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『覆ウハ、雫【8】』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:湯田
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〜序章〜
<1>
俺は、雨が好きだ。
雨が大好きだ。
だが、俺の言う「好き」は「愛情」に繋がるそれではなく、だらだらと続く依存の一つの帰結点であるそれだ。
天から降り落ちる無数の雫は、まず髪を濡らす。
そして髪の表面をある程度滑ると、徐々に頭皮へと染み込むようにして沈んでゆく。
同様にして、雫は衣服を濡らし、また同様にして、染み込む。
徐々に「湿り」を感じる俺は、自分が濡れていることに実感を湧かせる。
自分の体と外界の境界線が限りなく細くなっているのを感じる。
そして錯覚する。
俺もしたたる「雫」の一つになったのではないか、と。
もしくは雫が俺の体を、感覚を、精神を、全て覆って何処かに隠してしまったのではないのか、と。
そこまできてしまうと、もう俺は俺を見失ってしまう。
どうしたらいいのか、わからなくなってしまう。
ただ呆然としたたる水の音に耳を傾け、ただ呆然と優しく頬を触る雫を感じ、ただ呆然と疲れた色の空を見上げてしまう。
「時間」の概念も、失ってしまう。
「経過」も「変化」もない雨の音、空の色のせいで、俺はこの世界がただ「今」を平行して横へ横へただ貼り付けたように引き延ばしているだけのものではないのか、と錯覚する。
周囲の事物などまるで見えなくなる。
「背景」でもない。「装飾物」でもなくなる。
単純に、「見えなく」なってしまう。
色を、動きを、音を、失ってしまう。
だから、
「聞こえるかしら?ボク?」
だからこんな風に声を、
「ぬぶ濡れじゃない・・・困ったわねぇ・・」
声をかけてもらわないと俺は「帰って」来れない。
そうだ。困ったものだ。
「・・・・・・・もう!」
ただ、
「・・でもまぁ、起こす必要もないか」
ただいつもと違うのは、
「・・・・ふふ」
・・ただいつもと違うのは、声をかけたのが女性だったこと。
そして、
そしてこの直後俺の脇腹に刃物が差し込まれてしまうということだった。
<2>
俺は俺のことを少し変なヤツだとは思う。
だって、そりゃそうだ。雨の日に傘もささず公園の真ん中で空を見上げ、たたずんでいる学生なんて誰の目にも「常人」には映らないハズだ。
俺自身もそれは自覚しているし、ある意味開き直っている部分もある。
だが自分が「変人」か「常識人」のどちらだと問われたその時は、多分俺は後者の方だと答えるんじゃないだろうか。
俺はそこまで自分が狂っているとは思っていない。
それなりの道徳心もあり、それなりの一般的な価値観も持ち合わせている。
そして何より、「自我」を備えている。
俺の、俺自身の、この「自我」の存在を俺がしっかりと掴んでいる間はどんな奇行が目立っていようとも、自分はギリギリ「常人」の枠の中に収められていのだと俺は思う。
だから、俺の右の脇腹に痛みを伴う感触に気づき、その痛みの要因がその部分から生えている刃物らしき物の柄にあるとわかったとき、俺は素直に恐怖を感じたし同様にごく自然な反応を返すこともできた。
「あ・・あぁ・・ぁああぁあ・・」
叫ぶにも叫べないってやつだろう。言葉にならないうめき声。
無理もない。自分の身に起こっている「非現実的」な事象を「現実」のものだと受け止めるのは、とてもじゃないが冷静にやってのけることではない。
だから俺が今起こしている一種のパニックだって、ごく自然の反応。
誰だってこうなるのだ。
ゆえに、やはり俺は正常だ。
そして正常でないのは、この女だ。
「そうそう、偉いわね。叫ぶと開いちゃうからね。」
とても綺麗な形のとれた笑顔で女は言う。
だがその視線の先は傷口に向けられているワケでもなく、あくまでも俺の顔、つまりは俺の表情を「観察」している風だった。
急に雨水が冷たくなってきた気がする。
水の音が大きくなってきた気がする。
あまりの恐怖に体が全ての感覚を取り戻したのだろうか。
それとも、その逆か。
やがて刃物の柄からも雫がしたたり始める。
少しはみ出した刃の根本にも銀色の光沢を放つ斑点をつくり、ギラギラとした輝きを丸みを帯びた優しいそれへと変貌させる。
どれぐらいたったのだろうか。
いや、正味2分ぐらいだったのだろう。
俺は自分の吐く息が白いのに気づき、同時に傷の痛みがそんなに対して大きいものでないのに気づく。痛みを誇張させていた「恐怖」が薄くなったからかもしれなかった。
そこでようやく考えることにした。
如何にして、この狂った女の前から姿を消すか、を。
と、言うよりは「どう生還するか」を、だ。
あいにく俺は異常者の心理など解していない。ゆえに、異常者に対する接し方など小指の爪ほども知らないし、知ろうとした事だって一度だってない。
というか、それが普通一般の学生じゃなかろうか。
だからその女から「私の部屋で治療してあげる」なんて言われたときは本当に返す表情さえも見つからなかったし、それまで難儀して候補に挙げたいくつかの対策案も何処かで砂になってしまった。
<3>
もちろん同意なんてするハズもない。
至極当然、聞くまでもない。
「治療」? ほほぉ。
この女の言う「治療」は果たして「治癒」に繋がるものなのか。
いやいや想像できたもんじゃない。少なくとも俺には。
俺はただ単純に拒絶している。この女を。この狂気を。
にも関わらず自分の膝から、腰から、腕から力が抜けていくのを感じた俺はつくづく俺を呪い、また失望してしまった。
(おいおいお前もう力尽きるのかよ。脇腹チクッと刺されただけじゃないのか?それとも何?アレか?優しい言葉かけてもらって力抜けちゃったって?おいおいお前本当に死んじゃうよ殺されちゃうよ?冗談じゃないよ?何やってんのよ起きろよ起きろよオイ。起きろ起きろ起きろ起きろ!!)
という風な感じで引きこもってしまう俺の、俺自身の「自我」への呼びかけというか説得というか、そういうものの努力も空しく、今度は瞼がものすごく重くなってきたのを感じて俺はさらに深い深い悲しみを感じる。
(あぁ、お前はやっぱり駄目だね駄目駄目。本当に「駄目」。死ぬんだよ殺されるんだよ。っていうかお前死んじゃっていいんじゃないの?死にたいの?殺されたいの?ならいいんじゃないの?死んで来いよ殺されて来いよ)
俺までもがこの「俺」を見限ってしまったら、誰が「俺」に手を伸ばすと言うのだろう。そして伸ばされた手は俺を生かすのか?殺すのか?
そもそも俺は「俺」を生かしたいのか死なせたいのか。俺は俺に助けて欲しいと思うし、俺は俺にそうしてくれるものだと思っている。というか、そう俺は考えているのだ。あ、いや、そのハズだ。俺はそう願っている。
・・・ん。
まずい。相当混乱してるなこりゃ。何がどう定義されてどの「俺」になるのか、もしくはなっているのかが不明瞭だ。これじゃキリがない。
せっかくここまで積み上げた「思考」のパズルタワーだが、土台がしっかりしていないのでは話にならない。しっかり、跡形もなく、崩してしまえ。
そうだ。
一旦全てを崩せ。忘れてしまえ。
楽になれ。
まどろむ意識の中で俺は確かに降りしきる雨に、その雫に自分が溶け込んでゆくのを感じた。溶けてしまった俺は、地面を這い、また新たに降り落つ雫と溶け合い、その身を窪みに溜めたり、またあるいは傾斜面をゆっくりと滑ってみたりして弄んでみた。
俺の体は透き通っていて、その中に見える全ての物を幻想的に歪ませ、どろりとした光を反射させた。
「重力」の概念を、いや、体に加わる全ての「抵抗」を忘れ、ストレスを忘れ、俺はその身を、繋いだり、千切ったり、滑ったり、留まったりさせて絶えず形を、感触を変えていた。
そして時々、疲労の色がかかった、しかしどこか包容力を感じさせる曇り空を見上げた。俺の体を通して見る空はゆらゆらと揺れて、そのか弱い光を様々な方向へ引き延ばし、時々その模様に「波紋」の仕様を加えていた。
俺はしばしその光景に見とれる。こんなに美しいものは見たことがない。
美しい空。そして美しい俺の姿。
だが、長くは続かないのが「幻想」の事象であり、またそれが非現実的なものであれば、さらにそれはそうあるべきなのだ。
俺は俺の体を通して見る空にやや赤みが差してきているのに気づく。
いや、正確にはそれは俺の体ににじみ出たものだった。
考えるまでもなかった。
それは俺の血だ。
何処かで流し、忘れてしまった俺の血。
その「俺の血」が図々しくも今のこの俺に溶け込み、また引き戻そうとしているのだ。思い出させようとしているのだ。
ゆえに俺は戻らなければならない。深い深い闇を越え、その先にある気だるい空気を吸いに浮き上がらなければならない。上へ上へ。
「・・・・かは・・ぁ・・」
軽い頭痛で目が覚める。
全く、まだ俺は生きてるらしい。
自分の物でもない見知らぬベッドに横たわっているというのに、俺は安堵してしまった。とりあえず、生きている。素直に感動してしまう。
上半身が裸なのに気づき、恐る恐る脇腹に手をやると包帯らしきものの感触を指先に得ることができた。俺はとうとう脱力してしまう。
「ふぅ・・・」
あきれたものだ。俺も。そしてあの女も。
<4>
俺は確認しうる限りの情報を、その五感であたってみる。
部屋には俺の寝ているベッドにパイプ椅子、粗末な三脚机しかないようだ。
パイプ椅子はちょうど俺のベッドに向ける感じに置かれていて、正しくあの女が俺が目覚めるまでにそこに座って俺を「観察」していた事を物語る何よりの証拠に成り得た。
壁は、とにかく白い。というか、全くいじってない感があった。が、一応なりには管理しているのか、汚れた様子もなかった。
俺はベッドを出てみる。
露わになった上半身には、確かに女の言っていた「治療」の跡らしきものがあった。あくまで、「らしきもの」だが。
不意に、鼻をつんと刺す臭いに気づく。強いアルコール臭。どこから漂うものなのか。何から放たれる臭いなのか。想像しないことにする。
俺は少し歩み出て、その例の三脚机に近づく。すると、その過程で俺は足下に俺のカッターシャツを発見する。それを回収しつつも机との距離を縮める俺は、さらにその机の上にある物を発見する。
それは、余程近くで目を凝らして見てみないと確認できないものだった。鉛筆らしきものによる落書き。薄くて、細くて、少しにじんでて、それが随分前に書かれていたことがわかる。
Singing in the rain
まぁ何というか落書きにしては上出来、いや、あの女にしてはマトモというか、何と無しにその落書きは俺の予想を裏切って物足りなさを何処かに感じさせた。
あまりにも「落書き」、「落書き」らしい「落書き」過ぎる。俺の中の冷え切った部分では既に「読解不能な文章」か、それとも「具体的な負の感情を表す絵」などに対する覚悟みたいなものが立派に出来上がっていたのに。
とか何とか思っていたところに例の女が登場してきて俺の心臓は2,3センチほど持ち上がった。
「おはよう」
多分、そんなことを言っていたんだと思う。だが確信はない。俺は必死でドアまで急いだからだ。それにしても、あぁ、なんて俺は馬鹿なんだ!「恐怖」は現実にまだあって、俺はその現実に帰って来たっていうのにそれを忘れてしまっていたのだ!そしてその「恐怖」がすぐ近くで俺のお目覚めを心待ちにしていたことも、だ。
俺はさらに俺を呪う。
ドアは回しても引いても押しても蹴っても返事をしなかった。畜生やられた畜生畜生畜生畜生!!
だが女はかまわず歩み寄ってくる。じらすように、舐めるように、ゆっくりゆっくり、ねっとり、ねっとりと。俺はそこで初めて自分の足がガクンガクンに震えているのを確認する。だがもうこの際関係なくなった。退路が無いんじゃ、その足も使いようがない。潔くってのも変なのだろうが、このまま動かないでいる方が意外と助かっちゃったりするんじゃないだろうか?
だがそんな考えも所詮は誤魔化し。自己暗示の上塗り。
女との距離が縮まるのに合わせてそのメッキも次第に剥がれてゆく。
ついに女の顔が眼前30センチぐらいに迫った時には、既に見てもられないパニック状態。言葉にもならず、大仰なジェスチャーのようなものも盛り込まれたわけのわからない命乞い。
でも駄目だね。本能的にも俺は察知しちゃってるんだろうね。「終わり」ってやつを。
だからなのだろう。俺の中の「自我」もしくは「理性」ってやつは女の左目のみに飾られた長い付けまつげを見つけたのを最後に、さらさらと粉に分解されて何処かへ飛ばされてしまった。
そんなわけで、俺の「理性」も姿を消し、同時に俺の意識も何処かへ引き抜かれちゃったわけだから、俺はその後何があったか知らないし、知る術も無い。当然「その後」がどんなに長いものであっても、その時間的な「概念」もしくは「感覚」もその時の俺には全く適用されなかったわけで、俺は少し瞬きをしただけのつもりだったのかもしれなかった。つまりは「しばらくした後」というようなものが、その時の俺には「次の瞬間」だったわけだ。
とりあえず俺は未だに雨止まぬ中、再びあの公園で目を覚ますことになる。
<5>
傷が塞がるまでの2週間はいろいろと酷かった。
公園で目を覚ました俺は、痛み消えぬ腹をおさえながら帰宅し家族を仰天させ、そのまま眠る間もなく車に詰め込まれ病院へ運ばれた。
そして俺の受けていた「治療」が妥当なものだとわかると、家族は一安心したが後に今度は警察へ連絡して、俺をタバコ臭いオヤジ三人の前で何度も何度も同じことをしゃべらせた。
「犯人の背格好は?」「犯人の顔の特徴は?」「刺された場所は?」「どれぐらいの年齢だった?」エトセトラエトセトラ。
それが夜遅くまで続いて、やっと解放されたと思ったら今度は「PTSD」がどうのとかで知り合いのメンタルクリニックでまた同じ事を何度も何度も話すことになった。
でも本当に大変なのはその次の日からで、俺はそのメンタルクリニックに通ったり色々な「被害者の会」みたいなものに見学の形で出席しなければならなくなる。あぁ、可哀想な俺。
それでそんな退屈でもなければ別段楽しいことも無いクズのような日常が一週間ほど過ぎると、「頃合い良し」と見たのか、例のタバコ臭い三人組が頻繁に家に訪ねてくるようになり、ついには俺の部屋にもづかづかと上がり込んで例の聴取を頼んでくるようになった。
でもあいつらも流石に、同じ返答を何度聞いたところで何らかの進展が期待できるわけもないことはよくわかっているらしく、質問の形態を徐々に変えることに決めたらしい。つまり、たどり着くであろうという「結論」をあいつらなりに考え直したのだ。しかし結果たどり着いたそれが今回の場合、「自作自演説」だったわけだから当然俺は腹を立ててしまったわけだ。
でもこっちがどう拒絶しようが相手は「公務」。結局俺の意志に関係なくそれは俺がメンタルクリニックに関わらなくなるまで続くことになった。
「気分が悪くなったら、先生に言うのよ。無理して我慢することはないからね」
「だからもう大丈夫だって」
そして今日に至る、と。
カバンを持ち上げて、いつものように背中に回そうとするが脇腹が少し痺れる感じがしたので普通に前に下ろして持つことにする。
いつもはこのあたりで如何にも眠そうで、且つ不快な表情を作りながらドアを開けるのだろうが、今日はどうも違うようだ。そんな感じがする。
ふと思い出して俺は聞いてみる。
「・・・そういや、叔父さんは?」
「またお仕事で東京だって」
「そっか」
俺の格好いい叔父さん。ダンディーで頭のキレる叔父さんは、与党本部で働くバリバリのエリート議員。俺の将来の目標は親父でなくて叔父さんであり、それは昔からだった。あんな風に人望が厚くて、格好良くて、頭がキレる素晴らしい男になりたいと何度夢見たことか。
そんな叔父さんはもちろん俺が刺されたと聞いたときは翌日東京から飛んで帰ってきてくれたし、しつこく訪問してきた例の三人組を一度だけ追い返してもくれた。
でもそこらへんは何というか、流石は叔父さんと言うわけでいつまでもプライベートを引きずるわけでもなく、先日からクールに仕事へ戻ったわけだ。
そして、俺も今日から「クールに」とは言えないかもしれないが、ともかくは日常に復帰するわけだ。
「んじゃ行ってくるわ」
ドアを気持ち勢いよく開ける。同時に外界の匂い、音が、俺を包む。
「爽快」ってやつだろう。俺の吸う空気も透明になり、踏みしめる地面は俺を少し押し返しているような気がした。
しょうもない根拠ゼロの迷信だが、これだけ悪いことが俺には起こったんだ、これ以上事態は悪い方向には進まないハズだ。そう願いたい。
俺はその勢いを保ちつつ、電車に乗り、降り、歩き、門をくぐり、階段を昇り、廊下を歩き、教室の前でその足を留めた。と、そこで靴を履き替えて居ないのに気づいたのでロッカーの前までまた少し歩く。
俺は俺の名が書かれたプレートが掲示されたロッカーを、日常によってもはや並列化されてしまったような「視点のコース」に目をつたわせて辿り着く。
「椿原(ツバキバラ)浩一(コウイチ)」、これだ。俺は一旦カバンを下ろし、そして再び顔をあげて視線をロッカーに戻す。
不思議なものだ。カバンがあの一件によって紛失してしまって、新しいものになった事を除けば、サボったこともあったがまぁそれなりに一週間の内に2,3回以上は見ることのあった気だるい「登校の雰囲気」と状況はうんざりするほど合致しているのに、当の俺が、または俺の中の俺の意識、意志が2週間前までのそれと酷く違っていた。
「日常」に戻ったことによる安心感、意識するうちに入らない内からの「感動」なのだろうか?でももしそうだとしたら、それはとてもとても可哀想な話だ。一回や二回の特異なる経験で、酷く下らない日常に「感動」なんてものを僅かにも感じるなんて。それこそ感動ものだ。
でも安心しろよ俺。
どうやら俺の中のそれは、全く以てそういう類のものじゃないらしい。
いや、きっと違う。かけらも残さず違う。
じゃなきゃ、ロッカーの中から血のシミがべっとりと付着した紛失したハズの俺のカバンが転がり出てきた時点で俺はパニックになっていたハズだし、例えそうしなかったとしても、少なくともそのカバンにご丁寧に施されているリボンによるラッピングを見ても表情を「笑み」の形へ歪ませることは決してなかったはずだ。
だから、確信していいんじゃないだろうか。
俺は、きっと「期待」していたんだろう。確実に。それを。
<6>
それにしても見事なものだった。
漆黒のバッグにもはや赤黒くなってしまった乾いた血のシミが飛ばされた、さらにその上にその二つをがっちりと収束して離さないようにして巻かれた深紅のリボン。俺はそのラッピングセンスに感銘を受け、馬鹿みたいな話だがそのリボンの型が崩れないように気を使って慎重にカバンを開けて中身を確認する。
別段、変わったこともない。そこ押し込まれているのはびしょ濡れの可哀想な俺のテキスト。びしょ濡れの可哀想な俺の筆記具。びしょ濡れでザマぁ見ろの俺の未提出の課題。
うぅむ。しかしこれでは何をラッピングしたものかわかったもんじゃない。
納得のいかない俺はあろうことか「探して」しまう。それ以上関わる理由も、必要も全くないのに、あの女が施した別の何かを。その「何か」が必ずどこかにあると予感めいたものを感じたわけでもなかったし、また何かしらの思い当たる節があったわけでもないのに。
ただ、見つけたかったから、「探した」。
そして俺は見つけてしまう。リボンに打たれた彼女のギフトメッセージを。
何の意味も無く、且つ酷く重い「可能性」を。
<<芸の無い猫には、父がいない母がいない弟がいない兄がいない妹がいない姉がいない飼い主がいない。芸の無い猫は、目がない口がない鼻がない色がない。だから誰も探さない。誰にも見つからない。でもそれじゃすごく寂しいから、寂しすぎて泣いちゃうから、芸の無い猫はイタズラをする。嘘をついたり子猫を引っ掻いたり引っ掻かせたりする。怒った猫達は芸の無い猫を追いかける。そして芸の無い猫はネズミを追いかける。>>
俺はまたまた感心する。いやはや、たかだか学生カバンを5,6周ぐらいしかできる余裕のないこの長さのリボンに、こんな長文をそれることなく真っ直ぐに打ち込んでいるその几帳面さ、いや、完璧主義の徹底に。
外見的な面もさることながら、その文面もまた素敵だ。一点の曇りもなく彼女を綺麗に異常者だと物語るなによりの痕跡。簡潔でいて、とてもとても苦い。苦い苦いこの感覚が強烈に俺に異常心理の何たるかを焼き付け、それどころか俺の皮膚も少しとっていってしまったのではないかと疑うほどの痛みのような、またはそれとは違うが決して遠くはない印象を記憶させる。
しかしながらそれは同時に俺の胸を締め付け、呼吸を乱し、ところどころの筋肉を痙攣させ、喉を乾かせ、口元を歪ませた。
つまりは俺は興奮していた。この新しい刺激に、胸躍らせていた。言いようのない猛りが自分の中で動き出したのを目を逸らさずにしっかりと見守っていた。だが何処かでそれを抑えようとする自分が居るのもまた知っていたし、それが正しいのだとは重々承知していたので俺はそっちの俺に賛同して、猛る俺を抑えることにする。
ーーさて。
落ち着いたところで俺はもう完全に日常とやらに面倒な感情を持ち合わせていなかった。目が覚めた。並列化され、ほぼ全ての行動に制限、または統一が計られるのが「日常」。だから、その、何というか、知っているのだ。大体の流れが。事細かにそれが見えるわけじゃないが、大まかな筋が。
多分、今教室へ足を踏み入れても、考え得る反応は馬鹿馬鹿しいほどに限られてくる。「大丈夫だったか?」「心配したよ」「今の具合は?」。皆それぞれの表情を何とかズレないように持ち寄ってくる。さもこの2週間は気が気でなかった、というような表情を。でもそんな表情も、言葉も、対象物へのファーストコンタクトゆえの「様子見」、「牽制」。
例えこちらが返答を返さずとも奴らが大丈夫だと合点したのなら次の対応も決まってくる。「刺したのはどんな奴だった?」「どうやって刺された?」「どうやって助かった?」。なんじゃこりゃ。これじゃぁ、あのゴミのような2週間と何も変わりないじゃないか!
まぁ、しかし俺も犯人に関する何かしらの特徴を頭にしまっておけば僅かにでも自発的に話す気が起こらないでもないのだろうが、そういうものが俺の頭の中には「笑顔の綺麗な女」ぐらいな記録しか収録されていないのだから仕方がない。
だから余計に、尚更に俺は辟易する。あの教室の中で今も俺の入室を心待ちにしているのであろう奴らに。または、連日しつこく押し掛けて全くと言って良いほどの情報が俺から搾り取れないのがわかると、即座に姿勢を切り替えて俺に食ってかかったあの三人組に。
そして俺は解している。
俺も、教室の中のあいつらも、あの三人組の誰にも言及されるべき非は全くない事を。俺は聞かれたことに答え、出来うる限りに頭を動かして記憶が語る情報を綿密に一つ一つ洗い出したし、例の三人組だって言うなれば疑うのが仕事であって言いようによっちゃ何処かで俺を疑わなければおかしかったかもしれなかったわけだし、教室の中のあいつらの場合は、これはもう何というか一番救われないわけで、あいつらも結局は「日常」というやつに辟易しているハズなのだ。だから俺にいろいろと迫りたがるのは、そこから「日常」から遠ざかることのできる何かを、「日常」から一時離脱した特異なる経験をした俺から何かしらの感覚を得て、且つ共有したかったわけだ。
皆が皆、ごく自然に動いてる。
いや、「自然」か?
まぁいい。そういうのが日常だ。俺の大嫌いな。
俺はカバンからリボンを解いて、それを今持ち合わせている新しいカバンに詰め込むと、靴を履き替えることなく階段を降りた。
帰ろう。
今日は、何となくここに居てはいけない気がする。
居ない方がいい。
帰ろう。
俺は滑るようにして階段を降りる。降りて降りて降りて降りたところで、ふと思い出して足を止める。
そうだ。
せめて井上先生には、顔見せておこう。
<7>
俺は図書室の前の消化器の隣に、膝を抱え込む形で座る。
まだ先生は来ていないらしい。図書室の鍵はその口をがっちりと閉じて開かない。
それならば、というわけだ。
胸が熱く高鳴り、その鼓動だけが廊下に引き伸ばされた静寂を叩いているのがわかる。苦しい。とても苦しいが、自然と呼吸は落ち着いている。
いつもそうなのだ。部屋に閉じこもっている時でさえ、度々思い返す先生の作る表情。何度もイメージして、飽きるほど繰り返して、なのになのに、回数は増えるばかり。そして今もこうしてまた先生を待っている。先生の顔を見たいと、先生の声で鼓膜を震わせたいと、先生の話で心を穏やかにしたいと思っている。
与えて欲しいとか、温めて欲しいとか、そんなんじゃなく、ただ単にどうしようもなく先生が気になって気になってそして側に居たかった。
それが単なる俺の「依存」だとしても、俺は耳と目と口をつぐんで一切のそれを拒否した。俺は俺のこの感情を涙溢るるほどに本物だと感じていたかったのだ。
俺の頭の中で複雑に絡み、その姿を肥大化させる俺の中のその感情。これは「愛」か?単なる「依存」か?
でも答えなんか何時間考えても出るわけもなく、俺の中の俺に対する査問は駒谷の声によってぶつりと遮られる。
「井上先生は図書室改装に伴って、工事の期間中は居ねぇってよ」
「・・・」
へぇ。わざわざどうも。
「今日も、明日も、明後日も居ねぇって」
「あぁ・・・・あそう」
何故お前はそこまで気持ちの良い笑顔を作ってご丁寧にもわざわざ教室までのルートを遠回りをしてまで俺に報告してくれんのかね。
俺とお前の付き合いが遡ること6年前からだからか?一緒に学校サボってしょうもない遊びや喧嘩に汗や血を流したからか?俺の井上先生に対する感情を知っていて、何度も俺がそれをお前に相談したことがあったからか?
まぁ幾分腹立たしくも感じるが、助かった。危うく授業にも出席せず放課後まで消化器の隣で体育座りしているような「危ないヤツ」になるところだった。
俺は腰を持ち上げてズボンを軽く払う。
「んじゃもう帰るわ。ダリぃし」
すかさず駒谷は反応を返す。
「おぅおぅ、サボれサボれ。サボってまた刺されてこい」
「あぁーそれもいいな。」
「んでいっぺん死んで生まれなおしてこいよ。俺みたいなイイヤツによ」
「・・そんときゃ、もっかい死ぬわな」
「今ちょっと間があったぞ?」
「引いてたんだよ馬鹿」
「へぇへぇ。んじゃとっとと行けってホラ。サボれサボれ。」
駒谷も駒谷で忙しいフリをしているらしい。仕方がない。
「わぁったわぁった。じゃーな」
だが俺は心の内では駒谷が本当にイイヤツなのは信じて疑わなかったし、俺が刺された夜に降りしきる雨の中、傘もささずに俺の家のまわりをうろうろしていたのを俺は親から聞いて知っていた。本人は話す気もないんだろうが。
しかし俺はその夜、駒谷と全く同じ行動をとることになる。
雨降りしきる肌寒い夜、傘もささずに駒谷の家の前で一人立つことに。
状況は俺のときと酷似していたらしかった。
豪雨の中傘にしがみつくようにして一人家路についた駒谷は公園で後ろからいきなりズブリとやられた。六回もだ。血とその他もろもろを吐いて倒れる駒谷。奴は倒れた駒谷の背中をあと二回ズブリとやると、耳元で何かを囁いて駒谷が頷いたのを確認すると、駒谷の目を手の平で覆って瞼を閉じるよう促した。そして目を閉じたまま駒谷の意識が離れてしまったことを確認すると、ゆっくりとその場を去っていった。
だがこれは駒谷の証言ではない。駒谷は精神的ショックのあまり失語症になってしまったのだ。
俺はこの証言を吐いたという「目撃者」が気に入らない。と、いうかそいつに対してとてつもない憎悪を抱いている。何故、何故そこまで事細かに見ていて駒谷を助けることを考えなかったんだ?何故「傍観」を決め込んだんだ!?お陰で駒谷は「痛い」やら「憎い」やらの言葉さえも吐けなくなっちまったんだぞ畜生!!
俺は暴れた。家の中のありとあらゆる皿を割って、金属バットでパソコンを叩き壊し、テレビを外へ放り投げた。そして叫んだ。ごめんごめんよ駒谷。俺が「期待」なんかしちまったから。俺が刺された事を素直に恐怖しなかったからだ。ごめん。ごめんよ。許してくれ許してくれ。いやむしろお前を喋れなくした俺を刺してくれ。刺してくれ。
そして俺は包丁を持って日に当たったり雨に激しく打たれたりしながら公園に佇み、その身を殺意と同化させ目標を飯も喰わず水も飲まず3日間ただただ待った。だがあの女が再び姿を現すこともなく、結局親に見つかって家に連れ戻された俺は向けるあてのなくなった憎悪、殺意をその刃に焼き付け、俺の手首の上を勢いよく滑らせた。
しかしながら当然死ぬことも許されなかった俺は、自分の同級生又は他校の同年代の学生があと5名刺される度に、皿を割り、包丁を持ち出し、手首を切った。後に7名の犠牲者を出したところでようやくこの事件が打ち止めの兆しを見せても、俺の殺人衝動と自殺衝動が止むのには半年かかることになった。
そして、
そして、さらにその六年後。
その日俺を覆うは、雫だった。
〜本章〜
【8】
『・・・・いつからだ・・・?』
男は視界に入る銃口に恐怖する様子もなく聞く。
『いつからも何もないさ、予定は何一つ狂っていない。残念なことにね』
『・・・なるほど』
男は目を閉じる。その頬の肉が震えているように見えるのは、信頼ゆえの「怒り」か「悲しみ」がそうさせているように思われるからなのか。
ともかく、男は自身の存命には既に期待していない。嫌でも耳にねじ込まれる引き金を絞る音が、ほのかに香る金属の匂いが、男の死をがっちりと固定して不動のものにせんとしているからだ。
そしてそれは、永遠とも思える沈黙の後に轟音とともに静寂の中を駆け抜けた。
『尚も星は揺らめき、我の上にあり』
硝煙を吐き続ける拳銃を片手に、彼は呟く。
だが彼がその星空を見上げようとするところで、画面はその一面を無機質な「青」で覆ってしまって俺は少し悲しくなった。
「オッケーでーす。完璧でしたよ、お二人とも。お疲れさまでした。」
ガラス越しに音響スタッフが欠伸混じりに声を送ってくる。同時に、画面の「青」もその色を失って、そこに四角く穴が開いたように見えた。
「お疲れ」
続いて、マイクの電源が切れたのを確認して、撃たれた男を演じていた男が声をかけてくる。画面の中のそれと重なるのは、「声」だけなのだが。
まぁかく言う俺もさっきまでこの男同様、画面の中の髪の色も違う他人の口の動きに自分の声を合わせるという「職務」をこなしていたわけなので、そこを今更ツッコむのも少々馬鹿らしい。自分の仕事に誇りは持ってないし多分これからも持てないんだろうが、いちいち卑下にして良い事があろうハズもない。
だから俺も出来うる限りの「愛想の良い表情」を作って答える。
「いえいえ、こちらこそ色々と勉強させて頂きました。ありがとうございました」
それに、仮にもこの道ではあっちは大先輩だからな。
「それでは、用がありますのでお先に失礼します」
俺は軽い一礼と軽い嘘を置き土産にスタジオを出る。途中で音響も立ち上がって帽子を脱いで頭を下げて来たが、俺は綺麗さっぱりに反応を返さずその場を立ち去る。廊下に出たところで、やはりこちらも何かしらの礼節をもって言葉を返すべきだったかと思ったが、結局受付の前を通ったときにはそれは「後悔」なんてものにまでは成長せず何処かで振り落とされてしまったようで、俺の脳内では既に今晩採れうるであろう睡眠時間のその量の計算が始まっていた。
実際には、わざわざ計算するほどの量の睡眠は採れないのだろうが。
俺は中央エントランスからビルを出てすぐタクシーを掴まえる。
「谷筋第7ビルまで」
そこで本日最後の職務を全うすることになっているのだ。
やや間があって車内が揺れ始める。灰を残したまま暗くなっている空に星は見えない。対照的に様々なネオンとその残照が飛び交う車内に俺は目を細め、そしてゆっくりとため息を吐いた。
ーーそれにしても、だ。
一体いつまで俺はこんな仕事を続けるのだろう。正直、この「声優」という職業が全く以て俺に向いていないことは嫌というほど実感してしまっている。しかし、俺は大して高給でもないこの仕事を1年間続けてきているのだ。この状況に安住してしまったのか、または何処か満足できるものを見つけてしまっているのか。恐ろしいことに俺だけがそれに気づいていないだけで。
いや、そもそも俺は間違っているのか?
実は「安住」や「充足」こそが人生の目的であったりして、だとすれば今の俺なんかバッチリ幸せなんじゃないか?
では、俺の内から湧いてくるこの怒りは何だ?
そしてこの怒りが俺自身へ向けられているのは、何故だ?
例の如く答えはでない。
あくまでも俺は、俺自身に「問題」を提示するのみだ。
そこにイエスもノーも、見つけられないのだ。例の如く。
俺はふと思い出して、携帯を取り出す。
音声メモが二件。
一つは、今向かっているビルで俺を待っているだろうスタッフからのもの。
残る一つは、見慣れない番号から発信されている。
あぁもう。こういうのは感受性豊かな思春期街道まっしぐらの学生諸君相手に的を絞ってほしいものだ。残念ながら俺からは何も絞り取れないのだから。悲しいことに、何も。
だが、メモの削除を決するハズの俺指は硬直してしまう。
ひょっとして、と俺は思った。
ひょっとして、こんな風に取るに足らない事象を思うままにあっさり取らず、または興味を引かれる事象には思うままあっさりと引かれてしまうことに問題があるんじゃないか、と。それこそが「安住」、「充足」していることをそのまま肯定しているのではないか、と。
ちょっと待て。
だとすれば、もはや俺に選択肢なんて、「選択する余裕」なんてないんじゃないか?ここから抜け出す為の、細く細くそしてその色を失いかけている糸をたぐり寄せるには。
実は俺はそんなこともわかっていなかったのか?
ふざけるな。
ふざけるなよ。
俺はそんな事にも気付きもせず今までただただ腐ってきたのか?
そうして腐った自分をただただ呪ってきただけなのか?
そうなのか?
馬鹿な。
『ーー音声メモを、再生します』
いいや。気づいていた。気づいていたさ。
しかし見て見ぬフリをしていたわけでもないんだ。
『・・・もしもし』
ただ少しそれは危険だったからさ。
ただそれが得難い手段だったからさ。
『・・椿原さん、ですよね?』
俺にはまだまだ俺は変えることのできる手段が沢山あって、俺はまだまだそれらを試すだけの機会と時間を持っていると思ってたんだ。
『実は、明日あなたのよく知る方の通夜が執り行われるんです』
だから、その「俺を否定する手段」はある意味俺を殺して別の誰かを俺の中で突き通していくみたいで、とても危険に感じていたんだ。
『多分・・私を含めても参列者は4、5名ほどでしょう』
でも、
『単刀直入にお願いします。明日の通夜に参列してもらえませんか』
でも多分わかっていたんだと思う。俺を変えたいのなら、根幹から変えていきたいなら、俺は俺を否定するしかない。
『下心は一切ありません。ただ、会ってお話したいことが多々あるのです』
そして俺にはもう時間がない。そんな気がする。何を始めるにしても俺にはもう、今、現在、この瞬間しかない。
だから、
『宜しければ連絡下さい。刺したりしませんから』
だから俺はメモが再生し終わる否や、見慣れぬその番号に出来うる限り速やかにボタンを叩いて発信した。指は力が入るあまり小刻みに震えていて、また汗で少し湿っているのがわかった。
耳に携帯を押しつけながらコール音を待つ俺は、窓に張り付いて潰れた雫を発見する。雨が、降ってきたようだ。それも結構な量が。
次第に乱暴になってゆく雨音を車内で遠くに聞きながら、俺は自らの行いを後悔した。俺はまた、間違ってしまったのかもしれない。
俺は、遙か頭上から指さされて笑われているような気がした。ついに、とうとう、致命的に足を掬われたような気がした。
この雨に。
そして、「あの女」に。
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2004/05/27(Thu)23:37:32 公開 / 湯田
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■作者からのメッセージ
ウィダーしか食べてないなぁ。
村越さんの作品読みたかったなぁ。。。
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