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『冒険前夜 (1)』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:安斎 ゆたか
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―――――――むかしむかし
ジャスカ王国には,2種類の戦士がいました。
1つはビッケル族,もう1つはルーベル族といいます。
ビッケル族は気性が荒く戦いを好み,ルーベル族は平和を重んじる種族でした。
この2つの種族は長い間,微妙な均衡を保っていたのです。
―――――――しかしある日,ついに暴動が起こりました。
ビッケル族がルーベル族を襲いにかかったのです!
実は,ルーベル族は温厚な性格を持つ反面,高い戦闘能力を秘めていました。
その能力はほとんど狩りなどに使われていましたが,ビッケル族はいつか矛先が
自分達に向くのではないか,と懸念していたのです。
突然の暴動に,ルーベル族は戸惑いました。
多くの者が,話し合おうとビッケル族の戦士に頼みましたが聞く耳を持ちません。
反撃もできないまま,心優しいルーベル族は傷つき倒れていきました。
―――――――それから200年後………
ジャスカ王国・マックドルム地区
マックドルムの朝はとても早い。
しだいに大きくなる町のにぎわいで,ダッツは目を覚ました。
窓から見下ろす街並みは今日も活気づいている。
「今日もいい天気だ。」
初夏の爽やかな朝の風を受けてダッツは大きく伸びをした。
14才にしては小柄な彼だが,脚は長くてとてもたくましい。
麻のズボンと白いシャツを羽織り,真っ黒い髪を手ぐしで2,3度ときながら
1階への階段を下降りていった。
キッチンからは卵を焼くいい香りが漂っている。
「おはよう,ロナ先生。」
ダッツが声をかけると,フライパンを持ったロナがキッチンから顔をのぞかせた。
「おはよう,ダッツ。今日は学校かい?」
「そうだよ,火曜日は午前から授業がある日だって言ったじゃないか。
ロナ先生も午前から病院開けて診察始めるんだろ?」
テーブルにお皿を並べながら,ダッツは言った。
エプロンの代わりに白衣をまとって調理するこの男はロナといって,
この町で唯一の医師である。
いっけん眼鏡の優男だが,腕は確かで町の人々から絶大なる信頼を得ているのだ。
熱いホットサンドと冷たいミルクを頬ばるダッツを見ながら,ロナは尋ねた。
「ダッツ,最近学校はどうだい。楽しんでやっているかい?」
ぴくりと,コップを持つダッツの手が震える。
「……うん。楽しいよ,問題ない。」
微妙な間をおいて,振り絞るような返事が返ってきた。
そうか,とロナが相づちをうったが,後には重たい空気が残ったのだった…。
AM6:00。
革のリュックを肩に担いでダッツは家をでた。
ここから学校までは歩いて15分の距離である。
たいした距離ではないが,ダッツにとっては苦痛の道のりだった。
(今日もまた,好奇の目にさらされるんだ……。)
口を真一文字に結び,うろんげに前を見据える。
そして意を決して,町の中に入っていくのだった。
「奥さん,見て。ホラ,ダッツの奴が歩いてるわ。」
「あら,ほんと。嫌だわ,まだこの町にいたのね。」
「異端者のくせにいっちょまえに学校に通って!
ロナ先生もどういうつもりかしら。」
ダッツは町を歩きながら,あからさまな好奇の目と辛辣な言葉を感じていた。
(何も聞こえないふりをしてやりすごせばいい…。
あともう少しでこの通りを抜けれるんだ。無視だ無視しろ…。)
自分に言い聞かせながらダッツは歩いていた。しかし,
「……あの子,迫害されたルーベル族の生き残りなんでしょう?
あの黒髪と濃い肌の色だもの。私達ビッケル族を恨んでるのよ……」
どこからか聞こえるその話しを聞いて,ダッツはたまらなくなり走りだした。
飛び上がって壁を登り,屋根づたいをものすごいスピードで駆け抜けていく。
屋根の上なら,あの目や声から逃げられる。
この場から逃げたい。
その一心で,ダッツは全速力で学校へ向かったのだった。
―――――――マックドルム訓練学校。
町で唯一の公立の学校・マックドルム訓練学校は大陸屈指の名門校である。
魔法や武術を学ぶ専門学校で,厳しい入学試験に合格した者だけが門をくぐれる。
裏を返せば,成績さえ良ければ誰でも入れるということだ。
ビッケル族が人口の99,9%を占めるマックドルム地区で,
絶滅種族のルーブル族のダッツの存在は極めて異端だった。
しかし,ルーブル族特有の生まれ持った高い戦闘能力は,200年たった今も薄れることはなかった。
ロナに勧められて受けたこの学校の入学試験で,ダッツは設立以来の高得点を叩き出したのだ。
入学を渋っていた学校だが,この結果を見て不承不承ながら許可したのだった。
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2003/12/19(Fri)01:01:40 公開 / 安斎 ゆたか
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■作者からのメッセージ
元・バナナタルトでしたが,似たようなHNが先にあったため紛らわしいと思い変えました。
このお話ですが,長ったらしくてすみません。
ファンタジーものを書いてみました。
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