- 
   『ぽとふ  弐』  ...  ジャンル:未分類 未分類
 作者:一卵性                 
- 
	
 123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
 
 ビルの下では警察が騒いでいました。『無駄な抵抗はやめろ!』とか『お前達は完全に包囲されている!』とか、本当に言うんですね。
 
 あ、ごめんなさい。 ハイ、ホントもうしません、はい。
 
 「殺した男は警察官だった」
 
 今まで喋らなかった目出し帽の男が、初めて口を開きました。
 逞しい腕の先には、汚物を持つように親指と一指し指でつまむ物、それは多分手帳だと思います。
 警察手帳じゃないかと思います。
 
 
 
 
 暫くすると、こう言うのもなんですが、その、皆、一段落した様な雰囲気になりました。 人が殺されているのに、少し緊張が解けた状態に。
 
 「良かったですね! 皆さん、政府が要求を呑んでくれました!
 上手くいけば貴方達はもう少しで自由ですよ!」
 
 ガスマスクの男が本当に嬉しそうに言えば、人質の私達も安堵の溜息を洩らしたり、小さな歓声をあげます。
 
 「でも! 喜ぶには未だ早いですよ〜!」
 
 男はとても大きな拳銃をこちらに向け、脅します。
 それは、事件発生から二時間経過した頃でした。
 
 
 
 
 
 「さて、そろそろ皆さんに私達の目的を伝えようと思います」
 
 突然、神妙な面持ちで ……あ、顔見えませんね、面持ちって、いやはいすいませんはなしをつづけます。
 とにかくもう、神妙な感じで、口を開きました。
 
 「私達が要求した物は、ヘリでも食料でも金でも有りません。
 たった二百萬円の、退職金なのです」
 
 言うと、今まで顔を隠していたものを、ガスマスク、目出し帽を、彼らは投げ捨てました。
 皆、孫が居そうな、壮年のおじさんでした。
 
 「銃はアメリカで買って違法に輸入しました。
 私達は、官僚の、御偉方の、とにかく上の方々を恨んでいます。
 濡れ衣を着せられ、一時期は牢に入れられた!
 何が! 何が訓練中の人殺しだ!
 お前らが! その山でやれって言ったんじゃないか!」
 
 ガスマスクの男は、もう禿と呼べる、普通のおじさんでした。
 まるで目の前に当の本人が居る様に、声を荒げる。
 
 「…………取り乱してすいません。
 そして、御免なさい。
 本当はもう、退職金なんて要らないのです。
 意地を張っていただけなんです」
 
 深呼吸をし、冷静を取り戻したおじさんは、泣いていました。
 銃を持ちながら、他のおじさんも、涙を流していました。
 
 
 
 「だから、最後まで意地を張らせてください。
 御免なさい、本当に御免なさい、もう、後戻りしたくないんです。
 
 皆さんを巻き込んで、本当にすいませんでした。
 ……謝るのは、一度やめます」
 
 もう一つ、深呼吸
 
 「残りは地獄で謝ります!」
 
 おじさんは、百円ライターで何かに火をつけた。
 
 
 
- 
2003/12/12(Fri)23:12:20 公開 / 一卵性
 ■この作品の著作権は一卵性さんにあります。無断転載は禁止です。
 
- 
■作者からのメッセージ
 次でラスト!
 批評お願いです
 作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
 
	等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
	CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
	MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
	2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。