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『Dark of Wing ......0〜3』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:虚空
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―story:0......始まり
暗闇の中を駆けて行く少女の姿があった。
「はぁはぁ………クソッ!」
少女を追いかける集団があった。
それは天使か、または悪魔の姿のように神々しく禍々しいものだった。
少女の向かう先には光があった。暗闇をかき消すような光がそこにある。
「はぁはぁ……やっとか」
少女は羽ばたいた。漆黒の翼を広げた。
闇に混じった羽は、少女を浮び上らせている様な姿だった。
「まて!堕天使!!」
追っ手の集団から怒鳴る声が聞えたが、気に留めている余裕はなかった。
少女は光のもとへたどり着いた。少女の体が光で包まれていく。
まるで光は少女を嫌がっているようでもあり、優しく受け入れるようにも見えた。
少女は長い髪を包帯で縛っていた。まるで頭に尻尾があるみたいだ。
瞳はこげ茶色に近い色、髪と羽の色は光を浴びても黒いままだった。
光はどんどん強くなっていく、少女が振り返った時はもう追っ手は来なかった。
光に解けて見えなくなっても集団は光を見つめていた。
集団の中に一人だけ違う服を着た男がいた。
その瞳は恐ろしく、狂っているようで、見送るような瞳でもあった。
―story:1......降臨
いつものように葵 桜(あおい さくら)はくだらない日々を送っていた。
小学校、中学校では成績優秀、テストでは90点以下はありえなかった。
高校は極一般的な普通の高校へ通っていた。
「葵はいいよなー、頭よくて」
と言う台詞は入学してから何度も聞いた。
「葵!聞いてるのか!?」
桜は小声で「こんな事を聞いて何になる?」呟いた。
先生は、”大人の威厳”を保とうと必死なのが桜には分かる、
だが桜は先生の思いどうりいくほど良い子ではない
次の瞬間先生は唖然としていた。
桜は天才だ。そういう事はとっくに分かっていた。
桜は大学の知識も身につけているからこんな問題は簡単だ。
下校途中、桜は一人で下校した。いつもの事だ。
いつも一人、昔から一人だ。父親は事故で他界。
母親は病気で10年以上入院している。
「………ただいま」
桜の家はアパートだ。そんなに広くない、むしろ狭い。
机があって、その上にペンたてとパソコンが置いてある。
机の横に小さな棚があり、そこにMDコンポと本立てがある。
大きく分けて、棚、机、ベット、冷蔵庫しかない。
高校生の男の子の部屋にしてはものが無さ過ぎる。
「退屈だ。何か面白いことは無いものか………」
桜は気付いていない。空間が裂けていく事を………
バチッと音がして電気が消えた。
「停電?」
桜は家を出た。ブレーカーを確認したが以上は無い。
しょうがなく家に入った、電気は既についていた。
が、電気がついていることより”部屋の変化”に驚いた。
何者かがこの部屋に居る。いつの間にか忍び込まれていた。
体全体が黒いマントで覆われていて男か女か分からない。
「何だよコレ…………?」
言い終わってから1秒ほどたってモゾッと動いた。
”何か”が起きあがった。黒いマントが取れて顔があらわになった。
少女だった。桜より年齢は少し下。
可愛らしい顔をしていて、髪の毛の色は純粋な黒。
少女は長い髪を包帯で縛っていた。
まるで頭に尻尾があるみたい。瞳はこげ茶色に近い色をしている。
「…………誰だ、お前?ここは……何所だ?」
「………はぁ?お、お前こそ誰だよ、何所から入った?」
二人とも訳が分からなかった。
黒いマントから別も物が出てきた。桜は自分の目を疑った。
少女には黒い翼が生えていた。まるで堕天使のような………
「な、なんじゃそりゃ?」
普通の人間なら理解できないだろう、
いきなり人の部屋に居て(しかも入った痕跡が無い)、翼まで生えている。
「な………」
少女はためらって言うのをやめた。
「な………ってなに」
好奇心に負け聞いた。少女は気付いて大きく息を吸い、
「名前を教えろと言おうとしただけだ!」
大音量で声を張り上げた。近所迷惑と言う言葉を知っていますか?と
尋ねたくなるほど大きかった。
「て、テメェいきなり大声出すなよ………」
桜は耳をふさいで声を出した。さっきの声と比べるとかなり小さい。
「名を言え。あと私の声はお前以外に聞えないから安心しろ」
お前以外に聞えない――その言葉にひっかかった。
「なんで俺にだけ………?」
他にも疑問はあるがまずそれを先に聞きたかった。
「名前先に言ってくれたら答えてあげる」
さっきの大人びた口調とは全く違い、子供で駄々っ子のような口調だった。
桜は黙って「葵 桜、桜の方が名前。葵は名字」
少女は「ふ〜ん。あ、私はイヴ」と言い黙った。
数秒の静寂
「いや、ふ〜んってさっきの答えは?」
イヴは「あ、忘れてた」と言った想像どうり、
イヴは深呼吸よりも浅く、通常の呼吸より深く呼吸をした。
そして―イヴは語り始めた。
story:2......天の模造品〜クリーチャー〜
天空の楽園――エデン
かつて最初の人間が住んでいた。
アダムとイヴである。彼等は禁断の果実を食べ、エデンを追放された。
と、言うのが人間に伝わっている話だが実は違うらしい(※イヴ談)
”命の樹(みことのき)”と言う物があり、そこからアダムは生まれたという。
アダムには、昔大罪を犯した天使の魂が半分宿っており夜な夜な魂が具現化され次々と人間に悪い知識をみにつけさせたという。
それに気付いた大天使が悪い知識をみにつけた人間をエデンから追放。
そしてイヴもまた追放された。
”天から追放されし者”は堕天使と呼ばれ、天使と酷似した翼を持つと言う。
桜がイヴにその罪を犯し者の名前を聞いたが、そこまでは知らなかった。
「で、天使に見つかって大群で追われたと?」
一通り話を聞いた桜は椅子に腰掛け聞いた。
「ん、まあそんなとこ」
数秒の静寂。桜が思い出したようにイヴへ尋ねた。
「んで、何で俺のところまで来たわけ?」
イヴは少し考え込んで「さぁ」と簡単に答えた。
「…………どうすんだ?これから」
「ん?ああ………とりあえず謝っとく、ゴメン」
桜には誤られた意味が分からなかった。
桜はふと疑問に思う箇所がイヴにはあった。
「………翼が…無い」
さっきまであった黒い夜空にも似た翼が無かった。
「へへっ、驚いた?」
イヴは無邪気な笑顔を作って見せた。
その後桜は色々とイヴに自慢させられた。
簡単に言えば【翼が無い=人間】と言うことらしい………
「ふぅー結構疲れた」
一通り自慢話を聞き終えた桜は外に出ようとした。
「ん、どこ行くの?」
桜は「コンビニ」と軽く答えて外に出た。
「私も行く」
桜はイヴのほうを見たがイヴの格好は明らかにおかしい。
「ちょっと中に入れ、その格好じゃ俺が嫌だ」
イヴは自分の格好を見て首をかしげた。
「変かな〜?」
数分後。
白い長袖のシャツに黒い半袖の上着と黒い長ズボンを着用して家からでてきた。
「イェーイ!似合う〜?」
「知るか」
そっけなく答えた。そっけないがコレが桜流の対応である。
「ぶーぶー意地悪」
コンビニへはすぐつく、歩いて5〜6分ていどだ。
イヴに悪寒が走った。何かを感じ取ったように桜は見えた。
「や…………やばい」
イブが呟いた。なにがやばいのか、平和な世界で育った桜には意味不明だった。
「………?どうした」
桜が聞いた。そんな大それた答えは想像もしてなかった。
「天の模造品………天使の化け物」
桜はやな予感で一杯だった。その言葉で確信を持てた様な気がした。
ドシドシとまるで像が歩いているような音が聞えてきた。音は結構デカイ。
気付けば他の住人は消えていた。イヴと桜と怪物しかこの世界にいなかった。
桜は怪物の姿に恐怖を覚えた。
その姿は獣のようで人のようだった。
いや、人は間違いかもしれない。
強いて言うならば顔はライオン、体は半分人、半分獣。しかもかなりデカイ。
恐らく2メートルはある、もしくはそれ以上。
ちゃんと爪もあるし、二足歩行だ。
見えているのは桜とイヴだけ、恐怖に負けて足が動かない。
「こ、こわい」
イブが呟いた。相当怖いのだろう、顔がさっきの無邪気な笑顔の面影も無い。
「ふ、ふざけんなよ…………ここでし、死んでたまるか!」
桜の恐怖は生への執着心により消えていた。だが戦って勝つ見込みは無い。
逃げるしか出来ない。模造品はまだ10メートル以上は離れている。
今なら逃げられる、いや、今しかない。
「くっ、逃げるぞ!イヴ!!」
イヴははっとして桜の方に向いた。我に返ったとはこういう事だろうか。
それからただひたすら走るのみ。戦おうなんて考えたらいくつ命があってもたんないだろう。
「クソッふざけんな!」
桜とイヴはひたすら走っていた。模造品も走っている。
「ガァァァァ!」
模造品との差は確実に狭まっていく。模造品は太い腕を振りかざした。
そして、模造品の腕は確実に桜を狙って振り下ろした。
太い腕の先にある鋭い爪は桜のわき腹をエグリ取った。
大量の血がイヴと模造品、桜を紅に染め、苦痛に歪んだ叫びが響いた。
「ぎ……が、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
桜は倒れこんだ。模造品の視線が完全に桜に固定された。
「ガァァァ」
模造品は満足げな声を上げる。
イヴの表情が恐怖か、それとも憎しみの表情に変わる。
瞳孔が縮まり猫のようになる。翼が全開まで広げられ、模造品に向かって突進した。
―まるで戦いを求める狼のように
一瞬にして模造品との間合いを詰めた。イヴの爪は獣のように尖っていた。
無言の攻撃、模造品の内臓が見えるほどエグった。
模造品が大降りでイヴを殴りかかったがその腕は吹っ飛んだ。
イブの右手に大量の血が付着していた。イヴは右手の血を舐めると微笑んでみせた。
その微笑みは魂を凍てつかせるほど狂気に満ちて模造品に絶対的な恐怖をうえつけた。
「いいぞ、その眼だ。もっと怯えろ私を楽しませて」
無表情に切り替えて模造品に歩み寄った。模造品は一歩後退りそれ以上動かない、動けない。
イヴは両手で模造品の頬に優しく撫でた。そして弾けた。
桜の傷はとっくに治っていた。イヴが憤怒した時に……。
桜が気が付いたときにはイヴは人間の姿に戻り、気絶していた。
ただ何が起こったのか分からない桜はイヴをおぶさって帰った。
story:3......苺
眼が覚めると低い天井と明かりの灯った電球がある。
イヴが起き上がると私服に着替えた桜と食べ物類があった。
「お、やっとお目覚めか?」
イヴはついさっきの出来事を思い出した、が一部分だけ記憶が無い。
だがそんな事よりもイヴは腹が減っていた。
「お腹へった」
イヴはねっころがりながら言った。言った瞬間何か飛んできた。
袋詰めにされたパン―苺ジャムパンが飛んできた。
「さっき買ってきた」
それだけ言うと自分のパンを食べ始めた。
「なにこれ? 苺に砂糖混ぜて加熱してパンの中に入れた物は?」
イヴが色々言っていると「要らないならよこせ」と桜が言ったが、
「あげないもん、食べるもん」
と、駄々っ子のように反論した。
イヴがビリビリと袋を破り、中のパンを5センチほど取り出した。
しばしの間イヴと苺ジャムパンの睨めっこが続いて、パクッと一口食べた。
桜はここまで苺ジャムパンと真剣に睨めっこするイヴに、半ば飽きれた表情でイヴを見ていた。
イヴをチラッと見ると目元が潤っていた。
「なっ、な? あ?」
桜には意味が解らない「ど、どした?」と桜が聞くと
「おいしぃよぉ」と、くだらない答えが返ってきた。
苺ジャムパンにここまで感動するヤツは居ないだろう、と桜はいつの間にか苦笑していた。
こんなに楽しくなるのは何年ぶりだろうか、桜が記憶をたどるといつも決まって母の顔が浮かぶ。
「またか」
桜は呟いた、けして声と言えるほどの音量ではない。
フーとため息をついて牛乳を一気飲みした。
気付けばイヴはパンを食べ終わって寝ていた。しかも桜のベットで。
しょうがなく桜は床で寝た。
翌日
桜は学生服に着替えていた。
ベットにはイヴが寝ている事からして昨日のことは夢ではないらしい。
「んあ、朝?」
イヴが起きた。
「何してんの?」
イヴがベットに座りながら聞いた。
「学校行くんだよ、あんま行く意味ねぇけどな」
時計の針はまだ7時15分。登校時間にしては早すぎる。
「学校? んー私も行く」
「はぁ?」
イヴが学校に行く意味は全くもって無い。むしろ行ってはいけない気がする。
「駄目な理由あるの?」
「行く理由があんのか?」
「……無いよ」
「……ねぇよ」
結局は人間に見えない、つまり堕天使の状態でならついて来ても良いという事になった。
教室に入ると独特の埃の臭いがした。
「暑いな」
そういって桜は窓を開けた。
「だーれも居ないね」
イヴが窓に腰掛けながら言った。
「まだ早いからな」
桜が答えてから数秒が経ち、廊下を歩く音が聞えてきた。
その音はどんどん大きくなり桜たちの教室に入って来た。
「流石に早いな」
教室に入って来た青年が言った。
「誰? この人」
イヴが聞いて
「天乃 空徒(あまの あきと)」
桜はは小声で答えた。空徒に聞えないように。
空徒はノートなどをバックから取り出して、机に入れている。
空徒は桜の方を向き「そこのお嬢さんの名前は?」と聞いてきた。
「ん? ああ、コイツはイヴ」
普通に自己紹介した後にイヴが驚きの声をあげた。
「えぇー!? なんで? なんで見えるの?」
イヴはしばらく挙動不審に落ちいった。
「何も驚く事無いだろ」
空徒は普通に言った。
「何で見えるの? 空徒って一体何者?」
イヴはやや落ち着いて聞いた。
「別に何者でも無いよ。ただアンタと似た様なのはウチにも居るよ」
「居るって堕天使がか?」
桜が聞いた。似ていると言うからには多分堕天使だろう
「ああ、本人もそう言ってたし」
イヴが入り込んできて「その人の名前は?」と聞いた。
「本人が名は誰にも明かすなって言ってた。訳ありっぽかったな」
他の人が入ってきたので「この話はいったん終了だ」と言って空徒は寝始めた。
放課後
桜は空徒を捕まえて「今日も貰いに行くぞ」と言った。
空徒は「ああ」と答えて、帰っていった。
「なになに? 何貰うの? お金?」
「俺はそこいらの不良じゃない」
会話をしているうちに家に着いた。いつ見てもボロボロだ。
桜は着替えてまた外に出た。イヴも羽が無くなっている。
空徒の家はパン屋だ。イヴも納得がいった。
「パン貰うんだ」と言い瞳を輝かせている
「はいはい。苺ジャムパンだろ?」
桜が聞いてイヴは何度も頷いた。
少し時間が経って、桜は「何で見えたんだ? 何か理由とか知んないのか?」とイヴに尋ねた。
「私だって知らないよ、あんま詳しく聞かされてないし」
桜は疑問に思うところが幾つかあったがまたの機会にしようと聞くのをやめた。
空徒の部屋から桜と同い年ぐらいの少女がイヴの事を見つめていた。
それは不安と喜び、悲しみまでもが入り交ざった様な表情だった。
その眼差しが何を意味するかは今の愚者たる人間には気付かないだろう…………
story:4......扉の先の真実
イヴは袋を抱えて満面の笑みだった。
「あのおじさん優しいね」
イヴは空徒の父の事を言っていた。
「まぁな、ガキの頃からの知り合いだし」
家に着いたときにはまだ明るかった。
イヴは家に入るなり「さ、食うぞ」と袋の中に手を入れたがパンを取り出さず手を引いた。
桜とイヴは世界の異変に気付いた。
今まで騒いでいた子供の声、セミの泣き声、車のエンジン音。
あらゆる音が消えていた。
「……おい、またか?」
「……そうみたい」
イヴは苦笑した。桜たちはいったん家を出た。
そこには怪物は居なく、人間が一人剣を持って近づいて来ている。
「よう」
最初に口を開いたのは桜だった。
「よう、人間と堕天使」
剣を持った人間が親しく話しかけてきた。
「あんたも怪物の仲間か?」
「ああ、仲間さ。俺もそこの堕天使が殺した怪物とやらも同じ、”模造品”さ」
模造品は一通り間合を詰めて停止した。
「だが、俺等には立派な名前がある。”シン”ってな!」
シンが剣を構えて突進してきて、桜はかろうじて避けた。
桜はその辺に合った鉄パイプを手に取り構えた。
桜は過去退屈しのぎで剣道などやっていた。
「そんな玩具で俺に勝てると思ったか!」
シンは大降りで桜を横になぎ払おうとした。
ガンッと音が鳴って桜は鉄パイプで剣を止めた。
「その程度の腕で俺に勝てると思ったか?」
桜はシンの腹部を思いっきり蹴った。前のめりになったシンの背中を鉄パイプで強打した。
シンは地に膝をついた。
「ガッ!」
苦しんでいるシンをまた強打する。
「ガッ、グァッ!」
シンは倒れ苦悶の表情を見せた。
「なんだ、前のに比べると弱いな」
桜が余裕の笑みを見せた時、右の胸部に熱を感じた。
桜の服は鮮やかな赤に染まっていく。
「桜!!」
イヴが叫ぶのと桜が倒れるのは同時だった。
あれから何時間経っただろうか、桜が眼を覚ました時には白い空間で立っていた。
「ようこそ、客人」
桜の後ろから聴いた事のある声がした。が、桜にはそれが誰か思い出せない。
桜が振り向いたがそこには扉と台座があった。台座には赤い球体が浮いている。
「……アンタは誰だ?」
桜は辺りを見回しながら言った。声の主を見つけるために。
「いくら探しても無駄、労力の消費は最小限にしときな」
桜は球体に近づいた。
「その玉には触れるなよ、一瞬で蒸発するぜ」
少し笑いの混じった声が聞えた。
「……一体ここは何処だ? その扉の向こうにアンタは居るのか?」
質問の数秒後に答えが返ってきた。その答えは現実味の無い答えだった。
「ここは……そうだなお前の頭ん中だ。そんで俺は扉の向こうに居る」
「は? 頭ん中だと、ふざけるな」
桜にはよく理解できなかった―最初のころは。
今自分の周りで何かが起きている、それは分かっていた。
空徒とその堕天使、先日の怪物、イヴの存在。
「アンタは全部知ってんのか?」
その一言に桜の希望がかかっていた。
「全部は知らない、全知全能の神さまじゃないからな」
「”は”、だと?」
桜は確信が持ててきた。
「後にある人物が教えてくれるよ、お前がここで考える事はそれじゃない」
桜に課せられる残酷な運命を左右する選択の時が来た。
球体が棒状の用に細く長くなった。そして桜の後ろに紺と紫が混ざった穴があった。
「今、ここに鍵と穴がある。お前はこの二つの内どっちかを選ばなきゃならない」
鍵とは棒のことを指しているのだろう、と桜は思った。
「この鍵は生へ帰ることができ、穴は死ぬ」
二つに一つ選べと言っているが答えは明白、死にたいはずがない。
「アンタ、俺が死にたいとかぬかしやがるのか?」
桜は微笑んだ。
「まぁ鍵のほうも将来的に死ぬかもしれないがな」
その一言で桜の表情は固まった。
「あ、言っておくがお前はもう死んでるからな」
また笑い混じりに声が聞えた。
桜に希望など無かった。
「生き返りたいか? なら鍵を握るんだな。お前に力と辛い過去と生をやるよ」
辛い過去? 桜には意味が分からなかった。幼いころの記憶は確かに無いが今とは関係ないと思っていた。
「なんでもいい、俺は生きたい!」
桜は鍵を握った。
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2004/08/02(Mon)00:43:05 公開 / 虚空
■この作品の著作権は虚空さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
今回は少々長くなったと思います(オモイマス?!
早く得点の入る作品を作るよう頑張ります!(言っちゃった。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。