『時効の報酬』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:小都翔人                

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男は暗く狭い部屋のなか、じっと食い入るようにテレビを見つめていた。
ワンカップの酒を飲み、柿の種をつまみながら。
目は血走り、指先が細かく震えている。年のころは50代の半ばといったところか?
相当酔っているように見えるが、一心にブラウン管を凝視している。
テレビでは特別報道番組が、放送時間を拡大して流れていた。
暗く静まりかえった部屋に、男性アナウンサーの澄んだバリトンが響く。

『ついに、あと1時間となってしまいました。あとわずか1時間で、山本春雄の時効が成立します。
 捜査陣は、まだ必死に山本の姿を追い求めております。番組も最後まで、皆様からの情報を
 お待ちしております。殺人犯人は、あなたのすぐ近くに居るかもしれません! 』

男はカップ酒の残りを、グイっと一息に飲み干した。
(あと一時間・・・・・・。あと一時間だ・・・・・・。)
緊張しながらも、男の口元にはかすかな笑みが浮かんでいる。
(もうすぐだ。このままあと一時間・・・・・・。そうすれば、こんな生活からもおさらばだ!)
男は狭く薄汚れた四畳半の部屋を、感慨深げに眺め回した。
日雇い労働者としての、その日暮らしの日々。辛い肉体労働。ほんのわずかな日当。
そしてなによりも辛い、他の労働者仲間との会話・・・・・・。
(もうすぐだ!もうすぐ!)

「ドンドンドンドンドン!!」
男は驚いて飛び上がった。誰かが男の部屋のドアをノックしている!
(だ、誰だ!こんな時間に!)
男はよろよろと立ち上がった。じっとドアを睨みつける。
「ドンドンドンドンドン!!」
再びドアがノックされる。
男はゆっくりと玄関に降りると、小さな覗き穴から外をうかがった。
ジーンズにダウンジャケットの姿が見える。短い髪を金髪に染めた青年が立っていた。
男は意外に思いつつも、静かにドアを開けた。
「・・・・・・はい。」
金髪の青年も驚いたようだ。咥え煙草を落としそうになった。
「あ、あれ!ここ美由紀の家じゃなかったっけ!? 」
どうやら青年も酔っているようだ。顔が赤みをおび、息づかいが荒い。
「違うよ!!棟を間違えてんじゃないか? 」
男は力強くドアを閉めると、テレビの前に戻りセブンスターに火を点けた。
(ちっ!おどかしやがって!)


男は両手に持った目覚まし時計の針を、一心に見つめている。
23時59分。
(よ、よし!あと1分!あと1分だ!!)
テレビの報道室が騒がしくなってくる。刻々と時刻は過ぎる・・・・・・。
「カチカチカチカチカチ・・・・・・。 」
00時00分!!
アナウンサーが暗い表情で、静かに切り出した。

『3月4日、24時を過ぎました。必死の捜査も実を結ばず、殺人犯人は逃げおおせました。
 この瞬間、山本春雄の時効が成立しました・・・・・・。 』

男は立ち上がり、歓喜の声をあげた!!


「やったやった!!今回のギャンブルは俺の一人勝ちだ!!マヌケな奴等だぜ。みんながみんな犯人逮捕に賭けるなんてよぉ!! 」








2004/03/04(Thu)12:15:10 公開 / 小都翔人
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