『紅の剣士 プロローグ〜5』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:戯                

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 地球。それがこの星の名前だ。といっても、我々とは違う、別世界の地球だ。我々の世界の地球は、科学の世界だ。しかし、これから始まる物語の地球は、科学の発達していない。そして魔法というものがある。魔法は、精霊、もしくは魔物の力を借りて自然現象を操るものだ。そんな世界だ。もちろん武器は銃ではない。剣や槍。弓などのレトロな武器。そして魔法。それで戦うのだ。しかもこの世界は、モンスターという邪悪な存在多少いる。
この世界で冒険する、19歳の冒険者兼剣士の話がはじまる・・・・。
 
 
 3年前


 「魔の森」という森がある。ここは数多いモンスターの巣窟である。しかも、ここにいるモンスターはどれも強い。本当の剣士でなければ、モンスターに殺されるのがオチである。にもかかわらず、ここに入る命知らずが多い。理由は森の真ん中にある洞窟の中に、宝が眠っているという噂がある。「彼」もその命知らずの一人である。
「ふう、疲れた」
 彼はつぶやいた。無理もない。モンスターと5回連戦したのだから。
「ちと休むか」
 「彼」は水筒のふたを取り、ごくごくの飲む。
 その時だった。「彼」の視界に銀色の曲線が光った。
「うわ!!」
素早くしゃがむとともに剣を抜く。
「不様だな。貴様も剣士ならばつねに回りに注意を払わなければならん。」
 見上げると、そこには鉄の鎧を着た、40代と思われる剣士が立っていた。
「ん?その鎧についている紋章。もしかしてバスガナンの兵士か?」
バスガナン王国。この近くに領土を広げている王国だ。極悪な王がこの国を治めるようになってから、政治は最悪なもので、逃げる国民が多いという。
「いかにも。わしはバスガナンの兵士隊長である。」
 そういうとマントを翻し、
「さらばだ。お主はまだ若い。ここは見逃してやろう。ここの宝はあきらめることだ。」
 と言って去っていった。
 が、俺は呼び止めた。
「なんでその兵士隊長が一人でこんなところにいるんだ?」
 兵士隊長が振り向いた。そして言う
「いや、王の命令でな。ここに宝があるという噂を信じてやって来た。もちろん一人で来たわけじゃないぞ。ただ、はぐれたり、死んだりしてワシ一人になったわけじゃ・・・・・」
 たしかに、兵士隊長の鎧は血にまみれ、傷が付いていた。
「部下が死ぬのは反対だったから一人で行くといったのだが・・・・」
「まぁ、わしがぼやいたところで部下が生き返るわけでもない。じゃ、またどこかで会うとしよう。」
 そういって、兵士隊長とかいうおっさんが去っていった。
「・・・・・・洞窟探すか」
 しばらく歩くと洞窟の入り口を見つける。
「って簡単に見つけたな」
 たしかに。が、気にしてはいけないぞ。
「まぁいいか。入ってみるか」
 一歩足を踏み入れてみる。
ガコッ
 足を乗っけた床がへこんだ。いわゆる罠を作動させるスイッチを踏んでしまったようだ。 
 が、なにも起こらない。
「まぁ、いいか。何も起こらないに越したことはない。」
 そう言い、光を後にし、暗い洞窟の中に入っていった。彼はラッキーだった。今のスイッチは全ての罠をしばらく作動しなくなる物だったのだから。

「まじで簡単についたな」
 「彼」は洞窟の最深部まで来た。何のトラップも無しに。
「まぁ、とりあえずこれはもらっていくか。」
 「彼」の目の前には紅い珠が台の上に飾られていた。「彼」が珠に触る。
「!!??」
 珠に触った瞬間、珠から紅い光がほとばしる。
『我が名はメジュシウム。誰だ? 我の封印を解いたのは?』
 どこからか、声が聞こえる。洞窟内に、とても低い声が響く。
『まぁいい。我を扱える力の持ち主か、試してみよう』
 目の前の珠が割れ、光が人の形を成す。
いきなりのことにぼーっとしていた「彼」はついていけない。
「まて、お前は誰だ? ここに宝はないのか?」
 「彼」はメジュシウムに質問をぶつけた。
『メジュシウムと言っておろうが。我は猛る炎の神だ我の封印を解いた者は試練を与える。分かりやすく言うと我と一騎撃ちってことだ。もし貴様が強ければ、お前に憑依して炎の力を与える。しかも不老不死、病気にかからないなど、メリットも多いぞ。憑依といっても意識はちゃんとある。たとえ怪我を負っても通常の人間より直りが早い。我にここまで喋らせた人間ははじめてだ。で、試験受けるか? ただし試験に落ちたら永遠の熱さを味わうことになるがな』
 シュラは考える
(まじで? 不老不死、病気にならない、傷の治りが早い、炎を使える? 素晴らしいじゃねぇか。でも落ちたらダメなんだよな。ハイリスクリターンて奴か。炎の力便利かもな。焚き火んときわざわざ火付け石を使わなくてもいいしな。戦闘も強くなる。よし、受けよう!!)
「分かった受けよう。たしか試練はお前とのタイマンだな?」
『ほぅ、分かってるではないか。では、いざ、参らん!!』
 メジュシウムがどこからか剣を出し、切りかかってくる。
「彼」は即座に剣を抜き、メジュシウムの剣をガードする。
『甘い』
 メジュシウムの剣から地獄の炎のごとく熱い炎が「彼」を包み込もうとする。「彼」は横に転び、回避する。そしておもっいきり地面を踏んでメジュシウムに切りかかる。
『速いな・・・』
 メジュシウムは手を前にかざすと、炎の壁が現れる。「彼」は壁の一歩手前に止まって、壁を回りこんで切り上げる。
『ぐあっ!!』
 命中。ひるんだ隙にもう一度切る。
『ぐあっ!!』
 更に切る!!
『調子に乗るなよ』
 メジュシウムが手を前にかざす。すると火の弾が「彼」の方に飛んでい
く。
 しかし、「彼」は避けると、剣をメジュシウムに投げつけた。予想にしなかったのか、身体に深く刺さる。
『ぐっ・・・・・・なかなかやる。いいだろう。我が炎の力、扱って見せよ』
 そう言い、メジュシウムは消えた。見ると紅い珠も消えている。
 本当に炎が使えるようになったのか? と「彼」は考える。剣を拾い、
「はっ!」
 思いっきり振ってみる。炎よ、出ろと考えながら。
ゴォォォォォォォォォォ!!
 剣から炎があふれでてくる。炎は使えるらしい。そして考える。宝って炎の精霊が封印されている珠の事だったのかと。そして今日はどこで寝るのかを。「彼」は歩く。新たな力を手に入れて、今日も戦う。

      1 ラセツ

ここはバスガナン王国のはずれ、スクリクの町。数多い酒がここに集まることで、酒好きの剣士達が集まる、有名な町だ。酒場も色々あるが、その中の一つに入っていく一人の青年が。
 年は21ぐらい。名前はシュラ・アークエネミー。皮の鎧に赤い、汚れたマントを着ている。彼も剣士だ。彼が酒場に入り、窓に近い席に座る。そしてワインを頼んで窓の向こうを眺める。
「おい、俺は金無いんだ。ちょっとくれねぇか?」
 シュラが振り向くと、視界に髭を生やした禿頭の男の顔が映る。が、また窓の向こうに目をやる。
「おい、とっとと金よこしな。それとも、力づくで奪われたいか?」
「五月蝿い。ハゲ親父は育毛剤を探す旅でも行ってきな」
 シュラがそういうと禿頭の男が斧をもって
「殺す!!」
バキッ
 シュラが座っていた席の机が豪快な音を立てて割れる。もちろんシュラは避けている。
「どこ狙ってんだハゲ」
「絶対殺す!!」
 ハゲの男が横薙ぎするが、シュラはしゃがんで避ける。そして、
「地獄の業火。味わって見る?」
ゴオォォォォォォォォォォ!!!!!
ハゲの男の身体が燃える。そして叫ぶ。
「たすけてママーー!!」
「いい年してなにがママだよ・・・・」
といい、ハゲの男の首を切る。
「さて。酒飲むか」
 そう言い、剣を鞘に仕舞おうとする。
ピキッ
「ピキッ?」
シュラが手首を見ると凍っている。
「人を殺しちゃダメじゃないか」
 声の方向に首を回す。視界に青いマントに金糸の刺繍の鎧を着た剣士が立っていた。髪と瞳の色は青。身長はシュラと同じぐらい。
「人を殺すなんて酷いじゃないか。殺さなければいけない理由があったのかい?」
「あっちが先に切ってきた」
「なら、話し合いで解決すればいいじゃないか。なんで殺すのだい?」
「・・・・・・酒飲む気が失せた。じゃな。マスター」
「まってくれよ。無闇に人を殺さないと誓えるまで、返すつもりはないよ。」
「誓えるか。タコ」
「誓ってくれないなら、戦うしかないね」
 そう言い、青髪の剣士は剣を抜いた。
「・・・・・まぁいいか」
 シュラは凍った手首を燃やして溶かす。動いたところで剣を握る。
「ところで君の名前はなんだい? 僕の名前はラセツ・アークエネミーだよ」
「これから死ぬ奴に教える名はない。ちなみにシュラ・アークエネミーだ」
そういい終わったあと、シュラは手をかざした。すると炎の弾ができ、ラセツに襲い掛かった。しかしラセツは
「すごいな。君は炎を使えるのか。」
といいながら剣を縦に振る。
その瞬間、蒼い風が巻き起こる。そして炎の弾が消える。風は炎の風を消すにとどまらず、当たった物すべてを凍らした。
「僕は、【蒼き剣士】と呼ばれているよ」
 そして剣を振り上げる。蒼い風が、修羅の真上の天井に当たる。すると天井に大きなツララができ、落ちる。が、炎によってツララか瞬間蒸発した。
「鳳凰炎華!!」
 シュラが剣を降ると炎が巻き起こる。その炎が無数の鳥の姿になり、ラセツに襲い掛かる。
「蒼龍氷歌!!」
 ラセツは剣を突きの体制にする。すると蒼い風が剣に纏わりつく。すると蒼い龍になり、口をあけてシュラを飲み込まんとする。
 二人の必殺技が激突する。が、白い煙を上げて消滅する。蒸発したのだ。が、まだ二人は戦いつづける。シュラが横薙ぎするとラセツは後ろに後退して突いてくる。シュラはそれを横に避けて、ラセツの顔に手をかざすと炎が飛ぶ。ラセツは首を動かしてそれを避ける。そして戦いが2時間つづいた。


「はぁはぁはぁはぁはぁ」
「ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇ」
 二人とも疲れ果てている。2時間も高LVな戦いを繰り広げていたらつかれるだろう。
「なかなかやるね。君も僕と一緒に邪悪なる王を倒しに行かないかい?」
 ラセツのいう邪悪なる王というのはバスガナン王国の王のことだろう。彼が王になってから、悲惨な政治が続いている。国から逃げる物もいるが、王によって連れ戻されるのがオチだ。ラセツは彼を殺して平和な国にもどすという。
「面白そうだ。いいぜ。協力してやるよ」
 別に当てもなしに旅している彼に、断る理由はない。国を相手に戦うのもまた一興だと考える。なので協力する。
「ありがとう。この国に、平和が訪れるまで、僕は戦う」
 そして一言
「疲れたね。しばらく寝ようか」
「ああ」
 二人は宿にチェックインして寝た。明日、激戦があるというのに、幸せそうに寝る二人だった。


     2 兵士隊長


チュンチュンチュン
 シュラは小鳥のさえずりに起される。朝だ。
「今日も輝ける一日をすごすか」
 シュラは鎧を着けて鞘を腰に挿した。ベルトも締めて、水筒と酒を入れる。なぜか火薬も。装備し終わった後、ドアを開けて店を出ようとする。  が、ラセツのことを思い出してラセツの部屋の前をノックする。
 言い忘れていたが、ここは【酒の町】スクリクからしばらく上に言ったところにある、小さな村だ。そのなか、たった一つだけの宿屋、オーガニッツである。宿賃は一晩銀貨4枚という安さだ。
 この世界の金はコインだ。銅貨100枚で銀貨、銀貨20枚で金貨一枚となる。ちなみに、普通の宿屋は銀貨15枚である。
 ラセツの扉をノックする。・・・・・反応なし。もう一回ノックする。・・・・・・反応なし。
「おいおい。まだ寝ているのか」
 ドアを開ける。すると開いた。
「おいおいおい。鍵もつけてネェよ」
 一瞬、ラセツが自分を置いて王を倒しにいったのか?と思うが、まさかラセツに限ってそれはなかろうと思い直す。
 ドアをあけて部屋を見渡す。自分がさっき寝ていた部屋と変わらなかった。当たり前といっちゃ当たり前だが。とりあえずドアを止めて鍵も閉める。
「うう・・・・・母さん・・・・・」
 ラセツがなんかうなされている。
「っ!! ラセツ?」
 シュラがラセツを起そうと、両足を持つ。そしジャイアントスイング!!
 ブンブンブンと聞こえて来そうな勢いでまわす。そして放す。
 ラセツはタンスの方にぶっとんで、タンスがべキッと音をたてて壊れる。
「やべっ、タンスこわしちった」
 しかしラセツは無事だった。氷に包まれていたから。
「チッ」
「うあああああぁ・・・・・やめてよ、やめてよぉぉぉ!!」
 まだうなされていた。とりあえずゆすって起す。
 ラセツの目が開く。
「うう・・・・・シュラ君?ここにいるのだい?」
「お前が起きるの遅いから起しにきたんだ」
「ああ、すまない。にしても嫌な夢だったよ」
そういい、ラセツは窓の向こうを見る。
「それは誰が見ても悪夢を見ていたとわかるぞ」
「そう、悪夢だね。目の前で僕の育った村の人たちが、王の兵隊に殺されていくのを見てた夢を。」
 王の非道な政治に反対した村町は潰されていく。彼の村もその一つだろう。
「僕の村のように、他の村の人が王の手によって死んでいる。一刻も早く王を倒さなければ、また罪のない人々が死んでいく。」
 そしてラセツはシュラを見て、
「だから、氷の力を手に入れて、剣の修行もした。でも、一人じゃ倒せない。だから、君が協力してくれると聞いて、大変嬉しかった。」
「ああ、暇だったからな。王倒したら城の金はすくねるぞ」
「ありがとう。君がいてくれたら心強いよ」
 その時だった。ドアが物凄い音で響くのは。
ドンドンドン!!
 だれかがノックしているのだろう。シュラは鍵を開けてドアを開ける。すると視界に薄い髪のおっさんが入る。
「私はこの村の村長です。助けてください。この村が王の兵隊に狙われているのです。今朝、村の者がこの村に向かって進軍中というしらせかず入ったのです。そこで兵隊たちを倒していただきたいのですが。もちろん私たちも戦います!!」
 たしかになんか騒がしい。
「はい。いいですよ」
 ラセツが即答する。 
「おいおい。めんどくせぇこと引き受けるなよ」
「なにをいうんだい? 正義のために僕は戦っている。この村を襲う邪悪なる兵士達を退治するのに断る理由はないよ」
 シュラは頭をおさえた。そしてため息。
「・・・・・・わかったよ。お前がそういうなら俺も戦う。おれら一応仲間だからな」
「では、戦っていただけるのですね!!??」
「ああ、でも二つ条件がある」
「なんです?」
「報酬として金貨10枚よこせ。後払いでかまわん」
「10・・・・枚ですか。村全体で払います」
「そしてもう一つ」
「なんでしょう?」
「お前等は戦いに参加しなくていい。俺等二人で十分だ」
「無茶ですよ。相手は100人の兵隊です。かないっこありませんよ!!」
ボォォォォォォ!!!
 シュラの手から炎が出る。
「俺たちは魔法が使える。だから安心してまってろ」
「シュラ君の言うとおりです。僕たちだけで行かせてくれませんか」
「・・・・・はい、分かりました。まもなくこの村に入るでしょう。村の広場で戦ってください。村のものは全員この宿にこもっています」
「ありがとうございます。シュラ君、いくよ」
 ラセツの方を見ると武具と防具を装備したラセツが立っていた。
「いつのまに装備したんだよ・・・」
 とシュラがつぶやいた。
パッパラッパパッパパーン
 ラッパの音と共に沢山の武装した兵が村に入ってきた。
 シュラとラセツは窓から飛び出して、魔法を使う。シュラは剣を地面に刺す。すると兵隊達の足元から炎が吹き上げる。
 30人減った。残り70人。
 ラセツも負けじと剣を天にかざす。すると天が曇り、雲の中から無数の雹が、しかもこぶし大の大きさの雹が物凄い速さで兵隊達に降ってくる。
 また30人へる。残り40人。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
 二人の魔法剣士の前に、兵士達が逃げていく。シュラが追い討ちをかける。
「鳳凰炎華」
 無数の紅色の鳥が兵士達を追っかける。同時にラセツも
「蒼龍氷歌」
 凍てつくし龍も兵士達を追っかける。そして命中。
40人→1人。一人だけ生き残る。
「また、わしの部隊が全滅してしまった。はぁ」
シュラは見覚えあった。3年前、魔の森であったあの兵士隊長だった。
「おお、お主はあの時の若造ではござらぬか。久しぶりじゃの」
 兵士隊長もシュラの事覚えていた様だ。
「え? シュラ君知り合いかい?」
 事情を知らぬラセツがシュラに聞く
「ああ、一回だけあったことがある。にしても俺達の魔法の前によく生きていられたな」
「ああ、それはわしが魔法を無効化するマントをしているからじゃ」
「なるほどな」
 魔法が効かない。でも、シュラは焦らない。剣の腕も天下一流だからだ。
「わしとお主は敵じゃ。戦うとしよう」
「ああ、いいぜ。まけねぇぜ。おいラセツ。俺はこいつと一騎打ちとする。邪魔すんなよ」
 シュラが相棒にそういうと、兵士隊長に切りかかる。兵士隊長はそれを剣ではじき飛ばすと、そのまま横薙ぎする。剣を飛ばされたシュラは兵士隊長の攻撃をしゃがんで避ける。そしてカエル飛びアッパーを兵士隊長のあごに食らわせる。はいった!!。士隊長の脳が頭蓋骨の中で揺れる。その隙に剣を拾う。兵士隊長はまだ動けない。アッパーはあごにうまく決まれば相手は脳が浮いてしばらく麻痺状態にある。ボクサーもこれ狙いでよくアッパーを使う。が、残念ながらこの世界にボクシングはない。
 麻痺からなおった兵士隊長は、剣を強く握って横薙ぎする。シュラは後ろに跳ねて避ける。そして前に踏み込んで突く。兵士隊長はそれを横に避けて片手で突き返す。シュラは顔を横にそらして避け、一歩下がって炎を噴出す。
「わしに魔法は効かないって事をわすれたのか?」
 そして炎が兵士隊長を多い尽くす。
「無駄じゃ」
 兵士隊長の鎧にこげ一つつかない。しかし、背中から衝撃が。
「ぐっ。馬鹿な・・・・・・」
 兵士隊長の背中に傷がついた。続けて腹に銀色の曲線が光る。
「ぐはっ!!」
「たしかに炎はあんたに効かない。が、炎を消滅させるわけではないからな。目くらましになるだろ?」
 たしかに炎に包まれては、炎しか見えなくなる。当然相手の場所も分からなくなる。その間にシュラは後ろに回りこんで切る。
「なるほど。炎を目くらましに使うとは・・・・ここは退いておくとするか」
 そういい、懐から笛を出して吹いた。すると何処からか紅の甲冑をした馬が駆け出してきて、兵士隊長を乗せる。
「わしの名はシュブルク・アーネット。【剣聖】ともよばれているよ」
「俺の名は、シュラ・アークエネミー。二つ名は無い無名の剣士だ」
「そうか・・・・・覚えていよう、お主の名を。では、さらばだ」
 シュブルクが去った。
「すごい戦いだったよ。シュラ君」
 ラセツが話しかけてきた。
「当たり前だ。伊達に剣士を名乗ってネェ」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 村人達の歓声が、大音量で響き渡る。そして村長が歩いてくる。
「ありがとうございます。まさか追い返すとは思いませんでした。これはお礼です」
 そういい、小さな袋を渡してきた。中身をみると金貨20枚。
「10枚でいいといったはずだが?」
 と困ってきいた。
「いえ、あなた方がいなければ村が壊滅していたはずです。このぐらいのお礼は当然です」
 とキッパリいった。
「・・・・・まぁいいか。ありがとよ」
「じゃ、バスガナン城にいくよ、シュラ君」
「ああ、じゃ、またいつかこここに来るよ。じゃな」
 そして二人は村を出た。村人達に見送られながら。
 そして思う。
(やっぱり馬欲しいな。歩くの疲れるんだよなぁ)
『ところでなぜ我が一回たりとも出ていないんだ?』
 すまん、メジュシウムのこと忘れていた。


    3 翼生やした少女戦士

 ここはバスガナン王国の首都、スラメギの表通り。とても大きな通りだ。
「おい、ネェちゃん。俺と楽しい事しちゃおうぜ」
シュラとラセツが歩いていると、槍を背負った戦士に、若い、18歳ぐらいの娘が絡まれいた。ラセツが助けようとしたら
「ヤダ。なにが悲しくてあんたみたいなキザ野朗と楽しいことしなきゃいけないのよ」
 と、暴言を言った。
「何だと固羅!! 俺に喧嘩売っているのか? いくら美人だからって容赦しないぜ」
 と槍を握った。しかし娘は口を開けて
「美人と言われて悪い気はしないけどあんたみたいな奴に言われるとムカツクんだよね」
 どうやら今の言葉で槍を持った男の堪忍袋の尾が切れたようだ。思いっきり降りさげる。
 しかし、娘は素早く、鮮やかに避けると、逃走した。もちろん槍男は逃がすまいと追っかける。
「シュラ君。僕達も行くよ!!」
 といい、シュラはラセツに手を引っ張られていくことになった。
 娘が裏路地に入った。槍男も裏路地に入った。ラセツとシュラも裏路地に入った。
 裏路地は、表の通りのように明るくなく、じめじめしてまるであの世への道みたいだった。ラセツとシュラがしばらく歩くと、行き止まりだった。
 槍男もいたが、娘はいなかった。
「ちっ、何処に逃げた!!」
 ちなみに表通りの入り口からここまで、狭い、一本道だった。見失うはずが無い。
「ここよここ」
槍男が上を向くとその頭が矢に刺さる。娘は屋根の上に立っていた。そしてラセツ達に気が付くと
「なに?あんたもこいつの味方?」
「ノォだ」
 仲間であるはずがないのでそう答える。
「ふぅん。じゃなんでここにいるの?」
「いや、僕達は君を助けようと思ってここにきたのさ」
 そういうと娘は
「そうなの?ありがとう。でも、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
 以外と礼儀正しい。改めて娘を見てみる。紫色の瞳、長く、さらさらな金髪。白い肌。いわぬる美人だ。
「じゃ、またどこかであえるといいわね」
 そういい、屋根の上を走って行った。意外と身軽だ。
「じゃ、誰もいないからここで作戦練るぞ」
「うん、ソウだね」
 作戦とは、例の王を倒すヤツである。相手は国王。一万人当たり精鋭兵が城の護衛についている。正面から入っても勝ち目無い。
「窓からの侵入は?」
「ダメだ。窓は二階しか無い。空を飛びでもしないと入れないよ」
「じゃどうすんだよ」
「なんかいい名案ないかい」
「ねぇよ」
『地下から行けばいい』
 低い声がした。後ろに振り向くと、男が立っていた。どっかで見たことあるような・・・・・・
『貴様等の足元から続く道がある。いわぬる抜け道がある』
「ってメジュシウム!!??」
『ああ、そうだ』
 炎の神、メジュシウムだ。
『たしかにここなら警備が薄い。というか無いわね』
「シャルティネ!!」
 高い女の声の主はどうやらラセツに憑依している女神らしい。
「で、その抜け道は何処にあるんだ?」
 と聞く。
『お前、我の話聞いていたのか?足元と言っただろうが』
「え!!??」
 足元をみる。ただのレンガ造りの裏通りの道としか見えない。
 メジュシウムはレンガの一つを取る。すると紐があった。シュラはそれを引っ張った。
ギリギリギリギリギリ
 地面が音をたてて割れる。割れたところになんと階段が。
「なんで知っているんだ?」
『神は何でも知っている(キッパリ)』
(はいはい、わかったわかった)

 四人? は階段を降りた。
「暗いな・・・・・」
 シュラは炎をつけてあたりを見渡す。どうやら先に進めるらしい。4人は歩いた。すると行き止まりになった。
(どうせ隠し扉だろ・・・・・・)
 シュラは壁に触れる。すると回転した。
「シュラ君。どうやら回転扉になっていたようだね」
(みりゃ分かるだろうよ)
 扉の向こうは明るかった。城の地下まで来たらしい。シュラとラセツは剣を抜く。そして出る。すると暗い灯火が見える。無数の檻が置くまで続く。いわぬる牢屋だ。歩きながら檻の中をのぞく。どれも白骨死体。もしくは腐ってうじのわいた死体だ。そのなかで、生きている者がいた。
 両手を縛られて、天井に吊るされている女だ。年は10代後半。気絶しているようだ。服装は鎧に兜だ。アマゾネスの女だと思ったがちがう。アマゾネスは女戦士で、鎧に兜をしているが、目の前の女は翼が生えている。ワルキューレだ。翼を生やした亜人で、アマゾネスより強く、空も自由に飛び、風をも操る、最強の女戦士だ。その少女がめのまえにいる。生きているようなので助ける。
 シュラは鉄の檻を炎でとかし、少女を縛っている鎖を切る。どさりと倒れる。シュラはそれを受け止める。一応寝かせる。シュラは女の顔をのぞく。ロングヘアの銀髪に、緑の瞳。翼を生やしている以外は普通の綺麗な少女だ

 しばらくすると、少女は目を覚ました。すると素早く立って、牢屋の隅に行く。さしてこっちに怯えた目を向けて
「何者?」
 と聞かれた。たしかに牢屋で見知らぬ男がいたらそう聞くだろう。しかも相手は武器をもっている。
 しかしシュラはやさしく笑って
「シュラ・アークエネミーだ。君を助けたんだよ」
「え?」
 少女はビックリした顔で聞いてきた。
「私、翼生えている、化け物よ? なのに助けたの?」
 どうやら今まで化け物扱いされてきたのだろう。
「ああ、そうだよ。だから君はここから逃げるんだ」
 そう言って牢屋からでだ。
「まって」
 シュラが振り向くと
「私も一緒に行く」
「なにいっているんだ?俺たちはこれから危険な戦いに出かけるんだ。危ないから君は帰るんだ」
 が、少女は
「貴方命の恩人。恩人に忠誠を誓うの、ワルキューレの掟」
「なら、俺の言うこと聞くんだな?」
 シュラがそういうと少女は頷く。
「ここから逃げろ。俺達のことは忘れろ」
 少女は驚く。が、無表情になると
「これから行くところ・・・危険?」
「ああ、危険だ。君を死なすわけには行かない」
「危険なら、貴方を死なすわけにはいかない」
 少女の意志は固いようだ。シュラは舌打ちすると、
「分かった。が、決して前線に来るなよ?」
 少女は嬉しそうな顔して
「うん、わかった。弓矢で応戦する。」
 たしかに弓矢なら、前線で傷つくことはない。
「で、君の名前は?」
「カーシャ。カーシャ・クーレン」
「シュラ・アークエネミーだ」
「僕の名前はラセツ・アークエネミーだよ。」
「じゃ、行くか」
シュラを先頭に、一行は、階段を上がった。新たなる味方、カーシャを連れて。王を倒してこの国に平和を取り戻すために。

   4 戦い

 階段を上り終えると、そこは広間だった。大理石の床。そして剣を持ち、丸い盾を持ったた骸骨の像。まるで本物のような像だった。
そして壁にはいろいろな絵が。しかもグロイ物ばかりだ。内臓が出て、泣く女。首を斬られた女の絵。身体中に針をさされ、血があふれ出る女の絵。極めつけは女の頭を横に裂いて、脳みそをすする男の絵。
 カーシャが思わず顔を背ける。
「悪趣味だな」
 そういって、シュラが骸骨触れると
『触るんじゃねぇ!!』
 そして骸骨が動いた。目に当たるところが黒く光っている。
『何年ぶりだっけ? この城に侵入者がはいってきたのは』
『まぁ、いい。楽しませてくれよ、侵入者達♪』
 シュラは一歩下がり、剣を抜いた。ラセツも剣を抜き、カーシャも何処からか銀色の弓を出す。
 戦闘開始だ。まず、初撃は骸骨だ。斜めに大振りを仕掛けてきた。大振りは力が入る分、隙があって避けられやすい。はずしたら危険だ。しかし骸骨のそれはとても速い。避けられないのを悟り、剣を両手でもってガードする。なんとか重い斬撃を防いだ。が、シュラの腹に骸骨の膝蹴りが入る。速い。かなり吹っ飛ぶ。が、シュラは一応鎧をしているので、ダメージは少ない。
 次の攻撃はラセツだ。全てを凍らす、蒼い風を纏った剣で横薙ぎする。骸骨は、剣は盾で防ぐが、青い風は盾を覆い尽くす。盾を持ったほうの腕も凍る。が、骸骨は360度横回転すると、ラセツの身体を思いっきり吹き飛ばす。骸骨の氷がくだける。ラセツは攻撃を食らう少し前に氷の鎧を纏ったので、ダメージはすくない。追い討ちをかけようとしたら、真後ろから炎が。振り向いてみるとシュラが立っている。
 素早くシュラの近くによると、強烈なストレートパンチを腹に入れる。シュラが頭を下げた瞬間、骸骨流カカト落としを決めようと、低くジャンプをして、片足あげる。
ヒュン
 骸骨の頭のそばを風が通り抜ける。風の方向に目をやるとカーシャが弓を持っていた。骸骨はそのまま着地するとカーシャの方に走ろうとした。
 が、シュラが骸骨の足に斬撃を与えた。骸骨の足の骨にヒビが入る。
『貴様ぁ!!』
 骸骨の目の光が黒から赤に変わる。
 骸骨はシュラの頭に素早く回転蹴りを決める。シュラが吹き飛ぶ。骸骨はシュラが立ち上がるとシュラの頭にとび蹴りを食らわせる。が、シュラは頭をかしげるように避け、隙丸出しの骸骨の頭に、爆炎の衝撃で威力を高めた斬撃を与える。頭蓋骨にヒビがはいる。さらにいつの間にか立っていたラセツが剣を振りさげる。頭に。
 さらにヒビがはいる頭蓋骨。シュラが追い討ちをかけようとするが、骸骨は盾を持ったほうの腕で裏拳をする。シュラはガードする。
『コ・ロ・ス!!』
パシュン
 骸骨の頭に矢が突き刺さる。そして頭蓋骨から光があふれる。当たり一面が白い光で照らされた後、視界が戻る。シュラは足元をみると頭蓋骨がばらばらになった骸骨が横たわっていた。
ザワザワザワ
 どこからか、兵士達が広間に入ってくる。
「やばいよシュラ君、今の光で兵士達が集まって来たようだよ」
「ちっこうなったら王の部屋まで一気に行こうぜ!!」
「イエッサー」
 シュラ達3人は爆走した。兵士達が目の前をふさぐ時も会ったが、燃えて灰になるか、二度と解けない氷に包まれたか、頭に矢が刺さるかのどれかの末路をたどった。


「ハァハァハァハァハァ」
「ゼェゼェゼェゼェ」
「・・・・・・」
 シュラ達一行は王の間の前に立っていた。ノンストップで走ったため、疲れている。カーシャ以外は。
「カーシャは疲れていないみたいだな」
 そうシュラが聞くとカーシャは答える。
「私は飛んだからそんなに疲れなかった。それだけ」
「そう・・・か」
 そうつぶやいて、王の間の扉を見る。
「野朗共、準備はいいか?」
「うん、いつでも行けるよ」
「・・・・・・・・・」
 シュラは扉を蹴り飛ばした。
「おい、国王いるか!!??」
 シュラは前方をみた。そこに、イスに座った国王がいた。
「きたか、息子達」
「あ?」
「息子達?」
「そうだ。お前等はこの私の息子だ」
「うそだ!!」
 ラセツは声を荒げてこういった。 
「僕の親は、お前に殺された!!」
「ああ、そうだ。だが、したかた無かった。たくましく育つよう、私はお前達を捨てたのだ」
「捨てた?」
「だが、結果的にお前達はたくましく、強くなって帰ってきてくれた。さぁ、父親と共に世界を征服しようじゃないか」
「断る。捨てられた俺達は、もうお前の子供じゃねぇ。いまお前の目の前にいるのはお前の悪政に終止符を打つために来た、二人の剣士だ。」
「そのとうりだよ、シュラ君。さぁ、悪は滅ぶ運命にあるのだよ。」
 そう二人はいうと、国王は笑い出した
「くっくっくっくっく」
「なに笑っているんだ?」
「なにが可笑しいんだ、国王!!」
 国王は、シュラたちに目をやる。
「私のかわいいペットの餌になれ!!」
 地面に二つの魔方陣が現れるそして光が出る。
「召喚・・・術?」
「いでよ、私のかわいいペット達!」
 魔方陣から現れたのは、赤いドラゴンと青いドラゴンだ。とてもでかい。
 が、こっちは
「いでよメジュシウム!!」
「いでよシャルティネ!!」
 鳳凰と蒼龍だ。
 勝負は一発で終わった。レッドドラゴンの吐いた火も鳳凰の炎に負け、逆にレッドドラゴンが灰になった。ブルードラゴンも、蒼龍の蒼い風に凍った。
「「覚悟はいいか? 国王」」
「フッ・・・私はすでに人間ではない。私は、無敵だ!!」  
 そういい、影に飲み込まれた。そして再び現れたのは悪魔だ。
「ワタシニカナウカナ?」
「だからなんだ」
 シュラの炎が悪魔を包み込む。
「グワァァァァァァァァ!!」
そしてラセツの蒼き風が悪魔をつつみこむ。
 悪魔は凍った。
 そしてこのときまで、力をためていたカーシャの矢が悪魔を消滅させた。
 はずだった。矢が悪魔に当たる寸前、氷が割れて回避した。
「・・・そん・・・な」
 カーシャが倒れた。今の一撃で力を使い果たしたようだ。
「どうした? もうおわりかな?」
 悪魔が笑っている。シュラ達は、ここに来る時にもすでに疲れている。そして今の戦い。残りすくない体力で持つか?
 勝率はかなり少ない。だが、負けるわけにはいかなかった。ラセツは特に村人の仇をとらねばならなかった。
「シネ」
 悪魔は、シュラに近寄るとパンチ連打を浴びせた。シュラは耐えるが、人間外の異常なまでの攻撃力にいつまでも耐えられなった。シュラは血を吐き、地面に屈する。
 残りはラセツだった。悪魔はラセツをみるとニンマリ笑い、ラセツの視界から消える。否、速すぎて見えなかったのだ。腹に強烈な衝撃。内臓が潰れ、アバラが砕ける音が、何処かで聞こえた。
(・・・・・そんな・・・馬鹿な・・)
「エイユウキドリノバカムスコハシンダ。サァ、セカイヲイタダクトスルカ」
 悪魔はそういい、部屋を後にする。が、悪魔は知らなかった。シュラ達が不老不死と言うことを。
 悪魔が凍る。悪魔の後ろの方には、ラセツとシュラとカーシャが立っていた。今までの怪我は少々癒えている。
「シンダ・・・ハズジャア?」
 氷の中の悪魔は質問をしてきた。
「悪いな。俺等は不老不死なんでな」
「ソンナ・・・バカナ・・・・」
「村人の仇、食らえ!!」
 シュラとラセツが、カーシャの弓に触れる。そして矢から全てを凍らす蒼き風と地獄の業火がほとばしる。
「「「お前は、この国に必要ではない!!」」」
三人の力をMAXまで高め、撃った矢が、悪魔に当たる。
「オボエテロォォォォォォオ!!」
 悪魔は消滅した。
 王は死んだ。それは悪政に苦しめられてきた国民が解放された瞬間だった。
「うっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!倒したぞ!!」
「村のみんな、見てくれたかい? 貴方たちの仇、今とりました」
「・・・・・・疲れた」



 そして城を出た3人は、町の人々の歓声を受けた
 この三人は、後々『英雄』としてバスガナン王国に語り継がれることになる。「紅の剣士」「蒼き剣士」「銀色の女戦士(ワルキューレ)」と。


  5 キリソマジュールキュリランクス・マモラードジャック

「ふぅ・・・・・疲れた」
 ラセツは、一人呟く。ラセツ達の王討伐から、2年の時が立っていた。
 ラセツは、バスガナンの王となった。やさしい性格に、一応頭はいい。バスガナン王国、最高の王だ。
 そんな彼は、窓を見た。そこは城下町が良く見える窓だ。今日も平和だ。と思った。ラセツが王になってから、犯罪数は0なのだ。ここは、とても平穏な国だ。あの事件が起こるまでは。
 隣国のハブアブアー王国が、大国のハンニル帝国に攻められているという知らせがラセツに届いた。ハブアブアー王国とは親しい仲なので、無視するわけにはいかなかった。バスガナン王国もそれなりの大国なので、兵の数は比較的多い。三十万あまりの兵がいる。だが、ハンニル帝国は戦争によって領地を広げていったので、軽く百万は兵がいる。隣国のハブアブアーも十万人程度しかいない。三十万+十万人連合軍VS百万人。数的に不利だ。
 が、勝算はある。シュラ達は、一人で通常の兵30万を蹴散らせる程の強さがある。そして、兵自身が強い。シュブルクがバシバシ鍛えているからだ。オマケに帝国にも千万人の国民が政治に不満を持っている。すなわち反乱が起き易いということだ。
 ラセツは、まずシュラ達に伝令を送ることにした。


 畑から野菜を引っこ抜く、一人の青年がいた。歳は21。が、外見は20歳で変わらなくなった。一応、髪は伸びたりするが、それだけだった。彼は不老不死になったのだ。炎の神の力もついて。彼は2年前、この国の王を倒した英雄の一人だ。が、今は首都から離れた、国境ギリギリの村、シュ−プで、カーシャと共に田舎生活を楽しんでいる。ときどき、村の男の子に剣を教えている。とにかく村の人々からの印象は良い。名前はシュラだ。
 シュラはいつもどおり、自分の畑の野菜でいつもどおりに夜食を食べる。もう、夕陽も沈んで、月がでている。
 シュラに近づく、一人の影があった。いつもより色が良い野菜が取れて御機嫌のシュラは気づかない。そして影は剣を抜き、シュラの背中を切らんと剣を振り上げる。
「シュラ、危ない!!」
 銀色の矢が、影に飛ぶ。影は、後ろに一歩下がってやり過ごす。が、今の声でシュラは影に気が付く。
「誰だ!!??」
 野菜を地面に置いて、いつも持ち歩いている名剣ハコボレを抜く。カーシャも弓で構える。そして、影の顔が月光に晒される。若い男だった。だが、シュラは彼の顔に見覚えがあった。男は、ハンニル帝国の若将軍だった。名前はキリソマジュールキュリランクス・マモラードジャック。名前がやけに長い事で有名だ。そして強さでも。
「あーあ、気づかれた。」
 キリソマジュールキュリランクスは、ぼやいた。
「危なかった・・・・・・。カーシャ、ありがとな」
「礼はいい。」
 顔を赤らめながら、カーシャは答えた。
「で、キリソマジュールキュリランクス・マモラードジャック。俺等二人を相手に戦うのか?」
 挑発的に、シュラは言った。
「逃がす気は?」
「無い」
 キリソマジュールキュリランクス・マモラードジャックの質問にシャカは即答した。
「結局戦うしかねーじゃねぇか!!」
 そう言った後、キリソマジュールキュリランクスはシュラに切りかかった。シュラは、それを横にかわすと、キリソマジュールキュリランクスに手の平を見せる。そして爆炎がほとばしる。キリソマジュールキュリランクスはとっさに避けたが、茶色の髪の一部が焦げる。
「うひょーっ!!怖いネェ!!」
 そういった後、シュラにダッシュで近寄る。シュラも炎で近寄らさせない。が、キリソマジュールキュリランクスはそのまま炎の中に突っ込んだ。
「!!??」
 シュラも流石に予想すらしなかった。そして炎の中からキリソマジュールキュリランクスが飛び出してきた。そしてシュラを切る。シュラは驚愕して、固まったままなので、腹を切られた。が、鎧を着ているので効かない。そしてそのまま反撃といわんばかりに横薙ぎする。が、そのころにはキリソマジュールキュリランクスは後退してた。キリソマジュールキュリランクスの服はあちらこちら焦げてた。銀色のきらめきがキリソマジュールキュリランクスの視界に入る。身体をそらして、それを回避する。
 カーシャは弓では当たらないと悟り、槍に変えてキリソマジュールキュリランクスにつっこむ。シャカも炎の塊を地面にぶつけ、その爆風で一気に距離をとる。二方向からの攻撃は、キリソマジュールキュリランクスには辛かった。カーシャの突き、シャカの炎を織り交ぜながらの斬撃。避け続けるのも限界だった。シュラの釈迦切りが、鎧ごと腹を切る。続けてカーシャの突きが肩に刺さる。
 キリソマジュールキュリランクスは、痛みに耐えながら、後退する。
「はっ!!」
 手から光が出る。その光を傷に当てると見る見る治っていく。
「俺は、回復魔法を使えるんでね」
 キリソマジュールキュリランクスはニンマリと笑い、
「二セカンドといこうじゃねぇか!!」
 キリソマジュールキュリランクスは、物凄いスピードでシュラのふところに入り、蹴り上げる。シュラの身体が浮く。そこにワン・ツーパンチをいれた直後に回転蹴りをかます。シュラが横に吹き飛ぶ。さらにキリソマジュールキュリランクスは剣を投げる。
 シュラは飛んでくる剣を空中でハコボレで叩き落す。そして身体を曲げて受身を取る。横っ腹が痛む。鎧を見るとひび割れが。
「チッ。二年間戦ってないから腕がなまっちまった!!」 
 そして立ち上がる。見るとカーシャとキリソマジュールキュリランクスの戦いが始まっていた。
 カーシャ槍で突きを出すと、キリソマジュールキュリランクスはその上に乗って、持っている腕のほうに槍の上を走る。そしてしゃがんだ後、ジャンプしてやさしく回転蹴り。だが、カーシャは吹っ飛ぶ。
「女蹴っちまった!!」
 が、カーシャは翼を広げて空中に留まるそして上に飛ぶ。
 キリソマジュールキュリランクスは上に飛んでいるカーシャを見ていた。後ろに立っているシュラに気づかずに。
ザシュッ!!
 赤い液体がキリソマジュールキュリランクスの背中から飛び出る。
「マジ・・・かよ」
 そして火炎がキリソマジュールキュリランクスを包み、シュラは蹴り上げる。一瞬宙に浮く。キリソマジュールキュリランクスの腹から槍が飛び出る。
 そう、高く飛んだカーシャが、急降下で降り、その勢いで宙に浮いてたキリソマジュールキュリランクスの腹を貫通した。
 この時点で勝敗は決まった。腹に大穴。しかも全身火傷の超重症。だが、シュラは捕虜として城に運び、治療をした。
 以前昏睡状態である。このことで、ハンニルの帝王は怒り、ハンニル帝国はバスガナンに攻める・・・・・・。

 



2004/05/31(Mon)23:53:20 公開 /
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■作者からのメッセージ
ただ、考えもなしにかいたファンタジー物です。

どうも、戯です。目標は100点です(無理だから)
一応まだまだ書く予定です。
でも。今左腕骨折しているので更新が遅れますが、ご了承を・・・・(汗)。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
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