『あいつはBLUE。』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:竜紀                

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第1章

彼との出会いは、丁度2年前。私が小学校5年生のときだった。

私が小学校5年生のころ、夏休みに母の父、つまり私にとってはおじいちゃんの家に遊びに行った。それも、今までとは違う、長期。3週間程の旅行だ。

「雅っ!み〜や〜び!起きなさい!もう1時よ?今日はおじいちゃんの家に行くんでしょ!置いていくわよ!?」

も〜・・・うるさいなぁ・・。

「わかってるってばぁ!!今起きるから!」

私はしぶしぶ立ち上がった。髪がグチャグチャだ。よく小学生(私もだけど。)がやる、下敷きで頭をこすると静電気で髪が逆立つってやつみたいなヘアースタイル。

それを見て剣一、兄が笑う。

「うっさいよ剣一!んも〜、朝っぱらからムカつくっちゅうのな!」
剣一の笑い顔のムカつくことったら、もう言葉には言い表せられないほど、なんていうか、ムカッとくるんだよね。

こんな兄は、いらん、って感じ。

私は静電気ヘアーのまま車に乗り込んだ。

車で2時間程かかるおじいちゃんの家。すっご〜く綺麗な海が、歩いて8分くらいで着くってくらいのところに家があって。いわゆる、田舎ってやつかな。


あ、着いたみたい。

「うわぁ〜!気持ち良い〜っ!!!剣一、見てみなよっ!空きれいだよぉ〜!」

「お前はやっぱガキだな。」

剣一ってばそんなことには興味ないみたいなそぶりしておいて、しっかり空も見てるし、一瞬微笑んだじゃんかっ!

・・・剣一のいいところって、そういうところくらいかな?

「ぷっ。」

思わずふきだしちゃった。剣一ってばすぐかっこつけるんだからさww

「なっ、なんだよっ!」

剣一は顔を赤くして言った。なんだか可愛く見えるなぁ〜。

「剣一〜。荷物運ぶの手伝えー!」

トランクに顔をつっこんでるお父さんが叫ぶ。

「あっ、ああ。」

剣一は慌ててトランクの方に向かって、私の方をちらっと見て悔しそうな顔をした。

「全く、かっこつけちゃってぇ〜!」

わざと大きくそう叫んだ。

青い青い空に、私の声が響いた。剣一は私にあっかんべーをして、恥ずかしそうにおじいちゃんの家に入って行った。あっかんべーで目のところに手をやったとき、剣一は一瞬白目になったけど、あえて突っ込まないであげた。

中に入ると、テーブルに、お酒とごちそうが並んでいた。

外を見た。まだ3時だ。

「おじいちゃん、これ、お昼ご飯?もう、食べてきたよ?」

私は荷物を置きながら呟くように言った。

おじいちゃんはニコニコ笑いながら、私の荷物を運ぶのを手伝ってくれた。

「いんやぁ、待ちきれんくてなぁ。晩御飯、もうはや用意してしまったんだ よ。」

私は、思わずその笑顔につられて、えへへ、と笑ってしまった。


「雅、俺ちょっとそこのスーパーまで買い物に行くけど、お前行く?」

剣一はサイフをカバンに入れながら私をちらっと見て言った。

「ん〜、行く行くっ!」

「なら早くしろよ。おいてくぞ。」

私は慌てて準備をして、靴も満足に履けないまま外に出た。

「ここらへんにスーパーなんてあったっけ?」

私は去年来た時、夏風邪をひいてしまっていて、3日間の旅行の3日ともおじいちゃんの家で寝ていた。

「ん〜と、ほら、そこそこ!去年出来たんだよ、来ただろ?もう忘れたのかお前、ほんっと忘れっぽいな。」

「私風邪ひいて寝てたもんっ!」


あれ、あんなところに公園出来たんだあ〜!森みたいでちょっと薄気味悪いけど。

「ねぇ、あれっ、あの公園!あの森みたいな大きい公園、前あったっけ!?」

剣一は呆れた顔で私を見た。その表情はちょっと間抜けで笑いそうになったけど、どうにかこらえた。

「昔からあっただろ?お前幼稚園児じゃないんだから、いちいちそんなことで騒ぐなよ。」

剣一はクールだ、というか、クールを気取っている。硬派を気取っているけど相変わらず間抜けな表情だ。

「ねぇ、私、あそこの公園行ってていい?ていうかっ、行ってるから!剣一買い物終わったら公園に来てねっ!」

私は走り出した。風が頬に当たって、何だか気持ち良い。
胸の中がスカッとして、思わず笑顔がこぼれる。まぁ、笑顔の理由は間抜けなあの表情っていうのも一部あるけど。

「あんま遠くまで行くなよ〜!!」

剣一の叫び声が聞こえる。

はいはいっ。
心の中で返事をして、私は公園に飛び込んで行った。

「うわぁ・・・本当に森みたいだぁ・・。」

そこの公園は、『泉水公園』と書いてある木の案内板のような物が入り口に立っていて、そこから先は、本当に森のようだった。

私は一瞬ためらったけど、一歩踏み出したら、勝手に足が森の中を進んで行った。
新しく出来た公園だっていうのに、人の姿は見えない。本当にちょっと薄気味悪い。

「暗い・・。」
木が太陽の光を遮って、進めば進むほど、どんどんと暗くなっていく。

「・・?」


何かが光ったのが目に入った。

湖・・?

それは、湖だった。湖の側まで走っていくと、パァッと明るくなった。
連なっていた木々はそこで途切れ、湖から奥は普通の公園のように遊具がたくさん置いてある。
ただ、そこで遊んでいる子供達の姿は、2、3人しか居なかった。寂しい感じがする。

湖の前でしゃがんでいた1人の少年が、こっちを向いた。

綺麗だ・・。

すっごく綺麗で整っている顔立ちで、美少年、という感じだった。
中学1年生くらいだろうか・・。剣一くらいの歳だと思うけど、剣一とは正反対ってくらいに綺麗だ。
夏だっていうのに、ジャンバーをはおって、暑そうな格好をしていた。

「どこの人?」
見た目からは想像のつかない低い声で、彼は言った。私からすれば、冬みたいな格好をしている彼の方がどこの人?という感じだったが。

「えっ・・。」

私は思わずそう言った。

「どこから来たの?」

「・・・都会の方です。」
彼は私から目線をそらすと、また湖を見つめた。

彼は、腕にはめている、中学1年生がするとは思えないような立派な腕時計を一瞬ちらっと見ると、また私の方に目線をやった。

「都会か・・。俺の一番恨むべき存在。」

恨むべき!?何て酷いことをいう人なんだろう、と私は思わず彼をギッと睨んだ。

「恨むべきって・・!どうして?」

彼はさっきよりも更に強く私を睨んだ。

私はその目を見たとたん、興奮した自分を押さえ、我に返った。

「・・・どういう、こと?」


彼は鋭い視線を真っ直ぐに私に向けた。

「お前、名前は?」

質問に答えてよ!と思ったけれど私は落ち着いて答えた。

「みやび。市井雅。あなたは・・?」

彼は一瞬ふぅっとため息をついた。

「あお。かみひら、青。」

青という名のその少年は、立ち上がって、湖から2、3m離れた所にいた私のすぐ横に来た。

「雅、いい名前だな。」

「そっちの方が。神平青、すごい綺麗な名前。」

青は何故か悲しそうな目をしたかと思うと、すぐに元の鋭い目に戻った。

「なぁ、明日もここに来てくれるか?」

私は小さく頷いた。

「うん・・。きっと、きっと来るよ。」


〜第2章へ続く〜

2003/12/30(Tue)15:41:05 公開 / 竜紀
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