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『パソコン・忠告・出会い』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:千夏
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○
(カツカツカツ・・・カッ・・・)
パソコンのキーを叩く音がします。パソコンの前に座っているこの女性は、佐藤加代という名前の様です。
(カツカツカツ・・・カツ・・・)
「・・・あれ?この人、私の名前・・・知ってる・・・」
彼女の口からこんな言葉が発せられました。パソコンのメール画面に映っている内容は、こんなもの・・・
「ハンドルネーム「カヨ」さん。いや、佐藤加代さん。僕の名前は藤山浩二。貴方に質問があって書き込みさせて頂きました。
質問1・貴方は佐藤加代が本名で正しいですね?
質問2・貴方の周りに妙な事を口走る人がいますね?
質問3・質問2で思い浮かんだ人の名前を教えてください。
忠告・○月○日、貴方の周りから死人が続出するでしょう。みなさんにお伝えください。犯人に目を付けられないよう、注意してください、と―」
彼女は動きが少し鈍りましたが、パソコンに返事を書き始めました。
「藤山浩二さん、レスどうも有難うございます。質問に答えさせて頂きます。
質問1→私は佐藤加代が本名です。私からも質問、なぜ名前を知っているのですか?
質問2、3→心当たりがありすぎて分かりません。なぜ知ろうとしているのですか?
忠告→○月○日は3週間ほど先ですね。なぜ死人が続出するのですか?何か事件でも起こるのですか?犯人とは、一体誰なのですか?
ぜひ返信してください。宜しくお願いします。」
彼女はなんて強いのでしょうか。普通の人間だったら、恐怖で返事なんて書きません。
彼女は今どういう感情を抱いているのでしょうか?分かった方もいるでしょう。彼女は、
好奇心でいっぱいの様です。
○
彼女はどんな女性なのでしょうか。お教えしましょう。
髪は真っ黒の腰らへんまであるストレート。今日のファッションは黒のワンピース。
さり気なくしているシルバーのネックレスがとても良く似合っています。
周りの人間が見たらきっと、パソコンに篭もりっきりの根暗な女性だとは思わないでしょう。
彼女はこれから何処に行くのでしょうか。ちょっと着いて行きましょう。
・・・申し遅れました。私はこの話の進行役、言わばナレーターといったところでしょうか。
名前はありません。どうぞご自由に。・・・名も無き人、ですね。
けれど誤解しないで頂きたい。私は、人ではありませんので・・・
彼女に着いていってから約5分。家の近くにある歩道橋の上です。
こんな所にどんな用があるというのでしょうか。
彼女が時計を見て一つ、「ふぅ」とため息をつきました。先ほども言った通り、
彼女は家でずっとパソコンをしているような女性なのです。
外に出たのも久しぶりなのです。そのせいか、肌の色はとても白く、とても細いです。
彼女が1分ほど待っていると、歩道橋に上がってくる男性が一人。
と言っても彼女が来てから何人もの人がこの歩道橋を利用してきましたが・・・
男性はYシャツに黒のジーンズ姿。何か、彼女を気にかけている様子です。
彼女も男性に気付いています。彼女はぼそりとこう言いました。
「ハンドルネーム、KAYO・・・」
男性は聞いていたのか、彼女に話しかけました。
「はじめまして。加代さん。藤山浩二という者です」
彼は少し微笑んで言いました。笑顔はなかなか良い感じです。
当の加代さんはというと目つきをギラリとさせて、男性に向かって言いました。
「来るの遅いですね。女性を待たせるのはあまり良いとは思えませんが」
気の強い・・・。その前に、二人はなぜお互いに知っているのでしょうか?
それは、彼女が彼から忠告のメールを受けた2時間後に戻れば分かります。
2時間前、彼はメールを返していたのです。内容はこんなもの・・・
「返信どうも有難うございます。なぜ名前を知っているのか、それは今度お話します。
心当たりって・・・そんな変な人がいっぱい居るのですか??
まさかそんな事はないでしょうけれど、まぁ良いです。
他についてもその内お話しますので。
明後日の午後2時30分に○○町の○○○、○○歩道橋に来れたら来てください。
会ってお話しましょう。」
彼女は返信はしませんでしたが、ちゃんと読んでいました。
一言・・・ぼそりとこう言いました。
「この人・・・私の家も大体分かってるんだ・・・」
そんな内容のものが返信されていました。今日はその明後日なのです。
男性が言いました。
「それはそれは、申しわけありません。予定より電車が遅れてしまったもので」
男性は少し微笑みながら言いました。少し沈黙(彼女は彼の顔をじっと見ていて)が続き、
彼女と男性は同時にこう言いました。
「話せるところ行きましょう?」「話せるところ行きますか」
二人は目を見て微笑みました。まるで恋人同士の様です。
二人は女性が前を歩いて歩道橋を降りました。何も喋らずに少し歩いて、男性が言いました。
「あの・・・何処へ行くのですか?っていうかもう目的地が決まってそうですが」
彼女は「何処」を言っている頃に後ろを振り向きました。間が少しあり、こう言いました。
「喫茶店にでも行こうと思ったんですけど?嫌ですかねぇ?」
男性は圧倒されて「いえ全然」と一言言ってから二人は歩き始めました。
何も喋らずに歩く二人は、恋人同士に見えたのが嘘のように、まったくの他人でした。
女性も男性も風変わりな人間なので、尚更そういう雰囲気をかもし出している様です。
それまでに会話になっていないような会話が何回かあっただけで、あとは話しをしないでいました。
10分程経って彼女は彼に言いました。
「ここでいいですか」
彼女は「はい」と言わせる雰囲気をかもし出していたので、男性は文字通り「はい」と一言言いました。
○
(ガランガラン)
彼女は「今日和マスター」と言って中に入っていきました。男性も後から「今日和」と言って入っていきました。
二人は喫茶店の、出入り口から一番遠い隅にあるテーブルに向かい合って着きました。
店内は見た目よりも広く見えて、暗い店内に流れている英語の唄がとてもよく似合っていました。
そしてまた、彼も彼女もその雰囲気によく似合っていました。
お客は見た限りだと3組です。・・・と、化粧室から女性が戻ってきました。
女性と男性のいる隅のテーブルにマスターと呼ばれた男性が来て言いました。
「加代さんいらっしゃい」
マスターは関西のなまりが入っていました。関西人のようです。
マスターは彼女の前に座っている藤山浩二氏を見て言いました。
「加代さん・・・彼氏できたん?いつのまに」
彼は少し途惑って「違います」と言おうとした瞬間、それより先に女性が言いました。
「違うよマスター。ただの知り合・・・他人に近い知り合い」
彼女は真っ当から彼氏というのを否定しました。
当の彼は怒る様子もなくこう言いました。
「そう、違いますよ。こんな僕と一緒にされたら彼女が可哀想ですしね」
なんて人が良いのでしょうか。意外とこういう性格の二人がくっ付くと良いんじゃないですか?
私の勝手な理想ですけれど・・・
彼女は気にもせず「マスターいつもの」と言いました。
彼はメニュー表をチラリと見て「じゃぁ・・・僕も彼女のと同じのでお願いします」と言いました。
マスターは微笑んで「オーケー」と一言、その場から離れました。
マスターは二人が本題に入る前に「いつもの」を持ってきました。
「これでいいんだよね。彼は・・・飲めるとええんやけどな」
そう言うとマスターはすぐにその場を離れました。気のきく奴です。
彼がキリッとした顔でこう言いました。
「さて、と。本題に入りますが・・・」
彼は本題に入るところで一口「いつもの」を飲みました。「いつもの」というのは
なんなのでしょうか?それはコカコーラでした。
彼は少し勢いよく飲みすぎて咳き込みながら言いました。
「ゴホッ・・・加代さんっていつもコカコーラ飲んでいるんですね・・・」
彼女は彼の言ったことを聞いていたのにゴクゴクと炭酸が入っているコーラを飲みました。
男性は「凄い・・・」と口からこぼれました。
彼はまたキリッとした顔になって言いました。
「今度こそ本題に入りますよ?」
彼はまたキリッとした顔になって言いました。
「僕が最初にメールに言ったことを覚えていますか?それは質問が3つと、忠告が1つ。
とりあえず僕の正体・・・というんですかねぇ?僕は何者なのか教えて差し上げましょう。
加代さん、貴方は僕と接触したことがあります。それはどうしてでしょう?」
彼は加代さんに問題を出しました。ニコリとしています。
当の加代さんはというと「は?」という顔をしてから少し経って、考えはじめました。
「はい。考える時間は終了します。予想できました?僕の正体は・・・」
言う寸前に加代さんが大声で言いました。
「藤山探偵!」
そうです。以前彼女はこの藤山浩二氏率いる探偵事務所でお世話になったことがあるのです。
彼は目を丸くしてからまたニコリとして言いました。
「よく分かりましたね。流石」
彼女は藤山探偵事務所というところで3日だけ働いたことがあるのです。
藤山浩二本人にはあまり接触が無かったものの、そこの主人ぐらいは覚えていますよね。
「藤山・・・さん。髪切っちゃったんですね」
男性はニコニコして「はい」と言いました。この男性は最近まで腰らへんまで髪があったのです。
その髪を一つに束ねるのが彼のスタイルだったようです。
でも確かにそんな気もしますよね?だってほとんど初対面の人に下の名前で呼ぶ人は少ないし、
(藤山氏はとりあえず気をつけていたみたいですが)何より、仲が良いですよね。
彼はまた探偵の顔に戻って言いました。
「本題・・・入ってもいいですかね」
○
「・・・というわけです。ここまでは分かりましたね?」
彼女は下を向いて一つ、コクリと頷きました。
それまでの話しはこんなものでした。彼の言葉でそっくりそのまま言わせてもらいましょう。
「まず、僕は加代さんに質問をしましたね?妙な事を口走る人。貴方はいっぱい居るといいました。
いっぱい居るのも多分・・・真実でしょう。でも冗談でなく一人・・・いや、二人居るはずです。
名前は大体予想がついています。こちらの事務所では。・・・言い難いでしょうけど、言ってください」
「ほ・・・。・・・本庄幸樹と・・・。永田啓・・・だと思います・・・」
「有難う。言ってくれて・・・。事務所のほうでもその二人の犯人像が出来あがっているんだ」
「なっ・・・証拠でもあるんですか!?」
「証人がね・・・。申し出てくれたんだ」
「そう・・・ですか・・・」
「証人は金原沙菜絵。加代さんもよく知っている人だよね。なんて言ったか・・・」
「教えてください」
「・・・うん。ごめんね。彼女はこう言ったんだ。『探偵さん、今日は友達のことでの件があって来ました。
最近・・・妙な事を口走る友達が二人居るんです。多分私の他にも勘付いてる人はいると思う・・・。
二人の名前は本庄幸樹と、永田啓といいます。その二人・・・』・・・加代さん聞ける?」
「聞かないといけませんから」
「オーケー。でね、金原さんはこう続けたんだ。『その二人・・・「死ね」とか
「あそこでは本物の拳銃を何個も変える」「○月○日に実行」って』・・・ってね」
「そうなんですか・・・」
「ごめん、で最後のほうに彼女は言ったんだ。『佐藤加代っていう子が仲良しなんです』と」
「仲いいけど・・・藤山さん私のことも同じように考えてるの!?違いますっ」
「いや、加代さんは全然怪しんでないんだ。行動を共にしたわけだし、身をもって答えられる。
加代さんはそんなことしないってね。で、加代さんに尋ねたのはね、二人について知りたいからなんだ」
「あ・・・はい」
「教えて・・・くれるね?・・・とりあえず息抜きをしようか」
という感じですね。所々女性の顔は引きつる場面もありました。それにしてもやはり探偵。
質問の仕方もちょっとずつ本題に触れていく・・・巧みです。
加代さんは少し落ち着いてきて言いました。
「藤山さん、私の知っている限りの二人・・・隅々まで話させてもらいます」
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2004/04/20(Tue)19:05:52 公開 / 千夏
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■作者からのメッセージ
こんな理由でした。疲れた・・・
まだまだ未熟者なのでアドバイス(きつくない程度に)、
コメントなどなど、ぜひ下さい!
でも指摘ばっかりは流石に堪えるので・・・
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