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『Love g@me』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:悠
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「恋愛とかさ〜普通にするなんてつまんなくね?」
そう、このゲームの始まりは、希のこんな一言だった。
第一章〜タクトの条件
希(のぞみ)と、親友の拓斗(たくと)と一樹(かずき)は、いつものように教室で会話をしていた。
この三人は、他から見れば素晴らしい、グループなのだ。
希は凄くかっこよく、同学年だろうが、先輩だろうが、相手をしたいと思う人が後を断たないくらいの人気。
「希は捨てるほど言い寄ってくる女がいるからな……」
拓斗は勉強が得意で、メガネを外すとカナリの美系。
ただ、チョット暴力気味なところが、あまり女子を近寄らせない。
「拓斗の言うとおりだね。で、何が言いたいの?希は。」
一樹はパーツがそろっていて、ジャニーズに入れば絶対に一番稼げるくらいの可愛い系で、理解力でこの三人組をまとめる。
そう、学年、否全校の中で五本の指に入るであろう男子が、三人も集まっているのがこのグループだった。
「流石一樹。物分かりがいい。前、漫画で読んだ事、本当にやってみたいんだよ。
例えば、拓斗か一樹が条件が書いてある紙を引く。
その条件が『長髪』と『背が高い』だったら、それに合ったヤツを探して、そいつをオトす。」
「悪趣味だな……」
「僕は楽しそうだと思うけどね。でも、賭けはナシだよ? 希が勝つに決まってるから」
「よっし! 多数決定! 拓斗、言っておくが、パスはなしだからな!」
言おうとしていた事を言われ、拓斗は口ごもった。
「じゃ、不参加を考えていたと思われる、拓斗君に最初に引いてもらいましょう!」
「お、おい……」
拓斗の意見を聞く前に、他の二人はルーズリーフを破り、言葉を書き始めた。
『部活』 『メガネ』 『背が高い』 『茶髪』 『色白』………
あっという間に、二十枚ほどの条件がかかれた紙ができた。
「さ、拓斗。この中から二枚引け!」
「はぁ……」
拓斗はいつも、希にはかなわない部分がある。勿論、勉強で負けたことは一度もないが……
諦めて、二枚の紙を引いた。
「っと、『家が近い』と『短髪』……」
言った瞬間、希と一樹はニヤリ、と笑い、同時に同じ、条件に合った人を思い浮かべた。
「拓斗、佐倉……渉チャンだっけ?あいつがピッタリじゃんかよ!」
「僕もそう思う! 拓斗、よかったね〜」
「な、何だよっ」
「別に〜」
二人は同時に言って、再び笑った。拓斗が昔から渉(あゆむ)の事が気になっていたことは、希も一樹も気付いていた。
「じゃ、拓斗君。朗報を待っているよ! 嘘をついても、ダメだからなっ!」
「おい、ちょっと待っ……」
キーンコーンカーンコーン………
チャイムが鳴り響く。一時限目は英語。先生が時間にうるさいので、みんな素直にサッと席に着く。拓斗も席に向かった。
いつものことだが、希には反論できない……何故俺が、渉を?
そりゃ確かに、俺は……否違う!家が近いから、他のヤツとはちょっと違うんだよ!
……あー、授業に集中した方がいいな……って、現在完了?! んなもん、バカでも出来るわ……
「おい、長谷部。ここ読め!」
不意をつくように先生に指された。指されたのと、命令形で言われたのがむかついたので、サラっと読み、先生を満足させた。
そして、授業終了。
「拓斗、お前やっぱ凄えよ!」
希がそう言って、拓斗の側に来た。
「何が……」
「エーゴだよ! さっきの……えっと、現在なんちゃらの」
「現在完了、な。別に凄くないと思うが……」
「凄えって!」
「ま、どっちでもいいんだけど、あのゲーム、渉じゃなきゃダメなのか?」
「ダメだよ。佐倉サンで決定!」
いつの間にか近くにきていた一樹が、すかさず言った。
「あとさー、希に有利になるから、告ってオトす、ってのはナシね?」
「別にいいぜ」
「拓斗は?」
「もー何でもいい……で、期限とかは? もし負けたら?」
「期限は……一カ月、負けたらおごりとか、パシリとか」
希が真顔で言った。これは、本気だと悟った拓斗は、勝たなくては、と決心した。
第二章〜アユムの気持ち
その後、拓斗にとっては非常に平穏な授業は、あっという間に過ぎ、放課後。
拓斗は日直なので、黒板を綺麗にしたり、黒板消しをはたいたり。
その横で、同じ日直の渉は、黙々と日誌を書いている。
渉は、特にずば抜けて可愛いって言うわけでもないけど、笑顔が向日葵のように眩しく、男子にも女子にも友達が多い。
でも、よりによって今日、渉と日直とは……神というヤツは、希の見方なのか?
「タク、日誌に書くこと、何かある?」
「俺はタクじゃない、タクトだっつーの」
「いいじゃん?別に」
にこっと笑う渉。憎めない笑顔。おどしたって怒ったって、渉には何も効かない。
まぁ、俺も本気で怒ろうと思っても、怒れないのだが。渉、可愛いし……
「で、書くことないの?」
「ってか、お前が何書いたんだ?」
渉の手から、パッと日誌をとる。整った、いかにも女の字で埋まっている。
「ほとんど全部書いてあるじゃん……」
「だって、私がやらなかったら誰がやるの? タクはやってくれないでしょ?」
「確かに……うん、書くことはねぇよ」
「じゃ、出しに行きましょう♪」
「は? 俺も行くの?」
「モチ!」
渉に手を引っ張られ、二人は職員室に向かった。
こういう事を、渉にさり気なく出来ると、いいんだけどな、なんて思う。まぁ、渉はそういう気持ちはなさそうだが。
「失礼しまーす! 先生、日誌終わりました」
「お、ご苦労。そうだ、長谷部」
「何すか?」
「外はもう暗い。お前、佐倉と家近いだろ? 送ってけよ」
「はぁ……」
チラッと外を見る。確かに、暗い。まぁ、先生に言われなくても、俺がこんな機会を踏みにじるわけがない。
「じゃ、先生、さようなら。失礼しました!」
「気をつけろよー」
先生の間延びした語尾が、ドアの閉まる音で切られる。校庭にはもうほとんど人がいない。
下校時刻が近かった。今までぼんやりとしか見えなかった月の輪郭が、だんだんはっきり見えるようになってきた。
教室には拓斗と渉の鞄しかなかった。
「タク、帰ろ! 私、夜の学校って嫌い」
「ちょっと待てよ……っておい、ひっぱんな!」
急かすように服をぐいぐい引っ張る渉の手を払い、残りの荷物を詰め込む。
「だって遅いんだもんっ! 早く〜」
「はいはい、渉嬢、只今」
パタパタと廊下を走る。
夜の学校……そういえば、前『学校の怪談』を見て、怖かったとか言ってた気も……
そんなことを思っていたら、外に出た。真っ暗だった。
冬は日が落ちるのが早い。
これは判っている事なのに、昇降口から校門まで外灯がないとは、どういう事なのだろうか……
「ふぁ〜……寒いねー。雪、降らないかな?」
教師に訴える計画を頭の中で作っていた拓斗は、拍子抜けな発言を聞き、我に戻った。
「雪……って、冬で寒いってコトから雪に連想するのなんて、子供か犬くらいだぜ?」
「どーせ、子供ですよーだ!」
舌を出していじけるが、寒い、というのは本当らしい。コン……と二人の手が触れた。
渉の手は、まさに雪のようだった。拓斗は無意識に渉の手を取る。
「ちょっ……タク?! 何を……」
「お前、寒いんだろ? さっさと言えよ……手、冷たすぎ」
「あ……」
うろたえる渉とつないだ手を、半ば無理矢理コートのポケットの中に入れる。
別に、前にこういう事をしたわけでもない。
が、ずっと手をつなぎたかった渉と、こんなに普通に手をつなげるとは…拓斗は自分でも驚いていた。
「こーすりゃ、温かいだろ?」
「う……ん、ありがとう。タク、手ぇ大きいねーそれだし、凄く……温かい」
「そりゃ、どーも……」
満面の笑みを浮かべて言う渉に対し、俯きながらボソっと言った。そして、二人の間に流れる気まずい沈黙。
その空気を壊すかの様に、チラっと白くて冷たいものが落ちてきた。
「わぁ……雪だぁ!」
パッとポケットから手を出し、はしゃぎ始めた。拓斗は近くにあったベンチに座り、渉を眺めていた。
「渉、お前やっぱ犬っぽい!」
「いーもん! 雪が好きだし。きゃっ、冷たい!」
公園内にある時計を見るため、メガネを指で押し上げる。
「ってーか、渉? お前、時間いいのかよ? 結構遅いってこと、知ってるか?」
「あ……やばっ!」
「まぁさ、また明日来りゃいいじゃん? 積もるかもしんねーし」
「そだねっ! タクも暇でしょ?」
「え、俺が?!」
「いーじゃん? ハイ、決定!」
「しゃんねぇなぁ……ほら、渉、帰んぞ!」
「はーい」
渉の頭に乗った雪をポンポンと払い、また手を取る。
冷たいのは変わりなかったが、見た感じでは、随分満足げな顔で頬を赤らめていた。
「送ってくれて、ありがとう! また明日ねっ!」
「お、おう……じゃあな」
あいつ、俺の気持ち、知らないだろうな……俺がどんな思いで手をつないでいたか……
そんなことを思いながら、家に向かった。
その夜、渉はいつも通り、メールをしていた。
『うん♪ 今日はね、タクトと手ぇつないで帰ったんだ! で、明日一緒に公園行く約束したの』
器用に親指でメールを打つ。
「んっと、desire@……うん、合ってる。送信、と!」
desireとは、『希望』のこと。渉のメール相手は希だった。
希は携帯を買ったときにインターネットの和英辞書で探し、使っていた。
携帯に慣れている希は、打つのが早い。
『へぇ、良かったじゃん? 佐倉って結構積極的だな(笑) まぁ、頑張れよ!
なんかあったらまたメールしてくれ』
……なんて。応援っつーよりゲームだから、佐倉にオチてもらうしかないんだけど。まぁ、両思いだし、楽かな?
決定を押して送信した。
ゲーム……そう、これはゲームなんだ。俺が渉にオチてどうするんだよ……
どうしても勉強に集中できなかったので、拓斗は寝てしまった。
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■作者からのメッセージ
お久しぶりです。
以前書いていた『Love g@me』をまた投稿させてもらいます。
感想いただけると嬉しいですっ!辛口評価も歓迎ですっ。
お願いします。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。