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『桜の木の下で』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:向葉 旭
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春の息吹を乗せた風が吹いた。
視界いっぱいに淡いピンクが広がり、
幻想的な雰囲気を持つ別世界へと迷い込んでしまったような
錯覚を覚える。
はっ!となって、左右に頭をブンブン振った。
いけないいけない・・・、早く先輩を見つけなくちゃ。
キョロキョロと辺りを見回しながら、
半端じゃなく広い校内の桜並木を歩きまわっている、
制服姿の少女がいた。
先輩・・裕人先輩・・どこにいるんですか・・?
不安げに、まだあどけなさの残る愛らしい顔を曇らせながら、
自分が心から愛する、その人のことを呼び続けた。
『――愛里――』
聞き覚えのある声が耳に響いて、思わず顔いっぱいに笑みが広がり、
そのまま声のする方へ駆けだした。
「あっ。裕人先輩!!」
桜木の上に腰掛ける先輩を見つけた。
淡いピンクの背景に、先輩の艶のある黒髪がよく映えている。
[裕人先輩と桜]は、一見ミスマッチのようで実はそうでもない。
どこか神秘的な香りをまとう双方は、なんだか似ている気がする。
「先輩ー!探しましたよ〜!!」
地上から呼びかけた。
先輩のいる枝までは5メートルはあるだろう。
・・・どうやって上ったんだろう?
相変わらず不思議な人だ。
先輩はいつもの、不思議な笑みをたたえた瞳で、
ジッとこちらを見ている。
「お〜いっ!先輩!!寝てるんですかー!?」
・・・・・。反応なし。
「もうっ!せっかく苦労して見つけたのに・・・」
小さな声でつぶやいてみる愛里だった。
先輩を好きでしょうがない自分だけが空回りしてるんじゃないかって、
ときどき不安になる。
「愛里。」
頭上からようやく声が届いた。
・・・先輩の声はずるい。
温かくて、優しくて、何でも許してしまいそうになる。
先輩の音は、私の心によく響いて、小さな波紋をいくつも呼び起こす。
負けるもんか。声を聞くだけで赤くなってしまうなんて、
なんか・・・悔しい。
「お前、やっぱり・・・」
「なんですか。」
プイッと顔を横に向けながら、少し怒った風に応じる。
愛里のささやかな反撃だ。
くすっ。
小さな笑い声が漏れたのが聞こえた。
え?と、思わず上を見る。
「愛里は、上向き加減の顔が一番綺麗だな。」
木の上で、人懐っこく笑っている先輩が、サラッと言った。
!!!
・・・鏡なんて見なくても分かった。
私今顔赤い。・・・しかも相当。
スタッ。ほとんど物音たてずに木から降りて、
いつの間にか背後にいる先輩の気配を感じた。
ふいに抱きしめられて、耳元で囁く声が聞こえる。
「綺麗だなって、キスするときに気づいた。」
・・・・・。声にならない声を出そうとして、
口をパクパクさせながら上を仰ぐと、
悪戯っぽく笑ってる先輩がいた。
この時間が一番好きだ。
裕人先輩と二人で過ごす時間。
これからも・・・
ずっと・・・ずっと・・・
こうしていたい。
「裕人先輩・・・大好きです。」
愛里はそっとつぶやいた。
桜の木の下で・・・
二人の永遠の時間が刻まれている。
* * * * * * * * * *
「あっまたやってるよ。」
「え?何なに??」
「ほらあの子だよ。春になると、いつもあの桜の下にいるコ。」
「あぁ、あのコね。」
「あのコ・・・あれなんだろ?・・・交通事故で彼氏が死んだって。」
「うそっマジ!?あっだから、頭おかしくなって、
いつも一人で桜の木の下なんかにいんのかな。」
「・・・もしかして、彼氏の幽霊でもいるんじゃねぇ!?」
・・・・・・・。
「ハハハ。まさか・・・な?」
END
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2004/04/29(Thu)20:08:19 公開 / 向葉 旭
■この作品の著作権は向葉 旭さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
創めまして。
ぇと、・・・・。
すみません。気の利いた言葉が浮かんでこないです。(別に気きかせんでも・・・)
感想などいただけたら本望です。
ぁの、・・・・。
またどこかで。
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