『孤独の中の好敵手 序章〜第五章』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:水柳                

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序章

「くっ……」
 突然、胸を内側から突き刺されるような痛みを覚え、少年はよろめいた。周りの店はどこもしまっていて、人通りもない、そんな寂しい夜の街を月明かりが照らす。
 少年は黒いマントで全身を覆っている。十五,六歳くらいだろうか。唯一肌が見える顔は白く、弱弱しい顔つきで、赤い瞳は焦点が定まらず、虚ろだった。
「またか……!」
 少年の苛立った呟きがしんとした街に響く。今に始まったことではない。今ので一体何回目か。しかし、何回痛もうとそれに慣れることはなかったし、恐怖が取り除かれるわけでもなかった。
 少年は諦めたようなため息をつくと、胸を押さえながらまた歩き出した。
 俺は一体何のために生きているのだろう。
 最近そんなことを良く考える。このまま圧倒的な死の恐怖を背負いながら生きて何になるのか。じわじわと恐怖に押しつぶされるくらいならいっそ自分の意思で死んでしまいたい。
 そう思うがいざ実行する時になると、どうしても出来ないのだ。やはり死ぬのは怖い。それにまだやり残したことがあるような気がする。そんな思いからいつもその手を止めてしまうのだ。自分はなんて愚かなのだろう。
やり残したことなどあるはずがないというのに。
 そんなことを考えていると、突然裏通りに続く道から三つの影が飛び出した。屈強な体つきをした男たちだった。中にはサングラスをかけている者もおり、どう見ても友好的な輩には見えない。腰から突き出ているナイフのグリップがさらにその考えを補強している。
 少年が口を開く前に、男の一人が言った。
「そこの坊主、こんな時間に町をうろつくなんていけねえなぁ。今は色々と 物騒な時代だからよぉ。俺らみたいなヤバイ連中がうろうろしてるぜぇ」
言いながら卑しい笑い声を上げる。
「フン。そんなことは百も承知だ。今日は気分が悪い。用があるなら手短にすませてくれ」
 少年は男たちに物怖じすることなく、むしろ挑戦的な態度で言った。さっきまで笑っていた男たちの顔が歪む。
「わかったぜ、用件を言おう」
 男の一人が歪んだ笑いを見せた。
「金目の物、全て置いていくか、それとも二度と歩けない体にされるか、どちらがいい? 選びな」
 他の二人もニヤニヤと笑っている。
「究極の二択……か。生憎だがどちらもお断りだ」
 少年は済ました顔で答える。少年の態度に男たちはついにキレる。
「……のガキ! いつまでも調子に乗ってんじゃねえぞ!」
 一人の男が拳を振り上げる。だが、少年はすでに男の懐に入っていた。男が気付いた瞬間、少年は男の腹部に右掌をあてる。男たちはその行為にいぶかしんだが、それも一瞬、男の体が爆発した。爆発音が轟き、夕焼け色の爆風が起こる。他の二人は呆然とその光景を見ていた。男の体は爆発の衝撃で数十メートル先まで吹っ飛び、闇に消えた。
 「てめえ! なにもんだ!」
 言いながら男はナイフを抜く。
 「質問をしたならば、相手の返答を待たないか」
 少年はため息をつきながら向かってくる男を平然と待ち受けた。
 男がナイフを振り上げた隙に少年はかがんで男の右足を蹴飛ばす。走っている最中だった男はバランスを崩し地面に倒れこむ。しかし、倒れる前に少年が男の体を支えた。その瞬間鳴り響く爆音。男は爆風によって吹っ飛ばされた。
 少年は最後の男に向き直る。男の顔は蒼白で、幽霊か怪物でも見るような目で少年を見つめる。
「て、てめえ! マジでなにもんなんだよ……」
「俺か?」
 少年は聞き返す。
「俺の名はアークレイ。アークレイ・ガルスだ」
 少年の言葉を聞いた瞬間、男の顔から血の気が失せる。
「アークレイって……まさか」
「知っていたか。だが思い出すのが遅かったようだな」
 少年は冷たい口調で言い、男の頭に右手をあてる。
「目をつけた相手が悪かったな」
 少年はそう告げる。
 どの店も閉まっており、人通りもない通り。それを優しく照らす夜空の月。そんな静かな町の雰囲気を壊すものがあった。それはこの上なく大きな爆発音と灰色の地面に降り注ぐ赤い雨だった。
 その中を一人の少年がうつむきながら歩いていく。

 俺は何のために生きているのか


第1章 オルハデス

 少年はため息をつきながら上を見上げる。周りを覆う闘技場の外壁が全てを遮断し、真ん中からは円形にくりぬかれたような青空が見える。少年はその空に吸い込まれそうな感覚を覚えた。
 少年は黒いマントを羽織っているため体つきはわからないが、顔の弱弱しさから見て、体も華奢なのだろう。黒い髪は耳元までかかるほどに切り揃えられており、白い肌とは対照的な赤い瞳をしている。
 少年は再度ため息をつくと、目の前で仁王立ちしている相手に目をやる。三十代後半ぐらいの男で体つきはがっちりしていて、露出した上半身からは鍛え上げた筋肉がうかがえる。最近はマッチョ運が強いな、などとくだらないことを考えながら相手を見つめる。
 ここは世界最大の闘技場、カレクラス。数百年も昔から戦士達の決闘が行われている、歴史ある闘技場である。そのためか、闘技場の床にはどすぐろい血痕がところどころについていた。
2階に設置された客席はすでに満席になっており、狂気染みた歓声が闘技場内に響き渡った。
 観客達が楽しみにしているのは「オルハデス」と呼ばれる、大会である。内容は参加者が一対一で戦いあい、最後まで勝ち残った者が勝利とされる、単純明快な大会である。しかし、出場者は剣士に格闘士、殺し屋に、傭兵など様々である。皆、各々の特技を持ち、この大会に参加するのである。
 平和だが、人々の心は決して穏やかではない、このご時世に作られたのがオルハデスである。皆、これを見て、ストレスを発散させたりしている。民衆の一番の娯楽である。
 試合時間が高まるにつれ、観客の興奮も一段と上がる。彼らにしてみればこの待ち時間は、何よりも辛かった。
すると闘技場の影から一人の男が現れた。金のショートヘアに赤い長シャツに黒いズボン、きりっとした顔にはサングラスがかけられている。男は少年達がいる、長方形型のステージに上がると、思い切り息を吸った。その瞬間、鼓膜が破れんばかりの大声が彼の口から吐き出された。
「オラァ! 第百五十六回オルハデスもついに準決勝! 司会兼審判は毎度お馴染み、この俺様、ラルフ・トーン!」
 ワァァァと歓声が響く。こちらも耳を覆わんばかりの大声である。ラルフは両手を振って歓声に答える。毎度のことだが、少年としてはどうすればあのバカでかい声が出せるのか、つくづく疑問に思っていた。
「ここで選手の紹介だ! まずは五十回連続優勝者! 最強の十六歳、アークレイ・ガルス!」
 ラルフは右手で少年を示した。途端に巻き起こる歓声。アークレイは本気で耳を覆いたかった。
「続いて南からの挑戦者、初出場、南の盗賊団団長、最強の拳、ゴレドル・ロスト!」
 ラルフは左手で筋肉男を示す。ゴレドルは両手で力瘤を作りながら歓声に答える。
「いよいよ始まる準決勝戦! アークレイ・ガルス! バーサス! ゴレドル・ロスト!」
 歓声がまた一段と大きくなる。アークレイは気のせいか耳がビリビリと痛んだ。
「カウントダウン開始!」
 言葉どおりラルフのカウントダウンが始まる。会場は水を打ったように静かになった。
「三……」
 ゴレドルがアークレイを睨みつける。
「二……」
 アークレイはため息をつき空を見上げる。
「一……」
 ゴレドルは構えを取る。アークレイはまだ空を見ている。
「……開始!」
 ラルフが言い終わった瞬間、会場が爆発したような歓声に包まれた。ラルフが何かを喋っているが何も聞こえない。とにかく試合は始まったのだ。
 いきなり、ゴレドルの回し蹴りが目の前に飛んできた。アークレイは間一髪よけるが、大柄な肉体に似合わず、速い蹴りだった。ゴレドルは休む間もなく、拳を繰り出してくる。アークレイは攻撃をひたすらよけた。パワーではこちらが完全に負けている。パワーでは。
 アークレイは体勢を低くしてゴレドルの拳をかわすと、そのまますっと男の懐に入る。そして下から振り上げるように拳を放つ。アークレイの拳がゴレドルの右頬に命中した。しかし、ゴレドルは顔に拳を受けたままニヤリと笑う。
「効かんなぁ……」
 ゴレドルはアークレイの顔を左手で掴むと、そのまま地面へ一気に叩きつけた。後頭部にひどい痛みが走った。アークレイは後頭部から血が出たような気がした。
 ゴレドルはまだ、手を放さない。それどころか、アークレイを地面に押し付け、身動きを封じている。
「連続五十回優勝者も大したことはねえなぁ」
 ニヤリと笑いながら言う。
「フン……」
 アークレイは鼻で笑うが、ゴレドルはそれを最後の意地と解釈したようだ。
 ゴレドルは右拳を振り上げる。恐らくこの一撃で決まるとゴレドルは確信しているだろう。
「フフフ……」
 ゴレドルは笑い声をもらす。
 そして。
「さらばだ」
 そういったのはゴレドルではなかった。
 突然、歓声を凌ぐ爆発音が聞こえたかと思うと、辺りは灰色の煙に包まれた。何も見えない。観客達が一斉にざわめきだす。
やがてラルフが煙の中から咳き込みながら飛び出してきた。
「すげぇ、煙だぜ。果たして両選手の無事は?」
 ラルフが言う。先程より、はるかに小さい声だったが、静まりかえった会場には十分な声だった。
 やがて煙が晴れ、ステージに立つ一つの影があった。
 揺れる黒マント。
 アークレイだった。
 途端に観衆は再び興奮に包まれる。空が割れんばかりの歓声が上がった。
 アークレイはため息をついた。今回もつまらぬ闘いだった。
 足元には顔が焼け爛れたゴレドルが転がっていた。顔だけでなく、全身のダメージも大きいようだ。
「勝者! アークレイ・ガルス!!」
 ラルフの勝利者宣言と共に歓声がまた一段と大きくなった。誰も地面に転がるゴレドルを気にかけるものはいない。オルハデスは民衆の娯楽であり、同時に選手自身が民衆の娯楽であった。勝った者だけが娯楽として価値を認められ、負けた娯楽には誰も興味を持たないのだ。オルハデスとはそういうものなのだ。
 アークレイはラルフに促されながら、右手を挙げ、勝利の証を示した。だが、彼の心は冷め切っていた。
 自分はこんなところで何をしているのだろう。
 こんな闘いを続けて何の意味があるのか。
 そんなことを思いながら空を見上げた。
 アークレイは視線を地上に戻すと、踵を返し、さっさと闘技場から出て行こうとした。しかし、しわがれた声が彼を止めた。
「ま……待って……くれ」
 ゴレドルだった。もはや顔の原型がわからぬ有様であった。
「何の用だ?」
 アークレイは冷たく問う。
「な、何故お前は……爆発を起こせた?」
 アークレイはしばし、ゴレドルをじっと見つめた。やがて口を開く。
「俺は生まれた時から特別な能力を持っている。それは触れた物全てを自由に爆破させることができる能力だ。ある程度時間が経っていても、さらに外側から、もしくは内側からでも自由にな」
 ゴレドルはにわかには信じられないという顔をした。やがてかすれた声で問う。
「お……お前は魔法使いか?」
 アークレイはその問いにフンと鼻を鳴らす。
「魔法だったらどんなに荷が軽いことか。残念だが魔法ではない」
「だ……だったら……何故?……ぐっ!」
 ゴレドルは痛みからうめき声を上げた。
 アークレイは背を向ける。
「これ以上、貴様が知る権利はない。それに知ったところでどうしようもないだろう。その姿では貴様はこの世では生きていられないだろうからな」
 焼け爛れた顔。ボロボロの体。さらにオルハデスで無残にもこのような形で負けた盗賊。人並みの生活が送れるわけがなかった。
「ま、待ってくれ。まだ……」
「落ちぶれた盗賊ごときにかける情けなどない。さらばだ」
 アークレイは黙って歩き出す。観客から賞賛が聞こえた。彼はそれらを背に受けながらアークレイは闘技場を後にした。

 俺は何のためにここにいるのだろう。

第二章レイス・ホールド

アークレイは薄暗い階段を下りた。闘技場の地下へ着くと、そこには楕円形の広い空間があった。目の前には木製の扉が六つある。六つの扉には、それぞれ「バー」、「軽食室」、「寝室」、「遊技場」、「控え室」、「医療室」と書かれている。オルハデスの開催期間は結構長いので、闘技場内で多少の生活ができるようになっていた。
アークレイは決勝を控えているため、控え室の扉を開ける。すると下へ続く階段があった。足場が狭い上に明かりは天井にぶら下がっている、小さなランプ一つなので慎重に進む必要があった。アークレイはゆっくりと階段を下りていく。すると、階段を降りきる辺りに小さな明かりがもれているのが見える。アークレイはそこへ近付くと、そこに扉があり、隙間から光が漏れているのに気付く。
アークレイはゆっくりと扉を押し開けた。
中は外に比べると明るかった。控え室には細長いテーブルと椅子が設置されており、他には何もない、少し寂しい空間だった。アークレイは無造作に設置された長いすに寝転がる。さすがに準決勝ともなれば残っている者は少ない。先程、ゴレドルはアークレイに敗北したので、今この闘技場内に残っている選手は三人。その中の二人が今やりあっているわけだから、控え室にはアークレイ一人しかいない。
アークレイは白い天井を見上げた。ところどころにシミや傷がある他はただの白い天井だ。
ああ、退屈だ。そうアークレイは思った。今回も予定通り決勝へ進んだ。これで五十一回目である。もう、達成感も喜びも湧き上がってこなかった。代わりにアークレイを四六時中縛り付けているのは、いつ死ぬかわからないという恐怖である。つい、昨晩も痛んだ胸を無意識に押さえる。
このまま俺はつまらない闘いを続けていずれ死んでいくのだろうか。当初は生きがいだと思っていたオルハデスも今では単なる暇つぶしにしか過ぎなかった。むしろその役目もまっとうできなくなりそうである。
歓声が上から漏れ聞こえる。もうそろそろ勝負がつくだろう。どちらが勝とうが構わなかった。もはや自分は最強だとわかっているからだ。それは傲慢ではなく、むしろ認めるのが嫌な事実であった。しかし、今まで自分に致命傷を食らわせたものは一人もいない。それはどうしようもないことであった。
「赤き悪魔……か」
そう呟き、フッと自嘲気味に笑う。「赤き悪魔」。アークレイの力を知るものは彼をそう評した。しかし、無理もないことだ。こんな異様な力に、今まで二十万以上の人間を殺してきた。正当防衛ではあるが、誰も信じないだろう。
「そして俺も誰も信じない」
そう、自分に誓うように呟く。この力を持っている限り、誰も自分に心を開かない。信じない。それどころか忌み嫌い、自分を迫害するだろう。それは被害妄想ではなく、過去の出来事からの結論である。
ふと、小さな虫が彼の手に止まってきた。彼は気にせず再び天井を向く。次の瞬間、虫は爆発し、辺りは何かが焦げたような臭気に包まれた。
「くっ」
アークレイはついさっき虫が爆発した場所である、自分の右手を忌々しげに睨んだ。
何故、俺だけこんなことに……。
今まで何回その言葉を思い浮かべただろうか。
「あの」
ふと、緊張した声が聞こえた。声のするほうを見ると、扉の入り口に茶髪の弱弱しそうな男が立っていた。
「準決勝第二試合がたった今、終わりました。次は決勝なので、ステージへお上がりください。対戦相手のレイス・ホールド選手が待っています」
アークレイはやれやれとため息をつくと、起き上がる。しかし、ここであることに気付く。
「さっき試合が終わったばかりではないか。そいつに休みを与えなくて良いのか?」
すると男は困ったように顔をしかめる。
「彼は無傷なので心配ない、と言い張りまして。確かにさっきの試合まで無傷だったのですが……」
アークレイは少し感心した。準決勝まで来て無傷で勝ち残った者がいるとは。
男は続ける。
「それとは別に彼は早く貴殿と戦いたいそうで、恐らくそれが真意かと」
彼のことを知りながらあえて戦う輩も珍しい。アークレイは若干の希望を抱いて、扉の方へ歩み始めた。
「わかった。すぐに行くとしよう」
彼はそれだけ言うと、階段を登り始めた。相変わらず薄暗く、足元に気をつけねばならなかった。やがて六つの扉の前の広い空間に着いた。出口から光が差し込んでいる。外ではどんな強者が待っているのだろうか。
せいぜい楽しめるようにと心の中で祈り、アークレイは外へと足を踏み出した。



少年は空を見上げる。楕円形にくりぬかれた空には西へ傾き始めた太陽が浮かんでいる。この試合が終わったらメシにしようと決める。それからはずっと昼飯は何にするかを考えていた。
金色の髪は短く切りそろえてあり、小柄な体型だが、顔は大人に近い。十代半ばであろう。ベージュのマントを羽織っており、全身は見えない。マントの隙間からは刃物のグリップらしきものが見え隠れしていた。
少年は対戦相手を今か、今かと待ち焦がれていた。対戦相手はアークレイ・ガルス。オルハデス五十回連続優勝者である。全ての相手を一撃で葬って来たと言われる、とんでもない人間である。
しかし、少年には怖気づくことは許されなかった。両親を早くから亡くした彼は、弟たちを養うため、この戦いに参加したのである。何故ならこの大会は優勝すれば百二十万K(キン、この世界の金の単位)、準優勝なら六十万Kなのだ。当然、狙うは優勝。準優勝でも結構な額だが、少年としては弟たちに少しでも良い物を食わせてやりたかった。
突然、客席から会場が爆発したかのような歓声が上がる。ふと気付くと、彼らの視線は地下の入り口の方へ向いているのがわかる。地下から出てくる人影が見えた。灰色の髪に赤い目、黒いマントを羽織った少年である。彼がアークレイ・ガルスである。アークレイはこちらを見ると失望したようなため息をついた。その様子は「なんだ、ガキか」とけなされたようでレイスとしてはかなり面白くなかった。
キッと睨んでみたが、失望したようなため息を再びつかれるだけだった。
そんな中、ステージの真ん中に控えていたラルフが大声を上げる。
「オラァ! オルハデスもついに決勝戦! 司会兼審判はこの俺様、ラルフ・トーン!」
レイスは、それはもういいから、と心の中でつっこむ。だが何故か客席は盛り上がっている。
「まずは今回対戦する選手の紹介だぜ! 五十回連続優勝者、最強の十六歳、アークレイ・ガルス!」
アークレイのほうを右手で示す。途端に歓声が一段と熱狂的になる。しかし、当の本人は対照的に冷めた表情で立っている。
「続いて、チャレンジャー、東部カリナの村から参戦! 同じく十六歳、レイス・ホールド!」
ラルフは少年のほうを示す。途端に歓声が巻き起こる。レイスと呼ばれた少年は手を振ってそれに答えた。
ラルフは金髪を振り乱しながら叫ぶ。
「いよいよ始まる決勝戦! レイス・ホールド! バァァサァス! アークレイ・ガルスゥ!」
ラルフもかなり興奮しており、声が裏返っていた。
「三……」
カウントダウンが始まった。会場は急に静かになる。レイスは腰のホルダーから短剣を抜いた。
「二……」
そして目の前に構え、精神を統一する。
「一……」
いつでも走り出せるよう、体勢を整える。
「開始!」
レイスは真っ直ぐにアークレイへ突っ込んでいく。そして信じられない速さでアークレイの間合いに飛び込むと、短剣を持った右腕を、顔に向けて振り上げる。アークレイは反射的に顔をそらしたが、頬を少しかすった。アークレイはそのまま、体をそらし、地面に両手をつけ、鮮やかな倒立後転を繰り出すと、レイスから距離を置いた。
レイスはニッと笑った。
「てめえの技を俺は知らねえ。だが、俺の持ち味はこの自然の中で生活し、身についた、このスピードだ。てめえがどんなおっかねえ技もってようが、出す前に叩けばいいだけのこった。あんまり俺をなめんなよ」
アークレイは黙って、短剣がかすった頬を確かめている。彼の頬からは血が出ていた。
「休んでる暇はねえぜ!」
レイスはそう叫ぶとまた信じられない速さでアークレイの懐へ飛び込む。短剣を振るうと見せかけて、腹へ向けて拳を振りぬく。アークレイはなんとか避ける。が、レイスは言葉どおり、休む間もなく、攻撃を続ける。
「どうした!? 大したことねえな!」
しかし、レイスは先程惨敗したゴレドルと似た台詞を言ったことに気付いているだろうか。いや、恐らく気付いていないだろう。彼が押されているのは、ただ暇つぶしに勝負を長引かせているだけに過ぎないことを。
突然、耳元で爆音がした。音の方を見てみると、彼の短剣が灰色の煙を上げていた。そして刃が半分ほど、ポキ、と音を立てて折れ、ステージの床に落ちた。
「な、一体何が?」
わけがわからず、混乱するレイス。そのとき、初めてアークレイが口を開いた。
「俺の能力は……」
ぼそぼそとした声で始める。
「俺が触れたもの全てを自在に爆破させる能力だ。故に逆を言うと、俺に触れた物も全て爆破できるということだ」
レイスはその説明で納得した。さっき頬を確かめていたのは切られたことを確認するため。
全てはアークレイの予定調和だったのだ。アークレイが押されていたのも恐らくわざとだろうと確信する。
あり得なかった。
しかし、弟たちのために負けるわけにはいかないという想いが恐怖に打ち勝った。
レイスは拳を構えた。
「まだやる気か?」
アークレイは呆れたような声で言う。レイスは当然だという風に頷いた。
「ならば……」
言いながらレイスの間合いに入り込む。レイスには劣るスピードであったが、その華奢な体型からは想像がつかないものだった。アークレイはそのままレイスの腹に右掌を押し当てる。
「終わらせるしかあるまい」
途端に炸裂する、閃光、爆音。立ち上る煙。
レイスは腹を押さえながらうずくまっていた。彼の服はボロボロになっていた。終わったか、と言う風にアークレイは背を向けるが、レイスは起き上がり、アークレイに向かっていく。
「執念深い奴だな」
アークレイは呆れたような口調で言うが、その顔にはかすかな笑みが浮かんでいた。レイスはそれには気付かず、再びアークレイに突っ込んでいった。
レイスは右足をアークレイの顔をめがけて振り上げる。それをアークレイは左腕で受け止める。レイスは上半身を後ろにそらしながら、あいている方の足でアークレイの顎へ振り上げ、同時に地面に両手をつき、倒立後転でバランスを取り、着地する。が、蹴りは読まれていたかのように頭をそらしてかわされる。
続いてアークレイの右足が弧を描くように目の前に迫る。なんとか両腕で防ぐが、すねが両腕に触れた瞬間、爆発が起こり、レイスは数メートル先へ飛ばされた。
立ち込める爆煙。その中に一つの影が見える。レイスだった。両腕は焦げたように黒い。実際、彼はその両腕に焼けるような感覚を覚えていた。
だが、レイスは再び立ち向かっていった。もはや弟達のためではなかった。得体の知れぬ何かが彼を突き動かしていた。
アークレイはそんな彼を見て、フッと笑う。
空は晴天。春の爽やかな風が吹きぬける。カレクラス闘技場には爆発音が鳴り響いていた。



アークレイは賞金を受け取るとさっさと闘技場を出た。ここ、カレクラス闘技場は城下町の中心に建っている。ここから北へ行くとブリッグ城がある。穏やかな王が治めている平和な土地である。南へ行くと黒塗りの門があり、そこが外と町をつなぐ唯一の入り口だった。アークレイは真っ直ぐ、そこを目指す。
今回の闘いは少しは楽しめたな、と決勝戦を振り返る。あそこまで自分に向かってきた輩は初めてである。そんな人間がまだ居たのだな、と少し嬉しく思う。
しかし、彼もアークレイには勝てなかった。体術のスピードには正直舌を巻いた。もしかしたら、本当にわずかな可能性だが、彼は自分に匹敵する強さを持つ存在になるのでは、とアークレイは期待した。とにかく珍しく次回のオルハデスが楽しみに思えてくるアークレイである。
そんな彼の後方に、十分に距離を取りながら尾行している人物が居た。レイスだった。その瞳には執念の炎が燃えていた。
「ぜってぇ次は倒してやる」
その呟きはアークレイには聞こえない。レイスは気付かれないよう、かなり距離をとって歩いていた。

アークレイの退屈を紛らわす、唯一の存在レイス。レイスを唯一倒した男、アークレイ。
二人の追って追われる旅が今、始まろうとしていた。

第三章追われるもの

雲ひとつない青空、見渡す限りの茶色い大地。さわやかな風が吹きぬける。レイスはそんな場所に居た。
アークレイを追って早三日目。彼を見失った上に現在地がどこなのかも把握できない状況、つまり迷ったのである。
さらに言うと、オルハデス終了後、すぐにアークレイを追って旅立ったため、食料や水を買い忘れてしまったのだ。それでも手持ちの食料で昨晩まではなんとか持ったが、今日は何も食べていない。つまり食料が底をついたのである。
「くそっ、腹減った……」
そう呟くレイス。それは口に出すほどの言葉ではなかったが、何か喋っていないと、そのまま力尽きてしまうような気がしたのである。
ふと、それもこれも全てアークレイのせいだ、と思う。あいつがあんなに町を出るのを急がなければ食料を買う時間があっただろう。そして賞金が半分になったのも、こんなところで迷っているのも全て奴のせいだ、とかなり理不尽かつ責任転嫁な怒りを感じているレイスだった。
不意に彼の視覚が何かをとらえた。灰色のそれはどうやら真っ直ぐに上へと立ち上っているようだ。それは風に吹かれるとその方向へたなびいた。煙である。レイスの前方の岩陰から立ち上っている。レイスはそこへ近付いていく。すると今度はなんとも香ばしい匂いが彼の食欲をそそった。間違いない。誰かが火を焚いて何かを焼いているのだ。レイスはその匂いに誘われるように岩陰へと足を運んだ。
やがて岩陰に居る人物の姿が見えた。灰色の髪、風に揺らめく黒マント、こちらを見つめる赤い瞳。それは彼が三日間追い続けてきた男、アークレイ・ガルスだった。
レイスは開いた口が塞がらないといった様で、アークレイを見つめていた。当のアークレイは静かな声で言う。
「よもや、こんな罠にかかるとは思わなかった」
ふと、アークレイの足元を見ると、石で竈がつくられており、その上には魚の燻製が置かれていた。火にあぶられたそれの香ばしい匂いをかぎ、レイスの腹の虫が鳴いた。じっと燻製を見つめるレイスを見て、アークレイはため息をつく。そして燻製を手に取り、レイスに手渡す。レイスはこのとき初めて彼に感謝の感情を覚えた。もっとも口が裂けても言葉にするつもりはなかったが。
「食え。その方が落ち着いて聞いてもらえそうだからな」
レイスは返事もせずにそれにしゃぶりついた。アークレイが呆れた顔で見つめている。しかし、アークレイはふと我に返り、咳払いをした。
「貴様が俺を尾行していたことは知っている」
レイスは燻製から初めて目を離し、アークレイを見据えた。先程のアークレイの言葉を思い出した。“よもやこんな罠にかかるとは思わなかった”レイスは手に持った燻製を見つめた。空腹のため鈍っていた思考回路が回復し、整理してみる。そしてそれが終わった途端、レイスは怒りがこみ上げてくるのを感じた。
「てめえ! まさか俺に自分から姿を見せるように、こんなくだらねえ罠を張ったってのか!」
「そのくだらない罠にかかったネズミは誰だったかな」
レイスは歯軋りした。さっきアークレイに感謝の感情を抱いたのが間違いだった。レイスは唸るような声で聞いた。
「いつから気付いてやがった?」
「三日前からだ」
淡々と告げるアークレイ。レイスは屈辱感に苛まれた。アークレイはレイスの尾行に初めから気付いていた。その上で、気付かぬフリをして、今日まで尾行させ、挙句、とてつもなく単純な罠でレイスをおびき寄せたのだ。罠にかかったレイスも問題であるが。
「てめえ!」
空腹のため、短気になっていたのだろうか、レイスはアークレイへ向けて拳を振り上げていた。が、その瞬間、足元が赤く光った。それと同時に鳴り響く轟音。そして爆風。レイスは五メートルほど吹っ飛ばされ、背中をしたたかにうった。レイスは何が起こったのかわからず、爆発の起きた場所を凝視した。
「血の気の多い奴だ」
アークレイが冷たく言い放つ。彼は右の握りこぶしを胸の前で広げた。彼の掌には小石が置かれていた。アークレイは手首だけでそれを真上に投げる。その瞬間、小石が赤い光につつまれ、弾けるような音を発し、粉々に飛び散った。
レイスは先程の爆発が今のと同じだということに気付いた。アークレイの爆破の能力。レイスはそれを探るために彼を尾行していたのだ。
アークレイがため息をつく。
「二度と俺を追ってくるな。ロクなことに……」
アークレイはそう言いかけたが、何かに気付いたように急に目つきが変わった。赤い瞳は燃え上がるようだったが、それでいて見たものを凍てつかせるような凄みを帯びていた。
レイスもアークレイの雰囲気を一転させた物に気付いた。いつの間にか十数人ほどの男に包囲されていた。彼らは農夫や商人など格好は様々だったが、剣を携えているあたり、穏やかな人物ではないということはすぐにわかった。
男たちは二人を囲み、じりじりと距離を詰める。レイスは彼らから目を離さず、アークレイに尋ねる。
「誰だ、こいつら? てめえの知り合いか?」
レイスは先程から男たちの視線がアークレイにのみ向けられているような気がしたのだ。アークレイは頷く。
「この俺を狙う賞金稼ぎ共だ」
「てめえの首には賞金がかけられていたのか?」
レイスは驚いたように尋ねる。
「そうだ。昔、ある男が俺に挑んできてな。返り討ちにしたのだが、それが奴のプライドを傷付けてしまった。その男が復讐のために賞金をかけたのだ」
「成る程。逆恨みってわけか?」
「それとは違うな。俺にも多少非があるのだからな」
しかし、アークレイの口調からは反省がうかがえなかった。むしろ、何者かを憎むような、ひどく冷たい声。レイスの背筋に震えが走った。
「だが、俺はむざむざと殺されはしない。やらねばならぬことがある」
「何をごちゃごちゃ言ってんだ!」
賞金稼ぎの声が二人の会話を遮った。各々、剣を構え、こちらに歩み寄ってくる。
「おとなしくその首をよこしやがれっ!」
その声を合図に賞金稼ぎたちが一斉に駆け出した。アークレイはため息をつく。
「あ奴ももう少しまともな奴を雇えんものか……」
「おい、どうすんだよ!」
多勢に無勢の上、逃げ道もなく、包囲されているのだ。いくらレイスがオルハデス準優勝者でもこの危機を乗り越える自信はなかった。だが、アークレイの次の言葉にレイスは呆気に取られた。
「貴様は傍観していろ。これは俺の問題だ」
アークレイは正面から迫り来る賞金稼ぎたちを平然と眺める。そしておもむろにかがみこみ、落ちていた小石を拾い上げ、じっと見つめる。これでいいだろう、と小さく呟きが聞こえた。アークレイはその小石を彼らに向けて軽く投げる。小石は彼らの数メートル先で転がった。その瞬間、赤い閃光が炸裂し、同時に凄まじい音が鳴り響いた。爆風が起こり、砂埃が辺りを覆い、視界を妨げた。あちこちで焦ったような声が上がる。アークレイは先程に比べ、かなり小さい石を数個拾い上げ、それらを四方八方に放り投げた。砂煙の中、次々に鳴り響く轟音、それに妨げられて良く聞き取れない、賞金稼ぎたちの悲鳴。やがて、それらの音が消え、辺りは静まり返る。砂煙も徐々に晴れ、どこまでも続いていそうな地平線を再び拝むことができた。
しかし、大地は砂煙がたつ前と若干違いがあった。一つは茶色い大地にところどころ炭のような黒いものが落ちている点。もう一つは闘志をたぎらせて活動していた賞金稼ぎたちが倒れている点。レイスは思わず後ずさりしたが、何かに躓いたのに気付き、足元を見る。そこには恐らく賞金稼ぎの一人であろう、若い男の体があった。衣服は焼け焦げ、顔はどんな人相だったか判別がつかぬくらい、焼け爛れている。爆風に乗って彼らの足元まで飛んできたのだろう。アークレイの背後にも一人の男が同じような有様で倒れていた。レイスは息を呑んだ。これが自分の追う、男の力なのだ。さすがに恐怖を感じないわけにはいかなかった。レイスはちらりとアークレイの顔を窺う。自分が起こした惨状を平然と眺めている。レイスはアークレイの精神は自分とは根本的に違う次元のものなのだな、と思う。自分を狙う賞金稼ぎとはいえ、顔がわからなくなるほど爆破したのだ。それをいい気味だと嘲笑うなら、なんて残忍な奴だ、とまだ納得できる。しかし、嘲りも、ましてや同情や後悔といった表情を全く表に出さず、ただ平然と、それが当然であるかのごとく、眺めていられるのは異常だ。人を殺して全く動じない人間は、それまでに人を何人も殺してきた人間だけだ。不意に彼が自分と同年代であることを思い出した。自分もそれなりに苦労しながら今日まで生きてきたが、彼は一体どんな思いをしながら今日まで生き抜いてきたのだろう。それは自分のそれとは比較にならないほどの過酷な人生ではなかったのではないか。恐怖はいつの間にか消え、好奇心が沸いてきた。彼を倒すためだけではなく、彼の過去を知る。彼の追跡に新たな目的ができた瞬間だった。
そんなことを考えていると、黙り込んでいたアークレイが口を開いた。
「わかっただろう。俺に関わるとロクな目に遭わぬということが。二度と俺を追わぬことだな」
レイスは黙っていた。ここで引き下がるわけにはいかない。アークレイが「追ってくるな」と言っても聞くつもりはなかった。
アークレイが再び口を開こうとした時、レイスは彼の背後に倒れている男が手元にあった剣に手をかけるのが見えた。彼の顔は凄まじい憎しみに満ちている。うつ伏せのまま、剣を握り締め、アークレイの背へ向ける。アークレイは気付いていない。男は今にもアークレイへ剣を突き刺そうとしている。レイスはすばやい動作で懐からナイフを取り出し、投げつけた。ナイフは男の目の前で地面に突き刺さり、男の焼け爛れた顔を刀身に映した。男の手が止まった。アークレイが気付き、慌てて距離を取る。
「危ねえな。もうちっと周囲に目を配った方がいいんじゃねえのか?」
「フン。余計なお世話だ」
アークレイは屈辱を受けたように少し顔を歪めた。
「二度と俺を追ってくるな」
そう吐き捨てアークレイは立ち去ろうとしたが、レイスは変な笑いを浮かべて呼び止める。
「今ので一つ貸しができたよな」
アークレイは怪訝な顔で振り返る。
「なんだと?」
「だからてめえにはそれを返す義務があんだろ。だから借りを返してもらうまで、俺はてめえについていく」
アークレイはため息をつく。
「貴様が頼みもしないのに勝手にやったことだろう。故に俺が借りを返す義務はない」
「だが俺は勝手についていくぜ。借りを返してもらうって決めちまったから」
レイスは続ける。
「それに見ろよ」
レイスが指を指す方向には生き残った賞金稼ぎたちが逃げていく姿があった。
「あいつらがもし仲間に報告したら俺まで狙われることになるかもしれないだろ。どうせ同じ奴に狙われるんなら手を組んだ方が、効率がいいと思わねえか?」
実際、かなり滅茶苦茶な理論だったが、それでも構わなかった。なんとしてでもアークレイの秘密を探ってやるのだ。
アークレイは今までで一番深いため息をついた。
「勝手にしろ」
アークレイは反論することを諦めたらしい。レイスは勝ち誇った顔で言った。
「じゃ、これからよろしくな、相棒」
「馴れ馴れしく呼ぶな」
アークレイはまたため息をついた。
「行くぞ。ここに長く留まっているわけにはいかぬ」
「そうだな。 で? これからどこへ向かうんだ?」
アークレイは自嘲気味な笑いを浮かべた。
「さぁ……? どこへ行くかな」


二人の旅が始まる。



第四章目的
 
夕暮れの空。どこまでも続いていそうな茶色い大地。そんな場所に四人の男が佇んでいた。どの男も紺のマントを羽織り、フードで顔を隠している。彼らは足元をじっと見つめながら話していた。
「息はあるか?」
「いんや。ってか全身黒こげでこの野郎がどんくらい不細工だったかもわからねえや」
言葉とは裏腹に陽気な声である。
その男は続ける。
「ま、こんなことができんのは、あいつ以外考えられねえだろ」
「そうだな。我々としては奴の行方を知りたいところだが、こやつらがこの有様ではな」
別の男は周りを見渡す。黒く焼け焦げた死体が累々。どんな顔だったかもわからぬほどだった。
不意に陽気な男が何かに気付いたように自分の腹に視線を移す。もう一人の男が不審げに聞く。
「ヴォルド、一体どうした?」
「腹の虫が鳴ったんよ。だから俺的には近くの町で腹ごしらえをしてえところだが、どうよ?」
ヴォルドと呼ばれた男は、傍らの男に同意を求める。男は呆れた声で答えた。
「お前は真面目に探す気があるのか?」
「当然至極。おおありだぜ」
フードのため、表情は伺えなかったが、口調は先ほどと変わらず、陽気だった。
男は諦めたような声で言う。
「もう良い。お前の望み通り近くの町で食事を取ることにしよう」
「さっすが、ヨセフ! そういう男はモテるぜ、きっと」
「根拠のない世辞を口にするな」
ヨセフ、と呼ばれた男はやれやれと頭を振る。
「ところでヨセフ、ここらに町はあるのか?」
「すぐ先に町がある。そこで情報を探ることにしよう」
「町の名は?」
ヴォルドの問いにヨセフは地図を見ながら答える。
「ディルク」


 店内は客達でごった返していた。客達は剣士、商人、旅人、はてはガラの悪そうな者たちまで様々だった。店内は騒々しい空気に包まれていた。
 そんな騒ぎをよそに、静かにテーブルについている二人の少年がいた。
 アークレイとレイスだった。
 彼らはその日の夜、先程の戦場から少し離れた小さな町、ディルクのレストランで夕食を取っている所だった。あれからここまで来るのに二回も賞金稼ぎの襲撃にあった。恐らく先程の戦闘でアークレイが起こした爆発を遠くから発見したのであろう。レイスの体はところどころ傷付いていた。半日ほど歩いてきた疲労も重なって、もうボロボロの状態で食欲もなかった。対照的にアークレイは傷一つなく、平然とシチューを食していた。アークレイは、何も手をつけずにテーブルに伏せているレイスに気付き、スプーンを置く。
「どうした、ホールド。先ほどから何も食べていないではないか。腹が減っては、戦はできぬぞ」
「うるせえ。あんだけハードな戦闘して、平然とメシなんぞ食えるか」
レイスは顔をテーブルにつけたまま唸る。アークレイは平然と返す。
「俺は食している」
「てめえと違って俺はボロボロなんだよ。わかるか、ボロボロなんだよ!」
「唾を飛ばしながら喋るな。シチューの中に入るだろう」
言いながらアークレイはシチューの皿を持ち上げる。そして持ち上げたまま、再び食べ始める。
「そんなにボロボロだと喚くなら、付いてくるな。このくらい日常茶飯事だぞ」
「うるせえ! すぐに慣れてやらぁ。それにな、男に二言はねえんだよ」
「だらしのない格好で浮かれたセリフを吐くな」
「……うるせえ」
もはや反論する気力もなくなったレイスである。そのまま机に突っ伏している。それきり話題が見つからず、二人は沈黙した。対照的に店内はますます騒々しくなっていく。
「大体日常茶飯事ってどんな生活してんだよ、てめえは」
長い沈黙の後、先に口を開いたのはレイスだった。アークレイはため息をつく。
「何故、そんなことを聞く」
「いや、いつもこんなめちゃくちゃな生活してるのかって思ってよ」
「そうか……」
アークレイはスプーンを置いた。そして小さく、それでいてはっきりと答えた。
「数多の賞金稼ぎに追われ、亡き友を思う、そんな生活だ」
「な……」
レイスは自分の耳を疑った。賞金稼ぎたちを惨殺した男の言葉ではなかったからだ。レイスはアークレイの顔を覗き込む。いつもは全く感情が感じられない冷たい目が、どことなく悲しみを帯びていた。
「おい、それは……」
レイスが思わず口走った時だった。
突然扉が乱暴な音を立てて開き、剣を携えた男たちが三,四人ほど入ってきた。雰囲気がどことなく数時間前の男たちに似ている。二人は目配せすると、フードで顔を覆った。
男たちは店内を見回す。客達は沈黙して事の成り行きを見守っている。男の一人が大声で呼びかける。
「我らは今、ある賞金首を捜している。協力したものには賞金の三分の一を与える。賞金首の名はアークレイ・ガルス。賞金は六百万K。灰色の髪に赤い瞳の男だ。奴の仲間には、金髪の男がいる。何か知っている者がいれば名乗り出よ」
客達はざわめく。六百万Kの三分の一、二百万Kとは半年間遊んで暮らせる額である。客達が興奮したように囁いているのが見えた。しかし誰も二人のことを覚えていないようである。それも当然だろう。店内は旅人達でごった返していて、特定の旅人の顔など覚えているものはいないのだ。レイスはホッとため息をつく。アークレイもため息をついたが、彼のそれは安堵からくるものではなく、これから起こる面倒な出来事を予想しているかのようだった。
「あっ!」
突然客の一人が大声を出す。その声に店内は再び沈黙した。
「灰色の髪の男ならついさっき見たぞ」
店内が再びざわめきだす。先ほどの男が前へ進み出る。
「そいつは今、どこに居る?」
「そこらへんのテーブルに座ったのを見たぞ」
店主が指し示した方向にはちょうどレイスとアークレイのテーブルがあった。レイスの首筋に冷や汗が流れた。案の定、男たちは二人のテーブルに近付く。男たちは二人を見下ろすと、顔を見合わせた。明らかに怪しまれている。
「顔を見せてもらおうか」
男は冷静な口調で命じる。二人は黙り込んでいた。状況はかなり深刻だ。逃げ出すにしても、扉の入り口に人だかりが出来て通るのには手間がかかりそうだ。倒すにしても、こんな狭い店内では戦いにくい上、疲労も激しい。どうする。レイスは自分に問う。
答えは一つだった。
レイスは何の前触れもなしに、腰に差した短剣を鞘から抜き、男に切りかかる。キンと高い音がした。レイスの刃は別の男の剣により、防がれていた。レイスの刃を防いだ男は何故か笑みを浮かべている。
不意打ちは失敗した。
「危ねえな。なかなか速いじゃねえか」
レイスは剣をかみ合わせたまま、男を睨んでいた。
するとアークレイがおもむろに立ち上がる。男たちが一斉に身構えた。
「店主」
アークレイは誰も想像しなかった人物に呼びかけた。店主は急いでカウンターから出てくると驚いた顔でアークレイを見つめる。
「騒がせ賃だ。先に受け取れ」
そういいながらポケットからコインを取り出し、指で弾く。コインが宙に浮かんだ瞬間、赤い閃光が炸裂した。同時に弾けるような音が鳴り響く。店内は騒然とする。
その隙を見て、レイスは男の腹に拳を食らわす。男は低いうめき声を上げ、床に膝をついた。同時にアークレイが壁に両手をつく。その瞬間、赤い閃光が炸裂、さらにバキッという音がし、壁に穴が開いた。
「離れろ、ホールド!」
レイスは言われるままにその場から飛びのく。同時に彼のテーブルが赤い光を発し、爆発する。近くにいた賞金稼ぎたちはその爆発の直撃を受けた。
「やるじゃねえか!」
レイスはその隙にアークレイが開けた穴へ走る。外には先ほどの爆音を聞きつけたのか、人だかりが出来ており、彼らはあんぐりと口を開けて二人を見ていた。二人はそのまま彼らの間を縫うように走る。
チラリと後ろを見ると、先ほどの賞金稼ぎたちが人だかりを抜けるのに苦労しているところだった。
二人はしばし無言で走り続ける。空はもう、漆黒の闇に染まり、青白い月が神秘的な光を放っていた。今日は三日月である。
「あのよ、アークレイ」
 先に沈黙を破ったのはレイスだった。聞きづらいのか、視線をそらす。
「亡き友を、って言ってたよな。どういうことだよ。それに……」
レイスは大きく息をつく。
「お前の目的は一体なんだ?」
アークレイはしばらくの間無言だった。やがて、ディルクの町の明かりが完全に見えなくなったとき、静かな声で話し出した。
「俺にはかつて友がいた。ともにオルハデスで競い合う、好敵手でもあった。しかし……」
一旦言葉を区切る。
「殺された。俺を狙う賞金稼ぎにな」
レイスはそれ以上追求しなかった。いや、できなかった。さらに追求したいはずなのになかなか言葉が出てこない。友との思い出。それは好奇心という安っぽいカギで開けてはならない、アークレイにとって大切なものがある扉だ。自分のような他人にそれを空ける資格などないのだ。
ふと、アークレイを見ると、今まで見たこともない表情をしていた。いつもは人形のように無表情な顔が、わずかに歪み、いつもは冷酷な目が悲しみを帯びていた。
アークレイは呟くように言った。
「……山間部へ行くぞ。追っ手を撒くのにはいいだろう」
「……おお」
レイスの声にはいつもの元気がなかった。


二人の旅は続く。



第五章深き山の追跡者


二人は深い山の中にいた。山の中は当然二人以外の人影はなく、濃い緑の葉をつけた木々たちが囲むように生えている。どこまで歩いても見えるものはそれだけである。木々の間から差し込む月光が足元をわずかに照らす。二人はそれを頼りに山の中を歩いていく。山を抜けるのは当分先になりそうだ。
「おい」
レイスが荒い息をしながら、前を歩くアークレイに呼びかける。アークレイは汗一つかいていない顔で振り返る。
「なんだ」
「いつになったら山を抜けるんだよ」
あれから賞金稼ぎを撒くため、数時間休まず歩いてきた二人である。その上、いくらレイスが子供離れした戦闘能力の持ち主でも、これまでの道中でかなり疲労している身である。さすがに体力の限界が近付いていた。それでも自身が疲れているなど、アークレイの目の前では死んでも漏らしたくはないので、遠回しにそう言った。アークレイはこの会話を機に、今日はここで休むか、と野宿を提案する。それがレイスの作戦であった。
しかしアークレイは嘲るような笑みを見せ、
「なんだ、休みたいのか、ホールド。ヤワな貴様が休みたいと言うのなら、それでも俺は構わんぞ?」
と、そちらの意図などお見通しだと言わんばかりに嫌味な答えを返すがレイスは悔しそうに睨みつけるしかなかった。口論においてもアークレイの方が一枚上手のようだった。
そんな二人の不毛な会話が静寂な山の中に響いていた。
しかし、アークレイに悪態をついていたレイスは、何かに気付いたように木々の間をじっと見つめる。アークレイは怪訝な顔でレイスの視線の先を追ったが、突然、背後を振り返った。そこには深緑の木々以外何もない。しかし、アークレイはじっと睨みつけたままでいた。
「アークレイ」
レイスが低い声で呼ぶ。アークレイはなんだ、とわずかに顔を向けた。
「気付いてるかも知れねえけど……」
「ああ、何者かが俺たちを狙っている」
アークレイは頷いたが、視線はそらさなかった。
「まさか、もう追っ手が?」
「その可能性は高い」
「マジかよ!」
レイスはうるさそうに金の前髪を掻いた。最後の戦闘から数時間しか経っていないというのに。
「敵は何人だ?」
「わからん。だが―」
アークレイは答えながら、かがむ。その手に握られたのは二つの小石。
「つついてみればわかるだろう」
そういい終わると、アークレイは不審な気配のするほうへ小石を投げる。瞬間、爆発が起こり、木々の一部が吹っ飛び、煙と土埃が辺りを覆う。途端に煙の中から何かが飛び出してきた。レイスは鞘から剣を抜き、構えた。レイスの目の前に飛び込んできたのは、
「狼!?」
銀色の狼だった。体色とは対照的な金色の瞳がレイスを睨んでいた。レイスは予想外の敵に驚愕したが、自然の中で鍛えた反射神経のおかげでなんとか、狼の一撃をかわすことができた。しかし狼の爪攻撃はレイスの剣よりも速い。レイスは幾度か攻撃を試みるが、全て爪でなぎ払われてしまう。疲労が溜まっているため長期戦になればこちらが不利だった。
「ホールドッ!」
アークレイはレイスを助太刀しようと小石を掴む。しかし、両者とも常に動き回っているのでなかなか標的が定まらない。下手をすればレイスも巻き込んでしまう。思わず舌打ちする彼の目の前で茂みが激しく揺れた。
「まだいたか!」
アークレイは石を握った右手を振り上げる。しかし、その瞬間、何かが光った。なんだ、といぶかしげる間もなく、彼の足元に何かが刺さった。ナイフだった。刃が月光を受け、鈍く光っている。
「一体どこから……?」
アークレイはナイフの出所を探ろうと辺りを見回す。それが隙となった。
不意に近くの茂みから何かが飛び出してきた。それもまた銀色の狼だが瞳が金ではなく赤だった。燃えるような赤。アークレイと同じ色であった。
「ちっ!」
石を投げるタイミングを逃し、やむなく後退する。同じく後退するレイスと背中を合わせる形になった。レイスの荒い呼吸が背中を通して伝わってくる。アークレイはまだまだ大丈夫だがレイスが倒れればこちらの不利は確実だった。
「まさか狼にまで狙われるとはな。アークレイ、お前こいつらに何したんだ?」
「知ったことか。腹を空かしていると考えるのが普通だが、残念なことにこいつらと組んでいる人間がいるようだ」
「何!? マジかよ!?」
「ああ、足元を見てみろ」
言われたとおりに足元へ目をやると、銀色に光るナイフが刺さっていた。レイスは神妙な顔で頷く。
「俺としてはこいつらのバックを叩きたいところだが、この深い山の中ではそうもゆくまい。しかし、こいつらを相手にするにはこの状況は不利だ。だから一旦―」
「退くか」
「……そうだ」
レイスはアークレイの思ったとおりのことを口にした。アークレイは珍しく話が合ったな、と思いながらじりじりと迫り寄る狼達に視線を戻す。
「それで、どうやって逃げるんだ?」
「……古典的な方法だが目くらましを使うとしよう」
そう言い終わるか終わらないかのうちにアークレイは素早く行動をとった。まず屈みこみ、手ごろな石を掴み、空いた手でナイフを掴む。そのまま石を地面に叩きつけ、閃光が炸裂する。同時に発生する爆煙は狼達を混乱させその隙に二人は逃げ出した。木々の間を縫うように駆け抜ける。
「上手くいったな」
走りながら言うレイスにアークレイは顎で後ろを指す。
「いや、ダメだ」
振り向くと狼たちが猛烈な勢いで追ってくるところだった。どんなに鍛えようと森林での競走はどう考えても野生動物に分がある。事実、狼との距離は確実に狭まりつつあった。
「クソッ! 追いつかれるぞ!」
「わかっている!」
焦ったように怒鳴るレイスにアークレイが怒鳴り返す。アークレイは手に持ったナイフを振りかざし、後方へ向けて投げた。ナイフは弧を描くことなく、矢のように地面に突き刺さった。
「外れたぞ!」
とレイスはうめき声を上げるが、その声を背後から鳴り響く爆音がさえぎった。何事かと後ろに目をやると、アークレイがナイフを突き刺した辺りからもうもうと煙が上がっていた。
「なるほど」
レイスは乾いた笑い声を上げた。
「そういうことか」
アークレイはそれに答えるようにフッと笑ったがすぐに表情を険しくした。
「急げ、ホールド。奴らはすぐに追ってくる!」
「おう!」
そう元気良く答えたものの、レイスの体は限界だった。自然と足が重くなる。ついに膝をついてしまった。
「どうした!?」
「足が動かねえ……!」
そうする間にも狼達は距離を縮める。万事休すか。そう思ったときだった。
「こっちへ! 早く!」
右の茂みの方から声がした。アークレイにも聞こえたようで、彼はレイスを抱えると、その中へ飛び込んだ。狼達はそれに気付かず、真っ直ぐに走っていく。
アークレイはほっと息をつく。そして自分達を助けた声の主へ目を向ける。
「感謝する」
アークレイは短く礼を述べる。声の主は微笑みながら答える。
「礼なんていりません。私の声が届いてよかった」
声の主は少女だった。一見大人びた面立ちをしているが、まだどことなくあどけなさが残る。年は二人と大して変わらないように見えた。青い髪とそれと同じくらいの透明感を持つ青い瞳が特徴的だった。少女の唇が動く。
「そちらの方は大丈夫ですか?」
少女はレイスへ顔を向ける。レイスは
「ああ、おかげで助かったぜ」
と短く言い、地面に仰向けになった。恐らくしばらく戦闘はできないだろう。
「大分疲れているようですね。今夜はここで体を休めたらどうですか?」
「だが、また狼が……」
「大丈夫ですよ、狼は火のあるところへは寄ってこないものです」
アークレイの言葉を遮り、少女は微笑む。
「火を焚きましょう」
そう言って立ち上がる。
「私は薪を拾ってきますね」
少女は闇の中に溶けていった。二人は呆然と少女を見送った。アークレイとしては一方的に決められたとはいえ、レイスを動かすことはできない上、好意を無駄にするのも気がひけるので、少女に従うつもりだった。無論、それが本当に好意であればな、とアークレイは胸のうちで呟いた。そしてレイスの意見を聞こうと彼の方へ視線を向ける。
「はぁ……親切な子だよなぁ。血なまぐさい旅の心のオアシスってぇか、なぁ!」
とにやけながらぶつぶつと呟いている。瞬間、彼の意見を求めようとした自分自身に腹を立てるアークレイだった。そんな彼の気持ちを露知らず、レイスは話しかける。
「世の中には親切な奴がいるもんだよなぁ! おかげで今日は安眠できそうだ」
「……そうだな」
答えながら彼は胸のうちで呟いた。
今日も安眠は望めそうに無いな、と。
やがて少女が両手に薪束を抱えて戻ってきた。彼の憂う気持ちを知ってか知らずか、彼女は満面の笑みを浮かべていた。


果たしてその笑顔は偽りなのだろうか。




2004/08/09(Mon)11:33:16 公開 / 水柳
■この作品の著作権は水柳さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 第五章を追加しました。更新の間隔が長いのが悩みです。8月までに終わらせるつもりが全然終わりません。こうなったら他の作品と平行して書くか! などと思ってしまいます。

第五章、ここに来てようやく女性キャラの登場です。男たちのむさ苦しかった話にようやく華が現れます。
僕は女性キャラを書くのははっきり言って苦手です。乙女心など全くわかりません。故に女性視点の恋愛物など苦手中の苦手です。故に今回は恋愛はほとんどなしになります(それもむさくるしいかなぁ

それはそうと暑いですねえ、最近。こんなんじゃ宿題なんぞはかどりません、はかどりませんとも。特に課題作文なんぞやる気にもなれません。
おまけに扇風機が壊れかけてピンチです。
今年の夏はいい思い出なさそうだなぁ(憂

最後になりましたが、卍丸さん、ストレッチマンさん、朱色さん感想ありがとうございます!!

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。