『取り戻せない約束』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:ティア
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「ここに私達の思い出としてタイムカプセルを埋めましょう」
君は青空と焼けるような太陽の下、澄んだ瞳を輝かせていたね。
優しい風が吹く丘、緑いっぱいの木漏れ日の中。
僕と君は今日でお別れ。
タイムカプセルだなんて子供くさいと鼻で笑ってやると、君も何故だか嬉しそうに笑い返したね。
新品のバケツの中に、僕は、君がくれたサッカーボールをいれた。
君は僕がバケツの中に何を入れたか知らない。
僕は君がバケツの中に何を入れたのか知らない。
「約束は10年後のこの木の陰で。その時2人揃って思い出を掘ろうね」
君は最後に笑顔でそう言った。
最後の最後まで、相変わらず僕は強がって生意気を吐いていた。
僕の目の先で、君は小さくなっても手を振り続けているのに、僕はこの手を強く握りながら地面に向けていた。
大きな風が吹いた頃には、僕は君がいない約束の木の下でずっと泣いていた。
一人で何かわからない怖さに、身が震えていた。
約束の丘から二人離れ、10の年が流れ、約束の時が来た。
ヒゲをはやした愚かな男が約束を守るため帰ってきた。
あの日と同じ風が吹く約束の丘の約束の木の下で、また柔らかい笑顔を見られる事を信じ続けている。
あの日と同じ大きな木の陰で一人。目に映るのは歪んだモノクロの景色だけ。
戻れないのはわかっているよ。もう君の笑顔を見る事はできないのはわかっているよ。
自分の立派になった姿なんて見たくもないよ。
一人で掘り当てた土まみれのタイムカプセル。
僕には開けられないよ。
いつの間にかそれには鍵がついていた、鍵は君が持っていってしまった。
だから開けられないよ。
僕はあの汚いバケツの中に何を入れたんだっけ?
君はあの汚いバケツの中に何を入れたんだい?
今すぐ答えを知りたいから、鍵を持ってこっちに来ておくれよ。
ねぇ…。
あの日と同じ、僕は夕日を背に、木に寄り添って相変わらず泣きじゃくっている。
景色が遠くなっても、もう、僕の手は振れない。
Fin
2003/12/25(Thu)22:12:16 公開 /
ティア
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■作者からのメッセージ
できるだけ文を短くしようとしたら、イマイチ意味がわからない小説に…。
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2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。