『パラノイヤ・ハンター 〜守護者達よ牙を向け〜』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:コウヤ                

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この物語の主人公、秋葉和馬。
彼は運動神経、動体視力が抜群に飛びぬけていた。
今年の春、Z県E市の淺川高校に入学した彼は身長162cmと小柄な体。
野球部一年生のたった二人のレギュラーとして期待と視線と野球のキーホルダーを集めている。
いつも3番遊撃手で先発だ。
今年の春の甲子園で、淺川高校は準優勝し、その勝利にはもちろん和馬も関っていた。
地区大会での成績は
エラー0
26打席 18安打 無四死球 打率.692
全国大会成績。
エラー0
29打席 20安打 1四死球 打率.714
天才的な成績を残している。
打ちたがりやで、凡打は凡打、ヒットはヒットでランナーが飛び出てしまう事もほとんどない。

6月15日。久しぶりに晴れたこの日の放課後であった。
「和馬ぁ!一緒に帰ろうぜ!」
このセリフが女子だったらかなり嬉しいんだけどなぁ、と
ぼやきながら和馬はとりあえず手を振り返す。
残念ながらそれは可愛い女の子ではなく、むさくるしい変態…でもなく彼の親友であった。
坂上健太。
大柄な体をしていて、調子ものな彼。
去年、中学ボクシ自ング大会で2位と好成績を挙げた有名人である。
健太と和馬は校内でも1、2を争そえるほどモテた。

……男子に。

「うるせぇよ、ナレーション。」
ナレーションにまでヤツアタリするほど荒れているのだろうか。
いつもより120%増で目つきが悪い。(当社比)
その和馬の様子に気付き、少々引きながら健太が歩いてくる。
「どうしたのよ、和馬ちゃんv」
はっきり言って、キモかった。
吐き気を覚えながら和馬は抱きしめようとしてくる健太を避ける。
「つれないわね、和馬ちゃん… 健太、涙でちゃうv」
「…………」
いつもならここで厳しいつっこみがとんでくるはずだった。
が、和馬は無反応。それが気に入らなかったのか、膨れ面で健太は口を開く。
「なんだよお前。この頃変じゃねぇか?」
「そうかぁ?お前がそう思ってるだけだろ」
ズンズン歩きながら言葉を返す和馬からは不機嫌オーラが。
その様子に違和感を覚えながらも健太はしっかりと和馬の視線を追う。
下を向いて歩く和馬がなんとなく情けなく見える。
「んなことねえよ。なんか悩み事でもあるだろ」
「………野球……」
ぼそり呟かれたそのセリフをしっかりと聞き取れず、聞き返す。
「野球?」
「…あぁ、野球だよ…
 バットが…振れないんだ…ボールも投げれない…」
ほら、と手を見せ和馬は口の端を少し持ち上げる。
諦めたような、寂しそうな表情と和馬の手を見比べ、やりきれない気持ちで健太は唇を噛む。
肉刺だらけの手。少なくとも、10個はある。
「医者にも行ったさ。
 あと、2週間野球はできないって言われた。
 ノックも、バッティングも、キャッチボールも…」
「2、2週間?」
2週間。
2週間あれば何時間の練習ができるだろうか、と考え途中でやめる。
2週間部活を休む、ということは、いくら野球の能力があったとしても5試合は出してもらえない。
それが自分にとって、どれだけマイナスになるかわかっているからこそ和馬は悔しいのだ。
「ん、んじゃ、全く実戦ができんじゃねぇか?」
「簡単にいえば、そうだけど」
「て、やばいじゃん!レギュラー危ないんじゃねぇの?」
「危ねぇよ。んじゃな。」
シュンッ…
と砂埃を巻き上げ、和馬は走っていった。
和馬の立てていった砂埃にむせる人々の姿を、横目で見ながら健太はため息をついた。
学ランの下のシャツをめくり、見事にわれた腹筋にのこされた痣を見る。
青いものが何ヵ所にもついていたが、和馬ほどどす黒くはない。
そして誰にも聞こえない小さな声でそっと、呟いた。
「やっぱ、あいつにはかなわねぇな…」



「悪ぃな、健太…」
鞄を背負いなおし、電車に乗る。
聞きなれたブザー音と人のざわめき。
馬鹿みたいにスカートを短くした女子高生を避けて、空いていた席に座る。
…あれはスカートとはいわない、垂れ下がった腹巻もどきだ。と信じて疑わない和馬であった。



駅からチャリでぶっぱなし(和馬談)家へと一直線。
大きめの門からカーブをかけてはいり、自転車を止める。
代々秋葉家は由緒ある苺栽培業者らしいが、家を継ぐ気は毛頭無い。
「ただいまぁ…」
ガラガラと扉をあけ、気持ちのこもらない挨拶。
なんの気なしに時計を見上げると、おやつの時間+90分。
「あぁらおかえり。」
「グータラ主婦、俺は腹が減った。」
「いつまでも腹減らしとけ、この熱血野球青春真っ盛り少年が。」
「青春を通り越したオバサンのひがみにしか聞こえない。」
「あぁら、素敵な淑女、とおっしゃって頂きたいものですわ。」
…ハードな会話である。
一般人が聞いたら卒倒しそうであるが、これが日常である。
秋葉家は心が広い。
「ちょっと違うわよ、ナレーション。」
「ぁん?誰に言ってんだよ、母さん。」
…秋葉家はつっこみが厳しい。
ボケてるやつがいると無性につっこみたくなるのが秋葉家の人間なのである。
「別に… あ、そうそう。あんたに友達が来てたわよ?部屋にあげといたから。」
「友達?どんなやつ?」
はっきり言って。
こんな時間帯にこんなやつに会いに来るやつなんていないはず。
(…健太…か?)
思わず苦虫をかみつぶしたような表情をつくってしまい、あわててもとの顔に戻す。
「大人だったわよ。どこで知り合ったの?イケメンだったしv」

誰だよ。

「あぁ…アイツか。」
とりあえず知ったかぶりしておく。
いちいち追求されるのは嫌いだ。
「あ、それから素振り禁止だからな〜」
母に背を向けたところで言われ、唇を噛む。
やりたくてもやれないことをどうやってやれと。
「了解。口でやってみるよ。」
「びっくり人間大会に出てもいいわよ?」



とりあえず。
大人の友達なんて心当たりが無い。
健太が変装でもしてきたのか?とマジメに考えながら自室の扉を開けようとする。と。
バサッ…ゴンッ!
「ぎゃぁ!」
したたか扉で額をうちつける。
「あー、すみません〜v」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!〜〜〜〜〜〜〜!!!」
痛い。痛い。たんこぶができるかと思うくらい痛かった。
それよりもこの『v』つきで自分に話しかけてきた…というよりは自分を思いっきり傷付けた犯人を見ようと目をこらす。
バサッ…
「………………………ばさっ?」
「あーvどうもコンニチワv」
「………………………………………………………………………………………………………………
 母さ――――――ん、飯!!!!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!冗談です待ってください和馬さん!」
思いっきり現実逃避した和馬は階段を駆け下りようと一直線に走ろうとする。
絶対あれは信じてならない。
翼を生やした変態男を見た、なんて信じてはいけない。
ぐわしっと学ランの襟をつかまれ、後ろにこける。
「すいませんねぇ…実力行使は嫌いなんですが。」
人の腕をねじり挙げておいていう台詞ではないのだが。
「っ!っ!っ!」
「あぁ、申し遅れました。私、フウ・サダイダと申します。」
「はっ…はっ…羽根━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!」
「……………………ぇ?羽根がどうしたんですか?
 あぁひょっとして和馬さん、この美しい羽根に洗脳されちゃったんですか?」
そんなわけあるかい。羽根に洗脳される変態がいたら見てみたい。
確かにその変態男…もといフウ・サダイダに生えてるっぽい羽根は美しい。
物語に出てくるような天使の翼。
純白の羽根は蒼く淡く光を発していた。
「えー、とりあえず説明するのが面倒くさいので送りつけます。」
にっこり。
「は?」
「えいっv」
目潰し…ではなかった。
2本の指を和馬の額に押し付けた変態は相変わらずにこにこと笑っている。
水底の冷たい色の髪が、結い紐からこぼれ、和馬の瞳を捕らえる。
「っ…」
頭痛が走る。
頭の中にいくつもの映像が流れ込み、和馬の中に入って行く。
痛い。痛い。
ただ、それだけ。



沢山の映像の中で、一際目についたのは美しい空の色。雲。
その上に先ほどの変態男とえらそうなじじぃ(見た目は青年)がいた。
「フウ・サダイダ。」
「はい、なんでしょうフィーリー様。」
呼ばれ、畏まる変態男…サダイダ。
クソ偉そうに一言言い放つのは、
「地上にいってこい。」
「……………………は?」
「地上にいってこい。」
「あの………このフウ・サダイダ、未熟な上お言葉の意味がお察しできません。」
「地上にいってこい。」
「……………………………………………………………………………………」
「地上にいってこい。」
「……………………………………………………………………………………はい。」
怖いよぅ、と嘆きながらサダイダは雲から落ちる。
「もー、フィーリー様容赦ないですねぇ……いきなり地上に落っことすなんて…」
「よっ!サダイダ、お前もかぁ?」
落下途中で偉そうなパツキン男が偉そうにサダイダに話しかける。
口を開かなければ王子様。
口を開けば悪魔のようなやつである。
「そうです、お前もです。ソルダ、貴方も?」
落下しながら話す2人の髪は、飛びもしなければ乱れもしない。
当然のように服さえも。
「あぁ。フィーリー様人使い荒いよなぁ…自分で行けってカンジーv」
頬に手を添えて首をかしげ、ソルダと呼ばれた変体男第2号。
「とりあえず『v』をつけるのはやめてください。吐き気がします。」
こちらは手を額にそえてため息。
この映像を見ながら
(このサダイダとかいうのも『v』つけまくってたような…)
と素朴な疑問を抱いた和馬であった。
「なによぅ、わたしとぉサダイダちゃんの仲じゃないぃv」
「どんな仲ですか…それよりもその口調気持ちわるいです。」
「じゃぁ、こんな口調になってみるぅ?」
「え?」
嫌な予感がしたが、時すでに遅し。
怪しい液体の入った瓶の口を、きゅぽんっと開け( ̄ー ̄)ニヤリと笑うソルダを見てサダイダが蒼ざめる。
予想はついただろうか。
「さーぁ、飲むのよぉ、このソルダちゃん特製ソル汁をぉ♪」
「わぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!ソルダッ!やめてくださいお願いです!!」
必死に抵抗し、逃げるサダイダの後ろに、漆黒の髪を持つ少女が現れる。
黄金の瞳が猫のように煌き、それから半開きになる。
「なーにやってんのよ、サダイダにソルダ…」
呆れた眼差しにつられたように、ソルダも瞳を半開きにする。
「あらぁ、ムーンちゃんじゃないぃぃ?」
「あぁら、ソルダイコンじゃないぃぃ?」
「………………………………………………………………」
あと3秒で雷が落ちることを予想し、サダイダは蒼ざめ、半歩後ろへ下がる。
そのすきにソルダがサダイダにソル汁を飲ませる。
しっかりとサダイダの鼻をつまんで。
「むごごごごごごごごごっ………………………」
「サダイダッ!どうしたの?サダイダァ?」
気を失い落ちて行くサダイダの襟をむんずと掴み、ムーンは背中の羽根を羽ばたかせる。
「ちょっとソルダ…何よそれ…」
「ムーンも飲むか?」
「間もなく素敵なキックをプレゼントされたいならよいけれど?」
「じゃぁ遠慮しておく。」
蒼ざめ、ふらつき、地上についたころにはサダイダはぶっ倒れていた。
ご丁寧に泡まで吹いて。
「……………………せっかくのイケメンが台無しになっちゃったわよ、サダイダ…」
無造作にサダイダを木の枝でつっつきながらのムーンの言葉に心外そうに(見えなかったが)ソルダが叫ぶ。
「あぁん?俺様のほうが100倍以上(E)!に決まってんじゃねぇかYO!」
「とりあえず理解不能の言葉使わないで頂戴。…サダイダどうすんのよ…」
「ほっとけ」
「……………………は?」
「だからほっとけ!」
ぐっと親指をだして頬を朱に染めるソルダを、ムーンの必殺技がおそう。
「ムーン…フラッシュ!」
「ぐふっ……………………………パクリだろ!?」
「デコじゃなくてクロスを光らせてるからいいのよ!」
首からさげた淡い黄色の十字架を指にひっかけて叫ぶ。
太陽のように輝くのではなく、闇の中で光る月の光。
 和馬は、思った。。

(なんか思いっきり関係ねぇような気がする。)

ごもっとも。
その胸中の思いが伝わったのか、見ていた映像がブレて、変化した。
テレビだった。
神秘的な微笑みをうかべ、コチラがわにその笑顔を見せてくるのは先ほどのソルダと呼ばれていた男。
『パラノイヤ。それは霊、精神体を食らう悪の手先。
 そしてそれらにとりつき、彼らの肉体にまで害をあたえるもの。
そのパラノイヤを倒し、自らの力の糧にするのが《守護者》達である。
守護者、というのは《天空》《大地》《太陽》《修羅》《月光》《灼熱》の6人。

天空の守護者は大気、風、雲などを操り
大地の守護者は植物、土などを操り
太陽の守護者は浄化の光を発することができ
修羅の守護者は物質に自らの力を吹きこむことができ
月光の守護者は音を消したり、刃の鋭利さをより鋭くする事ができる。
灼熱の守護者は炎、破壊を象徴する者

今回はその中でも一番のエエカッコシ実力者とうたわれる、
大地の守護者エイ・ソルダについてを
ハイビジョン生放送で2時間に渡り放送させていただきます。』
『と、いうのは冗談…ですっ!』
特大のハリセンを持ったムーンが画面に割り込み、語尾を荒げソルダの頭をハリセンではたく。
そうして営業スマイルでこちら側に笑顔をむけ、続ける。
『大変誤った映像をお送りして誠に申し訳ございません。
そこでおわびにこの、ソルダイコンの半死状態の顔を2時間生公開しておきます。
どうぞテレビの画面を思いっきり殴ってくださいねv』
『ムーン、しっかり説明しなくてはダメでしょう?』
『ちぇっ…はぁい。
 とりあえず簡単な基礎知識はソルダイコンのほざいていた通りです。
ちなみにわたしが、月光の守護者であるライ・ムーン。
ここでのた打ち回っているダイコンが大地の守護者、エイ・ソルダで
こちらの方が天空の守護者であるフウ・サダイダ。』
『とりあえず基本説明は彼女のしたとおりです。
あとは各守護者の命令にしたがってください。』



新しい記憶。
サダイダの手が額から離れたのを感じ、和馬は荒く呼吸をくりかえす。
「っ…だよ!俺は一般人だ!幽霊は去れッ…魔詞般若心経…」
「ごふぁ!」
がくりと膝を床についたサダイダに視線をやり、胸中ガッツポーズをとった。
カラオケで練習しておいてよかった!
「よし、あと1歩!これでどうだ、ゲニヤサバナム!」
「ぐっ……………………こんなの、が、、きく、と、でも、おも…げふぁ!」
「神火晴明、神水晴明、神風晴明、
 神火晴明、神水晴明、神風晴明、
 神火晴明、神水晴明、神風晴明!」
3回繰り返し、唱える。
こーゆーのが大好きな後輩がいて助かった。
ありがとう谷口さん!今度なにかをおごらねば!
「……………………なぁんてねv」
「え……………………きかない?!」
谷口さんの馬鹿!嘘吐き!幽霊ははらえないっていうのか?!
ジリジリと笑顔でにじりよる、サダイダ。
ゾクりと悪寒を感じて、和馬は唇を噛む。
(なんで、俺は、ただ。)
野球がやりたいだけなのに。
(俺がなにしたっていうんだよ…………………)
ただサダイダに見つめられて、時は、すぎていった。

2003/12/31(Wed)17:27:52 公開 / コウヤ
■この作品の著作権はコウヤさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
みなさまなような小説のまったなだかにクソヘボ小説投稿すみません。
小学5年生の自分の作品。登竜門と見て
「うまくなれるかな?」
と思い投稿しました。
この小説を読んでくださった人ありがとうございます。

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。