『忍と明るい陽 No.0』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:髪の間に間に
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私はこれから如何すれば良いのだろう。
命令を、下さい。
忍と明るい陽
No.0 少女
広い和室、宴会するにも広いかもしれない和室に、二人の人間が座っていた。一人は男、恐らく70代程だろう外見には貫禄というものが浮かんでいる。顔には左右に広がる髭と細い顎から伸びる白い髭、頭髪は未だに薄くならず髭と同じように綺麗に白くなっていて後ろで纏めて束ねてあり、目付きは鋭く迫力がある。スマートな感じの老人、そういった印象を受けるだろう。
もう一人は女、老人とは対照に若く、恐らく10代中盤程だろう。しかし、その少女の纏う雰囲気は明らかにその年頃の少女のそれとは違い過ぎる。妙に老成しているのだ。
二人とも黒の和服を着ていてさながら葬式のような格好だ。
少女が先に口を開いた。
「して、今回はどのような御用件で」
よく響く高過ぎもせず又低すぎもしない、女性的な声。
それに対し、老人は一つ重々しく息を吐き出し、言った。
「お前の仕事はもう終わりだ」
重々しい声と言葉に少女の呼吸は一瞬停止した。彼女を知っている者は少なからず驚くだろう。普段冷徹で的確な判断を瞬時に判断を下す、それが彼女の持ち味であり強みなのだ。
ようやくその思考が回復してきたようで、彼女は問いを発する。
「終わり、と申しますと一体?」
全く何の事か解らない、確かにその声はそう訴えていた。
「そのままの意味だ。お前にやる事はない。代々続いた仕事は終わった。この世界は終わりだ」
老人は老いを感じぬ口調で次々と言葉を吐き出していく。そして、最後に一言。
「お前は、自由だ」
少女は何が何だか解らないという状態のようで、口を少し開いた状態で停止してしまっている。話し出そうとした所で機能が停止してしまったように固まっているのだ。
それが再び動き出す。
「それは、一体どのようにすれば良いのでしょうか?」
少女の発した言葉は質問ではなく、狼狽しているに近い言い方だった。戸惑っていると言っても良い。
予想外だろうその言葉に、老人は困ったように笑った。
少女の名前は霧隠影基(キリガクレカゲモト)、忍者だ。忍者の名家霧隠の生き残り、現代残った忍者の一人だ。
彼女は今まで影として、血を流し生きてきた。そして今日、それは終わったのだ。
『お前は、自由だ』
この言葉は大きな意味を持つ。一つはその言葉のまま、影基はもう仕事をしなくて良いという事。
もう一つは、忍者は終わりだ、という宣言の意味。忍者は、終わり、それは大きな意味を持つ。今現在日本に残る忍者は700人程、一昔前戦時では1500人程残っていたらしいが、第二次世界大戦で人数も大分減り、その戦争の経験により子孫に忍としての教育をしないという忍者も多くなった。
しかし、忍者は今でも世界中で暗躍している。仕事内容は国と国の友好関係を作り上げるスパイのような仕事と、直接的に働くものを言うと巨大グループの抗争、はたまた人探しまで、大きな仕事から小さな仕事まで実に様々な仕事を請け負う。
『お前は、自由だ』
その一言にはこの『忍者業界』の霧隠とあの老人の持つ服部家、その二つの名家が業界から消え去る、という事だ。霧隠家で確認されている忍者の数は23人と何の問題も無いのだが、何しろ名が大きく有名であるため仕事はそこに流れる。そして服部家、これが問題だ。服部家が有する忍者の総数は300人を超える。現存している忍者の約半数もが業界から消え去るという事なのだ。
今まで霧隠家と服部家は一心同体として行動をしてきたのだ。それが霧隠の遺産、影基を忍者から退かせるというのなら、服部家も忍者業界から退くという事になる。忍者業界は昔ながら義理堅い世の中となっているので、それは間違えない。霧隠を仕事から退かせて服部が退かないなどという事はありえないのだ。
忍者の終わり、それは服部家が退く事から始まっていくのだろう。
その後、老人はこれからどうやって生活していくか、誰かの家にでも預けようかとのんびりと話をした後少女を下がらせた。
一つ欠伸を小さくすると、顔を斜め上を傾け、天井に向けて言い放った。
「して、お前は生かしてはおけぬ」
言ったその顔は、先程少女と話していた表情とは違う。例えるならば、鬼。眉間に皺が集まり、只一点を見つめる。
「数日前からちょこまかと鼠がいるなと思っていたのだが、どうやって嗅ぎつけたのだか今日の事を」
その眼光は鷹。
恐ろしく光る。
鈍い光ではない、鋭い眼光。
これが、老人というのか!?
「くぅあぁああ!」
我慢しきれずに『私』は叫びながら天井裏から飛び出し、老人の6メートル前に着地した。体に密着する黒い忍び装束の感覚、この忍び装束は機能性だけではなく精神を引き締める効果があるのだ。私は一気に冷静になり、老人へと刃渡り15cm、柄の長さ10cm、投擲にも使うことのできる小刀、名称『飛翼』を構え足に力を入れて突進する。
攻撃の間合いまで、飛翼が老人へと突き刺さるまで少し。向こうは一切動かない。
もう少し。
あと少し。
何か、皮が裂けるような嫌な音がした。しかし、私は老人に何もしていない。いや、できなかったのだ。この音は・・・?
途端に右脇腹を焼けるような痛みが襲った。
「お前、ふざけているのか? お前、一人だけなのか? お前、本気なのか? お前、馬鹿なのか?」
続けて言われる言葉。私はようやく状況を認識した。私は、脇腹を握られて投げられたのだ。和室の端へと吹き飛ばされたて、老人が何もしなかったかのように10メートル程遠くに佇んでいた。
有り得ない、脇腹を掴んで投げる。どれだけの握力がいるのだ? そして私はどうやって間合いを詰められたのだ?
「お前のような下っ端に誰が負けるか。忍者も落ちたものだな。私も甘く見られたものだな」
老人が徐々に徐々に私に近づいてくる。一歩、二歩、あれ?
気付けば、起き上がり腰を低く落とした体勢の私の目の前に、掌が存在していた。
私は、顔の燃えるような痛みに、意識を失った。
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2004/07/19(Mon)21:33:27 公開 /
髪の間に間に
■この作品の著作権は
髪の間に間にさん
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■作者からのメッセージ
再び投稿しました更新が滞ってる髪間にです。
忍者の少女が突然に自由にされてしまった。
これからきちんと生活をしていけるのか?
現代社会を理解しているか?
他の人間と共に暮らしていく話です。
えぇと、プロローグでは全く分からないかもしれませぬが、『学園物』です。
今後色々と展開していきます。前作はあまりにも書き急いだ感が漂っていたので今回はのんびりと書きます。
それゆえ更新が・・・・・・
No.0
ここは混乱して終わらせました。
どうなったかまるで分からない、それが伝えたいw
次回からは落ち着きます。
※誤字訂正の為更新
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