで来た奴は初めてだよ」
弘樹はパンフレットを彼から奪い取ると、急いで車をUターンさせた。
「ならご希望にこたえて、現場に行くよ!!」
”待ってくれ!!”と正行は叫んだが彼らは耳を貸さなかった。
俺の人生はどうなるんだよ。正行は天井を仰ぎ、完全にあきらめようとした。
これはびっくりカメラということで頼む!!
心で彼は必死に0%に近い願いを神にかけた。

〜現場・行く途中〜
「おい、憲正。その後ろからアタッシュケースを取って着替えておけよ」
弘樹がレーシングカーなみのスピードを出しながら言った。
「警察に捕まらないんですか?」
正行は現場に向かうと決め手からこの車の異常なスピードに怖さまでもを感じていた。
「ちゃんと、サイレンを鳴らしているよ」弘樹が振り返る。
”前を見て下さい”と正行はやけをできるだけ抑えようとしつつも怒鳴る。
「どう?」
横で軽快な音を立てながら着替えていた憲正が、ポーズを決める。
彼はどうみても警察の特殊隊員にしか見えないと思いつつ、ぎこちなく”似合ってるよ”と言った。
「ほれ、お前も着ろ」
自分に差し出された戦闘服が自分を引き込むかのように笑っている。
観念しよう、彼はそう思いPTとしての人生を認めた。
もう俺は昔の俺ではなくなるのかもしれない。その皮肉な言葉が心に突き刺さるのを感じながら。


〜現場・J-1新東京駅駅前広場〜
肩に白い鷲と黒字にPTと書かれた肩章を着けた1人の兵士と2人も新米が転がり込んできた。目指すは自分たちと同じ肩章をつけた目の前の集団。
「遅れてごめん、で状況は?」
弘樹の口調が先ほどと異なり、少し厳しくなる。
「この駅に立てこもっています。侵入口は地下にあると思うけど・・・」
歴戦の部下が言葉を詰まらせる。
「どうした?」
俯きながら苦々しく語る。
「先ほど第4の奴らが突っ込んで手ひどくやられています」
「そうか・・・」
弘樹が目を染めながら遠くを見つめる。
「4人ほど戦闘不能に・・・」
彼を見つめながら正行は、まるで弘樹が急にふけたのではないかと感じた。
「よし、俺たちは上と横から侵入するぞ。正面からは第4に任そうじゃないか」
士気を取り戻した歴戦の兵士たちは頷き、装備を手に作戦を綿密に合わせていった。
「俺たちの来る場所じゃないよな?」
正行が憲正に賛同を求めるように聞く。
しかし彼は、正行の隣には居らず同年代の同じ服装の少年たちとたわむれていた。
「あいつは佐野正行って言うんだ」
”よろしく”と正行は挨拶をする。
「俺はシュナイダー・F・フリードリッヒ。君の班の班長をやらせてもらっているよ」
長身でルックスもよい金髪の外人は流暢な日本語で自己紹介をした。
正行はその流暢過ぎる日本語に感動していたところを憲正に横から肘鉄を食らった。
「次のやつが待っているよ!!」
”いいよ”といいながら、シャイそうなこちらも長身でルックスがよい少年が
きれいな日本語で言った。
「僕は石井治樹。よろしく」
そして最後は、一番精神年齢が低そうな、見るからにも子供の少年がはしゃぎながら言った。
「俺、林 勇って言うんだ。よろしく!!」
勇に戸惑いつつも彼はぎこちなく笑った。
「彼らが俺らの戦友さ」
まるで空から降ってくるような透き通る声で憲正が優しく言った言葉が、正行の心に響いた。


自分たちに武器となるものが配られた作戦決行の30分前だった。
「ヘルメットは2つ予備が合ったんだけど、銃は一人分しかないんだよ」
シュナイダーが申し訳なさそうに装備を二人に配る。
彼の手には不気味に黒く光る鉄の塊があり、それが銃とわかるには正行には時間がいった。
「銃じゃないか?これ法律に引っかからないの?」
憲正が不安そうに、かつなぜか嬉しそうに言った。
そんな憲正をみて正行は、とある心に思いついたことを言う。
「おまえ、銃撃ったことあるの?」
”うん”と彼はうなずき、大きな塊のほうを手にとって、”俺は決めたぞ”といいたそうな顔で正行を見る。
「お前は撃ったことないんだろ?じゃ、そのハンドガンで腕を磨いとけ。まだお前にはサブマシンガンは早いよ」
正行の手に乗った”小さな塊”は冷たく静かに自分を見つめる。
俺はこいつで何かを撃つのか?そんなことができるのか?幾つもの不安が正行の心を突き刺す。
しかし”小さな塊”は、これがお前が決めた道だろ?と静かに語る。
「わかったよ」
正行は静かにつぶやいた。しかし、それは”小さな塊”ではなく”戦友”に伝わった。
「よし、なら撃ち方を教えよう。ここの穴にマガジン(弾倉)を差し込んだら、銃身を引いて、この安全装置という奴を親指で上げるとOK。わかった?」
いきなりそんなこと言われましても・・・。正行は今言われたことを実行する。しかし手は、震え始める。まるで嫌々をする幼い子のように。
「大丈夫だよ、君ならできる」
シュナイダーの手が、震える正行の手を静かに押さえる。
「怖がらなくてもいい。・・・そう・・・ゆっくり・・出来たじゃないか?」
手取り教わった事によって、いや、自分を慰めたことによって正行はやっと我に戻ることが出来た。
「敵に向かって引き金を思いっきり引くな。静かにすばやく引け。」
ヘルメットを軽くたたきながら、笑顔でシュナイダーが正行に言った。
「もう大丈夫だよ」
静かに空を見つめる。
冬の空はなんてきれいなんだ。何もない空を見つめながら・・・。


〜突入決行・残り数分〜
白い鷲にPTと書かれた肩章の若き兵士達は横から侵入するために窓際まで迫っていた。テレビキャスターやカメラマンといった野次馬たちがこちらの行動を伺っている。
「ゴーグルを取るなよ!!」
弘樹が振り返って注意する。
彼は緊張しているのだろうか?正行は弘樹を改めて見つめる。彼に目には動揺
は無いのだろうか?
「行くぞ!!」
正面から突入した第4と呼ばれていた人たちが駅に駆け込むのと同時に窓を突き破って弘樹が侵入した。
正行も前のシュナイダーを追って入ろうとしたそのときだった。
シュナイダーが進入した瞬間、目の前には白い閃光と激しい音が聞こえ、ものすごい風が吹き荒れた。
風によって進入できなかった正行だけが取り残される。
怖い、嫌だ、助けて。心でいくら叫んでも、止まれと脳がいくら命令しても、正行の体は爆風によって出来た穴から顔を少しのぞかせた。そこに何があるのかも知らずに。

2004/07/27(Tue)17:23:43 公開 / sena
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